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2023年09月22日

【短編小説】『どんな家路で見る月も』(1話完結)

【MMD】Novel IEJI Tsuki SamuneSmall2.png

⇒他作品『割れた翠玉の光』からの続き

<登場人物>
夜野 逢月姫(よの あづき)
 26歳、OL
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



逢月姫
「お疲れさま、今日もお仕事がんばったね。」


最寄り駅のホームを出る。

周りに人がいないことを確認し、
自分へ労いの言葉をかける。

歩き慣れた家路を、ゆっくり歩く。

(早くメイクを落としたい。)
(窮屈なワイヤーの締め付けから解放されたい…。)


色んな願望が浮かんでくる。



ふと、夜空を見上げる。

逢月姫
「あぁ、今日も月がきれい。」


濃紺と黒を分けた空色に、
少し欠けた月がひときわ目立つ。

これ、帰り道の密かな楽しみなの。

『月がきれいですね。』
1度は素敵な彼からそんな告白をされてみたい、
なんて妄想がはかどる。

「アナタ鈍感だから、言われても気づかないでしょ?」
もう1人の”悪魔の私”が水を差してくる。

「もう!余計なこと言わないでよ!」
すかさず”天使の私”が反論する。

”悪魔の私”に退場いただいてから、
妄想の続きを膨らませる。


ーー


マンション共用部の入口でポストを確認する。
今日は私宛ての郵便物はない。

階段を上がり、部屋のドアの前に立つ。
そこで気づく。

逢月姫
「部屋の電気が点いてる…?」


出勤前に消し忘れたかな?
いいえ、今朝は電気を点けていないはず。

それだけではなく、
部屋から何人かの笑い声がする。

私は一人暮らしだ。

実家の誰にも合鍵を渡していないし、
同棲中の彼氏もいない。



ガチャリ

女性
『あら?どなたでしょうか?』




ふいにドアが開き、
見知らぬ女性が私へそう尋ねる。

動転した私は、思わず

逢月姫
「こ、この部屋の住人ですッ!(汗)」


女性
『この部屋の?』
『私たち、先月ここへ引っ越してきたんです。』


私は”引っ越し”というワードに反応し、
ようやく我に返る。



(そうだ私、先月…引っ越したんだ。)



よく見ると、
ドアを開けた女性の後ろに
ダンボールが積まれている。

私は
引っ越したことをすっかり忘れて、
引っ越し前の家に帰ってしまったのだ。


逢月姫
「ごめんなさい、間違えました!」
「私、先月までここに住んでいて…。」


彼女に事情を説明する。

数分後、
私は彼女の乾いた愛想笑いに見送られ、
その場を後にする。


ーー


逢月姫
「あーあ…やっちゃった…。」


恥ずかしさで火照った顔が、
ようやく冷めてくる。

駆け足で乱れた息づかいが、
だんだん落ち着いてくる。

引っ越し先まで2キロくらい。
私は歩き慣れていない家路を、ゆっくり歩く。

(メイク…早く落としたいなぁ。)
(キツキツのワイヤーから解放されたいナ…。)


先送りになってしまった、
色んな願望が浮かんでくる。



ふと、夜空を見上げる。

逢月姫
「あぁ、この道から見る月も、きれい。」


まばらに浮かぶ雲が、
さっきより近づいて見える月を引き立てる。



逢月姫
「あの人たち、楽しそうに笑ってたなぁ。」


ついさっき謝った、
新しい住人のことを思い出す。

逢月姫
「数年前の私も笑ってたっけ?」
「たくさん泣いて、たくさん怒って…。」


私があの部屋に住んでいた頃の思い出が、
一気に蘇ってくる。


(私があの時、あんなことをしなければ…。)
(きっと今も、彼と一緒に…。)


ifの世界線が鮮やかになるほど、
”悪魔の私”が後悔を連れてくる。

(ヤメヤメ!彼とはもう終わったの!)
(幸せなこともいっぱいあったでしょ?!)


すかさず”天使の私”が反論する。

”悪魔の私”に退場いただいてから、
これからの出逢いに思いを馳せる。



『月がきれいですね。』
1度は素敵な彼からそんな告白をされてみたい。

そう思うのは、
引っ越し前の家に住んでいた頃の私まで。

これからの私は、
素敵な彼にそんな告白をするくらい成長するの!

あの家がくれた、
元彼との苦い思い出も幸せも、

ぜんぶ引き連れて。




ーーーーーENDーーーーー



⇒他作品
【短編小説】『アロマンティックと孫のカオ』全2話

【短編小説】『いま、人格代わるね。』全3話


⇒この小説のPV

2023年09月13日

【短編小説】『お金は神よりも神』2 -最終話-

【第1話:通貨は、国の商品】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・本作の舞台
 紀元前700年頃
 アナトリア地方『ナディア王国』


・同国の通貨単位
 エレクト
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第2話:悪貨は、良貨を駆逐する】



<城下町のパン屋>

パン職人A
『よいしょ、兵士さんの食料分はこっち。』
『お店で売る分はこっち、と。』


パン職人B
『商売繫盛なのは嬉しいけど。』
『最近、コインの質がますます落ちてない?』


パン職人A
『落ちてるよね。』
『このコインなんか錆びてて、100の文字も見えない。』


パン職人B
『国王さまを疑うわけじゃないけどさ。』
『こんなコインが、いつまでも100エレクトなわけないよね。』


パン職人A
『うん、いつ価値が落ちるかわからない。』
『今の値段、パン1個2エレクトでも不安…。』


パン職人B
『…また、値上げする?』


パン職人A
『うん、仕方ない。』
『1個3エレクトに値上げしましょう。』



ーー


<王宮>

国王
「大臣よ、隣国との戦況はどうだ?」


大臣
『順調に侵攻を続けております。』
『すでに隣国の領土の3分の1を占領しました。』


国王
「上出来。首都の陥落も間近だな。」


大臣
『ですが1つ問題が。』


国王
「何だ?」


大臣
『我が軍の物資の不足が目立ってきました。』


国王
「む…懸念した通りか。」
「あれだけの資金でも足りぬとは。」
「早急に武器や食料を調達したい。」
「もっとコインを作れないか?」


大臣
『それが…材料の銀が底を尽きかけています。』
『採掘場からは”枯渇が近い”との報告もあります。』


国王
「銅でも何でも、混ぜればいいではないか。」


大臣
『混ぜるための金属も不足してきました。』
『もっと質の落ちる合金を使うしかありません。』


国王
「構わぬ。コインの価値は私が決めるのだ。」
「粗悪品でも私が100エレクトだと言えば100なのだ。」


大臣
『…かしこまりました。』




どうやら、資金面で不安が出てきたようです。

とはいえ隣国との「祖国防衛戦」は、
ナディア王国が優勢のようですね。

「もっともっとコインを作ろう」
「戦争へつぎ込もう」


そう躍起になる国王さまは、
気づいていませんでした。

城下町では静かに、確実に、
モノの値段が上がり続けていることに。

たとえ100エレクト持っていても、
今日のパン1個も買えなくなりつつあることに…。




ーーーーー



<さらに1年後、王宮>

役人
『国王さま!』


国王
「どうした?」


役人
『王宮の入口に、国民が集まっています!』


国王
「反乱か?!」


役人
『いえ、嘆願のようです。』


国王
「嘆願?」


役人
『”助けてください”』
『”物価が上がり過ぎて食べ物が買えません”と。』


国王
「物価?今のパン1個の相場は?」


役人
『今、パン1個1万エレクトで、昨年は1エレクトでした。』
『塩は1グラム5万エレクトで、昨年は5エレクトでした…。』


国王
「1年で1万倍の物価上昇だと?」
「いったい何が起きている?」


役人
『…国民は混ぜものコインしか使っていないようです。』


国王
「なぜだ?」


役人
『”価値は同じ100エレクトだ”』
『銀100%のコインを使う必要がない”と言って…。』
『国内には、粗悪品のコインばかり大量に流通しています。』


国王
「くっ…!それでコインの価値が下がったのか…!」




 国王さま、お願いです、助けてください!
 このままでは飢え死にしてしまいます!
 子どもにパン1個も買ってあげられません!

 ママー!おなかすいたよー!




王宮前には連日、
国民の悲痛な声が響きました。

急激な物価高により、
国民は飢えと貧困に苦しみました。

兵士の食料も武器も十分に買えなくなり、
戦況はみるみるうちに悪化しました。



ーー


<数ヶ月後、王宮>

国王
「くッ…!このままでは隣国に負ける…!」
「何とか物価高を抑えなければ私の立場も危うい…!」


役人
『最終防衛ラインで踏みとどまっていますが…。』
『残念ながら長くは持たないでしょう…。』


国王
「ぐぬぬ…!」
「純銀製のコインは一体どこへ行ったのだ?!」
「誰かが貯め込んでいるのだろう?」


役人
『それが…純銀のコインを溶かして…。』
『他国へ高値で売りつける輩がいるそうです。』


国王
「何だと?!」
「銀が他国へ流出するではないか!」


役人
『はい…その一部が隣国へ流れており…。』
『物質調達を助けているという情報もあります。』


国王
「貨幣の質を落とした結果がこれか…!」
「加工の疑いのある者を片っ端から逮捕するのだ!」


役人
『お言葉ですが、中には武器を鋳造する技術者もいます。』
『確たる証拠なしに捕らえては、武器の製造が…!』


国王
「背に腹は代えられぬ…。」
「まずは富の流出を抑えねば…!」


役人
『…かしこまりました…。』




その後、ナディア王国では、
コインを加工したと噂された者が
次々に牢屋へ入れられました。

これにより、
コインの加工や流出を防いだかに見えました。

しかし、

技術者を無差別に逮捕したことで、
国民の生活はますます不便になりました。

何より、
罪もない人々への横暴な仕打ちに、
国王への不信感はどんどん募っていきました。


『もう、あんな国王のために戦いたくない。』

物質不足と国王への不信感で、
兵士の士気は下がり続けました。

ボロボロになったナディア王国には、
隣国の反撃を食い止める力はありませんでした…。



ーーーーー



<1年後、旧ナディア王国・領内>

隣国・国王
「側近よ。」


側近
『はい。』


隣国・国王
「この100エレクトコイン、1枚いくらで作っている?」


側近
『1枚1エレクトで作っています。』


隣国・国王
「ということは、国へ入る利益は99エレクトか。」


側近
『はい。』


隣国・国王
「もっと儲からないか?」
「ナディア王国を征服して1年。」
「そろそろ対岸の国を我がものにしたい。」
「戦争を仕掛けたいが、軍資金が足りぬ。」


側近
『安価に作れる新しいコインを出してはいかがでしょう?』


隣国・国王
「ほう、新しいコイン。」


側近
『今、我が国には1、5、10、50、100エレクトコインが流通しています。』
『新たに1000エレクトコインを作り、国民に使わせるのです。』


隣国・国王
「1000エレクトコインか。」
「1枚いくらで作れるのだ?」


側近
『1枚1エレクトで作れるでしょう。』


隣国・国王
「1枚あたり999エレクトも儲かるではないか!」
「よし、さっそく作らせて国民へ配れ。」


側近
『御意。』


隣国・国王
「ふっふっふっ…。」
「金を作れば作るほど儲かる。」
「国民からの支持も厚くなる。」

「金を流通させることより儲かる商売が他にあるか?」


側近
『これなら、すぐに戦争の資金が貯まりますな。』




⇒第1話へ戻る…(以下、無限ループ)



ーーーーーENDーーーーー



<あとがき>

人類の歴史は、
お金に振り回される無限ループとも言えます。

@権力者がお金を安価で作る
Aお金の量が増える
Bお金の価値が下がる
C物価が上がる
D貧困から不満が溜まる
E国力が落ちて戦争に負ける
(@へ戻る)


私たちはお金を欲し、
お金に救いを求めてきました。

お金は世界のどんな神さまより、
厚く信仰されているかもしれません。

なにしろ
「お金には価値がある」と、
みんなが”信じて”いるんですから。




ーーーーーーーーーー



⇒他作品
【短編小説】『恋の麻酔と結婚教』全4話

【短編小説】『スマホさん、ママをよろしくね。』全4話


⇒参考書籍











2023年09月12日

【短編小説】『お金は神よりも神』1

・本作の舞台
 紀元前700年頃
 アナトリア地方『ナディア王国』


・同国の通貨単位
 エレクト
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第1話:貨幣は、国の商品】



ナディア国の王は、戦の天才でした。

当時、小国が乱立し、
争っていたアナトリア地方を
あっという間に統一して見せました。

国内が安定してきた頃、
国王は”ある商売”に力を入れ始めました。

絶対的な権力と資金力があれば、
「確実に儲かる商売」です。

うさんくさい?詐欺?とんでもない。

その商売とは、
今や世界に必要不可欠な「お金」の売買でした。


ーー


<王宮>

国王
「大臣よ。」


大臣
『はい。』


国王
「この10エレクトコイン、1枚いくらで作っている?」


大臣
『1枚3エレクトで作っています。』


国王
「ということは、国へ入る利益は7エレクトか。」


大臣
『はい。』


国王
「もっと儲からないか?」
「国内が安定し、私の権力も盤石になった。」
「そろそろ隣国を我がものにしたい。」
「戦争を仕掛けたいが、軍資金が足りぬ。」


大臣
『そうですね…。』
『安価に作れる新しいコインを出してはいかがでしょう?』


国王
「ほう、新しいコイン。」


大臣
『今、我が国には1、5、10、50エレクトコインが流通しています。』
『新たに100エレクトコインを作り、国民に使わせるのです。』


国王
「それは良いアイディアだ。」
「では安価に作れるコインのデザインを考えるとしよう。」




国王
「100エレクトコインのデザイン、これでいきたい。」
「1枚いくらで作れる?」


大臣
『このデザインなら、1枚5エレクトで作れます。』


国王
「1枚あたり95エレクトも儲かるではないか!」
「よし、さっそく作らせて国民へ配れ。」


大臣
『御意。』



ーー


<城下町>

役人
『国民の皆さん!』
『国王さまからの贈りものです!』


王宮のお触れに、周囲がざわつきました。

役人
『国王さまは国民の生活を第一に考えるお方です。』
『そこで、ご自身が身銭を切る決断をされました!』


別の役人たちが、
大量のコインが入った箱を持ってきました。

役人
『これが新しい100エレクトコインです。』
『皆さんへお配りします!』
『どうか豊かな生活を送ってください!』


国民は歓喜しました。

国民へ100エレクトも配るなんて、
国王さまはとても慈悲深いお方ですね…。



大臣
『国王さま、国民は大喜びです。』
『商売繫盛ですな。』


国王
「ああ、せいぜい気づかずに過ごすがいい。」
「100エレクトコイン、もっと大量に作れ。」
「もっと国民の生活を潤してやるのだ。」


大臣
『御意。』


国王
「ふっふっふっ…。」
「金を作れば作るほど儲かる。」
「国民からの支持も厚くなる。」

「金を流通させることより儲かる商売が他にあるか?」


大臣
『これなら、すぐに戦争の資金が貯まりますな。』




ーーーーー



<1年後、王宮>

国王
「大臣よ。」
「戦争の資金調達は上手くいっているか?」


大臣
『順調です。』
『あと1年ほどで目標金額に達するでしょう。』


国王
「あと1年か。」
「最近、隣国の政情が不安定だ。」
「今こそ戦争を仕掛ける好機なのだが。」


大臣
『まだ少し足りません。』
『兵力はこちらが上ですが、隣国は資源に恵まれています。』
『長期戦になれば、こちらの物質が先に尽きる恐れがあります。』


国王
「それはわかっているが…。」
「もっと早く儲けられないか?」
「このチャンスを逃したくないのだ。」


大臣
『そうですね…。』
『コインの製造費を下げてはいかがでしょう?』


国王
「どうやって下げるのだ?」


大臣
『今、エレクトコインの配合は銀100%です。』
『これに安価な金属を混ぜ、銀50%へ下げるのです。』


国王
「名案だが、国民は気づくのではないか?」


大臣
『気づくでしょう。』


国王
「だろう?どうするのだ。」


大臣
『コインの価値を決められるのは国王さまだけです。』


国王
「そうか!多少、質が落ちるコインだろうと…。」
「私が100エレクトと言えば、国民は従うしかないではないか。」


大臣
『その通りです。』


国王
「銀50%にしたら、1枚いくらで作れるのだ?」


大臣
『1枚1エレクトで作れます。』


国王
「99エレクトも儲かるではないか!」
「よし、さっそく作らせて国民へ配れ。」




ーーーーー



<城下町>

町人A
『この100エレクトコイン、何か違うな。』
『こっちのコインより、色がくすんでる。』


町人B
『噂では、他の金属を混ぜてるらしい。』


町人A
『確か、前は純銀製だったよな。』


町人B
『ああ、だが価値は同じ100エレクト。』
『パンも塩も買い放題だ。』


町人A
『だよな。』

(とはいえ、きっと銀100%の方が価値が高いよな)
(買い物では質の落ちるコインを出そう)



ーー


<城下町のパン屋>

パン職人A
『今日の売上は…うん。商売繫盛。』
『けど最近、お客が出すのは質の悪いコインばかりね。』


パン職人B
『噂ではコインに混ぜものをしてるらしいよ。』


パン職人A
『やっぱり?』


パン職人B
『価値は同じ100エレクトだから問題ないけどさ。』


パン職人A
『そうは言っても、こうも質の悪いコインは…。』
『そのうち価値が下がるんじゃない?』


パン職人B
『かもね。』


パン職人A
『パン1個1エレクトで売ってたら危なそう。』


パン職人B
『うん、2エレクトは欲しいよね。』


パン職人A
『だよね。仕方ない、値上げしましょう…。』



ーー


<城下町>

町人C
『最近、モノの値段が上がってない?』


町人D
『ああ、以前の2倍くらい。』


町人C
『何があったか知ってる?』


町人D
『隣国が戦争の準備をしてるらしい。』
『それで行商人が来れなくてモノが貴重になってる。』


町人C
『まさか、隣国が攻めてくるのか?』


町人D
『かもな、国王さまからお触れも出てる。』
『隣国の侵攻に備えるって。』


町人C
『兵士の募集も始まってるしな。』


町人D
『それにしても、さすが国王さまだ。』
『隣国の動きはすべてお見通しか。』


町人C
『ああ、それに今なら志願兵の方がよっぽど高給だ。』
『国が金を出して、食料や装備を買ってるからな。』
『オレも志願しようかなぁ。』


町人D
『やっぱりあの方は名君だ。』
『国を守るため、身銭を切って兵力を整えるとは。』



ーー


<王宮>

大臣
『国王さま、兵士は順調に集まっています。』


国王
「そうだな。混ぜものコインの首尾は?」


大臣
『国民は気づいていますが、広く流通しています。』


国王
「そうだろう。」
「何しろ、価値は同じ100エレクトだ。」


大臣
『それが1エレクトで作れますからな。』
『倍速で戦争の資金が貯まります。』


国王
「よし、資金が貯まり次第、隣国を攻める。」
「国民には引き続き、こう通達しろ。」


 隣国が侵攻してくる脅威
 我々は祖国を守るために戦う
 勇敢な諸氏の奮闘に期する

数ヶ月後、
ナディア王国と隣国との間に
「祖国防衛戦」が勃発しました…。



【第2話:悪貨は、良貨を駆逐する】へ続く

2023年09月09日

【短編小説】『慰めの代打をさせないで』3 -最終話-

【第2話:お父さんの期待】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第3話(最終話):敗者復活戦の代打】



少年
『僕、野球が好き。』
『打てるようになって、もっと楽しくなった。』


父親
「…そ、そうだろ?楽しいだろ?!」
「オレの指導のおかげ…。」


少年
『けど今はもう…野球が楽しくない。』


父親
「?!!」


いつも怒鳴りまくっている父親が、
目に見えて動揺している。



少年
『お父さんはいつも、ああだこうだ口出ししてくる。』
『僕、お父さんの前じゃ全然打てる気がしない。』


父親
「く、口出しじゃない…!」
「これはお前のためを思っての指導だ…!」


少年
『”僕のため”を思って?』


父親
「ああ、オレの言う通りにすれば、もっと打てる。」
「なのにお前はいつまで経っても上手くならん。」
「じ、自分の練習不足を、ひ、人のせいにするな!」


父親が、やっと絞り出した威圧感。
息子は怯えて泣きそうになる。

コーチが助け舟を出そうとする。が、

少年
(コーチ、最後まで僕に言わせてください。)


再びコーチを制止する仕草から、
そんな想いが伝わってくる。



少年
『お父さんは本当に”僕のため”を思ってるの?』


父親
「と、当然だろ?!」
「お前が上手くなるためだ。」


少年
『……お父さんのウソつき…。』


父親
「何だと?!」


少年
『お父さんは僕のことなんて見てない。』


父親
「…?!…そんなわけ…。」


少年
『お父さんが見てるのは自分だけ!!』
『お父さんは”息子を天才バッターに育てた父親”になりたいだけだ!』




ギクリ



父親は、何も言えずに立ち尽くす。
自分でも気づかなかった「図星」に、
頭を強く殴られて。

すべての勇気を振り絞った少年は、
その場へ崩れ落ちる。

コーチは間一髪、
少年を抱きかかえながら、口を開く。

コーチ
『選手がミスした時、どこを見るかでわかるんです。』
『その選手が”本当に戦っている相手”が。』


父親
「…?!」


コーチ
『息子さんは三振するたびに、どこを見てましたか?』
『もちろん気づいてますよね?』

『ずっと”こっちを見るな”と言っていた、あなたなら。』




ーーーーー



カーン!

今日もバッティングセンターに快音が響く。

『おめでとうございます!ホームランです!』

誰かがホームランゾーンへ打ち込む。
明るい場内アナウンスが流れる。

ホームランを打ったのは常連の野球少年。
小学校5〜6年生だろうか。

彼はどこかの少年野球チームで
4番を務める、チームの主砲だ。



スタッフA
『おめでとう!』
『これで年間100本目のホームランよ!』


スタッフB
『はい!これ、景品の50打席無料券!』


少年
『ありがとうございます。』
『あと…あの時はハンカチ、ありがとうございました。』


スタッフA
『どういたしまして!』


スタッフB
『今日も1人?お父さんは?』


少年
『家に置いてきました。』


スタッフA
『あはは、置いてきたの?(笑)』


スタッフB
『言っちゃ悪いけど、頑固そうだったよ?』


少年
『はい、あの後も大変でした。』
『けど、やっと約束してくれたんです。』

『”口出しを止めるまで付いてこない”って!』




過干渉な父親の”熱血指導”から解放された、
1人の野球少年。

彼が後にプロで活躍するのは、
また別のお話。



ーーーーーENDーーーーー



<あとがき>

お子さまのスポーツを
”熱血指導”している親御さんへ。

「我が子にはスポーツで活躍してほしい」
そう願う親心はすばらしいです。

しかし、
「あなたのためを思って」は、
「自分の満足のため」を隠す言葉です。

ご自身が少年少女時代に
活躍できなかった悔しさを、
お子さまで晴らそうとしていませんか?

ご自身の人生の
「敗者復活戦の代打」をさせていませんか?


もし心当たりがあるのなら、
どうか口出しせず、見守ってあげてください。

結果ではなく、
お子さまの努力の過程を、
気持ちを褒めてあげてください…。



ーーーーーーーーーー



⇒他作品
【短編小説】『スマホさん、ママをよろしくね。』全4話

【短編小説】『孤独の果てに自由あり』全5話


⇒参考書籍












2023年09月08日

【短編小説】『慰めの代打をさせないで』2

【第1話:熱血指導という支配】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第2話:お父さんの期待】



今日もバッティングセンターに快音が響く。

常連の親子も来ている。
が、父親はいつにも増して厳しい。

息子は泣きそうになっている。
球速の遅いケージでもまったく打てない。

それを見た父親は、ますます怒り狂う。

どうやら、
息子はこの日の試合でヒットを打てず、
負けてしまったらしい。



しばらくして、親子が玄関へ出ていく。
いつもの”説教タイム”を過ぎても戻ってこない。

心配になったスタッフが様子を見に行く。

そこには、静かに涙する少年が1人。
父親の姿は見えない。

「しばらく反省しろ!」

という怒声が聞こえたので、
席を外しているんだろう。

スタッフA
『…ねぇキミ…大丈夫?これ使って?』


スタッフが少年に、ハンカチを差し出す。

少年
『…(ありがとうございます)…。』


少年は、か細い声でお礼を伝える。

スタッフB
『いつも練習見てるよ。』
『キミがすごく上手なこと、知ってるよ?』


少年は、溢れる涙をハンカチで拭う。
初めて、褒められたという涙に見える。

少年
『…僕が、悪いんです…。』


スタッフA
『…?!』


少年
『僕が打てなくて、試合に負けちゃって…。』



『お父さんの期待に…応えられなかった僕が、悪いんです…!!』




胸が張り裂けそうなくらい、心が痛む。

人さまの家庭とわかっていても、
怒りがこみ上げる。

どうして親は、
こんなことができるの?

あの父親は、
子どもにこんな我慢をさせてまで、
一体、何がほしいっていうの…?!




ーーーーー



今日は快晴。
グラウンドでは少年野球の試合が始まる。

1回表、
先攻のチームが満塁のチャンスを作る。
打席には4番バッターが立つ。

1球目、真ん中。
空振り。

チラッ

4番バッターは、観客席の最前列を見る。

父親
「よそ見するな!集中しろ!」


怒声が響く。
チームの主砲の背中が丸くなる。

2球目、甘いコース。
強振するも空振り。

チラッ

父親
「おい!打ちごろだぞ?!球をよく見ろ!」


怒声が響く。
チームの主砲は、怯えて目を伏せる。

3球目、明らかなボール球。
空振り、三振。

チラッ

父親
「ボール球に手を出すなよ…!」
「何やってんだ!?」


4番バッターはびくびくしながら、
ベンチへ戻っていく。


父親
「次のチャンスでは打てよ?!」
「オレが教えた通りにスイングしろ、いいな?!」


ベンチの屋根に隠れて、
観客席からは選手の様子が見えない。

だが観客席からの怒号は、
しっかりと選手たちに届いている…。

コーチ
『………。』



ーー


試合終了。
チームミーティングの後、
選手たちが解散していく。

グラウンドに残ったのは
チームのコーチと4番バッター。
そして、その父親。

父親
「今日の負けは、4番のお前の責任だ。」


うなだれる息子に、
父親は辛辣な言葉をぶつける。

父親
「打てなかった球は覚えてるな?」
「今からバッティングセンターで反省だ、行くぞ。」


父親は息子の手を引き、
立ち去ろうとする。

目に余る言動に、
コーチはついに我慢の限界を迎える。

コーチ
(お父さん、待ってください。)
(それはあまりにも…。)


コーチがそう言おうとした瞬間、

少年
『待ってください、コーチ!』


ずっと下を向いていた4番バッターが、
コーチを制止する。

少年
『お父さん、手を放して。』


そう言って、父親の手をふりほどく。



少年
『お父さん……!』
『もう…僕の試合に来ないで!!!』




父親
「…んな…?!」


父親は、驚きのあまり、固まる。

おとなしくて”従順な”息子が、
突然、自分へ歯向かったことに面食らう。


コーチ
(…よく言えた。勇気を出したね…!)


コーチは自分の言葉を飲み込み、
安堵の表情を浮かべる。



【第3話(最終話):敗者復活戦の代打】へ続く

2023年09月07日

【短編小説】『慰めの代打をさせないで』1

”あなたのためを思って”の指導は、

本当は誰のためなんでしょうか?




ーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第1話:熱血指導という支配】



カーン!

今日もバッティングセンターに快音が響く。

毎日、いろんな人が来る。
家族連れ、カップル、中高生の男子たち。

ストレス解消に勤しむ人。
球速130キロへ挑み続ける人。
黙々とバットを振り続ける人。

いつも通りの営業時間が過ぎていく。



バッティングセンターには、
ときに打球音より響く音がある。

それは、

父親
「何やってんだ!球をよく見ろ!」
「もっと下半身を使え!ポイントずらすな!」


父親らしき男性の
”教育的で建設的な”大声だ。

そして、その声の先にはたいてい、
打席で困惑する少年少女の姿がある。

中には、バッター以外は立ち入り禁止の
ケージ内へ入って叫ぶ父親もいる。

「野球少年を熱血指導する父親」

これも、バッティングセンターでは
”よくある光景”だ…。


ーー


スタッフA
『あの親子、またやってる…。』


スタッフB
『息子さん、かわいそう…辛くないのかな…。』


2人のスタッフの話し声。
その先には常連の親子がいる。

バッターボックスには、
ユニフォームを着た少年がいる。
小学校5〜6年生だろうか。

彼はどこかの少年野球チームで
4番を任されるほど上手いらしい。

『おめでとうございます!ホームランです!』

誰かがホームランゾーンへ打ち込む。
明るい場内アナウンスが流れる。

だが、

父親
「違う違う!上から叩け!」
「さっき教えただろ!なんでできないんだよ!」


歓喜のアナウンスをかき消すほどの怒声が響く。
常連の父親だ。

息子は打ち損じるたびに、
激昂する父親をチラチラ見ている…。



ーー


しばらくすると、その親子が屋外へ出ていく。
今日の練習は終わりかな?

スタッフA
『あの親子、また玄関にいたよ。』


スタッフB
『今日もかぁ…。』
『あのお父さんの説教、本当に長いよね…。』


これも恒例だが、
この親子は一通り打ち終わると玄関へ行く。

そこで父親の「ありがたい指導」が始まる…。

スタッフA
『今日はどんな話してた?』


スタッフB
『いつも通り。』
『フォームがどうとか、タイミングがどうとか。』


スタッフA
『うわぁ…(引)』
『たまには好きに打たせてあげたらいいのに。』


スタッフB
『だよね…野球が嫌いになったら意味ないよ…。』


スタッフA
『黙って耐えてる息子さん、どう思ってるんだろう。』


スタッフB
『代わってあげたいけど、口出しできないよね…。』


心配するスタッフをよそに、
親子が屋内へ戻ってくる。

そして今日も閉店間際まで、
父親の”教育的な快音”が響く。

いつも通り、満足げな父親と、
肩を落とした息子が退店していく…。




【第2話:お父さんの期待】へ続く

2023年08月26日

【短編小説】『片翼の人形が救われた日』4 -最終話-

【MMD】Novel Doll KatayokuSamuneSmall2.png

【第3話:後追いなんて、しないでよ】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<登場人物>

香坂 凜生葉(こうさか りいは)
 双子の姉、25歳
 意志が強く、自分で決めたことを曲げない
 過干渉な母と衝突し、遠方へ進学就職、実家と疎遠になる

香坂 優羽葉(こうさか ゆうは)
 双子の妹、(25歳)
 姉と正反対で、おとなしく、人との衝突が苦手
 過干渉な母に逆らえず、実家では人形のように支配される

西那 純世(にしな あやせ)
 23歳、凜生葉(りいは)の後輩社員
 大学でも先輩だった彼女に好意を寄せている
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第4話(最終話):ぜんぶ引きずって、生きてく】



僕、西那 純世には1つ年上の兄がいた。
兄は勉強もスポーツも優秀だった。

両親はいつも、そんな兄と、平凡な僕を比べた。
そして兄を溺愛し、僕を蔑んだ。

兄は両親が望む大学、望む会社へ入るため、
必死に”親の操り人形”を演じた。


それでも、兄は弟想いで、優しい人だった。

自分も辛いはずなのに、
いつも僕のことを気にかけてくれた。

けど、兄はついに壊れた。
大学受験の直前に、自ら命を…。

僕の心には、兄を救えなかった後悔が刻まれた。

何とか大学へ入っても、
暗い顔をした僕には誰も近寄らなかった。



凜生葉
「なーに暗い顔してんの?よかったら話して?」




凜生葉先輩は、そんな僕に唯一、声をかけてくれた。

兄を失ったことも、
兄に甘えて何もできなかったことも、
先輩はイヤな顔1つせずに聞いてくれた。

先輩のおかげで、僕は明るさを取り戻せた。
友達も増え、僕の人生に光が差し込んだ。

あのとき、凜生葉先輩は、
「双子の妹を失った直後」だった。


なのに辛い顔を見せず、
落ち込んだ後輩のことを気にかけてくれた。

僕はそのことを、
後から別の先輩に聞いて知った…。



ーーーーー



純世
『…あの頃は、先輩の方がずっと辛かったと思います。』
『なのに、そんな素振りを見せず、僕を元気づけてくれました。』


凜生葉
「あれは…ただの空元気だよ?」


純世
『それでも!僕は先輩が強く生きる姿に救われたんです!』
『そして思ったんです。”もう、守られてばかりはイヤだ”って。』
『出過ぎたマネでも、今度は僕が先輩を守りたいんです!』


凜生葉
「…私は、純世君が思ってるほど強くないよ…。」


純世(あやせ)
『…?』


凜生葉
「4年も経つのに、母への恨みに囚われて、前に進めてない。」
「妹を救えなかった事実から逃げるように、こっちへ来た。」
「いつまでも、過去にも自分にも向き合えない弱虫だよ。」


純世
『…大丈夫ですよ。まだ4年です。』
『前を向けないのも、恨みが消えないのも当然ですよ。』


凜生葉
「…まだ4年…?」


純世
『それに、いいじゃないですか?』
『いろいろ引きずったまま生きたって。』
『すべて精算しないと次へ進めない決まりなんて、ありませんよ?』


凜生葉
「引きずったまま、生きてもいいのかな…?」


純世
『いいんです。僕だって、未だに兄のことを引きずってます。』


凜生葉
「そうだよね。純世君の方が辛いよね…。」


純世
『何を背負っていても、生きていればいつか出逢えますよ。』
『先輩の荷物を、一緒に引きずってくれる人に。』


凜生葉
「…?!///(照)」


純世
『…そして、僕はずっと狙ってますからね!』
『先輩の荷物を”一緒に引きずっていく人”を///(照)』


凜生葉
「…もう!ここでそれ言うの?!///(照)恥ずかしいなぁ!」




「そんなの十分…伝わってるよ…?」



ーーーーー



<1年後、優羽葉の墓前>

凜生葉
「優羽葉、久しぶり。」


優羽葉
『お姉ちゃん、来てくれてありがと。』
『純世君、初めまして!妹の優羽葉です。』
『姉がお世話になっております!』


純世
『は、初めまして!』
『こちらこそ、凜生葉さんにはお世話になってます!』


凜生葉
「ホラ、これ、優羽葉の好きな限定スイーツ。」


優羽葉
『えー?いいの?!ていうか買えたの?!』


凜生葉
「うん。有休取って、朝から並んでね(笑)」


優羽葉
『あはは、ありがと!』


凜生葉
「あなたこそ1年前、よく3人分も買えたよね。」
「お土産に私と、純世君の分まで(汗)」


優羽葉
『そりゃあ、呼び出したのは私ですから!』


凜生葉
「半休まで使わせてさ(笑)」


優羽葉
『それはごめんなさい(汗)』


純世
『はは…(苦笑)いいですよ。』
『あのときは本当に、優羽葉さんに助けられました。』
『今こうしていられるのは、優羽葉さんのおかげです。』


優羽葉
『うまくいってよかった!』
『妹は、姉の幸せを願うのです!』


凜生葉
「…優羽葉…ありがと。」
「私、もう大丈夫だから、還りなよ。」


優羽葉
『うん。これでもう、心残りはないよ。』
『純世君、手のかかる姉だけど、これからもよろしくね?』


純世
『はい!優羽葉さんも、どうか、安らかに…。』


凜生葉
「手のかかる姉は余計…って、否定できないわ(苦笑)」


優羽葉
『でしょー?(笑)』


凜生葉
「まったく…(笑)」
「私、ぜんぶ引きずったまま、生きてくから。」
「お母さんのことも、優羽葉のことも。」


優羽葉
『…そっか、よかった。』
『じゃあ私、これからは”幸せなお姉ちゃんの中で”生き続けられるんだね。』


凜生葉
「そういうこと。やっと安心した?」


優羽葉
『うん!安心した!』




『…安心しすぎて、涙が出るくらい…ね…。』


ーー


<数時間後、優羽葉の墓前>

双子姉妹の母
『…あら…?お花と、お供え物が…。』
『先に誰か、お墓参りに来たの?』


周りを見渡しても、誰もいない。


『お供え物のお菓子、地元じゃ見かけない。』
『まさか、先に来てたのは…あの子…?』


5年前、我が子を”2人とも”失った傷が疼く。
それでも、私にできる償いは1つだけ。


『凜生葉…生きてるよね?どうか、幸せに…。』




優羽葉の分まで…ね…?



ーーーーーENDーーーーー




※本作は過去作品『人形の翼が折れた日』の続編です※

『人形の翼が折れた日』前編

『人形の翼が折れた日』後編

⇒この小説のPV

2023年08月25日

【短編小説】『片翼の人形が救われた日』3

【MMD】Novel Doll KatayokuSamuneSmall2.png

【第2話:翼がなくても、飛べる世界へ】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<登場人物>

香坂 凜生葉(こうさか りいは)
 双子の姉、25歳
 意志が強く、自分で決めたことを曲げない
 過干渉な母と衝突し、遠方へ進学就職、実家と疎遠になる

香坂 優羽葉(こうさか ゆうは)
 双子の妹、(25歳)
 姉と正反対で、おとなしく、人との衝突が苦手
 過干渉な母に逆らえず、実家では人形のように支配される

西那 純世(にしな あやせ)
 23歳、凜生葉(りいは)の後輩社員
 大学でも先輩だった彼女に好意を寄せている
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第3話:後追いなんて、しないでよ】



<翌朝、凜生葉の家>

凜生葉
「おはよー…って、早いね。もう出かけるの?」


優羽葉
『うん!数量限定のご当地スイーツ見つけたんだ!』
『開店前から並ぼうと思って。』


凜生葉
「あー、あのお店。確かにお昼には売り切れてるわ。」
「1回だけ食べたけど、すごく美味しかったよ。」


優羽葉
『やっぱり?!早く行かなきゃ!』
『お姉ちゃんも一緒に…って、平日は仕事だよね(汗)』


凜生葉
「うん、残念(泣)」


優羽葉
『そっかぁ…。』


凜生葉
「仕方ないよ。楽しんできて。」
「私、もうすぐ出勤するから。」


優羽葉
『うん!お土産買ってくるね!行ってきます!』


凜生葉
「ええ、いってらっしゃい。」


バタン。

優羽葉の後ろ姿が遠ざかっていく。
あの子が見えなくなったのを、窓から確認する。

そして私は、昨夜受け取っていた”荷物”を開封する。



 ー(昨日)ー

 純世
 『そういえば先輩、明日から1週間も有休取ってますよね。』
 『何か予定あるんですか?』


 ーーーー



そう。
もうすぐ出勤なんて、ウソだ。

有休を取ったのは、”片道切符の旅行”のため。
4年前の優羽葉と、同じ方法で。


私は開封した箱から、
錠剤が入ったビンを何本も取り出す。

そして机の引き出しから、
あらかじめ書いておいた手紙を取り出す。
あの子が帰ってきたら、見つけてくれるように。

凜生葉
「優羽葉…ごめんね…。」


私は上を向いて、口を大きく開ける。
握りしめたビンを逆さまにする。

白い錠剤が口の中へ、一気に流れ込んでくる。

あぁ、きっともうすぐ、意識が遠ざかって…。

………。

……。



凜生葉
「……?!ゲホッ!!」

「なにこれ…?!………甘い……?!!」




ギィィ。

ふいに、私の部屋のドアが開く音がする。

優羽葉
『…お姉ちゃん、おいしい?』
『ラムネ。』


凜生葉
「優羽葉?!出かけたんじゃ…?」


優羽葉
『お姉ちゃんの様子がおかしかったから、戻ってきちゃった。』


凜生葉
「もしかして、中身をすり替えたの…?」


優羽葉
『うん、勝手にごめんね。』


凜生葉
「どうやって?」


優羽葉
『お姉ちゃんの荷物と同じ包装で、ラムネを注文しておいたの。』
『それで昨夜、お姉ちゃんが寝た後で、すり替えたんだ。』


凜生葉
「…どうしてわかったの…?」


優羽葉
”虫の知らせ”だよ。双子だもん。』


凜生葉(りいは)
「…そう…。」


優羽葉
『…お姉ちゃん、私の”後追い”なんてしないでよ。』
『昨日言ったじゃん!お姉ちゃんには幸せに生きてほしいって。』


凜生葉
「私には…幸せになる資格なんて、ないよ…。」


優羽葉
『どうして?』


凜生葉
「私の時間は、4年前で止まったまま。」
「吹っ切れてもいない、前に進めてもいない。」
「優羽葉を追い詰めたお母さんを、恨んだまま…。」


優羽葉
『…お姉ちゃん…私はね…?』


凜生葉
「過去を背負って生きていく強さもなくて。」
「せっかく来てくれた妹にウソついて、人生から逃げようとして…。」
「私には、優羽葉の分も幸せになる資格も、勇気もないの!」


優羽葉
『…私、お母さんのお人形は辛かった。』
『けど、お姉ちゃんと一緒に過ごせて、とっても幸せだったよ?』


凜生葉
「…優羽葉が幸せ…?本当に…?」


優羽葉
『うん。今は前に進めなくてもいいよ。』
『けど、ひとりぼっちになろうとしないで?』
『お姉ちゃんは確かに、私を幸せにしたんだよ?』


凜生葉
「…うん…。」




優羽葉
『あーッ!信じてないなー?』


凜生葉
「そんなことは…。」


優羽葉
『もう、しょうがないなぁ。』
『どうしても幸せになってくれないなら、私にも考えがあります!』


凜生葉
「考えって、なにするの?」


優羽葉
『今から、お姉ちゃんに会ってほしい人がいます。』


凜生葉
「今から?」


優羽葉
『その人、もうすぐ着くよ!ラムネ食べながら待ってて!』


凜生葉
「どうやって呼んだの?!(汗)」


優羽葉
『さっきメッセージ送っといた。』


凜生葉
「いつの間に?なんで連絡先知って…。」
「ていうか、部屋散らかってるからまだ(汗)」


優羽葉
『じゃ、今度こそ出かけてくるね!』
『限定スイーツ、売り切れちゃうから!』
『あと、睡眠薬は処分したから、変な気は起こさぬように!』


凜生葉
「ちょ、ちょっと優羽葉…?!」


バタン。

あーあ、行っちゃった。
こんな平日に誰が来るっていうの…?


ーー


ピンポーン

凜生葉
「はーい、どなた?」


ガチャ

純世
『先輩!大丈夫ですか?!生きてますか?!』


凜生葉
「あ、純世君?!」


純世
『ダメですよ!早まらないでください!(泣)』


凜生葉
「も、もう大丈夫よ。仕事はどうしたの?!」


純世
『先輩がピンチって聞いて、半休もらってきました!』


凜生葉
「そっか…なんか、ごめんね。」
「貴重な半休、使わせちゃって(汗)」


純世
『そんなのどうでもいいです!』
『先輩!いなくならないでください!』
『先輩のおかげで…僕は人生に希望を持てたんですから!』




あぁ…そうだ。

彼もまた、”親の操り人形”に翻弄された1人だ。




【第4話(最終話):ぜんぶ引きずって、生きてく】へ続く

⇒この小説のPV

2023年08月24日

【短編小説】『片翼の人形が救われた日』2

【MMD】Novel Doll KatayokuSamuneSmall2.png

【第1話:妹は、姉の幸せを願うのです】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<登場人物>

香坂 凜生葉(こうさか りいは)
 双子の姉、25歳
 意志が強く、自分で決めたことを曲げない
 過干渉な母と衝突し、遠方へ進学就職、実家と疎遠になる

香坂 優羽葉(こうさか ゆうは)
 双子の妹、(25歳)
 姉と正反対で、おとなしく、人との衝突が苦手
 過干渉な母に逆らえず、実家では人形のように支配される

西那 純世(にしな あやせ)
 23歳、凜生葉(りいは)の後輩社員
 大学でも先輩だった彼女に好意を寄せている
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第2話:翼がなくても、飛べる世界へ】



<翌朝、凜生葉の家>

凜生葉
「仕事行ってくるね。」


優羽葉
『いってらっしゃい。』


凜生葉
「優羽葉はどうするの?」


優羽葉
『んー、せっかく来たから観光する。』


凜生葉
「そう。じゃ、これ合鍵。」


優羽葉
『ありがと。』


凜生葉
「楽しんできて。」


優羽葉
『うん、お姉ちゃん、無理しないでね!』



ーー


<凜生葉の職場>

純世
『先輩、資料できました!チェックお願いします。』


凜生葉
「ありがと、純世君。チェックしとくね。」


純世
『はい!先輩、何かいいことあったんですか?』


凜生葉
「んー、あったかな。どうして?」


純世
『表情です。ここ最近、ずっと辛そうに見えましたから。』


凜生葉
「そんなに顔に出てた?」


純世
『…はい。』


凜生葉
「ほんと、よく見てるね。」


純世
『尊敬する先輩のことですから。』
『…妹さんのこと、少し、吹っ切れたんですか?』


凜生葉
「…かもね。もう4年も経ったし。」


純世
『…早いですね。時の流れって。』


凜生葉
「うん、早い…。」


純世
『ところで…その…///(照)考えてくれましたか?』
『一緒にお食事に、っていう話。』


凜生葉
「あ…(汗)」


純世
『忘れてたんですか?』


凜生葉
「ごめん(泣)」


純世
『大丈夫ですよ。無理もないです。』
『迷惑じゃなければ、元気になってから考えてくれると嬉しいです。』


凜生葉
「全然、迷惑じゃないよ!」
「ただ…私は、純世君が思ってるような人間じゃないよ?」


純世
『そんなことないですよ!ウソじゃないです。』
『大学のとき、先輩に助けてもらってから、僕はずっと本気ですから!』


凜生葉
「…ありがと。休み明けに、改めて返事するね。」


純世
『そういえば先輩、明日から1週間も有休取ってますよね。』
『何か予定あるんですか?』


凜生葉
「特にないよ。リフレッシュ。」


純世
『…そうですか。』
『辛いことがあったら聞くので、相談してくださいね!』


彼はそう言って、ぱたぱたと次の仕事へ向かう。

私は、純世君の貴重な時間を使うほど、
できた人間じゃないよ…。



ーーーーー



<その日の夜>

凜生葉
「今日も疲れたー。」
「帰って優羽葉の観光話でも聞いて…。」
「そうだ、荷物…再配達じゃなくて配送センター預りにしてた。」


私は配送センターへ寄り、
Web注文した荷物を受け取ってから、帰路につく。


ーー


<凜生葉の家>

優羽葉
『お姉ちゃん、おかえり!お仕事おつかれさま!』


凜生葉
「ただいま。」


優羽葉
『ご飯できてるよ!一緒に食べよ!』


凜生葉
「ありがと、助かるわ。」


優羽葉
『先にお風呂にする?それとも…。』


凜生葉
「お嫁さんみたいね(笑)」


優羽葉
『1度やってみたかったの///(照)』


凜生葉
「ご飯食べよっか。観光の話、聞かせてよ。」


優羽葉
『うん!』


たわいない、姉妹の会話。
なにげない、日常という貴重。

”生きていれば”こそ、訪れる幸せ。



優羽葉
『それで、純世君との件、保留しちゃったの?』


凜生葉
「うん。」


優羽葉
『えーどうしてー?』
『お姉ちゃんの中では”かわいい後輩”以上なんでしょ?』


凜生葉
「…そうね。」


優羽葉
『…お姉ちゃん、1人で背負い込まなくていいんだよ?』


凜生葉
「え?」


優羽葉
『私のことも、お母さんのことも。』


凜生葉
「……うん。」


優羽葉
『昨日、言ったじゃん?』
『”妹は、姉の幸せを願うのです”って。』


凜生葉
「…私は、優羽葉を守れなかったんだよ?」
「なのに、このまま私だけ幸せになるなんて…。」


優羽葉
『ホラ、やっぱり1人で背負い込んでる。』
『私はそんなこと望んでないからね!』


凜生葉
「…え…?!」


優羽葉
『私を思ってくれるのは嬉しいけどさ。』
『私はただ、大切なお姉ちゃんに、幸せに生きてほしいの。』




『…”生きて”いって、ほしいんだ。』



…優羽葉…あなたは本当に優しいね。

なのに、ごめんね。
私はこれから、あなたの優しさを裏切ってしまう。

私、押しつぶされそうなの。
お母さんへの恨みや、優羽葉を守れなかった後悔に。


だから私、どうしても行きたいの。
あなたのいる「翼がなくても飛べる世界」へ…。



【第3話:後追いなんて、しないでよ】へ続く

⇒この小説のPV

2023年08月23日

【短編小説】『片翼の人形が救われた日』1

【MMD】Novel Doll KatayokuSamuneSmall2.png

※本作は過去作品『人形の翼が折れた日』の続編です※

『人形の翼が折れた日』前編

『人形の翼が折れた日』後編
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<登場人物>

香坂 凜生葉(こうさか りいは)
 双子の姉、25歳
 意志が強く、自分で決めたことを曲げない
 過干渉な母と衝突し、遠方へ進学就職、実家と疎遠になる

香坂 優羽葉(こうさか ゆうは)
 双子の妹、(25歳)
 姉と正反対で、おとなしく、人との衝突が苦手
 過干渉な母に逆らえず、実家では人形のように支配される

西那 純世(にしな あやせ)
 23歳、凜生葉(りいは)の後輩社員
 大学でも先輩だった彼女に好意を寄せている
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第1話:妹は、姉の幸せを願うのです】



<とある街・オフィス前>

凜生葉
「仕事終わったー。」
「あ、そうだ。今日はWeb注文した荷物が届くんだ。」
「不在で再配達になるのもアレだし、早く帰ろ!」


ピコン

私のスマホに、1通のメッセージ。

凜生葉
「誰から…?って、優羽葉?!」
「『来たよ、いま○○駅!』って…いきなり?!」


私は慌てて、通話に切り替える。

優羽葉
『お姉ちゃん久しぶり!』
『突然でごめんね、会いに来たよ!』


凜生葉
「優羽葉…?!ほんとに来てるの?!」
「まだ○○駅にいる?待ってて!迎えに行く!」


私はオフィス街から、急ぎ○○駅へ向かう。


ーー


<○○駅>

優羽葉
『お姉ちゃん!』


凜生葉
「優羽葉!」


4年ぶりの、双子姉妹の再会。

凜生葉
「久しぶりだね、私が大学生のとき以来?」


優羽葉
『そうだよ、お姉ちゃんが1回だけ帰省したとき以来!』


凜生葉
「びっくりしたけど、こんな遠くまでよく来たね。旅行?」


優羽葉
『んー…そんなとこ。』


凜生葉
「ワケアリね。泊まるところは?」


優羽葉
『決めてない。着いたら何とかなると思って!』


凜生葉
「何してんの(苦笑)」


優羽葉
『えへへ///(照)』


凜生葉
「優羽葉、知らない間に行動力ついたね(笑)」


優羽葉
『まぁね!成長したでしょ?!(ドヤ!)』


凜生葉
「成長したわ(笑)」
「いいよ、私の家に来なよ。」


優羽葉
『いいの?彼氏さんに悪いよ。』


凜生葉
「彼氏いないから(苦笑)」


優羽葉
『いないの?!お姉ちゃん美人だし、モテるでしょ?!』


凜生葉
「あんたねー…私の高校時代、知ってるでしょ?!」


優羽葉
『あー察し。お姉ちゃん、高嶺の花(笑)すぎて。』


凜生葉
「何?今夜は野宿したいって?」


優羽葉
『ごめんなさい(汗)』


凜生葉
「とにかく、彼氏なんていないから大丈夫よ。」


優羽葉
『ありがと!』



ーー


<凜生葉の家>

凜生葉
「あ…不在伝票入ってる。忘れてた。」


優羽葉
『荷物、届く予定だったの?』


凜生葉
「ちょっとね。」


優羽葉
『ごめんね、私を迎えに行ったから遅くなったでしょ?』


凜生葉
「いいのいいの。再配達してもらうから。」
「それより、ご飯食べた?」


優羽葉
『まだ。』


凜生葉
「じゃ今から作るね。」
「長旅で疲れたでしょ?適当にくつろいで。」


優羽葉
『ありがと。大丈夫だから手伝わせて。』


凜生葉
「そう?無理しないでよ?」


優羽葉
『してないよ。久しぶりにお姉ちゃんと一緒に料理作りたい。』


凜生葉
「そっか。じゃ手伝って。」


トン、トン、トン。
コト、コト、コト。

包丁の音。鍋の音。
双子姉妹の、楽しそうな料理の音。


いつぶりだろう。
私の部屋に、こんな音が響くのは。


ーー


凜生葉
「で?突然どうしたの?」


優羽葉
『お姉ちゃんに会いたくて来ちゃった。』


凜生葉
「それは嬉しいけど、あとは?」


優羽葉
『あとはねー、”虫の知らせ”かな?』


凜生葉
「何よ、虫の知らせって。」


優羽葉
『お姉ちゃん、また無理してないかなーって。』


凜生葉
「してないよ、私はノー残業を貫く非・企業戦士よ。」


優羽葉
『よかったー。』
『お姉ちゃん、やるって決めたら突っ走るからさ。』


凜生葉
「私にだってブレーキぐらいあるわ(苦笑)」
「優羽葉は心配しすぎなんだから。」


優羽葉
『そりゃ心配するよ。こんなに遠いし。』
『大切なお姉ちゃんだもん。』


凜生葉
「(クスッ)…ありがと。」
「それで、わざわざ様子を見に来てくれたの?」


優羽葉
『うん。旅行ついでに。』


凜生葉
「ついでか(笑)」


優羽葉
『近くでお姉ちゃんを守ってくれる人がいればなー。』
『お姉ちゃん、ほんとに彼氏いないの?』


凜生葉
「いないよ。」


優羽葉
『ちょっと気になってる人、いるんでしょ?』


凜生葉
「気になるってほどじゃないけど…///(照)」


優羽葉
『大学の後輩?の
西那 純世(にしな あやせ)君は?』
『会社でも後輩になったんだよね?』


凜生葉
「あー、まぁね。」
「親しいっちゃ親しいけど…かわいい後輩、かな。」


優羽葉
『そうなの?』
『お姉ちゃん、いつも嬉しそうに彼のこと話してたよ?』


凜生葉
「今日はやけにグイグイくるね(汗)」


優羽葉
『妹は、姉の幸せを願うのです!』


凜生葉
「おもしろがってない?(苦笑)」


優羽葉
『気のせい(笑)』


凜生葉
「このぉ!(笑))」
「あ…ホラ、鍋!吹きこぼれるよ!」


優羽葉
『いけない!』


凜生葉
「動揺してるじゃないの。図星か(笑)」


優羽葉
『へへ…///(照)』


優羽葉は、本当に明るくなった。
お母さんの”人形”にされていた頃よりも、ずっと。


この幸せが、いつまでも続けばいいな。

…いつまでも。



【第2話:翼がなくても、飛べる世界へ】へ続く

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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