2023年08月24日
【短編小説】『片翼の人形が救われた日』2
⇒【第1話:妹は、姉の幸せを願うのです】からの続き
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<登場人物>
・香坂 凜生葉(こうさか りいは)
双子の姉、25歳
意志が強く、自分で決めたことを曲げない
過干渉な母と衝突し、遠方へ進学就職、実家と疎遠になる
・香坂 優羽葉(こうさか ゆうは)
双子の妹、(25歳)
姉と正反対で、おとなしく、人との衝突が苦手
過干渉な母に逆らえず、実家では人形のように支配される
・西那 純世(にしな あやせ)
23歳、凜生葉(りいは)の後輩社員
大学でも先輩だった彼女に好意を寄せている
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【第2話:翼がなくても、飛べる世界へ】
<翌朝、凜生葉の家>
凜生葉
「仕事行ってくるね。」
優羽葉
『いってらっしゃい。』
凜生葉
「優羽葉はどうするの?」
優羽葉
『んー、せっかく来たから観光する。』
凜生葉
「そう。じゃ、これ合鍵。」
優羽葉
『ありがと。』
凜生葉
「楽しんできて。」
優羽葉
『うん、お姉ちゃん、無理しないでね!』
ーー
<凜生葉の職場>
純世
『先輩、資料できました!チェックお願いします。』
凜生葉
「ありがと、純世君。チェックしとくね。」
純世
『はい!先輩、何かいいことあったんですか?』
凜生葉
「んー、あったかな。どうして?」
純世
『表情です。ここ最近、ずっと辛そうに見えましたから。』
凜生葉
「そんなに顔に出てた?」
純世
『…はい。』
凜生葉
「ほんと、よく見てるね。」
純世
『尊敬する先輩のことですから。』
『…妹さんのこと、少し、吹っ切れたんですか?』
凜生葉
「…かもね。もう4年も経ったし。」
純世
『…早いですね。時の流れって。』
凜生葉
「うん、早い…。」
純世
『ところで…その…///(照)考えてくれましたか?』
『一緒にお食事に、っていう話。』
凜生葉
「あ…(汗)」
純世
『忘れてたんですか?』
凜生葉
「ごめん(泣)」
純世
『大丈夫ですよ。無理もないです。』
『迷惑じゃなければ、元気になってから考えてくれると嬉しいです。』
凜生葉
「全然、迷惑じゃないよ!」
「ただ…私は、純世君が思ってるような人間じゃないよ?」
純世
『そんなことないですよ!ウソじゃないです。』
『大学のとき、先輩に助けてもらってから、僕はずっと本気ですから!』
凜生葉
「…ありがと。休み明けに、改めて返事するね。」
純世
『そういえば先輩、明日から1週間も有休取ってますよね。』
『何か予定あるんですか?』
凜生葉
「特にないよ。リフレッシュ。」
純世
『…そうですか。』
『辛いことがあったら聞くので、相談してくださいね!』
彼はそう言って、ぱたぱたと次の仕事へ向かう。
私は、純世君の貴重な時間を使うほど、
できた人間じゃないよ…。
ーーーーー
<その日の夜>
凜生葉
「今日も疲れたー。」
「帰って優羽葉の観光話でも聞いて…。」
「そうだ、荷物…再配達じゃなくて配送センター預りにしてた。」
私は配送センターへ寄り、
Web注文した荷物を受け取ってから、帰路につく。
ーー
<凜生葉の家>
優羽葉
『お姉ちゃん、おかえり!お仕事おつかれさま!』
凜生葉
「ただいま。」
優羽葉
『ご飯できてるよ!一緒に食べよ!』
凜生葉
「ありがと、助かるわ。」
優羽葉
『先にお風呂にする?それとも…。』
凜生葉
「お嫁さんみたいね(笑)」
優羽葉
『1度やってみたかったの///(照)』
凜生葉
「ご飯食べよっか。観光の話、聞かせてよ。」
優羽葉
『うん!』
たわいない、姉妹の会話。
なにげない、日常という貴重。
”生きていれば”こそ、訪れる幸せ。
優羽葉
『それで、純世君との件、保留しちゃったの?』
凜生葉
「うん。」
優羽葉
『えーどうしてー?』
『お姉ちゃんの中では”かわいい後輩”以上なんでしょ?』
凜生葉
「…そうね。」
優羽葉
『…お姉ちゃん、1人で背負い込まなくていいんだよ?』
凜生葉
「え?」
優羽葉
『私のことも、お母さんのことも。』
凜生葉
「……うん。」
優羽葉
『昨日、言ったじゃん?』
『”妹は、姉の幸せを願うのです”って。』
凜生葉
「…私は、優羽葉を守れなかったんだよ?」
「なのに、このまま私だけ幸せになるなんて…。」
優羽葉
『ホラ、やっぱり1人で背負い込んでる。』
『私はそんなこと望んでないからね!』
凜生葉
「…え…?!」
優羽葉
『私を思ってくれるのは嬉しいけどさ。』
『私はただ、大切なお姉ちゃんに、幸せに生きてほしいの。』
『…”生きて”いって、ほしいんだ。』
…優羽葉…あなたは本当に優しいね。
なのに、ごめんね。
私はこれから、あなたの優しさを裏切ってしまう。
私、押しつぶされそうなの。
お母さんへの恨みや、優羽葉を守れなかった後悔に。
だから私、どうしても行きたいの。
あなたのいる「翼がなくても飛べる世界」へ…。
⇒【第3話:後追いなんて、しないでよ】へ続く
⇒この小説のPV
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