2023年08月23日
【短編小説】『片翼の人形が救われた日』1
※本作は過去作品『人形の翼が折れた日』の続編です※
⇒『人形の翼が折れた日』前編
⇒『人形の翼が折れた日』後編
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<登場人物>
・香坂 凜生葉(こうさか りいは)
双子の姉、25歳
意志が強く、自分で決めたことを曲げない
過干渉な母と衝突し、遠方へ進学就職、実家と疎遠になる
・香坂 優羽葉(こうさか ゆうは)
双子の妹、(25歳)
姉と正反対で、おとなしく、人との衝突が苦手
過干渉な母に逆らえず、実家では人形のように支配される
・西那 純世(にしな あやせ)
23歳、凜生葉(りいは)の後輩社員
大学でも先輩だった彼女に好意を寄せている
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【第1話:妹は、姉の幸せを願うのです】
<とある街・オフィス前>
凜生葉
「仕事終わったー。」
「あ、そうだ。今日はWeb注文した荷物が届くんだ。」
「不在で再配達になるのもアレだし、早く帰ろ!」
ピコン
私のスマホに、1通のメッセージ。
凜生葉
「誰から…?って、優羽葉?!」
「『来たよ、いま○○駅!』って…いきなり?!」
私は慌てて、通話に切り替える。
優羽葉
『お姉ちゃん久しぶり!』
『突然でごめんね、会いに来たよ!』
凜生葉
「優羽葉…?!ほんとに来てるの?!」
「まだ○○駅にいる?待ってて!迎えに行く!」
私はオフィス街から、急ぎ○○駅へ向かう。
ーー
<○○駅>
優羽葉
『お姉ちゃん!』
凜生葉
「優羽葉!」
4年ぶりの、双子姉妹の再会。
凜生葉
「久しぶりだね、私が大学生のとき以来?」
優羽葉
『そうだよ、お姉ちゃんが1回だけ帰省したとき以来!』
凜生葉
「びっくりしたけど、こんな遠くまでよく来たね。旅行?」
優羽葉
『んー…そんなとこ。』
凜生葉
「ワケアリね。泊まるところは?」
優羽葉
『決めてない。着いたら何とかなると思って!』
凜生葉
「何してんの(苦笑)」
優羽葉
『えへへ///(照)』
凜生葉
「優羽葉、知らない間に行動力ついたね(笑)」
優羽葉
『まぁね!成長したでしょ?!(ドヤ!)』
凜生葉
「成長したわ(笑)」
「いいよ、私の家に来なよ。」
優羽葉
『いいの?彼氏さんに悪いよ。』
凜生葉
「彼氏いないから(苦笑)」
優羽葉
『いないの?!お姉ちゃん美人だし、モテるでしょ?!』
凜生葉
「あんたねー…私の高校時代、知ってるでしょ?!」
優羽葉
『あー察し。お姉ちゃん、高嶺の花(笑)すぎて。』
凜生葉
「何?今夜は野宿したいって?」
優羽葉
『ごめんなさい(汗)』
凜生葉
「とにかく、彼氏なんていないから大丈夫よ。」
優羽葉
『ありがと!』
ーー
<凜生葉の家>
凜生葉
「あ…不在伝票入ってる。忘れてた。」
優羽葉
『荷物、届く予定だったの?』
凜生葉
「ちょっとね。」
優羽葉
『ごめんね、私を迎えに行ったから遅くなったでしょ?』
凜生葉
「いいのいいの。再配達してもらうから。」
「それより、ご飯食べた?」
優羽葉
『まだ。』
凜生葉
「じゃ今から作るね。」
「長旅で疲れたでしょ?適当にくつろいで。」
優羽葉
『ありがと。大丈夫だから手伝わせて。』
凜生葉
「そう?無理しないでよ?」
優羽葉
『してないよ。久しぶりにお姉ちゃんと一緒に料理作りたい。』
凜生葉
「そっか。じゃ手伝って。」
トン、トン、トン。
コト、コト、コト。
包丁の音。鍋の音。
双子姉妹の、楽しそうな料理の音。
いつぶりだろう。
私の部屋に、こんな音が響くのは。
ーー
凜生葉
「で?突然どうしたの?」
優羽葉
『お姉ちゃんに会いたくて来ちゃった。』
凜生葉
「それは嬉しいけど、あとは?」
優羽葉
『あとはねー、”虫の知らせ”かな?』
凜生葉
「何よ、虫の知らせって。」
優羽葉
『お姉ちゃん、また無理してないかなーって。』
凜生葉
「してないよ、私はノー残業を貫く非・企業戦士よ。」
優羽葉
『よかったー。』
『お姉ちゃん、やるって決めたら突っ走るからさ。』
凜生葉
「私にだってブレーキぐらいあるわ(苦笑)」
「優羽葉は心配しすぎなんだから。」
優羽葉
『そりゃ心配するよ。こんなに遠いし。』
『大切なお姉ちゃんだもん。』
凜生葉
「(クスッ)…ありがと。」
「それで、わざわざ様子を見に来てくれたの?」
優羽葉
『うん。旅行ついでに。』
凜生葉
「ついでか(笑)」
優羽葉
『近くでお姉ちゃんを守ってくれる人がいればなー。』
『お姉ちゃん、ほんとに彼氏いないの?』
凜生葉
「いないよ。」
優羽葉
『ちょっと気になってる人、いるんでしょ?』
凜生葉
「気になるってほどじゃないけど…///(照)」
優羽葉
『大学の後輩?の西那 純世(にしな あやせ)君は?』
『会社でも後輩になったんだよね?』
凜生葉
「あー、まぁね。」
「親しいっちゃ親しいけど…かわいい後輩、かな。」
優羽葉
『そうなの?』
『お姉ちゃん、いつも嬉しそうに彼のこと話してたよ?』
凜生葉
「今日はやけにグイグイくるね(汗)」
優羽葉
『妹は、姉の幸せを願うのです!』
凜生葉
「おもしろがってない?(苦笑)」
優羽葉
『気のせい(笑)』
凜生葉
「このぉ!(笑))」
「あ…ホラ、鍋!吹きこぼれるよ!」
優羽葉
『いけない!』
凜生葉
「動揺してるじゃないの。図星か(笑)」
優羽葉
『へへ…///(照)』
優羽葉は、本当に明るくなった。
お母さんの”人形”にされていた頃よりも、ずっと。
この幸せが、いつまでも続けばいいな。
…いつまでも。
⇒【第2話:翼がなくても、飛べる世界へ】へ続く
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