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2023年08月25日

【短編小説】『片翼の人形が救われた日』3

【MMD】Novel Doll KatayokuSamuneSmall2.png

【第2話:翼がなくても、飛べる世界へ】からの続き

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<登場人物>

香坂 凜生葉(こうさか りいは)
 双子の姉、25歳
 意志が強く、自分で決めたことを曲げない
 過干渉な母と衝突し、遠方へ進学就職、実家と疎遠になる

香坂 優羽葉(こうさか ゆうは)
 双子の妹、(25歳)
 姉と正反対で、おとなしく、人との衝突が苦手
 過干渉な母に逆らえず、実家では人形のように支配される

西那 純世(にしな あやせ)
 23歳、凜生葉(りいは)の後輩社員
 大学でも先輩だった彼女に好意を寄せている
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第3話:後追いなんて、しないでよ】



<翌朝、凜生葉の家>

凜生葉
「おはよー…って、早いね。もう出かけるの?」


優羽葉
『うん!数量限定のご当地スイーツ見つけたんだ!』
『開店前から並ぼうと思って。』


凜生葉
「あー、あのお店。確かにお昼には売り切れてるわ。」
「1回だけ食べたけど、すごく美味しかったよ。」


優羽葉
『やっぱり?!早く行かなきゃ!』
『お姉ちゃんも一緒に…って、平日は仕事だよね(汗)』


凜生葉
「うん、残念(泣)」


優羽葉
『そっかぁ…。』


凜生葉
「仕方ないよ。楽しんできて。」
「私、もうすぐ出勤するから。」


優羽葉
『うん!お土産買ってくるね!行ってきます!』


凜生葉
「ええ、いってらっしゃい。」


バタン。

優羽葉の後ろ姿が遠ざかっていく。
あの子が見えなくなったのを、窓から確認する。

そして私は、昨夜受け取っていた”荷物”を開封する。



 ー(昨日)ー

 純世
 『そういえば先輩、明日から1週間も有休取ってますよね。』
 『何か予定あるんですか?』


 ーーーー



そう。
もうすぐ出勤なんて、ウソだ。

有休を取ったのは、”片道切符の旅行”のため。
4年前の優羽葉と、同じ方法で。


私は開封した箱から、
錠剤が入ったビンを何本も取り出す。

そして机の引き出しから、
あらかじめ書いておいた手紙を取り出す。
あの子が帰ってきたら、見つけてくれるように。

凜生葉
「優羽葉…ごめんね…。」


私は上を向いて、口を大きく開ける。
握りしめたビンを逆さまにする。

白い錠剤が口の中へ、一気に流れ込んでくる。

あぁ、きっともうすぐ、意識が遠ざかって…。

………。

……。



凜生葉
「……?!ゲホッ!!」

「なにこれ…?!………甘い……?!!」




ギィィ。

ふいに、私の部屋のドアが開く音がする。

優羽葉
『…お姉ちゃん、おいしい?』
『ラムネ。』


凜生葉
「優羽葉?!出かけたんじゃ…?」


優羽葉
『お姉ちゃんの様子がおかしかったから、戻ってきちゃった。』


凜生葉
「もしかして、中身をすり替えたの…?」


優羽葉
『うん、勝手にごめんね。』


凜生葉
「どうやって?」


優羽葉
『お姉ちゃんの荷物と同じ包装で、ラムネを注文しておいたの。』
『それで昨夜、お姉ちゃんが寝た後で、すり替えたんだ。』


凜生葉
「…どうしてわかったの…?」


優羽葉
”虫の知らせ”だよ。双子だもん。』


凜生葉(りいは)
「…そう…。」


優羽葉
『…お姉ちゃん、私の”後追い”なんてしないでよ。』
『昨日言ったじゃん!お姉ちゃんには幸せに生きてほしいって。』


凜生葉
「私には…幸せになる資格なんて、ないよ…。」


優羽葉
『どうして?』


凜生葉
「私の時間は、4年前で止まったまま。」
「吹っ切れてもいない、前に進めてもいない。」
「優羽葉を追い詰めたお母さんを、恨んだまま…。」


優羽葉
『…お姉ちゃん…私はね…?』


凜生葉
「過去を背負って生きていく強さもなくて。」
「せっかく来てくれた妹にウソついて、人生から逃げようとして…。」
「私には、優羽葉の分も幸せになる資格も、勇気もないの!」


優羽葉
『…私、お母さんのお人形は辛かった。』
『けど、お姉ちゃんと一緒に過ごせて、とっても幸せだったよ?』


凜生葉
「…優羽葉が幸せ…?本当に…?」


優羽葉
『うん。今は前に進めなくてもいいよ。』
『けど、ひとりぼっちになろうとしないで?』
『お姉ちゃんは確かに、私を幸せにしたんだよ?』


凜生葉
「…うん…。」




優羽葉
『あーッ!信じてないなー?』


凜生葉
「そんなことは…。」


優羽葉
『もう、しょうがないなぁ。』
『どうしても幸せになってくれないなら、私にも考えがあります!』


凜生葉
「考えって、なにするの?」


優羽葉
『今から、お姉ちゃんに会ってほしい人がいます。』


凜生葉
「今から?」


優羽葉
『その人、もうすぐ着くよ!ラムネ食べながら待ってて!』


凜生葉
「どうやって呼んだの?!(汗)」


優羽葉
『さっきメッセージ送っといた。』


凜生葉
「いつの間に?なんで連絡先知って…。」
「ていうか、部屋散らかってるからまだ(汗)」


優羽葉
『じゃ、今度こそ出かけてくるね!』
『限定スイーツ、売り切れちゃうから!』
『あと、睡眠薬は処分したから、変な気は起こさぬように!』


凜生葉
「ちょ、ちょっと優羽葉…?!」


バタン。

あーあ、行っちゃった。
こんな平日に誰が来るっていうの…?


ーー


ピンポーン

凜生葉
「はーい、どなた?」


ガチャ

純世
『先輩!大丈夫ですか?!生きてますか?!』


凜生葉
「あ、純世君?!」


純世
『ダメですよ!早まらないでください!(泣)』


凜生葉
「も、もう大丈夫よ。仕事はどうしたの?!」


純世
『先輩がピンチって聞いて、半休もらってきました!』


凜生葉
「そっか…なんか、ごめんね。」
「貴重な半休、使わせちゃって(汗)」


純世
『そんなのどうでもいいです!』
『先輩!いなくならないでください!』
『先輩のおかげで…僕は人生に希望を持てたんですから!』




あぁ…そうだ。

彼もまた、”親の操り人形”に翻弄された1人だ。




【第4話(最終話):ぜんぶ引きずって、生きてく】へ続く

⇒この小説のPV

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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