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2023年09月12日

【短編小説】『お金は神よりも神』1

・本作の舞台
 紀元前700年頃
 アナトリア地方『ナディア王国』


・同国の通貨単位
 エレクト
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第1話:貨幣は、国の商品】



ナディア国の王は、戦の天才でした。

当時、小国が乱立し、
争っていたアナトリア地方を
あっという間に統一して見せました。

国内が安定してきた頃、
国王は”ある商売”に力を入れ始めました。

絶対的な権力と資金力があれば、
「確実に儲かる商売」です。

うさんくさい?詐欺?とんでもない。

その商売とは、
今や世界に必要不可欠な「お金」の売買でした。


ーー


<王宮>

国王
「大臣よ。」


大臣
『はい。』


国王
「この10エレクトコイン、1枚いくらで作っている?」


大臣
『1枚3エレクトで作っています。』


国王
「ということは、国へ入る利益は7エレクトか。」


大臣
『はい。』


国王
「もっと儲からないか?」
「国内が安定し、私の権力も盤石になった。」
「そろそろ隣国を我がものにしたい。」
「戦争を仕掛けたいが、軍資金が足りぬ。」


大臣
『そうですね…。』
『安価に作れる新しいコインを出してはいかがでしょう?』


国王
「ほう、新しいコイン。」


大臣
『今、我が国には1、5、10、50エレクトコインが流通しています。』
『新たに100エレクトコインを作り、国民に使わせるのです。』


国王
「それは良いアイディアだ。」
「では安価に作れるコインのデザインを考えるとしよう。」




国王
「100エレクトコインのデザイン、これでいきたい。」
「1枚いくらで作れる?」


大臣
『このデザインなら、1枚5エレクトで作れます。』


国王
「1枚あたり95エレクトも儲かるではないか!」
「よし、さっそく作らせて国民へ配れ。」


大臣
『御意。』



ーー


<城下町>

役人
『国民の皆さん!』
『国王さまからの贈りものです!』


王宮のお触れに、周囲がざわつきました。

役人
『国王さまは国民の生活を第一に考えるお方です。』
『そこで、ご自身が身銭を切る決断をされました!』


別の役人たちが、
大量のコインが入った箱を持ってきました。

役人
『これが新しい100エレクトコインです。』
『皆さんへお配りします!』
『どうか豊かな生活を送ってください!』


国民は歓喜しました。

国民へ100エレクトも配るなんて、
国王さまはとても慈悲深いお方ですね…。



大臣
『国王さま、国民は大喜びです。』
『商売繫盛ですな。』


国王
「ああ、せいぜい気づかずに過ごすがいい。」
「100エレクトコイン、もっと大量に作れ。」
「もっと国民の生活を潤してやるのだ。」


大臣
『御意。』


国王
「ふっふっふっ…。」
「金を作れば作るほど儲かる。」
「国民からの支持も厚くなる。」

「金を流通させることより儲かる商売が他にあるか?」


大臣
『これなら、すぐに戦争の資金が貯まりますな。』




ーーーーー



<1年後、王宮>

国王
「大臣よ。」
「戦争の資金調達は上手くいっているか?」


大臣
『順調です。』
『あと1年ほどで目標金額に達するでしょう。』


国王
「あと1年か。」
「最近、隣国の政情が不安定だ。」
「今こそ戦争を仕掛ける好機なのだが。」


大臣
『まだ少し足りません。』
『兵力はこちらが上ですが、隣国は資源に恵まれています。』
『長期戦になれば、こちらの物質が先に尽きる恐れがあります。』


国王
「それはわかっているが…。」
「もっと早く儲けられないか?」
「このチャンスを逃したくないのだ。」


大臣
『そうですね…。』
『コインの製造費を下げてはいかがでしょう?』


国王
「どうやって下げるのだ?」


大臣
『今、エレクトコインの配合は銀100%です。』
『これに安価な金属を混ぜ、銀50%へ下げるのです。』


国王
「名案だが、国民は気づくのではないか?」


大臣
『気づくでしょう。』


国王
「だろう?どうするのだ。」


大臣
『コインの価値を決められるのは国王さまだけです。』


国王
「そうか!多少、質が落ちるコインだろうと…。」
「私が100エレクトと言えば、国民は従うしかないではないか。」


大臣
『その通りです。』


国王
「銀50%にしたら、1枚いくらで作れるのだ?」


大臣
『1枚1エレクトで作れます。』


国王
「99エレクトも儲かるではないか!」
「よし、さっそく作らせて国民へ配れ。」




ーーーーー



<城下町>

町人A
『この100エレクトコイン、何か違うな。』
『こっちのコインより、色がくすんでる。』


町人B
『噂では、他の金属を混ぜてるらしい。』


町人A
『確か、前は純銀製だったよな。』


町人B
『ああ、だが価値は同じ100エレクト。』
『パンも塩も買い放題だ。』


町人A
『だよな。』

(とはいえ、きっと銀100%の方が価値が高いよな)
(買い物では質の落ちるコインを出そう)



ーー


<城下町のパン屋>

パン職人A
『今日の売上は…うん。商売繫盛。』
『けど最近、お客が出すのは質の悪いコインばかりね。』


パン職人B
『噂ではコインに混ぜものをしてるらしいよ。』


パン職人A
『やっぱり?』


パン職人B
『価値は同じ100エレクトだから問題ないけどさ。』


パン職人A
『そうは言っても、こうも質の悪いコインは…。』
『そのうち価値が下がるんじゃない?』


パン職人B
『かもね。』


パン職人A
『パン1個1エレクトで売ってたら危なそう。』


パン職人B
『うん、2エレクトは欲しいよね。』


パン職人A
『だよね。仕方ない、値上げしましょう…。』



ーー


<城下町>

町人C
『最近、モノの値段が上がってない?』


町人D
『ああ、以前の2倍くらい。』


町人C
『何があったか知ってる?』


町人D
『隣国が戦争の準備をしてるらしい。』
『それで行商人が来れなくてモノが貴重になってる。』


町人C
『まさか、隣国が攻めてくるのか?』


町人D
『かもな、国王さまからお触れも出てる。』
『隣国の侵攻に備えるって。』


町人C
『兵士の募集も始まってるしな。』


町人D
『それにしても、さすが国王さまだ。』
『隣国の動きはすべてお見通しか。』


町人C
『ああ、それに今なら志願兵の方がよっぽど高給だ。』
『国が金を出して、食料や装備を買ってるからな。』
『オレも志願しようかなぁ。』


町人D
『やっぱりあの方は名君だ。』
『国を守るため、身銭を切って兵力を整えるとは。』



ーー


<王宮>

大臣
『国王さま、兵士は順調に集まっています。』


国王
「そうだな。混ぜものコインの首尾は?」


大臣
『国民は気づいていますが、広く流通しています。』


国王
「そうだろう。」
「何しろ、価値は同じ100エレクトだ。」


大臣
『それが1エレクトで作れますからな。』
『倍速で戦争の資金が貯まります。』


国王
「よし、資金が貯まり次第、隣国を攻める。」
「国民には引き続き、こう通達しろ。」


 隣国が侵攻してくる脅威
 我々は祖国を守るために戦う
 勇敢な諸氏の奮闘に期する

数ヶ月後、
ナディア王国と隣国との間に
「祖国防衛戦」が勃発しました…。



【第2話:悪貨は、良貨を駆逐する】へ続く

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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