2023年09月09日
【短編小説】『慰めの代打をさせないで』3 -最終話-
⇒【第2話:お父さんの期待】からの続き
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【第3話(最終話):敗者復活戦の代打】
少年
『僕、野球が好き。』
『打てるようになって、もっと楽しくなった。』
父親
「…そ、そうだろ?楽しいだろ?!」
「オレの指導のおかげ…。」
少年
『けど今はもう…野球が楽しくない。』
父親
「?!!」
いつも怒鳴りまくっている父親が、
目に見えて動揺している。
少年
『お父さんはいつも、ああだこうだ口出ししてくる。』
『僕、お父さんの前じゃ全然打てる気がしない。』
父親
「く、口出しじゃない…!」
「これはお前のためを思っての指導だ…!」
少年
『”僕のため”を思って?』
父親
「ああ、オレの言う通りにすれば、もっと打てる。」
「なのにお前はいつまで経っても上手くならん。」
「じ、自分の練習不足を、ひ、人のせいにするな!」
父親が、やっと絞り出した威圧感。
息子は怯えて泣きそうになる。
コーチが助け舟を出そうとする。が、
少年
(コーチ、最後まで僕に言わせてください。)
再びコーチを制止する仕草から、
そんな想いが伝わってくる。
少年
『お父さんは本当に”僕のため”を思ってるの?』
父親
「と、当然だろ?!」
「お前が上手くなるためだ。」
少年
『……お父さんのウソつき…。』
父親
「何だと?!」
少年
『お父さんは僕のことなんて見てない。』
父親
「…?!…そんなわけ…。」
少年
『お父さんが見てるのは自分だけ!!』
『お父さんは”息子を天才バッターに育てた父親”になりたいだけだ!』
ギクリ
父親は、何も言えずに立ち尽くす。
自分でも気づかなかった「図星」に、
頭を強く殴られて。
すべての勇気を振り絞った少年は、
その場へ崩れ落ちる。
コーチは間一髪、
少年を抱きかかえながら、口を開く。
コーチ
『選手がミスした時、どこを見るかでわかるんです。』
『その選手が”本当に戦っている相手”が。』
父親
「…?!」
コーチ
『息子さんは三振するたびに、どこを見てましたか?』
『もちろん気づいてますよね?』
『ずっと”こっちを見るな”と言っていた、あなたなら。』
ーーーーー
カーン!
今日もバッティングセンターに快音が響く。
『おめでとうございます!ホームランです!』
誰かがホームランゾーンへ打ち込む。
明るい場内アナウンスが流れる。
ホームランを打ったのは常連の野球少年。
小学校5〜6年生だろうか。
彼はどこかの少年野球チームで
4番を務める、チームの主砲だ。
スタッフA
『おめでとう!』
『これで年間100本目のホームランよ!』
スタッフB
『はい!これ、景品の50打席無料券!』
少年
『ありがとうございます。』
『あと…あの時はハンカチ、ありがとうございました。』
スタッフA
『どういたしまして!』
スタッフB
『今日も1人?お父さんは?』
少年
『家に置いてきました。』
スタッフA
『あはは、置いてきたの?(笑)』
スタッフB
『言っちゃ悪いけど、頑固そうだったよ?』
少年
『はい、あの後も大変でした。』
『けど、やっと約束してくれたんです。』
『”口出しを止めるまで付いてこない”って!』
過干渉な父親の”熱血指導”から解放された、
1人の野球少年。
彼が後にプロで活躍するのは、
また別のお話。
ーーーーーENDーーーーー
<あとがき>
お子さまのスポーツを
”熱血指導”している親御さんへ。
「我が子にはスポーツで活躍してほしい」
そう願う親心はすばらしいです。
しかし、
「あなたのためを思って」は、
「自分の満足のため」を隠す言葉です。
ご自身が少年少女時代に
活躍できなかった悔しさを、
お子さまで晴らそうとしていませんか?
ご自身の人生の
「敗者復活戦の代打」をさせていませんか?
もし心当たりがあるのなら、
どうか口出しせず、見守ってあげてください。
結果ではなく、
お子さまの努力の過程を、
気持ちを褒めてあげてください…。
ーーーーーーーーーー
⇒他作品
【短編小説】『スマホさん、ママをよろしくね。』全4話
【短編小説】『孤独の果てに自由あり』全5話
⇒参考書籍
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【第3話(最終話):敗者復活戦の代打】
少年
『僕、野球が好き。』
『打てるようになって、もっと楽しくなった。』
父親
「…そ、そうだろ?楽しいだろ?!」
「オレの指導のおかげ…。」
少年
『けど今はもう…野球が楽しくない。』
父親
「?!!」
いつも怒鳴りまくっている父親が、
目に見えて動揺している。
少年
『お父さんはいつも、ああだこうだ口出ししてくる。』
『僕、お父さんの前じゃ全然打てる気がしない。』
父親
「く、口出しじゃない…!」
「これはお前のためを思っての指導だ…!」
少年
『”僕のため”を思って?』
父親
「ああ、オレの言う通りにすれば、もっと打てる。」
「なのにお前はいつまで経っても上手くならん。」
「じ、自分の練習不足を、ひ、人のせいにするな!」
父親が、やっと絞り出した威圧感。
息子は怯えて泣きそうになる。
コーチが助け舟を出そうとする。が、
少年
(コーチ、最後まで僕に言わせてください。)
再びコーチを制止する仕草から、
そんな想いが伝わってくる。
少年
『お父さんは本当に”僕のため”を思ってるの?』
父親
「と、当然だろ?!」
「お前が上手くなるためだ。」
少年
『……お父さんのウソつき…。』
父親
「何だと?!」
少年
『お父さんは僕のことなんて見てない。』
父親
「…?!…そんなわけ…。」
少年
『お父さんが見てるのは自分だけ!!』
『お父さんは”息子を天才バッターに育てた父親”になりたいだけだ!』
ギクリ
父親は、何も言えずに立ち尽くす。
自分でも気づかなかった「図星」に、
頭を強く殴られて。
すべての勇気を振り絞った少年は、
その場へ崩れ落ちる。
コーチは間一髪、
少年を抱きかかえながら、口を開く。
コーチ
『選手がミスした時、どこを見るかでわかるんです。』
『その選手が”本当に戦っている相手”が。』
父親
「…?!」
コーチ
『息子さんは三振するたびに、どこを見てましたか?』
『もちろん気づいてますよね?』
『ずっと”こっちを見るな”と言っていた、あなたなら。』
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カーン!
今日もバッティングセンターに快音が響く。
『おめでとうございます!ホームランです!』
誰かがホームランゾーンへ打ち込む。
明るい場内アナウンスが流れる。
ホームランを打ったのは常連の野球少年。
小学校5〜6年生だろうか。
彼はどこかの少年野球チームで
4番を務める、チームの主砲だ。
スタッフA
『おめでとう!』
『これで年間100本目のホームランよ!』
スタッフB
『はい!これ、景品の50打席無料券!』
少年
『ありがとうございます。』
『あと…あの時はハンカチ、ありがとうございました。』
スタッフA
『どういたしまして!』
スタッフB
『今日も1人?お父さんは?』
少年
『家に置いてきました。』
スタッフA
『あはは、置いてきたの?(笑)』
スタッフB
『言っちゃ悪いけど、頑固そうだったよ?』
少年
『はい、あの後も大変でした。』
『けど、やっと約束してくれたんです。』
『”口出しを止めるまで付いてこない”って!』
過干渉な父親の”熱血指導”から解放された、
1人の野球少年。
彼が後にプロで活躍するのは、
また別のお話。
ーーーーーENDーーーーー
<あとがき>
お子さまのスポーツを
”熱血指導”している親御さんへ。
「我が子にはスポーツで活躍してほしい」
そう願う親心はすばらしいです。
しかし、
「あなたのためを思って」は、
「自分の満足のため」を隠す言葉です。
ご自身が少年少女時代に
活躍できなかった悔しさを、
お子さまで晴らそうとしていませんか?
ご自身の人生の
「敗者復活戦の代打」をさせていませんか?
もし心当たりがあるのなら、
どうか口出しせず、見守ってあげてください。
結果ではなく、
お子さまの努力の過程を、
気持ちを褒めてあげてください…。
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⇒他作品
【短編小説】『スマホさん、ママをよろしくね。』全4話
【短編小説】『孤独の果てに自由あり』全5話
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