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2023年09月07日

【短編小説】『慰めの代打をさせないで』1

”あなたのためを思って”の指導は、

本当は誰のためなんでしょうか?




ーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第1話:熱血指導という支配】



カーン!

今日もバッティングセンターに快音が響く。

毎日、いろんな人が来る。
家族連れ、カップル、中高生の男子たち。

ストレス解消に勤しむ人。
球速130キロへ挑み続ける人。
黙々とバットを振り続ける人。

いつも通りの営業時間が過ぎていく。



バッティングセンターには、
ときに打球音より響く音がある。

それは、

父親
「何やってんだ!球をよく見ろ!」
「もっと下半身を使え!ポイントずらすな!」


父親らしき男性の
”教育的で建設的な”大声だ。

そして、その声の先にはたいてい、
打席で困惑する少年少女の姿がある。

中には、バッター以外は立ち入り禁止の
ケージ内へ入って叫ぶ父親もいる。

「野球少年を熱血指導する父親」

これも、バッティングセンターでは
”よくある光景”だ…。


ーー


スタッフA
『あの親子、またやってる…。』


スタッフB
『息子さん、かわいそう…辛くないのかな…。』


2人のスタッフの話し声。
その先には常連の親子がいる。

バッターボックスには、
ユニフォームを着た少年がいる。
小学校5〜6年生だろうか。

彼はどこかの少年野球チームで
4番を任されるほど上手いらしい。

『おめでとうございます!ホームランです!』

誰かがホームランゾーンへ打ち込む。
明るい場内アナウンスが流れる。

だが、

父親
「違う違う!上から叩け!」
「さっき教えただろ!なんでできないんだよ!」


歓喜のアナウンスをかき消すほどの怒声が響く。
常連の父親だ。

息子は打ち損じるたびに、
激昂する父親をチラチラ見ている…。



ーー


しばらくすると、その親子が屋外へ出ていく。
今日の練習は終わりかな?

スタッフA
『あの親子、また玄関にいたよ。』


スタッフB
『今日もかぁ…。』
『あのお父さんの説教、本当に長いよね…。』


これも恒例だが、
この親子は一通り打ち終わると玄関へ行く。

そこで父親の「ありがたい指導」が始まる…。

スタッフA
『今日はどんな話してた?』


スタッフB
『いつも通り。』
『フォームがどうとか、タイミングがどうとか。』


スタッフA
『うわぁ…(引)』
『たまには好きに打たせてあげたらいいのに。』


スタッフB
『だよね…野球が嫌いになったら意味ないよ…。』


スタッフA
『黙って耐えてる息子さん、どう思ってるんだろう。』


スタッフB
『代わってあげたいけど、口出しできないよね…。』


心配するスタッフをよそに、
親子が屋内へ戻ってくる。

そして今日も閉店間際まで、
父親の”教育的な快音”が響く。

いつも通り、満足げな父親と、
肩を落とした息子が退店していく…。




【第2話:お父さんの期待】へ続く

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理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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