2015年12月19日
フグの毒が痛み止めのカギ?
日本のフグ料理は美味しくも高価なグルメですが、その調理には資格が必要です。これはフグにはテトロドトキシンという神経毒があるためです。この毒は、神経伝達を阻害して麻痺を起こさせます。これによるフグ食中毒だけでも毎年死者が出ているのです。
しかし、アステラス製薬はこのフグの持つ毒の働き方と同じ方法で痛みだけを止める薬を開発しようとしています。フグの中に入っているテトロドトキシンは、ナショナル・ジオグラフィックが致死量とするところの1200倍にもなります。これは大人30人を殺すのに十分な量です。テトロドトキシンは神経細胞に指令が届くのを邪魔するので、それにより生命の維持に必要な臓器が止まってしまいます。
でもウォール・ストリート・ジャーナルによれば、アステラス製薬と他の製薬会社はテトロドトキシンが脳への神経伝達を阻害する働きを真似しながらも、痛みの信号だけを止める事のできる薬を作りたいようです。
米ニュージャージー州のバイオテクノロジー会社Chromocell Corporationと共同でこの薬の開発をするアステラス製薬は、全世界での開発・販売の権利の契約一時金に1500万ドル(約180億円)を投じています。Chromocell Corporationの研究では、NaV1.7という脳にあるイオンチャンネルを阻害すれば、痛みを軽減することができることがわかっています。この部分だけを阻害して、他の害のある要素がなくなれば、治療の難しい痛みに対して有効な薬ができるというわけです。
フグの持つ毒を痛み止めに使うという研究は、実は2003年にカナダですでに行われていたりもします。「毒をもって毒を制す」ではありませんが、極めて毒性の強いボツリヌストキシンを美容に使うボトックスなど、もともと致死的な毒を持つものであっても、使いようによっては役に立ちます。
今回の研究で長年痛みに悩んできた患者さんに希望の光が見えてきそうです。