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2020年06月11日
我妻善逸 2
藤の家で治療を終えた炭治朗・善逸・伊之助(通称かまぼこ隊)は、那田蜘蛛山へ行くよう鎹鳥に指令され、任務に赴くことになる。
ここでも善逸はヘタレっぷりを遺憾なく発揮しており、山の入り口で炭治朗と伊之助に放置された。本人いわく「こんなことってある?」と涙ながらに疑問に思いながら、善逸の鎹鳥であるチュン太郎に励まされるもかなりいじけていたが、恋慕の相手である禰豆子が炭治朗と一緒に山の中に入ったことに気付き、「女の子を危険な目に遭わせるなんて、とんでもねえ炭治朗だ!」と逆キレするような形で怒りのまま山中に入ることになる。
怒りのブーストは長く続かなかったものの、山中で累の兄役に出会うことになる。兄蜘蛛は蜘蛛の身体に人間の頭部がついたキモイ外見をしており、兄蜘蛛の血鬼術はかなり厄介な分類。兄蜘蛛の血鬼術を受けた人間は三十分程度で肉体が変形し兄蜘蛛と同様の外見となるだけではなく、無残ほどでないが子の支配能力を有しており、命令には逆らえない模様。
兄蜘蛛と戦う前から持ち前のヘタレっぷりをこれでもかと言わんばかりに遺憾なく発揮している彼であるが、独白の中で自分の弱さを自覚したり、兄弟子から桃を投げつけられるなどの過去が明らかになる。そうして不死川弟並みの特異体質であったのか、桑島の厳しい修行から逃げ出し木に登っていたのだが、高所にいたことが原因で避雷針の自然法則により、木諸共含めて雷に直撃。これまで黒髪であった頭髪が、眉毛含めて金髪になったのである。善逸は生粋の日本人であるが、金髪である理由は雷に打たれたことが原因。
兄蜘蛛討伐の後、毒が全身に回り切る前に呼吸を整え静止していたことが幸いして、胡蝶しのぶから解毒剤を渡され、一命をとりとめている。しかし、毒の影響は手足が縮むなどの後遺症があった。蔵馬の薬草並みに苦いと推測される蝶屋敷で薬を飲み肉体が戻った後、地獄のような機能回復訓練を受ける際、「女の子一人につき、おっぱい二つ、お尻二つ 、太腿も二つ付いてんだよ 」との謎の名言を発している。
その後、炭治朗から送れる形で、伊之助と共に全集中の呼吸(巨大な瓢箪を割れるほどの肺活量)を体得し、強くなった善逸はかまぼこ隊と共に、炎柱である煉獄と共に無限列車で鬼殲滅の任務にあたることになる。なお、炭治朗は田舎の村育ち、伊之助は山育ちであるため、列車の存在自体知らないでいた。そのため、佩刀や切符の買い方など町生まれである善逸が常識人として振舞った。
無限列車では、下弦の鬼のパワハラで唯一生き残った魘夢と対峙することになる。魘夢の血鬼術により強制入眠させられ、幸せな夢を見ることになる(しかし魘夢は幸福な夢から転落させ悪夢を見せるなどの醜悪さがある)。
善逸の意識の中に入り込んだ魘夢であるが、女性好きの彼としては男の存在など単に邪魔な存在でしかなく、内なるサクラ並みの精神性で追い返している。魘夢は炭治朗の手により倒され、列車は脱線し乗客と鬼滅隊含めて負傷者はいるものの死者はいなかったが、途中で乱入して来た猗窩座により、炎柱である煉獄が命を落とした。
ちなみに「無限列車編」は映画化が決定されており、2020年10月16日に銀幕デビューする。非常にどうでも良いが、煉獄は食べ物を食べる時、「わっしょい!」と叫ぶ。焼き芋が好きらしい。
無限列車後の善逸は、柱稽古で岩柱の元で修業を行うも、稽古途中に貰ったチュン太郎の手紙の内容を見てこれまでの雰囲気が一変することになる。ネタバレすると、黒死牟に運悪くも出会った兄弟子である獪岳が命乞いをし、鬼になった。
鬼=人食いの化け物と同義なので、禰豆子がもしも人食い鬼になった場合、鱗滝と富岡は切腹の処罰が決定されていた。それと同じように、獪岳の鬼化による責任を取るために誰の介錯を受けることなく、桑島は一人で切腹したのである。切腹における苦しみは壮絶なものであり、その苦痛は斬首する介錯人がいるほどのもの。
遊廓編では、音柱が女の子にケガをさせたことに謝罪しろと述べただけではなく、嫁が参人いるだけではなく本人がイケメンであることも手伝って、かなりの嫉妬心を見せていた。遊廓編での戦闘は居眠り状態が継続しており、伊之助からは「(寝ていた方が強いから)ずっと寝ていろ」と言われる始末である。
鳴女の血鬼術である無限城に柱稽古でインフレパワーアップした鬼滅隊は乗り込むことになるのだが、善逸は独断行動で真っ先に獪岳の元へと向かっている。善逸はこれまで恐怖心がピークに達して気絶することにより、剣士としての力が発揮されるのだが、今回ばかりは覚悟が決まっていたのか、無様な姿を一切見せることのないシリアスな戦いとなっている。
「壱の型しか使えない俺がカスなら、壱の型だけ使えないお前はクズだ」と罵り、「継子に恵まれなかったじいちゃん(桑島)が気の毒でならない」と述べている。
善逸としては鬼殺隊になった後、獪岳にちょくちょく手紙を送り(返事はない)、獪岳の悪口を言われれば激怒する、いつか共闘することを夢見て独自に考案した漆ノ型を発明するもその技は鬼を討つために使われることなく、共に戦いたいと願っていた相手である獪岳の首を刎ねる破目になった。
そして、桑島としては壱の型が使える善逸と、壱の型以外が使える獪岳の二人セットを後継者にしようとしたものの、聴覚の鋭い善逸いわく「獪岳からはいつも不満の音がして、幸せを満たす箱が壊れている」と言われている。
獪岳討伐後、愈史郎に救助され無限城崩壊後、無残戦に参列激闘を繰り返すも、無残は汚いミーティになったり、金色疋殺地蔵(通称、おぎゃ辻無残)になるなど散々悪あがきを繰り返す。
死に際に、クッソ薄汚い解釈違いも甚だしい汚濁の如く思想を強引に塗りたくられ、炭治朗が鬼化してしまう。炭治朗の鬼化は現象により、鬼舞辻無残がボンボルド並みに「死ね」の罵倒が意味をなさない証左である。
まだ人を食っても殺してもいない炭治朗に富岡は「まだ人でいる内に殺そう」とするも、日光の下に炙り出しても、瞬時に太陽を克服。善逸は無残などに負われた大怪我で戦闘に参加できない中、同期である伊之助が瞬時に切り殺そうとするも鬼殺隊の仲間と過ごしていく内に情緒面が育っているのか、斬ることは出来なかった。
太陽を克服し人間に戻った禰豆子が、炭治朗は攻撃するばかりで人食いを行わなかったことから、鬼と人の中で精神的に抗っていることを察知する。実際炭治朗は無残と精神世界で争っており、禰豆子の肩の一部を食らってしまうも、鬼にとって彼女の血肉は人間に戻る特効薬であり、人間へ戻れるチャンスが生じた。炭治朗の精神世界でこれまで鬼殺隊として鬼と戦いながらも死亡した仲間の背中の人押しで炭治朗は鬼化することなく、人間に戻ることに成功した。
しかし、不穏なのはこれまで一部の例外があれども鬼殺隊に殺された鬼は彼岸(あの世)から迎えが来る・地獄に墜ちるなどの描写があったのにも関わらず、無残にはそういったモノがない点である。
地獄に墜ちることさえ許されなかったのか、それとも炭治朗の中でサスケの中で眠っていた大蛇丸のように眠っている可能性がある。
鬼滅の刃の最終回では現世編に以降し、善逸の子孫――もしくは生まれ変わりだと思しき存在が「輪廻転生を信じるかどうか」を禰豆子に似た少女に話しかけている他、鬼滅隊の面々が登場している大円満で終了した。
総論として、我妻善逸は自身が弱いことを自信満々に宣言しているも、ソレは自分の弱さを自覚して強くなりたいと願望を抱いている。鼓屋敷や遊廓などにおいて、子供の身を率先して守るなど芯の強さもあり、喧しいところが受け付けられない人が一定数いるだろうが、善良を持つ魅力的なキャラクターである。
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2020年06月10日
我妻善逸
『我妻善逸』とは、鬼滅の刃に登場するキャラクター。紹介する作品及びキャラクターが有名過ぎることから、事前説明はいらないような気がするが念のために、未来日記の狂乱ピンクとは全く関係のない存在であり、抜刀術が凄い鬼狩りの少年である。
非常にどうでも良いだろうが、個人的に人間の中で善逸、鬼の中では黒死眸が個人的に好きである。だが主人公なのに、炭治朗はあまり好きになれなかった。恐らく柱会議での「悪い鬼〜」の発言で、自身の妹である禰豆子は人を食べない特別製であり、親兄弟が鬼に殺された人たちに対して残酷な言葉だったことが原因。でも好きじゃないだけで、嫌いってわけではない。
【内容】
初登場は炭治朗が水の呼吸を鱗滝の元で修業し、身の丈ほどある岩を斬って鬼の選別試験に受かる前にチラっと出ている。その時の雰囲気は陰鬱なものであり、暗い過去か何かあるのかと思っていたが全然そんなことはない。善逸の陰鬱とした雰囲気は、選別試験に出るのがイヤで師匠である桑島にボコられ、鬼に食い殺される絶望でブルッっていただけである。
無事、選別試験終了後、皆が伝達用の鎹鳥(鴉)が渡される中、善逸だけは何故かスズメであり、勘の良い人はこの時点で彼のキャラクター性を薄々ながら察知していたかもしれない。ちなみに禰豆子に絶えずアタックしているが、本人からは「汚い高音を出す珍妙なタンポポ」としか認識されていない。
次での登場は、稀血の子供を攫った鼓屋敷前の道路。
通りすがりの女性に「死ぬから」といった理由で求婚を迫っているが、その場面を目撃した炭治朗からは別の生き物を見るかのような侮蔑の視線を受けている。
元十二鬼月の鼓の鬼のいる鼓屋敷から、かなり距離を有していたのにも関わらず怯えていた理由は産屋敷から任務を依頼されたからと判断できるが、邪推するところ、実は炭治朗の背負っていた箱の中の禰豆子(鬼)の存在を、持ち前の嗅覚で察知して怯えていた可能性がある(鬼と人間の音は違うらしい)。
炭治朗からおにぎりを貰った時、半分こして手渡しているのは炭治朗も鬼ではないかと探りを入れていた可能性がある上、初対面ですでに箱の中身が何であるのか把握していた。だけど、炭治朗に対して箱の中身について話題に出すこともなかった。どうやら、訳ありと思っていた模様。それ以前に善逸は色々と喧しい存在であるが、人の善意を一切疑わない(というより信じたい)性格をしているので、箱の中身について訪ねなかったのはそういった部分が大きく関係しているのだろう。
目的地に到着した二人(と鬼)であるが、稀血の兄が攫われた兄妹が家屋の敷地内にいた。炭治朗はその兄妹に「大切なもの」として禰豆子が入っている木箱を預け、二人で鬼の殲滅実行のため入ることになるが、兄妹は建物内についてきてしまう。兄妹いわく「箱の中から変な音がして怖かった」らしい。
炭治朗は当然のことながら、木の下である日陰に放置されているものの、禰豆子が状況を知らず、陽の下に出れば、時待たずして直射日光で即死する。
さすがの炭治朗も「大切なもの」を預けたのに放置された事実に狼狽するも、鼓屋敷は無限城ほどの家主である鳴女ほど複雑化した迷路ではないにしろ、玄関が閉ざされ戻ろうにも戻れない状況になってしまった。
炭治朗と善逸が別れ、善逸は稀血の兄を持つ少年と一緒に行動することになるのだが、鼓屋敷の中には、響凱以外にも数匹の鬼がいた。響凱は稀血の少年に鼓の鬼血術である鼓が奪われているが、これは稀血の少年に盗まれたのではなく、無残……おっと、無様様が鬼同士が徒党を組んで裏切りを阻止するために『鬼同士が共存できない』ようにしているのである。例外としては累が自身の身を守ってもらうべく家族ごっこをしていたが、無残に特別許可を貰っているが、基本的に鬼は群れず殺し合いをする間柄である。
響凱の鼓を棚ぼた的な幸運で手に入れた稀血の少年であるが、炭治朗と善逸とその兄妹が建物に入った瞬間、出ることが出来なくなったのは稀血の少年が響凱から奪った鼓を鳴らしていたのが原因である。
善逸は稀血の弟(清)と一緒に行動することになるのだが、怯えながらも鬼滅隊としての矜持があるのか、「この子を守らなくてはいけない」、と思いながらも恐怖が八割ぐらい膝の辺りまで来ていた。鼓屋敷をウロウロする内に、舌の長い鬼とエンカウントしてしまうのだが、恐怖が頂点に達し、気絶(もとい眠った)。
このままでは本来守るべき子供諸共死んでしまうのではないかと思われたが、気絶した善逸は剣士としての能力を覚醒させる条件となっている。目に見えぬ速度で鬼の長い舌を斬ったかと思うと、雷の呼吸・壱の型「霹靂一閃」で鬼の首を刎ね、神速で即死させている。
善逸が「肝心な時にしか使えない男」と言われる所以である。イヤソンかな……。
ちなみに善逸は壱の型である居合術しか使えず、その事が後に大切な人の命を奪う遠因となっている。
鬼を殺した後、すぐさま意識を取り戻したが鬼を殺したのは自分ではなく稀血の弟だと思い込んでいた。舌の長い鬼を殺した後、すぐさま鼓屋敷から放り出された善逸であるが、炭治朗が少し遅れる形で猪突猛進した状態で出てきた伊之助に、箱の中身が鬼だと看破されボコられるも、決して炭治朗の「大切なもの」を維持でも離すことはなかった。
任務完了後、鬼との戦闘で負傷したケガを治療するために藤の家で伊之助と共に逗留することになるのだが、この時の善逸は捨て子であるにも関わらず、「一緒にご飯を食べると美味しい」といった発言をしている。恐らく左記の言葉が鳴柱である桑島の元で修業する際に、不仲で険悪でありながらも兄弟子や師範と厳しい修行をする中で、会得した感情だと思われる。
善逸が鳴柱の継子になった理由は、女性に騙されて借金まみれになった彼の借金を返済したのが理由である。複数の女性に奴隷の如くこき使われている善逸だが、手さえ一切握ってもらえることはなかったらしいのに、懲りずも女性好きを発揮している。
浮気性と思わしき移り気の速さだが、禰豆子に対する感情は本物。
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2020年06月09日
都市伝説2
・寺生まれのTさん
最早、知らない人はいないだろう存在。
ホラーやシリアス、鬱展開を「破ァ――!」の一喝と共に無双クラッシャーし、「寺生まれってすごい」という締めくくりで終わる例のアレ。性格は兄貴分のようなもので、面倒見が良い。
当然のことながら寺生まれのTさんは、ネット上のホラー話を克服するために生み出されたデウス・エクス・マキナ。「化け物には化け物をぶつけるんだよ!」との言葉で有名な、貞子と伽椰子の融合体にも難なく勝てるかもしれない。
様々なネット上での創作に使われているが、面白いモノと面白くないものが多数入り混じっているのが、正直なところ。
・見ると死ぬ画像
見たら死ぬ画像とは、三回・四回など見た回数など異なれど、ポーランドの画家・スジスワフ・ベクシンスキーにより創作された作品であり、致死力はない。人によっては親の顔より見た人は多いかもしれない。
絵画自体の特徴は少々不気味であるものの、「終焉の画家」などの異名を有しているだけに、単純に不気味なだけではなく、どことなく美しさを感じられるタッチが魅力的で、ついつい魅入ってしまう。
ちなみにスジスワフ・ベクシンスキーは2005年に亡くなっているため、新作の絵画は拝見できない。
最近、Twitter上では即死の欲張りセットとして「見たら死ぬ絵」の画像が時折、リプライなどでプレゼントされるなどの現象が起きている他、ベクシンスキーの作品を元にしたキャラ弁まで作られている。
ベクシンスキーの作品がどういった経緯で「見たら死ぬ作品」になったのか不明だが、朗読すると死亡することで有名な「トミノの地獄」のように、一見不気味な作風がソレを増長させたものだと思われる。奇しくも1919年に発表された「トミノの地獄」であるが、それから半世紀以上経過した、ネット繁盛期である2000年に突如不気味な逸話が出てきたといった共通点がある。
そもそもネットは情報収集の方もそうだが、罵詈雑言などの不毛な言い争いをしている殺伐としたところがあるものの、「嘘」を楽しむ一種の娯楽的傾向がある。「見たら死ぬ」と流言飛語を放った匿名の本人としては、一時の嘘だったかもしれないが、ここまで長く続くものだとは思わなかったものだと思われる。
「死ぬ画像」として有名になってしまったベクシンスキーの作品群であるが、「そこまで影響があったのか」と草葉の陰で笑っているのか、それともSCP-173の画像を無断で拝借された挙句、無題2000ではなく彫刻オリジナルとして有名になって無数の人々に認識されてしまったように、心持ち穏やかではない心境なのか確かめる術はないため、絵画の作成者たる本人がこの現状にどう思っているのか永遠の謎である。
・井戸に死体を捨てた話
こちらは都市伝説というよりも、意味が分かると怖い話。
内容としては、
主人公が妹を殺し井戸を捨てるも、次の日にはいなくなっていた。
五年後、些細な喧嘩がキッカケで友達を殺し井戸に捨てるも翌日にはない。
十年後、妊娠させていた女性、それから嫌な上司も井戸に捨てると死体が消えていた。
最後に介護が必要になった母を殺し同じように井戸に捨て、見に行くも死体は消えていない。
どれだけ日にちが経っても、母親の死体がなくならない。
といった内容である。
早速ネタバレをするならば、妹・友達・妊婦・上司の死体処理をしていたのは母親だったというのが事の真相なのであるが、まさかまさかの斜め上の超解釈として「井戸水は強酸性で死体が消えていたが、母親の場合、純金製だから溶けることはなかった」という解釈が一部の人間に行われている。その想定は斜め上にもほどがある。確かに飲み水などの生活必要水である水源が強酸なのは怖いけどさぁ……。
こういった独自の介錯は「井戸」だけに限らず、「課長島耕作」の14巻「貧乏が悪いんだ」の話中で、家庭訪問に来た先生が茶請けとして出されたおはぎを捨てるといった内容が「先生が攫われた説」になっているなど、おはぎはホラーではないものの、恐怖系のソレは度々ギャグに転換される光景が散見される。ギャグとホラーは表裏一体とよく述べられているが、恐怖という情動反応の克服たる一種の認知行動療法かもしれない。
・猫 トースター装置(バター猫のパラドックス)
現代の物理法則の根底を覆す超理論。その内容は「ゼロカロリー理論」に通ずるものがあり、正式な学会での発表が待たれる。
「猫とトースター」は炉心などを必要としない発電システムであり、使用される材料が日常的に安易に入手可能なことから、将来的に家で独自発電し、環境に配慮したエコロジーシステムたりえるだろう。
能書きが長くなったが、超理論の内容としては「パンの表面にバターを塗ると(重力の比重に従って)必ずバターを塗布した表面が床に落ちる」。対して、「猫はどのような角度・高度から投げ落としたとしても足の裏から着地する」というものである。
この双方の裏面の落下を踏まえて理論的に思考すると、『猫の背中にバターを塗ったトースターを乗せると回転し続ける』ので、永久機関的な発電システムになるのではないかと想定されているのである。
動物虐待などの観点から踏まえて、理論上「トースターの裏表にバターを塗っておけば回転し続ける」などの指摘もあるが、研究中の模様。
動画もあるので、画期的な発電システムの完全開発のため、閲覧するのも悪くないかもしれない。ちなみに、『猫・トースター動画』でマイナー映画学生アカデミー賞を貰ったキンバリー・マイナーは友人の論文を元に映画を作成している。
・電車男
当時、インターネットで2ちゃんねるがアングラした世界であったが、ドラマ化による影響により世間一般に露見し、良くも悪くも「オタク」が市民権を得るキッカケとなった。
一世を風靡したドラマ版の電車男の影響で、ネット住民とオタクの生態が明るみになったが、オタク狩りなどの問題が起きた。ちなみに今では2ちゃんから5ちゃんになっているが、キャッチコピー? である「ハッキングから今日のおかず」は今もなお健在な模様。
余談であるが、一時期2ちゃんねるそのものが消失し掛けた大事件があったが、名も知れぬ勇士のおかげで抹消の危機は免れた。だが今では「ンゴンゴ」言っている猛虎弁ニキが草を生やしている。
電車男の内容としては、電車内で酔っ払いに絡まれているOLをアキバ帰りのオタクの青年が助け、返礼としてエルメスのティーカップを貰うといった内容であるが、創作である可能性が高い。検証サイトも出来ているぐらいである。
ハンドルネーム「電車」の書き込み当初、純粋に応援する人・嫉妬入り混じるコメント・そうしてホラではないかと、かなりの混乱を極めた状態であった。
虚実を指摘する根拠としては、駅員などの対応を筆頭に、酔っ払いから助けて貰ったお礼にいきなりブランド物であるエルメスのティーカップを渡す不自然さが挙げられる。普通の返礼なら、折り菓子程度で十分だしね……。
脱オタクを目指して邁進する電車であるが、エルメス(助けた女性)との進展の速さなどの不自然さ、そうして最後に「下手なエロ小説」と非難を浴びた性的な内容を含んだ書き込みを最後に姿を消したのである。
ネット上でのヤンデレの遭遇率の高さ(オチでは男性同士が結ばれる展開が多い)、鬼嫁ちゃんねるで「小説家」と言われる夫や妻の過度な復讐、爆笑系コピペ(特に外人系)などもそうであるが、今では嘘松と呼ばれる先駆け的な存在だったかもしれない。
……個人的な意見としては、たとえ嘘であったとしてもオタクの市民権会得や純粋に電車男のドラマ内容が面白く楽しめたので、存外悪い心持ちではなかったりする。ウソでも楽しかったんですよ。
・変態番付
変態番付とは、毎年「スレタイ大賞20〇〇年」と同じく、毎年実際あった事件を相撲の関取の順位でランキングしていくものである。
変態番付には一種の決まりがあり、ニュースで放映されたものやまとめサイトで取り上げられたものなどに参加資格が挙げられる。モラル的な話ではあるが、あくまで加害者側の一切理解できない変態的所業を重点に格付けしており、被害者側にネットリテラシーを配慮しなくてはならないので、要注意。だからといって、加害者側を必要以上に弄る事は許されない。
実際にあった事件なので都市伝説でも何でもないのだが、「こんなことある?」と思わず頭を抱えずにはいられない『内容』ばかりで、思わず真偽の方を確かめたくなる。請求書の名前に興奮する男性・上靴のコピーに興奮する人・生まれ変わったら道になりたいと述べた二十代男性などが実在する。
でも、信憑性の方は定かではないが「左クリックで人差し指を骨折」した人もいるので、現実は小説よりも奇なりは本当のことかもしれない。
ちなみランキング上位は、「横綱」、「大関」、「関脇」、「小結」、「前頭」、「十両」、「殉職」、「破門」などがある。
番付のランクに関わらず全員、ダーヴィン賞に載っていてもおかしくない……。
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2020年06月08日
都市伝説(ホラー)
今回は、SNS上はネット上で有名になっている都市伝説を取り上げていきたいと思う。内容は誰でも一度は聞いたことがあるモノばかりになるのだが、内容をそのまま紹介するのではなく、ネット上の都市伝説を作品を評価する形で記事を書いていく。
【内容】
・きさらぎ駅
きさらぎ駅とは2004年2ちゃんねる(現在では5ちゃんねる)のオカルト板で、「知らない無人駅にいる」という内容で投稿されたモノ。投稿者(はすみ)の実況としては、太鼓の音が聞こえる・GPSでの場所特定/電話が繋がらない・トンネルの先で偶然出くわした人のクルマで送迎してもらうというエンドで締めくくられている。
クルマに乗ったあと(と推測される)消息を絶ったはすみであるがその後、インターネットミームとして、きさらぎ駅に類似した体験談が次々と書き込まれたが、派生物のほとんどは「きさらぎ駅」を元にした架空・作り話が九割を占めている。残りの一割ぐらい、本物かもしれない。それぐらい夢を見ていたい。
駅をはじめとした別の現実世界へ知らない間に転移してしまうものは、「異界物」と呼ばれており、きさらぎ駅では駅という日常的にあるものから、非現実的な展開へワープしてしまうという内容に魅力があると思われる。
インターネット上で「嘘を楽しめる人が多くいたアングラな時代」であった為、投稿者であるはすみからの書き込み当初、ネタだの創作だの指摘されているが、その指摘は非常に真っ当なものであり、「鬼」の読みの中で「きさらぎ」が舞台設定装置として感じられ、異界物の名作でありながらも虚構であることはどうしても払拭できないが、その当時、多くのオカ板の人は敢えて乗っかかる形で楽しんでいたものと思われる。鮫島事件を楽しむ余裕が昔にはあった。
2ちゃんの住民の中で、本気で騙されたと思しきものは、もはや伝説といっても過言ではない「釣神様」ぐらいであろう。
・一人鬼ごっこ
別称、『ひとりかくれんぼ』とも呼ばれる一人遊び。
自分以外住民のいない家の中、ぬいぐるみの中に米を入れたり、浴槽に浸すなどの遊戯である。
種類としては、こっくりさん等における交霊術の類であり、2ちゃんなどの掲示板で実行者が実況するスタイルが多い。一人鬼ごっこ中、鬼役であるぬいぐるみから逃げ回るのだが、心霊現象として多いのはラップ音やテレビ画面が砂嵐になっているなどの内容が多くを占めている。
こちらも、自分の生活内に非日常を取り入れることで人気を得たモノだと思われる。映画「呪怨」で、ホラー映画を観た時の聖域として成り立っている布団の中に伽椰子が現れて連れ去るなどといった自分のテリトリー内でのホラー現象、そうして誰もが知っている「鬼ごっこ」要素の成分がマッチしている。
一人鬼ごっこも何らかの話を元ネタにした作り話であるが、その元ネタが何であるのかハッキリしていないため、遊び半分でこの鬼ごっこを行った大量の実況者の中で、もしかしたら、一人ぐらいは本物の心霊現象に遭っているかもしれない。
・八尺様
こちらも非常に有名な都市伝説。
都会系のホラーではなく、田舎物の都市伝説として名を馳せている。
八尺様は見る人に依ってその外見が異なるが、一括して共通している設定としては女性とは思えないぐらい高身長であることと、濁音か半濁音か分からない奇怪な「ぽぽぽ」という声を発する点であろう。正当な意味での派生物として、「アクロバティックサラサラ」がある。
田舎に伝わるホラーとして非常に出来がよく、「姦姦蛇螺」や「リゾートバイト」などの儀式系・禁忌物の中で、最もよくできている作品だと個人的に思っている。
その他にも、田舎物のホラーは一種の流れが出来上がっており、「してはいけないことをする→神社などのその手の人物が出てきて過去にあった事件などを話す」、「もしくは知人の中に心霊に詳しい人物が必ず登場する」といった内容がテンプレ化している。
禁后(パンドラ)やリョウメンスクナ、コトリバコが上記の内容を顕著に踏まえている。
・巨頭オ
偶然、立ち寄った場所が異常なところであった話。
内容は、「昔、行った旅館が良かったからまた行こう」といったモノであるが、看板が異なっていたり、旅館があったと思わしきところに行くと奇妙な生物に遭遇するというものである。類似作品としてカルト的な宗教物などがあり、多岐に渡る。
「しっぽ」のように、予備知識なしで異界に赴く内容は多数投稿されているが、ヤマノケは鬼太郎の話をそのまんま持ってきた創作だったりなど、創作として粗が目立つ玉石混淆。
ちなみに、都市伝説ではないが、SIRENの羽生蛇村のマップ作製の元になったロケ地は聖地巡礼の観光スポットとして繁盛しているので、「巨頭オ」のような経験をしたい人はロケ地に行くことをオススメする。
注意点として、廃屋などの建物は浮浪者や不審人物がいる場合や、ムカデなどの害虫がおり、どうしても行きたいというのであれば同行者や懐中電灯などの装備品を忘れずに。冗談でも何でもなく、命に関わります。
・猿夢
内容は田舎特有の閉鎖とした禁忌ものでも、心霊現象などに詳しい人物のいない、個人的な夢の内容となっている。
内容は徐々に残酷な死が迫っていく内容となっているのだが、『もしかしたら自分もそのような夢を見るかもしれない』という一種の懸念が、人気の秘訣かもしれない。特に金縛りはそのメカニズムは解明されているものの怖いものは怖い上、人間は生きていく以上、睡眠を摂取しなければならないので、就寝前に読むものではないだろう。
・猛スピード
こちらも日常の内容だが遭遇系。
投稿者は双眼鏡で家の周囲を観察するのが趣味であり、ある日突然、猛スピードで坂を下る真っ白いモノに気が付く。その白いモノは、ガリガリにやせ細った子供であるが、投稿者とかなりの距離があるのに関わらず、目が合うだけではなく、明らかにこちらに向かって手を振っていた。
危機感を感じた本人は、すぐさま家の戸締りをするも、すぐさまドアなどをバンバン叩く存在が襲撃してくる。
最後はアイロン片手に朝まで硬直していたといったというオチで終わっているが、個人的にこの話が一番怖かったように思える。
まず、話の冒頭で「双眼鏡で近所を観察」という一度はそういったものをやってみたいと思わせる切り口かつ、語り口調が「ですます調」ではない点も恐怖に拍車を掛けているのだろう。そうして、オチである「朝まで硬直」といった内容がリアリティを強調しており、本文も短いことから想像が掻き立てられる点も非常に優秀である。
なお、ガリガリの白い子供をアンガールズの田中に見立てて、「山根〜」と言いながら走ってくる様子を想像すれば、怖さは急激に低下する。
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2020年06月05日
いらすとや
いらすとやとは、誰でも一度はお目にかかったことがあるだろう、柔らかいタッチで描かれているフリー素材である。基本的に無料であるが、規定数を超えると料金が発生するので、要注意。
いらすとやの凄いところは使い勝手の良さであるが、「なんでこんなもんあんねん」と思わずツッコミを入れたくなるものまである。千差万別も良いところの種類の豊富さであり、Twitter上でバレンタインの漫画でいらすとやが使われているのを見たことがあるレベル。世界でも通用するらしい。
グーグルで検索したら、検索候補に「闇」が付いてくるので、この時点で何かお察しください。かわいいフリー素材が売りなのに、なんで検索に闇が付いて来るんですねえ。イラストのリクエストも受け付けているらしく、そこから使い勝手が広がったかもしれないが……。
なお、いらすとやのURL https://www.irasutoya.com/
またいらすとやはぬいぐるみやタオルなど商品展開を見せているが、なんでムキムキマッチョなネコがグッドスマイルカンパニーでキーホルダー化しているんでしょうかね。人気があるから?
また、スターウォーズや刀剣乱舞とコラボ商品を発売している。良きかな良きかな。
【内容】
・チーズ
ランダムで検索したら出てきた画像。いらすとやの説明では「防護壁が少ないために危険が通り抜けて事故が起きている状態と、防護壁が多いために事故が起きていない状態を表した、スイスチーズモデルのイラストです」とある。
私の知識が乏しいだけかもしれないが、いつ使う機会があるのだろうか。甚だ疑問である。
・社畜
モロにブラックだったら、何が出てくるのだろうかと思い検索したら出てきたもの。酷過ぎやしませんかね?
「ベルトコンベアで運ばれた会社員が会社の中で使い捨てられていく様子を描いたイラストです」と度し難い説明があるが、この画像の他に社長らしきものを乗せて馬のように草を食む中年男性や、キャリーバッグを手に出張している普通のイラストも「社畜」くくりだった。なんなの……。
・チュパカブラ
ランダムで検索したら出た。なんであるの?ほんと、いつ使うの?なんで数パターンあるの?
宇宙人のイラストがあるなら分からなくはないが、UMAが基本、かわいさを売りにしているフリー素材屋でクリーチャーが混じっているのが謎の謎。
他にも色々なクリーチャーがあるのだろうかと検索し、ふと思い立って「屍人」をチェックしてみたら「自信満々の男性のイラスト」が出てきた。わけがわからないよ……。
ゾンビを検索してみたら人間だけでなく、会社(建物)そのものがゾンビ化していた。
またその他に「農作物を荒らすニホンザルを撃退するためにエアガンを手に取り立ち上がった主婦たち」といったインパクトの強いモノや、プレゼントでは「あまり嬉しくないプレゼントを貰い苦笑いをしている女性」ではクトゥルフ的なクリーチャーを渡しているイラスト、ウイルス感染がパンデミック的に世界中に広がる世紀末なものなど様々にある。
限定的過ぎるものとしては坊主頭の熊五郎と女性達が悲しんでいる古典落語「大山詣り」に登場するワンシーン、ジョウコワネコのフンなどがあった。ニッチ過ぎる。
【余談】
フリー素材のいらすとやではあるが、基本無料であるものの作者が完全に著作権を放棄しているわけではないことに留意しなくてはいけない。
個人への誹謗中傷やアダルトコンテンツなどの使用は不可で、いらすとやの画像を独自に加工しても著作権は加工した側に回ることはなく、商品販売しようものなら著作権侵害で訴えられる可能性が十二分にあることに注意。
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2020年06月04日
四畳半神話大系A
- 樋口師匠
京大特有の極めて自由度の高い学風ゆえにありがちな、留年しまくり崖っぷちの八回生である。城ケ崎は映画サークルみそぎを忌々しい独裁体制で仕切っているのに対して、樋口の方はロクに大学に行っていない様子。基本的に半日以上、家を空けない。
茄子のようなしゃくれた顔で、毎回同じ浴衣と高下駄を身に纏い、英語が喋れるわけではないのに人種関係なく誰とでも仲良くなれる。夏には涼める場所を百個ほど知っており、尋常じゃないほどの感知能力を持ち、身体の方も凄いらしい。自由気儘に自由を謳歌し、堂々と生きることに専念している姿は、紳士の鑑か阿呆の骨頂。ちなみに「夜は短し歩けよ乙女」ではノーパンであることが発覚している。印象としては、「仙人、もしくは貧乏神」といった具合に極端であるが、中々的を得ていたりしている。
私との出会いは、下鴨神社の界隈に出没する猫ラーメンの屋台。ネコラーメンの店主と馴染みであるが、樋口・羽貫・城ケ崎・ラーメン屋のマスターは、実は同回生であり、よく見知った顔見知りである。
「私」がラーメンを啜ろうとした傍で、ナイアガラ瀑布が逆流するような勢いで麺を啜り、『かもたけつぬみのかみ』たる縁結びの神を自称し、「私」の大学生活二年のむにゃむにゃとしたキャンパスライフでの痛いところを突いている。それから、埃塗れの古びた本を取りだし、明石さんとの縁を結ぶことを口にする怪人であるが、五山(送り火)で逢引きに誘いなさいと述べているものの、明石さんと「私」の交際のキッカケは小津が計画したものである。つまり神でも何でもない。
後に、城ケ崎の暴露映画を小津と「私」が制作する時にアドバイザーとして呼び出されたのであるが、映画内容が曲解すればするほど内容を面白がる姿を見せている。
また、「私」が樋口の下へ弟子入りする羽目になるのだが、その室内は深窓の御令嬢ならば一瞥しただけで卒倒するレベルの汚染ぶりであり、未知の生態系が出来ていてもおかしくないほど汚いものらしいが、樋口は特に気にすることなく、海底二万海里を読みふけり、経路をたどっているのか、地球儀でマチ針を刺している。
樋口の他の動向としては、自転車回で盗まれた「私」のロードバイクでしまなみ杯を優勝したり、ほんわか回では彼女である小日向さんと飛行船で送り火を遊覧しようとした騒動で小津の助力に入ったりなどしているが、一番の醍醐味は城ケ崎との自虐的代理戦争だろう。
自虐的代理戦争は、太平洋戦争以前に勃発した汚い汁を汚い汁で洗うような、みみっちい争いのことである。事の発端は恋の鞘当て、もしくは濁り酒の飲み比べだったとか言われているものの、社会の動向とは関係なく発達していき、事がうやむやになることを嫌がった初代は弟子を取って、代理戦争を続行させていたのである。城ケ崎の暴露映画の製作中、面白がっていたのは代理戦争の因縁の為であろう。
不毛なキャンパスライフを取り戻すべく、小津が福猫飯店の総長になった際はおこぼれにあずかる形で、自転車整理軍のトップになった「私」に、「純愛など幻想」など割り切り、人が羨む人生を手に入れないながらも、どこか納得のできない空虚な日常を送っていた。
その時に、「私」は『もっと他の可能性があったのではないか』と、樋口に愚痴を漏らす形で正直な心情を吐露しているのだが、年長者――もしくは、似たような感性や経験があったのか、先輩なりのアドバイスをしている(余談だが、樋口の代理戦争の師匠は城ケ崎タイプで、城ケ崎の師は樋口のようなタイプだったとか)。
「なんだ、寝ぼけているのか?」
「可能性という言葉を無限定に使ってはいけない。我々という存在を規定するのは、我々が持つ可能性ではなく、我々が持つ不可能性である」
「君はバニーガールになれるか? パイロットになれるか? 大工になれるか? 七つの海を股にかける海賊になれるか? ルーブル美術館の所蔵品を狙う世紀の大怪盗になれるか? スーパーコンピューターの開発者になれるか?」
「我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根源だ。今ここにある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはならない。君がいわゆる薔薇色の学生生活を満喫できるわけがない。私が保証するからどっしりかまえておけ」
との言葉を「私」に残している。
その後、樋口は一応恋人である羽貫を世界一周の旅行に誘っているものの断られ、単独で赴くことになる。
が、最終回で不運にも「私」は樋口の下へ代理戦争の弟子入りをしたが、必死の説得により羽貫さんと一緒に世界一周の旅に出ることになった。旅費はしまなみ杯の優勝賞金。
- 城ケ崎先輩
樋口同様、崖っぷちの八回生で無類の乳好きにして潔癖症。樋口とは異なり、水も滴る良い男。本命は香織さんであるが、羽貫さんにちょっと気があるような描写がある。潔癖症だから、歯科『衛生』士というところが高感度アップのポイントなのだろうか?
映画サークルみそぎで、独裁体制を敷いているが、それは学校の成績が低空飛行ゆえの単なる現実逃避である。マザコンかつ哺乳瓶でプロテインを飲んでいる上、おっぱいジャンキーであるために、水着審査ではおっぱいの大きさ・向き・距離を鼻の下を伸ばしながら、監督していた。距離……?
映画サークルみそぎでは「私」と小津の策略がなくとも、相島という男に嵌められ、サークルを追われるなど、基本的にどの回での運命はあまり変わりない。
しかし、ロードバイク回では高校生時代などで非活動的な男たちと燻ぶっていた「私」の貧弱な体を短期間で鍛えるなど、人の良さを見せている(しかし、その鍛錬は無駄どころか余計な結果を迎えることになる)。
また城ケ崎は香織(清楚なラブドール)を溺愛しており、髪の毛を丁寧に梳くだけではなく、化粧や香水などを施すなどの、まるで本物の女性に対するような思慕の情をかけている。「私」に自分の身の回りが物騒だからだと預けた際は、香織接待マニュアルなるものを渡すほどである。入れ込みようが凄い。一度迷い込んだら抜け出せない恋の迷宮である。
そんな溺愛されている香織さんだが、代理戦争や相島が明石さんから尊敬を得るために幾度となく攫われそうになりながらも、どうにか貞操だけは城ケ崎の「チェストー!」の掛け声と共に死守されている。
代理戦争の弟子は小津であり、羽貫さん立ち合いの元、じゃんけんで不毛ないたずら合戦を仕掛ける先攻か後攻かの勝負を決めた後(じゃんけんは城ケ崎の勝ち。つまりは代理戦争において小津が先攻)、「良い歳だし就職する」ことを発言しながら、羽貫さんと一緒に呑みに行った。
- 羽貫さん
歯科衛生士。樋口の恋人でもあり、勤務先の上司からセクハラを受けている人。好物はカステラとエチルアルコールで、彼女との呑みに付き合う場合、地獄のエンドレスナイトを味わった上、顔をなめられるという謎の酒癖を発揮する。「夜は短し歩けよ乙女」では、タダ酒飲みの達人であり、見知らぬ会場などをしたり顔で乱入する様子が見られる。
「私」が羽貫さんと出会うのは、鴨川デルタのコンパ会場で和気藹々と飲み会をしている連中に向けてロケット花火を爆撃し、逃走の果てに小津と一緒にいた場面を目撃されている。「私」があの女性は何なんだと八つ当たりが過ぎることをしているが、彼女の正体は単なる歯医者で小津はその患者となっているだけである。
小津は「私」に「若い女性に指を突っ込まれる機会は早々ないだろうから行け」と言われ即座に断りつつも、別の回では「ねっとりと歯茎マッサージをしてくれる歯医者がある」と聞き行くなど、落ちるとこまで落ちた節操なしが見える。羽貫の元に歯医者の治療をしている小津であるが、羽貫曰く「小津は治りかけたかと思ったらいつも来なくなるから何時まで経っても完治しない」とか。
「私」とは樋口の元へ弟子入りした際に闇鍋パーティーなど、間接的なものであるが、本格的に茶飲み友達になるまで交流に至るキッカケとなったのは、英会話サークルである。サークルでは小津といった共通の知り合いがいたことから親しくなっていった。
羽貫さんの英語力は驚異のソウルトークの達人であり、「バッチーン! クルクルバッターン! ノックアウト!」といった具合に非常に壊滅的なものでありが、講師にはちゃんと意味が伝わっている奇怪さを有している。その他にも歯の知識を交えた英語力のプレゼンをしながら皆のデンタルIQが上がると同時に、セクハラ上司窪塚の悪口を言い、ある程度ストレス発散になっている模様。
しかし、英会話が終わった後、「私」と毎回お茶をする仲になりながらも、小津に彼女がいることを漏らしながら、ほったらかしにされるよりもこうして構ってくれた方が良いのではないだろうかと漏らしている。
そしてその後の英会話教室において、やけに英文が整い覇気のない羽貫を「私」が目撃することになる。「私」はそのことが気がかりになりつつも、サークルが終わったあと、はじめて飲みに誘われるのだが(酒の悪癖のため羽貫は親しい人としか飲まない)、その時の「私」は顔も知らない文通相手・物言わぬ無言の美女香織さんといった具合に、桃色遊戯の盤上ゲームの上であった。
咽喉をかきむしるほど睦言を語らなくてはいけない事態にうんざりとしながらも充実感を感じる「私」であったが、羽貫か、文通相手か、香織さんかのいずれかの選択をするにしても、友人として見捨てることが出来ないのか、緊急事態だと判断して一番最初に羽貫を選ぶ。
推測するところ羽貫が落ち込んでいた理由は、恐らく樋口が代理戦争を終わらせた後、世界一周の旅行に出ると言い、精神的な無頼漢にはよく分からないが、誘いを断りながらも相手にしてくれなかった複雑な乙女心からくるものだと思われる。ちょくちょく欄干で叫ぶ姿が度々目撃されている。
その後、「私」は羽貫さんの部屋に案内されるのだが、室内での一連の出来事でジョニーの粗ぶりが凄かった。
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2020年06月03日
四畳半神話大系
『四畳半神話大系』とは、著:森見登美彦により執筆された小説であり、後にノイタナミ系でアニメ化された作品である。基本、アニメや実写化などは成功しても原作越えするモノはそうそうないが、四畳半に限って述べるなら、原作越えをしたといっても過言ではない名作となっている。
作品はループもとい平行世界線の作風。
神話大系とタイトルされながらも、その内容は鬱屈としたキャンパスライフがバラ色にならないか夢を見つつも、悪友である小津と共にマリアナ海溝レベルの不幸のどん底に落ちる内容となっている。
小説・アニメ共に語り口調が軽快なので、読むもよし、見るも楽しいモノとなっている。アニメ回によっては主人公である「私」がほとんどセリフ台本を読むなど、声優さんが酷使されている。あと「私」は小津の声真似が巧い。
舞台は奇人変人が跳梁跋扈する京大なのだが(今ではいくらかマシになったらしいけど)、実際の京大の逸話でドイツ語の授業にドイツ人を連れてきた話と、イチゴ狩りという名のイチゴの着ぐるみを着た人間を追い掛け回す鬼ごっこで笑った記憶がある。
【内容】
- 私
下鴨幽水荘に下宿する京大の浪人生。
下宿先のおんぼろっぷりは文化遺産レベルではじめて立ち入った時、九龍城に入ったと錯覚するレベル。下鴨幽水荘は焼失以後再建されたものの、明かりがついていなければ廃墟当然で、たとえ下宿が倒壊したとしても、誰も気に留めないどころかスッキリするだろうと述べている。
生後間もない頃の「私」は純粋無垢の権化であり、光源氏の赤子時代もかくやと思われる愛らしさ、邪念の欠片もない笑顔を持っていたが、異性からの孤立・学問の放棄・肉体の衰弱化など、打たんでも良い布石を悉く狙い澄まして打ちまくった人。
下鴨神社で夜な夜なネコから出汁を取っていると噂されている(真偽の方は定かではない)屋台ラーメンで売られているネコラーメンを愛している。
サークル内で失恋以後、恋ノ邪魔モノとして、川向うにいる軽佻浮薄で浮かれた人たちに向けてロケット花火で爆撃したり、安い金毘羅群をかくやと言わんばかりに死神の出で立ちをした黒いキューピットとして根本的に間違った活動をグローバル的に行っていた。
失恋したショックか、恋愛に対する妨害っぷりは顕著で、赤外線センサーのように張られ結ばれた赤い線を東西南北に至る全方面を斬るため、あらゆる努力と労力を払い快感を覚えているなど、極めて敗北に近い勝利を収めてきた。
自分のことは棚に上げがちだが、ヒーローショーで明石さんを助けるなど、結構勇気のある行動をしている辺り、性根の先っぽ程度には腐敗していない様子。
ジョニーを放し飼いにしないように、「男女の仲は靴紐のように結ばれてはいけないと」涙ながらに説得して飼い殺しにしているが、可憐な乙女である香織さん(ラブドール)の前では、彼女を誘拐して遠い地域に行き、慣れない土地での仕事は苦しいだろうがやがて子供を設けるなど、トチ狂った妄想をしていた。
明石さんの落とし物である五組で1セットのもちぐまの一匹を所持しており、占いの婆から「好機はすぐ目の前にあります(物理)」と述べられ、小津から渡されたカステラを悪鬼の形相でもぐもぐした後、下宿内で天井から常にぶら下がっているもちぐまに気が付くも、矮小に肥大化したプライドと、石橋を粉々に打ち砕いても構わないほど慎重な性格から、肝心な一歩が踏み出せないでいる。
「できることならあの日に戻りたい!」の一声で時間が逆行し、時計台でどのサークルに入るかなど、選択を変えることが可能。
小説版では各話の終わり毎に、喫茶店で茶をしばいて仲が進展するものの、アニメ版では最終回でのみ結ばれている。
- 小津
「私」曰くホモサピエンスの面汚しで、十人中8人は妖怪と見間違え、2人は妖怪だと納得し、顔色が悪くまるで月の裏側からきたような相貌をしたぬらりひょんのような青年。だが、後で「私」が小津のことを『妖怪と見間違えるのは相当見識の狂った人間の了見だろう(お前のことだよ!)』と述べているあたり、本来の顔は相当愛嬌の好いものらしい。小説の方でも「愛らしい莞爾〜」などと記載されている。
性格は天邪鬼で常に他人の不幸を希い、情報通で破廉恥な噂を全て把握しており、「私」が油を撒く傍から火を点けて回っている。小津の悪事はワールドワイド。
かなり社交的なのか知り合い(と敵)が多く、人から愛される秘訣を持っている。実は「私」の恋の応援者なのだが、懇々として尽きない親切心は非常に回りくどく、分かり難い。「僕なりの愛です」と小津なりに「私」に友愛の姿勢を見せているが、「そんな汚いモン要らんわい!」と無碍にされているものの、鉄でコーティングされたかのような面の厚さを持つ小津には効かない。でも、ドス黒い糸で繋がっているのでどれだけ邪険にされても大丈夫。
「私」と同じく、京大生だが電子も工学も嫌いなのに工学部に所属しており、様々なサークルに所属している所為か、成績は低空飛行。なお、しいたけが嫌いで「なんですかこのヒダヒダは」と言うだけではなく、食べている人を目撃した際、馬糞のつまみ食いを目撃しているかのような嫌悪の表情をあらわにする。
師匠である樋口を師事しており、師匠が望む無茶振りに等しい要求(ダイオウイカ)などを望むままに持って来る。だが、師匠の浴衣を桃色に塗り替えるなど、自虐的代理戦争で裏切ったりしている。
家は砂糖菓子のような見た目をしたマンションで、羽貫さんと明石さんは家にあげたことがあるが、「私」は招くどころか住所すら教えていない。だが文通回で、ダークスコルピオンと小津が命名している黒い自転車で出ていくところを住所と共に目撃されている。親からの仕送りはたんまりで、その上、実は「私」が恋慕していた小日向さんと付き合っており、彼女の前だけでは大人しいだけではなく、別れ話が出た時、羽貫さんに泣きついて相談するなど、想いは一途ではある。小日向さんと一緒に撮った写真では、笑顔が引き攣っていた。
「私」の部屋に毎回カステラを置いていく人。
小津曰く「カステラを一人で食べるのは孤独の極致」らしいが、それは真実である。
- 明石さん
色白かつ知的で運動神経も良いが、歯に衣着せぬ物言いで同会生からは敬遠されている存在。城ケ崎先輩は冷ややかで知的な顔と乳には興味があるものの、完璧すぎる彼女を前にして自身のプライドが傷つけられることを恐れて、中々近づけないでいた。でも、城ケ崎にはもうすでに選ばれた相手がいるし……。
何をするにもそつなく万事手回しの良い彼女ではあるが、蛾だけは苦手であり、「ぎょえええ!!」の悲鳴と共に、ほとんど毎回蛾を握り潰す。「私」からは「手を放すんだ、明石さん!」と訴えるも、恐怖で混乱した彼女には聞こえていない。蛾を放した後、「むにゅっとしてました。むにゅっと!」と言いながら、もちぐまをモギュモギュするのがクセ。
「私」が映画サークルみそぎで新作映画を発表したとき、周りから非難轟轟のモノであっても、「また阿呆なものを作りましたね」と言いながらも、「嫌いではない」らしい。だが、城ケ崎の秘密暴露上演会では、さすがに品性を疑った。
また、「私」の話すネコラーメンが食べたいらしく約束しているものの、本人から忘れられている(が、天井にぶら下がったもちぐまを見る度に、「約束ってこれか……」とふと思い出す瞬間があるが)。
「私」が過去をやり直す度に、所属しているサークルが異なる。
ガチ自転車であるロードバイク回では男女総合優勝し優勝賞金をバードマンに使う、福猫飯店では映画サークルみそぎに、文通回では小津の代わりに代筆したり、樋口師匠に弟子入りしたりなど、小津ほどではないが結構活発的である。
「私」が明石さんに惚れた理由は、ところはばかることなく述べるなら、古本市でもちぐまのことを訪ねた時、これまでヨーロッパの城壁のように堅牢だった表情がほころんだ瞬間である。
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2020年06月02日
アル中カラカラ
『アル中カラカラ』とは、例のアレである。詳しい実態を述べるなら、手の込んだ自殺料理動画をニコ動で配信している(もしくはしていた?)、『ハイボールの人(wawawa)』である。最近(?)では、アル中パウダーが粉プンプン漂って粉塵爆発しそうかも。生死不明。
【内容】
まず、動画の内容は全体的にどこを取っても、お世辞には綺麗とは言えない料理風景である。『ハイポーションを作ってみた』以上の狂気の産物でしかないのだが、なぜだか定期的に見たくなる不思議さを兼ね備えている。単純に怖いもの見たさかもしれないが、もしかして……中毒? 一般人と自覚しつつある大蛇丸のように定期的に休肝日を設けて欲しい。生きてほしいかも……。
動画内によく映っているのは、畳とキーボードといったもので、台所で料理はしていない。電子レンジを使用した回があることから、キッチンはあるようだが、そこで料理をしている姿をほとんど見たことがない。
ピザ(でも実際はチーハン)を作る回で、挽肉をまじぇまじぇする時、ゴム製の薄い手袋を装着しながらも、皿は段ボールを使っているなど、ツッコミどころ満載。
料理は分量さえ間違っていなければ、実に美味しそうなものだろうが、一回の料理につき使用される調味料の量が凄まじく、七味ならば一瓶、チューブは一本丸々使い切りが当たり前で、必ずといっていいほど、味の素をドカドカ大量投下。味覚もおかしい。ケーキを作った際は小麦粉の代わりに鶏肉を代用していた。糖質制限で炭水化物を避けているらしいが、調味料の時点でおかしいから。
また、炊飯器は万能調理具なのか多く
料理中、もしくは開始前、場合によっては食事中と食後に、1リットルほどの容量を持つ金属製のコップを揺らし、カラカラさせ(比率はハイボ8もしくは6に対して、炭酸水は2か4ぐらいの割合)、「お゛い゛し゛い゛か゛も゛〜゛」と言いながら、作った料理と共にイッキキする。早飲みの上に、音がなんかもう……。
自炊が主な動画内容だが、釣りや結婚式会場に出て、ただひたすらハイボールを呷っている。料理以外にアル中ステップなる独特の足の動きを見せているが、全体的に紫色でなんかもう本人の健康がヤバい。小道具にはこだわるタイプらしく、種類が豊富。なぜか、双眼実体顕微鏡を所持していた。なんで?
水道代を払い忘れた回では、洗濯物をコインランドリーで洗う際、コンビニで大量につまみと怒涛の数量のハイボールを購入し、未支払いを支払いに行く辺り、金のある独身貴族だと推測される。
【アル中パウダー】
刺身回でご本人により作られた謎のパウダー。量さえ間違ってなければ、おいしいかも?
パウダーレシピは、
- S&B(からし) 4缶(140g)
- S&B(ワサビ) 4缶(140g)
- S&B(一味唐辛子) 6本(90g)
- 味の素 1袋(400g)
となっている。
他の勇士ユーチューバーにアル中パウダーが作られている姿が散見されているが、実際に作っている動画を見たところ、粉に咽喉がやられてせき込んでいる様子が確認された(発案者たるwawawaもせき込んでいたし……相当なんだろうな)。
また、アル中カラカラの作った料理は食べられるか、レシピを完全再現する猛者まで現れている。食事の全体的な感想としては、「食べれないことはない」、「(本来味付け用のはずの)ポン酢で味が薄められる。こんなこと初めて」といった食レポが述べられている。
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2020年06月01日
外科室
『外科室』とは泉鏡花の短編小説。ジャンルは恋愛。
地の文は森鴎外の「舞姫」のような感じで、少し内容を把握するのが難しい。でも、金色夜叉の原文や、悪文で有名な小栗虫太郎よりかは、非常に分かり易く読みやすい。
この小説には泉鏡花なりの哲学である、「恋愛と結婚は矛盾している」といった要素が含まれている。
【内容】
時は明治で、まだ貴族の身分制度のある時代。
そんな折、高峰のところに貴船婦人の外科手術の仕事が舞い込む。高峰が外科室に行くと貴船婦人は蒼白になった姿でベッドに臥していた。目を閉ざしながら魘されるように眉を顰めさせている姿であった。
やがて看護師が現れて、婦人に麻酔を投薬する旨を伝えるのだが、彼女は「病気が治らなくてもいい」と言うのであった。
これまで手術を拒否するような姿や態度を見せてこなかったのに、突如拒否する姿に皆は困惑を隠せないでいた。
そこまで手術を拒否するのであれば、娘を連れてくればよいだろうと提案するも、とうとう観念したのか、貴船婦人は「私にはある秘密がある。それは誰にも聞かせることのできないものである」と伝えるのであった。
「その秘密は夫にでも言えないことなのか」と尋ねるも、肯定の返事を出す婦人。
皆は婦人を説得するために、「麻酔剤を打っても必ずしも眠っている間、誰にも言えない秘密を譫言のように口にするとは限らない」と述べるも、「これだけ思っていればきっと言ってしまう」と、頑なの態度の婦人。
手術を断固拒否する婦人に娘を連れてくるように使用人に命じさせようとしたところ、「麻酔がなくても痛くない。じっとしている」と訴えるのであった。看護師は爪を切るのとは違うのだから、大人しく麻酔を受けてくれと述べたところで、婦人はいきなり「執刀するのは高峰だろうね」と確認をすると、そうだとの返事が返ってくる。
大きな病なのでおかしくなったのかと言われる中、手術は日を改めてすればいいのではないかと言うものの、それでは貴船婦人は助からないと伝えられるのであった。
高峰はとうとう決心が固まったのか、看護師にメスを消毒させ、彼は貴船婦人の胸を切り裂くのであった。
麻酔もなく、肉体を切り裂かれるのは苦痛以外の何物ではないのに「痛みますか?」との応答に「いいえ。あなただから。あなただから」と答えるのであったが、「でも、あなたは私を知りますまい!」のどこか恨みがましそうな声に、高峰は確と「忘れません」と答えるのであった。
その返事を最後に高峰夫人は絶命したものの、二人の姿には天地、社会、人間などの理などない、純愛の姿があったのだ。
【ネタバレ】
この作品の裏側を説明すると、まず高峰が医者になりたての頃、実は貴船婦人と出会っていたのである。出会っていたといってもそれは決して邂逅などといえるものではなく、路傍の人間がすれ違った程度のものであったが、横を通るだけの極わずかな接触だけで、両者は一目惚れしてしまった。
双方はそのことを忘れることなく生きてきたのだが、数奇な運命か、婦人の生死が天秤にかけられようとしたときに出会ってしまったのである。
華族や貴族制度が廃止された世の中ならば、二人は問題なく結ばれていたことであろうが、時代がそれを許さなかった。現代では当たり前な自由恋愛など、無かったのである。
話の結末として、婦人の死後から一日後、高峰は自死し、曽根崎心中的な結末を迎えたのである。
当時、泉鏡花の「外科室」を読んだのは中学生ぐらいの時期であったため、話がよく分からなかったものの(文章がちょっと難しかった)、話の盛り場であるメスで婦人が刺されるシーンが壮絶で、文章も美しかったことから度々読み返す名作である。続きを読む...
2020年05月30日
サイレンヒルPT
『サイレントヒルPT』とはPS4でコナミから配信された、体験版のゲームである。現在は配信が禁止され、その内容の恐ろしさから伝説級のゲームにさえなっているほど。私はホラーゲームに対して恐怖心を抱くことはなかったが、PTに限って言うならば、傍から見るならまだしも、ソロプレイは土下座して勘弁するほどである。
一人視点のプレイと、イザナミの如く無限ループし、徐々に内装が変わるだけの内容なのに、その斬新な切り口のやり方は様々な反響を呼び、派生作品が出ているほどのものである。バイオ7でもPTのオマージュが出るほど。
【内容】
まず、主人公である男性は地下室と思わしき部屋で目を覚ます。プレイ直後に目撃するのは、リアル過ぎるゴキブリの交尾で「おげえ」となるが、プレイが進むにつれてゴキブリに安堵感を覚える。それほど怖いゲームなんですよ、イヤホントマジで。
主人公は立ち上がり、地下室から出ていくのだが、次に目の当たりにする部屋は一本道の廊下と酒瓶や写真に絵画、そうして「23:59」と表示された電子時計である。
廊下を過ぎると、左に曲がることができ、トイレ付き浴槽と、ギシギシと揺れながら天井からぶら下がっている照明を見ることができる。照明付近には出口である玄関のドアがあるが、電話がかからない限り、絶対に開くことができない。
浴室の方もある一定の条件を満たすと、出入りが可能であるが、いろんな意味でなるべく出入りしたくない空間である。
照明から更に進んだ先には、ラジオがあり、ゲーム内の設定的なヒントをくれる。ラジオが流す放送としては、「浴室で妊婦を殺害し、夫は車内でラジオを聴いていた」というものであるが、プレイを進めるにあたって、どのような状況なのか、ある程度理解できる。
ラジオの傍を過ぎると、地下に続く階段と扉があり、ドアを開くと地下室ではなくL字型の廊下に突入することになる。時計を見ても「23:59」から時間が変わっていないが、一本道の廊下を折れて、ギシギシと揺れる照明と浴室に、ラジオからの地下室のループを何度か繰り返していく内に、周囲が暗くなり、出てくるゴキブリの量も増えるだけではなく、明らかな超常現象が起こる。部屋も汚くなっていく。
僅かに開いていた浴室のドアを素早く閉ざす女性。
部屋中に響く赤ん坊の泣き声。
照明近くの窓ガラスの落下。
不穏な息遣い。
やがて、ループを繰り返すことによって浴室の中に入ることが出来るのであるが、そこにあるのはライトと、手洗い場と思わしき場所に歪な形をした赤ん坊と、大量のゴキブリに、壁を穿った弾痕である。明らかに貫通したこの銃跡は、室内が赤くならないと外側から観察できないなど、明らかに不自然。
ライトを手に浴槽から出、また地下室へ行き例の如く無限ループを繰り返すのだが、ラジオの放送内容が変わる。
「話を最後まで聞け」、「水道は危険だ」のあとの『後ろを振り返りなさい』といった指示がなされる。ここで振り返るか、そうしないかでゲームクリアの難易度がグッと上がるらしい。基本的にラジオの言うことを真に受けてはいけない模様。
やがて、幾度となくループを繰り返していくと、『後で電話します』の文字が画面一杯に広がると、主人公は地下室に戻る。
はじめの地下室とは違い、ゴキブリの代わりに喋る紙袋が出てくる。紙袋の中は、誰かの頭部が入っているらしく、「俺は俺だ」、「お前は俺か」、「やがて自分の背中を見ることになる」など、ループモノ特有のセリフを吐くのである。
紙袋を見た時点で気付いた人がいるかもしれないが、地下室の壁が妙……ズームインして壁面をよくみると、そこにあるのは遭難したときに日数を数えるアレがビッチリと刻まれている。その数は一つや二つだけではなく、数えきれないぐらいあり、このカウントは恐らく、主人公がループした回数だと思われる。
再び地下室から出ると、視界が真っ赤になっており、超高速で移動可能になる。精神状態がまともじゃないためか、視界がぼやけているが、外部からバスルームの中を覗くことが出来る穴(銃痕)を見ると、女性が殺される場面を目撃することになる。
殺害シーンが終わると動きが普通になり、またしても地下室へ続く階段へ行きループするのだが、浴槽以外に明瞭な変化が起きる。
まず、「23:59」が「00:00」と時間が進んでおり、照明の代わりにぶら下がっているのが血液を流す、もしくは粗ぶった動きを見せ赤ん坊の泣き声が聞こえる冷蔵庫を目の当たりにする。
やがて、写真の入手や歩数など様々なクリア条件に必要行動を行う必要があるのだが、PTで明確なクリア法は確立しておらず、「気が付いていたら終わっていた」というものである。まだ解明されていない部分があるのか、バスタブに首切り死体の女性があったり、洗面台を照らす明かりの色が赤や緑など、隠し要素がまだあると言っていいかもしれない。
【余談】
サイレントヒルPTの大まかな粗筋を把握するところ、
- 夫が仕事をクビになりやがて酒におぼれるようになった。
- 妻がパートで生計を立てるも、彼女が働くことが出来たのは店長に気に入られたからである。
- 一家心中の事件は同様の地域で複数回発生している。
- 事件発覚前、隣家に聞こえるほど謎の数字を夫が発していた。
- 夫が妻を殺害した理由は、店長との不倫を疑った。
といったところだろう。物凄く設定を分かり易く述べるなら、呪怨の伽椰子みたいなものだろうか。
だけど、「リサ許してくれ、俺の頭の中には化け物がいる」といった内容から、一家惨殺を行った夫は仕事をクビになる前から、他の一家惨殺同様、何かしらの怪奇現象にあっていたと思われ、色々矛盾がある。
PTは何の説明もなしにゲームが始まる上、L字型の廊下を歩く主人公が一家惨殺した本人なのか語られていない上、ラジオから流れる情報が他の一家心中の内容と混ざり合っているため、ますます謎が謎を呼ぶ。
主人公の背後を付きまとう幽霊もリサであると明言されていないので、さらに謎が深まる。でも、多分リサでほぼ間違いないんだろうけど。
一番不可解なところは、主人公がループを繰り返しているうちに廊下の絵画に銃痕があるのだが、そこから殺害現場を目撃している点だろう。穴の視点の高さのため、殺人犯の顔を拝めることはできないが、拳銃の音が聞こえず耳にするのは、刃物らしきもので惨殺する様子である。バスタブで首切り死体となった女性との関連性が疑われる。
果たして、L字型の廊下を進みループしている男性は実行犯なのか、目撃者なのか……目撃者であれば地下にいた理由も何となく分かるような気がする。
配信が終了され、やるかどうかは別として、現在ではプレイできない内容になっているサイレントヒルPT。
本編が発表されていたら、どのようなストーリー内容になっていたのか、開発と配信中止を含めて、非常にがっかりである。
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