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2020年06月01日

外科室


『外科室』とは泉鏡花の短編小説。ジャンルは恋愛。
地の文は森鴎外の「舞姫」のような感じで、少し内容を把握するのが難しい。でも、金色夜叉の原文や、悪文で有名な小栗虫太郎よりかは、非常に分かり易く読みやすい。
この小説には泉鏡花なりの哲学である、「恋愛と結婚は矛盾している」といった要素が含まれている。

【内容】


時は明治で、まだ貴族の身分制度のある時代。
そんな折、高峰のところに貴船婦人の外科手術の仕事が舞い込む。高峰が外科室に行くと貴船婦人は蒼白になった姿でベッドに臥していた。目を閉ざしながら魘されるように眉を顰めさせている姿であった。
やがて看護師が現れて、婦人に麻酔を投薬する旨を伝えるのだが、彼女は「病気が治らなくてもいい」と言うのであった。

これまで手術を拒否するような姿や態度を見せてこなかったのに、突如拒否する姿に皆は困惑を隠せないでいた。
そこまで手術を拒否するのであれば、娘を連れてくればよいだろうと提案するも、とうとう観念したのか、貴船婦人は「私にはある秘密がある。それは誰にも聞かせることのできないものである」と伝えるのであった。
「その秘密は夫にでも言えないことなのか」と尋ねるも、肯定の返事を出す婦人。

皆は婦人を説得するために、「麻酔剤を打っても必ずしも眠っている間、誰にも言えない秘密を譫言のように口にするとは限らない」と述べるも、「これだけ思っていればきっと言ってしまう」と、頑なの態度の婦人。

手術を断固拒否する婦人に娘を連れてくるように使用人に命じさせようとしたところ、「麻酔がなくても痛くない。じっとしている」と訴えるのであった。看護師は爪を切るのとは違うのだから、大人しく麻酔を受けてくれと述べたところで、婦人はいきなり「執刀するのは高峰だろうね」と確認をすると、そうだとの返事が返ってくる。

大きな病なのでおかしくなったのかと言われる中、手術は日を改めてすればいいのではないかと言うものの、それでは貴船婦人は助からないと伝えられるのであった。

高峰はとうとう決心が固まったのか、看護師にメスを消毒させ、彼は貴船婦人の胸を切り裂くのであった。
麻酔もなく、肉体を切り裂かれるのは苦痛以外の何物ではないのに「痛みますか?」との応答に「いいえ。あなただから。あなただから」と答えるのであったが、「でも、あなたは私を知りますまい!」のどこか恨みがましそうな声に、高峰は確と「忘れません」と答えるのであった。
その返事を最後に高峰夫人は絶命したものの、二人の姿には天地、社会、人間などの理などない、純愛の姿があったのだ。

【ネタバレ】


この作品の裏側を説明すると、まず高峰が医者になりたての頃、実は貴船婦人と出会っていたのである。出会っていたといってもそれは決して邂逅などといえるものではなく、路傍の人間がすれ違った程度のものであったが、横を通るだけの極わずかな接触だけで、両者は一目惚れしてしまった。
双方はそのことを忘れることなく生きてきたのだが、数奇な運命か、婦人の生死が天秤にかけられようとしたときに出会ってしまったのである。
華族や貴族制度が廃止された世の中ならば、二人は問題なく結ばれていたことであろうが、時代がそれを許さなかった。現代では当たり前な自由恋愛など、無かったのである。
話の結末として、婦人の死後から一日後、高峰は自死し、曽根崎心中的な結末を迎えたのである。

当時、泉鏡花の「外科室」を読んだのは中学生ぐらいの時期であったため、話がよく分からなかったものの(文章がちょっと難しかった)、話の盛り場であるメスで婦人が刺されるシーンが壮絶で、文章も美しかったことから度々読み返す名作である。

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