2022年03月21日
瓶詰地獄
瓶詰地獄とは、夢野久作が執筆した小説。
内容は三部作(?)にわかれた短編小説なのだが、時系列がイマイチ分からないミステリー風となっている。
【内容】
第一の瓶
ああ……この離れ島に、救いの舟がとうとう来ました。
大きな二本のエントツの舟から、ボートが二艘、荒波の上におろされました。舟の上から、それを見送っている人々の中にまじって、私たちのお父さまや、お母さまと思われる、なつかしいお姿が見えます。そうして……おお……私たちの方に向かって、白いハンカチを振って下さるのが、ここからよくわかります。
お父さまや、お母さまたちはきっと、私たちが一番はじめに出した、ビール瓶の手紙を御覧になって、助けに来て下すったに違いありませぬ。
大きな船から真白い煙が出て、今助けに行くぞ……というように、高い高い笛の音が聞こえてきました。その音がこの小さな島の中の、禽鳥や昆虫を一時に飛び立たせて、遠い海中に消えて行きました。
けれども、それは、私たち二人にとって、最後の裁判の日よりも怖ろしい響きでございました。私たちの前で天と地が裂けて、神様のお眼の光と、地獄の火焔が一時に閃き出たように思われました。
大きな二本のエントツの舟から、ボートが二艘、荒波の上におろされました。舟の上から、それを見送っている人々の中にまじって、私たちのお父さまや、お母さまと思われる、なつかしいお姿が見えます。そうして……おお……私たちの方に向かって、白いハンカチを振って下さるのが、ここからよくわかります。
お父さまや、お母さまたちはきっと、私たちが一番はじめに出した、ビール瓶の手紙を御覧になって、助けに来て下すったに違いありませぬ。
大きな船から真白い煙が出て、今助けに行くぞ……というように、高い高い笛の音が聞こえてきました。その音がこの小さな島の中の、禽鳥や昆虫を一時に飛び立たせて、遠い海中に消えて行きました。
けれども、それは、私たち二人にとって、最後の裁判の日よりも怖ろしい響きでございました。私たちの前で天と地が裂けて、神様のお眼の光と、地獄の火焔が一時に閃き出たように思われました。
(本文内容)
順番を考えて、最後に出されたと思われる瓶の中に詰められた手紙と思って良い内容。
しかし、冒頭で出された瓶は全て三つであり、上記の内容が一番最後で間違いないのだろうが、全体的に内容がおかしい。
文章の最後では崖から身投げして、鮫に食われ、ボートに乗った人たちに何かを懴悔した手紙の内容を読んでもらう予定らしいが、手紙の入った瓶そのものが拾われていないことから助けが来たこと自体が、ほぼ幻覚である可能性が高い。
また、しきりに謝辞の言葉を述べているのだが、これは恐らく妹(アヤ子)の身の上に関するものだと思って良いだろう。
第二の手紙
ああ神様……ついに二人は、こんな苛責に会いながら、病気一つせずに、日に増し丸々と肥って、健強に、美しく長って行くのです、この島の清らかな風と、水と、豊穣な食物と、美しい、楽しい、花と鳥に護られて……。
ああ。何という怖ろしい責め苦でしょう。この美しい、楽しい島はもうスッカリ地獄です。
神様、神様。あなたはなぜ私たち二人を、一思いに屠殺して下さらないのですか……………………。
ああ。何という怖ろしい責め苦でしょう。この美しい、楽しい島はもうスッカリ地獄です。
神様、神様。あなたはなぜ私たち二人を、一思いに屠殺して下さらないのですか……………………。
(本文内容)
第二の手紙の内容では、二人が無人島に漂流して生活していく様が綴られている。
学校の真似事をしたり、狼煙をあげて偶然通りかかった船に救助を求めたりなど、最初っこそ中身は健全であれでこそ、徐々にその内容は狂っていく。
二人は聖書を何よりも大事にしているのだが、その戒律をきつく守り長い時間を過ごしているのだが、無人島に誰も来ることはない。
しかし、ある日狂った兄が聖書を燃やし、(少なくとも)兄の方はとある懸念を妹に抱くことになる。
これが聖書を燃やした罰だと思いながらもその感情は、肥大化していくのだが、直接的に何の感情だとかは書かれてはいない。比喩的な表現が使われている。が、どのようなものなのか、ある程度想像することは可能。
第三の手紙
オ父サマ。オ母サマ。ボクタチ兄ダイハ、ナカヨク、タッシャニ、コノシマニ、クラシテイマス。ハヤク、タスケニ、キテクダサイ。
(本文内容)
本文はこれだけで非常に短いものである。字の表現からして、漂流して間も無くといった感じを見受けるが、もしかしたらこの手紙が最後に出されたものかもしれない。
というよりも、三つの手紙を狂った兄か妹かのどちらかが書いて、三分割にして同日に流した可能性は、低いながらにもある。
瓶詰地獄は中々に推察しがいのある読み物で、中々に想像が尽きない。
あなたは、どの順番で瓶が投げ出されたのだと思ったのだろうか?
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