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2015年08月09日
帝国海軍のシゴキと教育「海兵四号生徒」
直木賞作家豊田譲の原作を大映が1971年に映画化した作品が「海兵四号生徒」である。
時は昭和12年、風雲急を告げる国際情勢のさなか、江田島海軍兵学校へ68期生300名が四号生徒として
入学するところから始まる。
生徒たちには、さっそく上級生からの姓名申告の洗礼が待ち受けていた。大声で姓名を申告しても「聞こえな
い」「声が小さい」「方言を使うな」と怒鳴られ鉄拳制裁を受けるのだ。
笑った矢沢(高橋長英)は、上級生の嶋ノ内(長谷川明男)に殴打され鼓膜を破られる。修正というの名のリンチである。
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しかし、柔道三段の腕前を持つ盛田(渡辺篤史)は決してひるまず昂然と立っていた。その根性は意地悪な嶋
ノ内も認めざるを得なかった。
さらに、四号生徒たちの苦難の日々は続く。カッター訓練、起床ラッパ、階段のぼりと苛酷な訓練で少しづつ
海軍士官として鍛えられてゆく。だが、矢沢は訓練に虚しさを覚え脱落してゆく。
そんなある日、盛田や十条、関谷の3人が金づちであることが発覚した。海軍士官が泳げないとは致命傷と
なる。
さっそく、嶋ノ内の指導のもと水泳訓練が始まるが、それは想像を超える苛酷なものだった・・
知られざる海軍兵学校の教育訓練が、ほぼ忠実に描かれていて資料的価値もある作品である。
主演の渡辺篤史といい憎まれ役の上級生の長谷川明男の軍服姿がりりしく軍人役が板についている。
この時代は多くの従軍経験者が生存していたし、役者もまた終戦からそれほど時を経ていないためか
役がよく似合っている。
今これだけの役者を見つけるのは難しいだろう。戦闘シーンはなくいきなり終戦になるラストはとってつけた
ようで残念な終わり方である。
まあしかし殴られるのは嫌だね。現在江田島には、海上自衛隊の第一術科学校がある。
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2015年08月08日
三船敏郎加山雄三松林宗恵「太平洋の翼」
と悲愴な考えに傾いていた。そんな中にあって千田航空参謀(三船敏郎)は、新鋭戦闘機紫電改の完成を待って
新たな航空隊を編成し本土の制空権を奪い返そうと考えた。軍令部の反対を押し切って千田は太平洋の戦場に
散らばった腕の確かな歴戦のパイロットを集めて最強の部隊を作ろうとしたのである。
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まず、硫黄島にいた安宅中尉(夏木陽介)は潜水艦で、ラバウルの矢野大尉(佐藤允)は敵の魚雷艇を奪い、そしてフィリピンにいた
滝大尉(加山雄三)は飛行機で敵の包囲網を突破して内地へついた。
3人の隊長は帰路、部下を多く失いながらやっとのおもいで松山の千田のもとへ赴いた。
部隊は343海軍航空隊として編成され、天誅組、新選組、維新隊の3つの隊に分かれた。
だが、彼らにくだされた命令は、飛行場からの航空機の退避ばかりで、特攻の連中からも臆病者とそしられ
やるせない想いでいた。
しかし、敵機動部隊から飛び立った艦載機の群れが南九州を襲撃したとき、遂に活躍のときは訪れた。
343航空隊の技量と紫電改の威力は凄まじく敵機63機も撃墜したのである。この戦果に軍令部は手のひら
を返し西日本一帯の防空を343飛行隊に任せることにしたのだが・・・
第343航空隊は通称剣部隊と言われ現存した部隊で、千田航空参謀のモデルは源田実大佐である。
紫電改は終戦末期に現れた優れた戦闘機であったがもはや戦局を挽回することはできなかった。
この作品には、海軍士官であった監督松林宗恵の平和への想いが強く反映されていて、滝大尉が死
んだ部下の
死体を空中へ断腸の想いで投げ落とすシーンやラストで米軍の戦闘機に向かって「日本の空から出てゆけ!」
と絶叫するシーンは忘れられない。また、渥美清が印象に残る役を演じている。
戦争の酷さ、非道さを苛酷なまでに表現した優れた作品である。音楽は、團伊玖磨、円谷英二の特撮は
素晴らしく編隊飛行や急降下など、最高レベルの操演技術を見せてくれる。戦争を画策する勢力がいる
今こそ見るべき映画である。
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2015年08月06日
フランコネロ「ガンマン無頼」
フェルナンドバルディ監督の「ガンマン無頼」も忘れられない作品である。
最初のシーンでは、ガンマン同士の激しい銃撃戦から始まる。無法者を倒した男は賞金稼ぎだったが、それを
保安官バートサリバンが横取りする。
主人公の保安官バートサリバン(フランコネロ)は、テキサスの小さな町で弟ジム(コレキトシュ)と暮らして
いた。
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だが、サリバンは安定した生活を捨てテキサスを後にする。それには理由があった。バートは幼いころ、
家を襲った山賊たちに親を殺されていたのだ。仇敵シスコデルガドを追ってバートは、メキシコへと向かう。
兄を英雄のように崇めていたジムは、恋人と別れバートの後を追う。弟の身の安全を考えバートは止めるが
ジムはいうことを聞かない。
仕方なく弟を連れてメキシコへ入ったが、そこは無法地帯だった。ひげ面の山賊が農民を水筒の蓋をあける
のを合図になぶり殺しにしていたのである。
唖然とするサリバン兄弟だったが、酒場でジムがシスコデルガドの行方を尋ねると客たちは急にだまり
異常な緊張が走るのだった・・・
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ネロのガンさばきは冴え渡り、山賊に前後を囲まれながら後ろの敵を蹴り倒すと同時に目にも止まらぬファニン
グで前の山賊を打倒し、翻って後ろの敵も射殺する。
実に鮮やかな手並みである。また、ウインチェスターライフルの使い方も板についていてすごく自然に扱っている。
相変わらず髭面だがそれが又ネロの野性味を引き出している。服装はジャンゴの時とは少し違ったロングコー
トを着ていてその上からホルスターを付けているのが実戦を意識したリアリティを感じる。
山賊との格闘シーンも相手の動きをかわしてうまく蹴りやパンチを入れているのも感心した。
個人的な好みでは、ネロ作品で私が一番好きな映画である。
哀愁のあるテーマ曲を歌っているのは、黒人のドンポウエルでメロディーも歌詞も素晴らしい。
このころ、ネロはハリウッドで次回作「キャメロット」の主演が決まっていてスケジュールがタイトなため
撮影期間はわずか5週間だったという。
夕陽をバックにテキサスへ帰るラストが妙に悲しい。
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B級パニック炎のゴキブリ「燃える昆虫軍団」
がある。オールドファンならおそらくよくご存知だと思う。
物語の舞台は、アメリカのある田舎町、教会に集まった人々は静かに牧師の説教を聞いていた。
そこへ突然の地震が発生し、人々は我先に逃げ惑うが、本当の恐怖はこれからだった。
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地震の被害で地割れが起こった場所から大学生のメトバイムは、ゴキブリ状の奇妙な昆虫を見つける。
昆虫に触れると発火し、ことの異常さにメトバイムは、大学の生物学の教授パルミーターに相談するが、
最初はいぶかしがってまともに取り合わなかった教授だが、メトバイムに昆虫を見せられて信じざるを得なかった。
しだい、昆虫に魅せられた教授は、昆虫の正体が地球最古のものであり、炭素を食べて生きていることを
突き止めた。
だが、この町では次々に昆虫に襲われ発火する犠牲者が続出する。
しかし教授は、研究にのめり込み昆虫をゴキブリと交配させ、新種を作り出すことに成功する。
だが、この新昆虫は自ら意思を持った恐るべき怪物へと変貌していたのである・・・
もともと、ゴキブリ嫌いの人もより一層嫌いになること受け合いの作品である。このゴキブリ怪物が
女性の耳や眼に張り付いたり、髪の毛に入り込んで発火させたりその気持ち悪さを体感で感じることができる。
怪物の生みの親の教授が、破滅するラストも忘れがたいシーンである。
監督は、フランス生まれのジュノーシュオーク、主演の教授役のブラットフォードディルマンの次第に変貌し
てゆく狂気演技も凄い。ゴキブリ軍団が「我々は生きる」と群れで文字を作るシーンも怖い。
この手のB級秀作は今ほとんど製作されなくなってしまった。
2015年07月26日
長谷川和彦水谷豊原田美枝子「青春の殺人者」
しながら歩くタイトルバックに、主人公水谷豊が、女物のオレンジ色の傘をさして実家へ向かうシーンから始まる
「青春の殺人者」は、寡作で知られる長谷川和彦監督のデビュー作であり日本映画史上に残る傑作といえよう。
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主人公の斉木順(水谷豊)は小さな自動車修理工場を経営する両親に甘やかされて育った若者である。
順は、父親(内田良平)のすすめで、スナックを経営するが、スナックを手伝う幼馴染のケイコ(原田美枝
子)と両親の折り合いが悪くそのことで両親とよく喧嘩になっていた。
ある日父親に取り上げられた車を取り返すため実家へ向かった順は、ささいなことで父親と口論になり、
順は父を刃物で刺殺してしまう。
息子の父親殺しを知った母親(市原悦子)は、半狂乱となり自首しようとする息子を押しとどめる。
法律を犯していることを自覚している息子に対して、家庭の問題に国家が立ち入るのはおかしいと息子を
さとし父の死体処理を手伝うが、勢いで息子を殺して無理心中を図る。しかしこれを拒否した順に反撃
されて殺されてしまう。
両親殺しという大罪を犯した順は、両親の死体に重りをつけて海に沈め、車でケイコと逃亡する。
だがふと一度スナックへ戻り仕事をしようと考えた。だが冷静な判断力を失っていた順は、ケイコのとめるのも
聞かずスナックにガソリンをまき火をつけるのだった・・・
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原作は、芥川賞作家の中上健次の「邪淫」を田村孟が脚本家し、長谷川和彦が大幅に書き換えたものである。
ストーリーはあってないようなものであるが、役者たちの演技がすごく水谷豊の危ないがもろい主人公の
大胆さと繊細さを見事に演じ、市原悦子の近親相姦的な誘いや殺害時の痛くしないでのセリフといい
ぞっとするような演出である。音楽は、ゴダイゴのファーストアルバム「新創世記」から引用されていて、
「思い出をきみに託そう」やエンドロールに流れる「憩いのひととき」は、後生に残る名曲である。
また主演の水谷豊の演技も素晴らしく、杉下右京しか知らない方は、犯罪者がぴったりはまるのを見て
驚くだろうがこっちのほうが地に近いのではないか。おそらく水谷豊はこれが生涯最高の演技だと思う。
ラストで順が、トラックの荷台に乗り込み逃げるシーンが忘れられない。
恋人役の原田美枝子の当時17歳とは思えない豊満な肢体が観れるのも見所であると言えよう。
なおこの映画のモデルとなった市原両親殺害事件の被告は、
冤罪を主張して再審請求中である。
とにかくいろいろな意味でも異様な迫力を持った映画であり、他にない作品である。
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2015年07月06日
汚職と戦う警官アルパチーノ「セルピコ」
「セルピコ」はぜひ見ておきたい名作だ。
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1971年ニューヨークのある救急病院に、ひとりの警官が顔面を撃たれて緊急搬送された。ヒッピー風の小柄な
男は、麻薬課に所属する私服警官フランクセルピコであった。
セルピコはなぜ撃たれたのか?映画は11年前のセルピコが警察学校を卒業して82分署に配属される回想
シーンへと移る。
子供の頃から警官にあこがれたセルピコは使命感に燃えて警察に入った。しかし正義と秩序の執行官であるべき警察は腐りきっていた。
やる気のない同僚とそればかりか、集金と称してマフィアの犯罪を見逃すかわりに、ワイロを受け取るのが
常識であったのだ。
不正を許せないセルピコは、同僚たちの腐敗ぶりを我慢ならなかった。当然のように同僚警官はセルピコを
仲間に引き入れようと、ワイロを受け取らせようとするが、断固拒否するセルピコは孤立してゆく。
セルピコは厄介者扱いで、各分署をたらい回しにされてゆく。このころセルピコはおとり捜査や潜入をやりやすくするため、髭や髪を伸ばしヒッピー風の外見に変えてゆく。
ある日やっとの思いで捕まえたマフィアのひとりを釈放しようとした同僚にセルピコはついに切れて
マフイアを半殺しにして、留置所に放り込んだ。
まわりのすべてを敵に回してセルピコは孤独だった。せっかく知り合った恋人にも八つ当たりし別れてしまう。
だが、第8分署に転任したとき、ロンバート警視が味方になってくれた。セルピコはそして警察の腐敗ぶりを
ニューヨークタイムスに告発する。
しかし、この報復でセルピコは上から最も危険なブルックリンの麻薬課へ転勤となった。
しばらくして、組織のアジトへ同僚たちと現場へと向かったセルピコだったが・・・
ゴッドファーザーやスカーフェイスとはうって変わって正義のヒーローをアル・パチーノが演じるが
このように善玉を演じても、はまるのはパチーノの演技力の凄さである。
ファッションもなかなかイケていて、踊る大捜査線の青島などもこの映画のセルピコの服装などを参考にして
いるようだ。
しかし、現在は知らないが当時のアメリカの警察の腐りぶりは驚くべきものがある。日本は大丈夫だろうか。
監督は、社会派映画の巨匠シドニールメット。
ギリシア出身のミキステオドラキスのテーマ音楽は名曲である。編曲はボブジェームス。
原作は「バラキ」のピーターマース。セルピコは実在の人物で映画はその体験を元にしている。
現在、セルピコは警官をやめたあと、スイスに滞在しているそうだ。
いつの世も筋を通すのは難しいものだ。正直者がバカを見るような世の中は終わりにしたいものだ。
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2015年06月28日
マックイーンの代表作「ブリット」
1968年製作のマックイーン扮するサンフランシスコ警察捜査一課のフランクブリット警部補の難事件解決
の警察映画である。
物語は、チャルマース上院議員(ロバートボーン)が、裁判の重要証言人のマフィアの一員ジョーロスを保護
してほしいと依頼してきたことから始まる。
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ロスはマフィアの金を横領してマフィアから命を狙われていた。
ブリットは同僚のスタントンと交代でロスを保護するが、スタントンのすきをついて何者かがロスを保護
していた部屋に侵入し、スタントンとロスは銃撃される。幸い二人とも命をとりとめたが、ロスは虫の息
だった。
重症のロスは病院で手当を受けるが、ロスが撃たれたことを知った上院議員はブリットを激しくなじる。
一方手当の甲斐なくロスは死ぬが、犯人逮捕のためブリットは担当医にロスの死を伏せてくれるように
頼むのだった。
このブリットの策略でロスがまだ生きていると思った組織は病院へ殺し屋を差し向ける。
罠にはまった殺し屋を追ってブリットの執念の追跡が始まった・・・
この映画の最大のみどころは、あまりに有名なカーチエイスシーンだろう。坂道の多いサンフランシスコの
道路をフォードマスタングやダッジチャージャーが物凄いスピードで疾走する場面は今見てもすごい
迫力だ。
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マフィアの一員ロスの存在も、裏があってひとひねりしてある。そのため少しわかりにくい面もあるが・・
意地悪な政治家ロバートボーンの存在がマックイーンの存在を引き立たせ、恋人役のジャクリーンビセットも
美しい。
監督のピーターイエーツはイギリス出身でこの映画でハリウッド進出を果たした。
ラロシフリンのジャズ風の音楽もでしゃばることなく効果的に挿入されている。
ラストでブリットが犯人を追い詰めて、ドアこしの銃撃戦の迫力は忘れられない。今はなきパンナム航空の
ジェット旅客機が写っているのは航空ファンにはたまらないだろう。
それにしてもマックインはかっこよく華のある俳優だった。
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2015年06月25日
サムペキンパースティーブマックイーン「ゲッタウエイ」
リアルな暴力描写とスローモーション撮影を多用した独特の映像で世界中の表現者にジャンルを問わず影響
を与えた。1972年の「ゲッタウエイ」はそのペキンパーがアメリカの象徴であるスティーブマックイーンと組んだのだから面白くないわけがない。
主人公のドクマッコイ(スティーブマックイーン)は、銀行強盗をやらかしてテキサスのムショに収容されていた。しかし、10年の服役の
はずがわずか4年で突如釈放された。出所の日、ドクを妻のキャロルが迎えに来ていた。
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しかしこの釈放にはわけはあった。テキサス政界の実力者ベニヨンは、ドクに銀行を襲わせそれと引き換えに
釈放されたのであった。
この取引にはさらに裏があった。襲わせる予定の銀行はベニヨンの親族が経営していて頭取が銀行のかねを
横領していてこのことをごまかすために、ドクにわざと強盗をやらせることを計画したのだ。
ベニヨンは確実に計画を成功させるためさらに二人の仲間ルディ(アルレッティエリ)ジャクソン(ボーホプキンズ)を加えた。
計画の段取りを説明するときに、万一のためにドクはルディの防弾チョッキをつけるようにいうがルディは
うっとおしがって断った。実はこのシーンは後の伏線につながる。
事件の当日、キャロルにクルマを運転させわざとエンストするふりをしてそのすきにマッコイはマンホールから銀行
の地下にもぐり、ワイヤーカッターで電線を切断し銀行を停電させる。
そのとき別に待機していたルディたちは銃を持って銀行に押し込み人質をとる。そのとき銀行へ入ってきた
マッコイが現金を奪い逃走する。計画通りならこのまま終わるはずだった。
だが、おどされていた警備員がすきをついて、銃で反撃しようとしたところ。わかいジャクソンがパニックになって警備員を射殺してしまう。
しかもジャクソンは自分で覆面をはずし顔も見られてしまう。現場から逃走するルディとジャクソンだったが
ジャクソンにハンドルを握らせたルディはドジを踏んだジャクソンの下半身を撃って殺してしまうのだ。
マッコイの待ち合わせ場所に向かうルディだったが、出会い頭にマッコイに銃をむけ殺害しようとするが
一瞬早くマッコイのガバメントの反撃にあい倒れる。死んだと思ったマッコイ夫妻は現場を離れるが
むっくりと起き上がるルディ、実はルディは拒否したはずの防弾チョッキをつけていたのだ。
つまり最初から裏切るつもりだったのだ。
一方、現金を持ってベニヨンの農場へ向かったマッコイだったが、現金が言われたより少ないことを指摘
するとここで初めて横領をごまかすためだったことを聞く。
しかも、マッコイ釈放のためにキャロルと寝たことを聞く。ほんとのことを知られたキャロルはベニヨンを
射殺する。嫉妬心からキャロルをなじるマッコイだったが、ベニヨンの手の者や殺し屋ルディからの
二人の逃避行が始まった・・・
映画の最初の場面は延々と刑務所での作業風景が映し出されて少々退屈だが、銀行強盗のあたりから俄然盛り上がり
始める。爆破シーンの合間に鳥の群れが飛び立つカットを挿入したりペキンパーの面目躍如である。
マックインが銃砲店を襲撃して12番のポンプアクションのショットガンを手に入れるのだが、ダブルオーバックと
言われる巨大な装弾でパトカーを破壊するシーンは圧巻である。サイドアームとして用いるコルトガバメントも凄い迫力だ。
殺し屋ルディも、コルトパイソン357マグナムやコルトトルーパーを使っていてガンマニアにはたまらない。
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銃撃シーンがとにかく半端ない迫力でリアリティに満ちている。また、男と女の微妙な心理にも触れていて
参考になる。
マッコイの妻役のアリマッグローも「ある愛の詩」の清純な役とはうってかわって汚れ役を体当たりで
演じている。
もちろん、主役のマックインのかっこよさは言うまでもない。
当時、アメリカといえばマックインだった。わずか50歳でなくなったのは早すぎる。アメリカが今元気が
ないのはマックインが早く亡くなったからだというのは言い過ぎだろうか。
ペキンパーはこの作品が嫌いだったらしいが、この映画が一番ヒットしたのは皮肉だ。.
ルディ役の俳優の凄みのある演技も印象に残る。音楽はクインシージョーンズ、脚本はウオルターヒル。
やはり最高のスタッフとキャストが揃えば凄い映画が作れるものだと思う。
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2015年06月23日
ジョンボイト黒沢明菊島隆三「暴走機関車」
本来は、黒沢自らアメリカで撮るはずだったのだが、プロデューサーとの意見の違いから話が流れ、ソビエト
出身のアンドレイコンチャロフスキーが監督して映画化することになった。
舞台は、酷寒のアラスカの監獄、主人公のマニー(ジョンボイト)は銀行強盗の罪でこの重犯罪の監獄に収容されていた。
所長のランキン(ジョンPライアン)は鬼のような男だったが、独房に入れられていたマニーはこの待遇を不服におもい訴訟し
見事に勝ち、独房から解放されることになった。
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勝ち誇るマニーだったが執念深い所長はこんなことではあきらめなかった。
ムショ内でのボクシング大会の日、他の囚人に刃物でマニーを襲わせたのである。
咄嗟に刃物を片手で掴んだマニーだったが、手に大怪我をしてしまう。しかしマニーはこのことでかえって所
長に対する憎しみを募らせ3度目の脱獄を計画する。
ある日、マニーは洗濯係りの若者バック(エリックロバーツ)の協力で脱獄しようとするが、マニーを英雄のように崇めていたバック
は同行したいと言い出す。
マニーはしかたなく承知し、バックとともに酷寒のアラスカ平原へ向かう。凍死しないように、身体にグリスを塗ってその上からサランラップを巻いて完全防寒で二人は排水口より脱出する。
なんとか、監獄より逃れた二人は、操車場にあったディーゼル機関車に乗り込んだ。
だが、この機関車の運転手が心臓発作で倒れ車外へ転落、運転手を失った機関車はスピードを上げ暴走
し始めたのだ。
鉄道管制室はあわてなんとか暴走機関車を止めようとするが、そのころ脱走したマニーたちを追って
所長が管制室へと駆けつけていた・・・
この映画の凄さは、もの凄いスピードで疾走する機関車を並走してカメラで追っているのだがどうやって
撮っているのかと思うほどだ。
また、その列車の外側での移動などのシーンはハラハラドキドキでスタントマンの命懸けの演技には
驚かされる。CGの発達していない時代なのでトリックなどはなくその迫力は今では出せないだろう。
マニーを演じるジョンボイトの演技もよく、「真夜中のカーボーイ」とは全く違う不屈の犯罪者をよく
表現している。相棒の若者役のエリックロバーツの無鉄砲だが軽薄な役も板についている。
単なるアクション映画では終わっておらず、年長のマニーがバックを諭すセリフなどは非常に深く
人生の機微に触れるような印象に残るものだ。
ラストシーンの音楽にヴィバルディのグローリアを使っているのも映画の重いテーマにあっている。
ラストで、シェークスピアの「リチャード三世」の台詞の一部が付けられいる。
「どんな獣にも慈悲や憐れみの心はあるだろう。それさえ知らない私は獣ですらない」
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2015年06月03日
難病と闘う少女「1リットルの涙」
テレビドラマにもなったのでご存知の方も多いだろう。
ここで取り上げるのは、テレビではなく2004年に大西麻恵主演で映画化された作品である。
私はだいたい天邪鬼な性格なのでこの手の映画は見ないほうなのだが、鑑賞してみて予想外にいい作品だった
ので驚いた。
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愛知県に住む一人の女子中学生木藤亜也(大西麻恵)は、ある日のこと通学のために家を出たところ転び顎を
強打して
けがをしてしまった。
母親の潮香(かとうかずこ)は、心配して医者に見せたところ、医者が言うには人は転んだとき手をつくもの
で、顎をうつのは
あまりない何か重篤な病気かも知れないので、他の病院で再検査することを勧めた。
専門医の山本紘子医師(鳥居かほり)に見てもらったところ潮香は血の気が失せるほどのショックを受けた。
亜也の病気は「脊髄小脳変性症」はという難病で、小脳が最終的には消失し、徐々に言葉や手足の自由
を奪われ寝たきりとなり現状では治療不可能な病気だということである。
潮香は衝撃を受けながらできる限り亜也を守っていこうと決意する。
そんな困難にあっても、頑張り屋の亜也は、見事に東高校に合格する。だが音もなく進行する病は亜也の
身体を蝕み歩行も困難になってゆき、しゃべるのもなかなかおぼつかなくなっていた。だが人の役にたちたいと
願っていた亜也に、山本医師は日記を書くことをすすめるのだった。
そんな亜也も同級生に支えられて高校生活を送っていたが、ある日学校側から残酷な現実を突きつけられる。
障害者用の施設もなく迷惑だから養護学校に転校するように通達があったのだ。ショックを受ける亜也。
しかも友人だと思っていた同級生も亜也の世話をするのに疲れていたと
いうのである。絶望のどん底に落とされた亜也だったが・・・
この映画の魅力はやはり女優さんの演技の素晴らしさであろう。亜也を演じた大西麻恵の健常者から
少しずつ病が進行してゆく生生しさ、健常者と障害者の意識のギャップ、亜也が山本医師に自分は結婚できる
か聞いて無理であることを知ったときのやるせなさ、脳障害でよく現れる上肢の屈曲、リハビリ風景等深く取
材しているこ
とがわかる。
愛情深い母親を演じた、かとうかずこの演技も素晴らしい。
誰しも病気になりたくてなる人間はいない。題名の「1リットルの涙」は原作木藤亜也さんの日記にあった
言葉から付けられている。木藤亜也さんのご冥福をお祈りします。
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