アフィリエイト広告を利用しています

2017年08月27日

「花の乱 7」市川森一、三枝成彰

新将軍についた足利義尚は初代尊氏を理想とし、戦いの場へと身を投じてゆく。

そして近江の守護大名六角行高へ対する征伐を敢行する。いわゆる長享・延徳の乱である。

応仁の乱で失った幕府の権威を回復すべく義尚は先頭に立って戦う。

しかし管領細川政元(今井雅之)はひそかに義尚の失脚を狙っていたのである。

戦場で無理を重ねた義尚は病に倒れ夭折する。やっと落ち着いた後継争いがまた火がつき

始める。今度は義視の息子義材を富子がかつぎだしたのだ。

しかし義政も亡くなり室町幕府は混とんとして終末を迎えようととしていたのだった・・


「花の乱」は役者もストーリーもよく面白いのだが、史実と相当違うのが欠点である。


歴史上の事実を相当書き換えているので、応仁の乱を研究したい人は注意する必要がある。

正確な歴史を知りたいなら最初に紹介した新書をおすすめしたい。

それはともかく大河ドラマとしてはよくできており、このドラマがヒットしなかったのは

残念である。御所での陰謀や武士世界のむごさなど描かれていて人間学としても参考に

なる。


脚本は「ウルトラシリーズ」で知られた市川森一だけに脚本もひとひねりもふたひねりも

してある。

音楽は三枝成彰が「太平記」に続いて担当している。劇中で使われる笛の音が印象に残る。


監督に何作か黛りんたろうが担当した。

室町時代を描いた数少ないドラマであり貴重な作品である。時代劇ファンなら一度は

見ておいて損はないと思う。

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

新品価格
¥972から
(2017/8/27 16:18時点)



posted by ハヤテ at 15:55| テレビ太河ドラマ

2017年08月25日

「花の乱 6」大内政広、足利義尚

応仁の乱は、さらに斯波家の家督争いも加わり騒乱は全国へと広がっていく。

東軍は最初は有利だったが、宗全が西国より大内政弘(藤岡弘)を呼び寄せてから情勢は西軍有利

となっていく。大内は周防・長門・豊前・筑前と、安芸・石見を支配する強大な守護大名だった。

政広は戦に強く兵力も強大でさすが東軍もせめあぐんだ。

一方富子は伊勢貞親の力を借りて春王を盛り立ててゆく。

大河ドラマ 花の乱 完全版 第壱集 DVD-BOX 全5枚セット

価格:19,440円
(2017/8/25 16:17時点)
感想(0件)





東軍西軍とも膠着状態となり、都の民が戦火に苦しむのを見て富子は勝元に働きかけて

休戦を画策する。そして宗全が乱の責任を取って切腹する(史実では切腹はしていない。

宗全は病死したといわれている)

西軍では宗全なきあと大内政広が大将となり、富子と話し合い戦をやめることを決める。

一方世を儚んだ勝元は傀儡の森女(檀ふみ)ととともにいずこへと姿を消すのだ。

乱は都を焼き尽くし赤松家の家臣であった骨川道賢(ルー大柴)は富子の故郷である椿の荘

で惣国の建設に励む伊吹三郎とともに理想の国づくりのために幕府と戦うのだ。

やがて成人した足利義尚(松岡昌弘)は男らしく武勇に秀でた将軍を目指すが

世間しらずで一本気な性格は思わぬ悲劇を招いていく。

長い応仁の乱は終わったがそれは新たな時代の始まりだった。室町幕府は権威を失い

各地であらたな戦国大名が台頭しようとしていたのだ。

そして乱の終結に不満を抱く畠山義就は、新たな騒ぎを起こそうとしていたのである。

posted by ハヤテ at 15:51| テレビ太河ドラマ

2017年08月23日

「花の乱5」御霊合戦、畠山政長、畠山義就

宗全の秘策とはなんと次期将軍の今出川を、西軍の総大将にかつぐことだった。

これには同志たちも驚いたがこのことで、賊軍となることを免れ大儀を得たのだった。

そひて宗全にはもうひとつ目的があった。それは富子の夢である春王を今出川に代わって

時期将軍にすることである。宗全は肝胆相照らした富子の夢をかなえるために、あえて

奇策をとったのだ。


花の乱 NHK大河ドラマ・ストーリー

中古価格
¥1,700から
(2017/8/23 16:19時点)



それは断じて春王の将軍就任を認めず、出家させるという義政の意思が固く難儀して

いたからだ。

さすがに幕府の弓を引いた今出川を次期将軍にするわけにはゆかず、頑固な義政も春王の

次期将軍就任を認めたのだ。

一方勝元は畠山義就追討を命じるがかなわず、政長は屋敷に火をかけた戦いを始める。

政長は上御霊神社に陣をかまえ、御霊合戦が始まった。応仁の乱の勃発である。


次に幕府は朝廷に塁が及ぶことを心配して、後土御門天皇や後花園上皇を室町御所に

避難させたのである。

斯波義廉、山名政豊、朝倉孝景は義就に加勢して出兵したが、義政が反対したため勝元

は兵を出さなかった。このことで口がさない京の町人たちは臆病者とそしった。

しかし勝元の忠義を義政を感動させる。

そして政長は包囲され勝元に助けを求めるのである。合戦のとばっちりを受けた相国寺は

灰になり、やがて都は火の海になってゆくのである。


そして宗全は五辻通大宮東に本陣を置いた。西軍の本陣があったのでこの場所は爾来

西陣と呼ばれるようになる。東軍の兵力は16万、西軍は11万であったといわれる。

これだけの兵力が狭い京都を暴れまわったのだ。庶民にとっては生き地獄であった・・
posted by ハヤテ at 15:52| テレビ太河ドラマ

2017年08月22日

「花の乱4」応仁の乱、山名宗全、細川勝元

ここで応仁の乱の主役というべき二人の守護大名について少し触れる。東軍の総大将細川勝元は

幕府の政務を行う管領の一人であり従五位下右京太夫である。山名宗全とは親戚であり最初は

仲は悪くなかった。しかし畠山家の家督争いとそれに続く斯波家の家督争いを巡って宗全と対立し

抜き差しならぬ敵対関係になってゆくのだ。勝元は禅をよくし短歌や絵にも明るく教養人

であった。

図解 応仁の乱 (エイムック 3743)

新品価格
¥950から
(2017/8/22 16:30時点)




一方西軍の総大将である山名宗全は毘沙門天の生まれ変わりと呼ばれるぐらい戦いが得意であり、

激情的な性格であった。但馬、播磨、美作、備前とその領地は広く室町幕府きっての猛将である。


元の名は持豊であったが出家して宗全と改めたのだ。


そして失脚したはずの畠山義就が上洛し、宗全が義就についたころから再び都は騒然として

くるのである。

また富子を将軍家に嫁いでくるときにも室町御所に内部では、どろどろとして権力闘争があった。

義政の乳母であった今参局が義政の威光を利用して権勢を振るうのを嫌った義政の母日野重子

(京マチコ)が勝光と組んで、義政の子が死ぬように呪いをかけたと言いがかりを

つけて殺害してしまったのだ。


李朝の宮廷謀略を思わせる血の粛清が室町御所でもあったのだ。なお題名の「花の乱」は

室町御所が花の御所と呼ばれたことからつけられた。

西軍の総大将におさまった宗全たちは、しかし朝廷の賊軍となることを恐れた。

そのためには大儀が必要だった。そして誰もが考え付かないような奇策を使ったのだ。


義政は将軍職を弟の義視に譲ると約束しておきながら、いつまでたっても譲ろうとしない。

そのことで義視は疑心暗鬼になっていた。子供がなかなか生まれなかった富子の嫡男が誕生し

義政が心変わりをして嫡子に将軍職を譲るのではないかと疑ったのだ。


このことが宗全につけいる隙があった。だが宗全は御所で富子と再会して以来肝胆相照らし

息子の春王を将来将軍につけると約束していたのだ。

そこで山名宗全の秘策がとんでもない策だったのだ・・・
posted by ハヤテ at 15:54| テレビ太河ドラマ

2017年08月21日

「花の乱3」山名宗全、細川勝元、室町幕府

日野家では将軍家に輿入れするべき姫がいたのだが、不幸にも病気で盲目となってしまい

困ってしまう。そこで一度は捨てた椿に目をつけた勝光が、有無をいわさずさらい富子として

育てることになる。そして入れ替わりに本当の富子は放逐され一休和尚が育てあげるのだ。

三田佳子主演 大河ドラマ 花の乱 総集編【NHKスクエア限定商品】

新品価格
¥8,424から
(2017/8/21 17:27時点)





なおこれはドラマの設定で史実とは異なる。しかし成長して日野富子となった椿(三田佳子)には

子がなかった。一方夫義政は政治に興味がなく三十にもならない若さで引退を口にしたのだ。

そしてこのことが畠山家の家督争いと重なり応仁の乱につながっていくのだ。

義政はややこしい政治より隠遁して芸術に打ち込みたかったのだ。

そんな義政の気持がわかるのは庭師善阿弥(高品格→織本順吉)だけだった。

富子の夢は自分が産んだ嫡子を将軍の座にすえることだった。だが夫のきまぐれでその

夢もついえようとしていたのだ。

義政が自分が引退した後に後釜にしようと考えたのは、実の弟の足利義視(佐野史郎)だった。

しかし義視は出家して義尋(ぎじん)と名のっていた。学問好きの穏やかな男で政治には

無縁だったのである。


しかし義政はいやがる義尋を説き伏せて無理やり将軍にすえようと画策した。

このことが富子との対立を生むことになるのである。 

義尋は還俗して従五位下左馬頭に叙任され今出川の屋敷に入ることなり今出川様と呼ばれる

ようになる。

一方畠山家の内紛がおさまることはなく、政長が正式に家督をつぐことになり義就は

河内へと落ち延びていった。

また幕府も政長を正式な継承者として認めた。しかし義政の処置に不服な管領山名宗全は

これに反発する。激怒した義政は宗全の追討を命じるが、細川勝元のとりなしで宗全は

但馬に蟄居することですんだのだ。

実は細川勝元と山名宗全は親戚だった。宗全の娘の綾(鮎ゆうき)が勝元に嫁いでいたのだ。

騒ぎは一時おさまり都に平安がもたらされかに見えたが、本当の禍はこれからだった・・・
posted by ハヤテ at 16:57| テレビ太河ドラマ

2017年08月20日

「花の乱2」NHK大河 日野富子足利義政応仁の乱

このドラマは6代将軍足利義教が嘉吉の乱で赤松満佑に暗殺されたところから始まる。

義教の独裁政治に恐怖を覚えた赤松が酒宴に招いてだまし討ちにしたのだ。

そして満佑は故郷の播磨に立てこもるが、管領山名宗全(萬屋錦之助)によって討たれてしまう。

室町幕府の力は弱く管領と呼ばれる守護大名の合議制によって政治が行われていて、将軍足利義政は

お飾りのような立場だった。これはもうひとつは義政(市川團十郎)の性格もあった義政は芸術

や風流を好み自ら政務を行うことは少なかったのである。それは父義教の横暴さを目の当たりに

して政治に嫌気がさしていたのかも知れなかった。

三田佳子主演 大河ドラマ 花の乱 完全版 第弐集 DVD-BOX 全5枚セット【NHKスクエア限定商品】

新品価格
¥19,440から
(2017/8/20 17:02時点)





そのため政治は三管領の細川、山名、斯波の三家が司っていたのだ。

一方管領の一家である畠山家では嫡子がなく、養子政長を迎え跡目とし問題はないかに見えた。

だが畠山家に義就が後から誕生したため畠山家で跡目争いがおこることになる。

そのことを義政も認めたため同族による殺し合いが始まるのだ。


このドラマの主人公である日野富子は歴史上稀代の悪女として知られているが、富子は義政の

奥方になることで政務に興味がない夫に代わって室町幕府を動かしていくのだ。

富子を演じるのは10代の少女時代を若き日の松たか子が成人してからは三田佳子が演じている。


驚くのは松の顔が現在と全く異なることだ。最初は別人かと思ったほどだ。そして足利義政の

10代のころを市川海老蔵が大人になってからは父の團十郎が演じている。

日野家は足利と縁戚関係にあたりその娘は将軍家に嫁ぐことになっていた。

だが管領細川勝元(野村萬斎)と日野勝光(草刈正雄)は相計って二人が偶然出会ったように

陰陽師を使って妖術で仕組んだのだ。

二人は操られているとは知る由もなく運命の出会いと信じ結ばれてゆく。


ドラマの設定では日野富子は実母が参篭中に鬼に犯されて、妊娠し世間の悪評を恐れた兄勝光

の手によって幼子の富子は川に流される。川を流れていく幼子を偶然見つけた僧一休は

哀れに思い椿の荘において富子を育てる。そのとき育ての親となるのが伊吹十郎太(勝野洋)

でわが子として育てる。そして息子の信綱(黒田祐樹)と兄弟として平和な毎日を送って

いたのだ。だがある日平和な椿の村に一人の武将が現れた。山名宗全である。幼い富子から

柿をもらった宗全は気持ちも和らぎ武力で椿の荘を討伐するのを辞めた。

しかし椿の実の兄である勝光がこの村を訪れたときから椿(富子)の運命は大きく変わって

くるのだ・・
posted by ハヤテ at 16:23| テレビ太河ドラマ

2017年08月18日

「花の乱 1 」NHK大河応仁の乱、三田佳子、萬屋錦之助、市川團十郎、

応仁の乱が今ブームだという。応仁の乱の新書がベストセラーとなり多くの読者を獲得

しているようだ。

しかし応仁の乱といえば誰もが授業で習ったにもかかわらず、具体的にはどんなものか

知ってる人は少ない。おおまかにこの乱をきっかけに戦国時代に突入したと漠然と覚えて

いるだけだ。それはこの応仁の乱とその背景の室町時代を描いたドラマや映画がほとんど

ないことにある。

三田佳子主演 大河ドラマ 花の乱 完全版 第壱集 DVD-BOX 全5枚セット【NHKスクエア限定商品】

新品価格
¥19,440から
(2017/8/18 14:48時点)





大河ドラマも戦国や維新がほとんどで室町時代を描いたのは「太平記」ぐらいである。

だがNHKが応仁の乱をベースに描いた大河を1作だけ作っていた。

それが「花の乱」である。主人公を第8代将軍・足利義政の妻である日野富子をして応仁の乱の

勃発とその顛末を中心に描いた歴史絵巻である。

なぜ室町時代が人気がないかといえば、戦国や維新のようにわかりやすい英雄が出てこないこと

がある。この時代の支配階級である守護大名はどちらと言えば凡庸な武将が多いのだ。

また応仁の乱にしても敵と味方とはっきり分けられるものではなく、登場人物もおおく

わかりにくいのだ。

そういった点から視聴率や動員がとりにくいので室町時代は敬遠されてきたのだろう。

だが日本史の分岐点だった応仁の乱を知らずに歴史を語れるはずもない。

もちろん「花の乱」はドラマなので史実とは大いに異なりそのままではないが、

室町時代や応仁の乱がどういったものかイメージをつかむには役に立つのではないか。

なおこのドラマは視聴率が悪く平均で14パーセントしか取れなかったようだ。

しかし主演の日野富子に三田佳子、足利義政に市川團十郎、一休和尚に奥田暎二、細川勝元に

野村萬斎、山名宗全に萬屋錦之助と芸達者のベテランをそろえ非常に見ごたえのある

時代劇に仕上がっているのだ。

それではこれから「花の乱」をテーマに、みなさん応仁の乱を多いに語ろうではないか。

応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 (中公新書)

新品価格
¥972から
(2017/8/18 14:49時点)



posted by ハヤテ at 14:25| テレビ太河ドラマ

2017年08月16日

「日本暗殺秘録」桜田門外紀尾井坂血盟団226事件千葉真一

1969年製作の東映映画「日本暗殺秘録」は危険な映画である。幕末から昭和にかけて起こった

政治的暗殺事件をオムニバス形式で描いている。

冒頭から桜田門外の変での井伊直弼暗殺のシーンから始まり、紀尾井坂の変での士族による

大久保利通暗殺、玄洋社の来島恒喜(吉田輝夫)の大隈重信爆裂弾暗殺未遂と壮絶な自決と次々に

実際に起こった事件が登場してくる。特に来島の自分の首に短刀を当てて切り落とすシーンは

異様である。

日本暗殺秘録 [DVD]

新品価格
¥2,696から
(2017/8/16 16:57時点)





続いて星亨暗殺事件、大正時代のアナーキストギロチン社の古田大次郎(高橋長英)の小坂

事件と続く。

また吝嗇で有名な安田善次郎が神州義団の朝日兵吾(菅原文太)に暗殺された事件などが

描かれるがこの映画のコアとなるのは、昭和初期にあった井上日昭(片岡知恵蔵)の

血盟団による井上準之助元蔵相の暗殺事件である。

血盟団のわかきテロリスト小沼正に当時30歳の千葉真一が扮して見事な演技を見せている。

昭和初期は日本は大不況で倒産が相次ぎ、庶民は貧困に苦しんだ。まるで安倍政権下の

平成で非正規社員が激増した今とよく似ている。

この血盟団事件のパートでは袖の下を要求する官憲の汚さも描かれている。


いつの世も貧困と政治のゆがみはテロの温床になるのである。テロリズムは断固反対で

あるが弱者が強者に反撃する手段として古来よく使われてきた。

しかしその意図とは異なり結局は強者にうまく利用されてきたのである。


小沼の同志の藤井海軍中尉に田宮二郎が扮しているが、東映出演は珍しい。

そして映画の後半では陸軍の国家革新運動による相沢事件と226事件が取り上げられている。

相沢中佐には高倉健が青年将校のリーダー磯部浅一を鶴田浩二が演じている。

2時間22分にも及ぶ大作だが決して退屈する映画ではなく、最後まで緊迫感がみなぎっている。

映画では当時の壮士たちが好んだ「昭和維新の歌」が挿入歌として使われている。


監督は中島貞夫。脚本は「仁義なき戦い」の笠原和夫。長い間DVDになっていなかったが

ソフト化されたのはうれしいことである。

製作が1969年ということは三島由紀夫は鑑賞していたのだろうか?

小沼正は井上暗殺で無期懲役となったが昭和15年恩赦で釈放され戦後右翼の大物と

なっている。著作に「一殺多生」があり事件の顛末が語られているのだ。

一殺多生―血盟団事件・暗殺者の手記 (1974年)

中古価格
¥3,199から
(2017/8/16 16:59時点)



posted by ハヤテ at 16:25| 映画

2017年08月06日

「怪異宇都宮釣天井」中川信夫丹波哲郎三島雅夫


新東宝の「怪異宇都宮釣天井」は江戸時代の元和8年(1622年)宇都宮城釣天井事件の題材を得て

製作された時代劇である。監督は中川信夫で題名に怪異とついているが怪談映画ではない。

将軍家の隠密利根柳太郎(小笠原竜三郎)は、将軍家光公が東照宮参詣の折、一泊する宇都宮城の監視のた

め宇都宮に現れた。

怪異宇都宮釣天井 [DVD]

中古価格
¥6,000から
(2017/8/6 13:43時点)





宇都宮城主本多上野介の家老河村靱負は、悪徳商人鍵屋甚兵衛と組んだ。また鍵屋の手下、大工の棟梁藤右衛

藤右衛門の一人娘お藤を妾にしようと企んでいた。


本多上野介と靱負はこの機を利して家光を暗殺、駿河大納言を擁し天下を獲ろうと謀議をこらす。暗


殺手段に、釣天井を仕掛けようと準備を始める。


隠密柳太郎は鍵屋の用心棒、黒住典膳に誘拐されようとしたお藤を助けたことからお藤の父親たちが

城中の工事に駆り出されたまま帰ってこないことを聞いて不審な思いを抱く。


柳太郎は居酒屋で網を張っているときに石切り職人たちの会話から何者かの謀略があることを

感じ取るのだった・・・


宇都宮城釣天井事件は宇都宮城主本多正純が将軍秀忠を宇都宮城に釣天井を仕掛けたとして

暗殺を図ったといわれる事件を基にしている。

しかし現実には釣天井は存在しておらず、本多正純を疎ましく思った幕府の一部の人間による

ものと言われている。この事件のあと正純は謀反を起こそうとした嫌疑により改易されている。


映画では将軍家光となっているが実際の事件では秀忠である。


悪役の浪人黒住典膳は丹波哲郎が演じ、家光役は沼田曜一が悪徳商人鍵屋甚兵衛は三島雅夫

が演じている。三島雅夫は悪徳商人役は天下一品だった。


クライマックスの釣天井崩壊のシーンはかなりの迫力で見せ場である。
posted by ハヤテ at 13:18| 映画

2017年08月05日

「明治天皇と日露大戦争」新東宝嵐寛寿郎高島忠夫若山富三郎

1957年に新東宝が総力を結集して製作した戦争映画大作が「明治天皇と日露大戦争」である。

社長の大蔵貢がアラカンこと嵐寛寿郎をくどき落として、明治天皇役を引き受けさせたという。

今でこそ天皇陛下を描く映画も少なくないが、当時は天皇を役者が演じるのは恐れ多いとして

タブー視されていた。

アラカンは右翼に襲撃されることも覚悟して明治天皇役を演じたと言う。

明治天皇と日露大戦争 [DVD]

新品価格
¥3,784から
(2017/8/5 13:39時点)





時は明治37年ロシアの南下政策は満州朝鮮におよび、日本はロシアの脅威を感じていた。

国内ではロシア討つべしの世論が高まっていたが、平和を望む明治天皇(嵐寛寿郎)はあくまで外交で

解決しようと、ロシア皇帝に和平交渉に応じるように外交電報を送るよう指示していた。

しかしロシアは日本の要求を無視して、満州に続々と大軍を送り込んでいたのだ。

事ここに至り天皇は、首相桂太郎や元老や軍部の意見を取り入れて開戦の決断を下した。

ロシアに宣戦布告した日本海軍は、旅順港に出入りするロシア軍艦の動きを封じようと

閉塞作戦を実行する。指揮官の広瀬中佐(宇津井健)は第一回目の閉塞作戦に参加して

成果を挙げたが二度目の作戦で部下の杉野上等兵曹を助けようとして敵の砲弾にあたり


戦死する。

一方陸軍は世界最大の旅順要塞を攻略すべく、第三軍司令官に乃木希典大将(林寛)が就任する。

陸軍は勇猛果敢に敢闘するが敵は機関銃など、近代兵器を使って反撃しいたずらに死体の

山を築いていく。

世論は乃木を批判し大本営も乃木の更迭を考えるが、天皇は断固反対する。

そのころ首山堡攻撃では橘周大(若山富三郎)が決死の覚悟で奮闘するが敵の攻撃で戦死する。

そしてロシア海軍はリバウ港を出港したバルチック大艦隊が極東へ向かっていた。

日本海軍は猛訓練に励んでいたが敵の動きをつかんではいなかった・・・


日露戦争のアウトラインをつかむのは恰好の映像であり、旅順港閉塞作戦から旅順要塞攻撃、

水市営の会見、遼陽会戦、奉天会戦、日本海海戦と主な作戦は描かれている。

戦前の教育を受けた人なら必ず習う軍神広瀬、橘、乃木と出てくるので当時の人には

物語に入りやすかったのではないか。

明治時代はまだ戦争の武士道や騎士道があった時代だが、第二次世界大戦の無差別爆撃や

原爆、ゲリラ戦、生物兵器となんでもありの時代になってゆく。

東郷長官は東宝戦争映画でもおなじみの田崎潤が演じている。特撮もよくできており

艦橋や大砲のレプリカなどよくできていてリアリティもある。

アラカンは明治天皇を演じるにあたって参考になるモデルがいないので苦労したようである。

映画は大ヒットし観客動員数は2000万人。興業収入は当時の額で5億7000万円と

空前絶後の成功を収めた。

映画の成功で新東宝は大蔵貢のワンマン体制を確立するが、わずか3年後に大蔵は解任され

1961年新東宝は倒産する。新東宝最後の花火ともいえる作品である。


監督は「日蓮と蒙古大襲来」の渡辺邦男。

posted by ハヤテ at 12:54| 戦争映画
最新記事
プロフィール
ハヤテさんの画像
ハヤテ
プロフィール
カテゴリアーカイブ
検索