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2018年04月28日
自転車漫画終(四月廿五日)
ここまであれこれ自転車漫画とちょっと小説について云々してきたが、『アオバ自転車店』の作者の言うとおり以前から見ると信じられないくらいの自転車漫画が存在するのは確かなことのようだ。少説まで何冊もありそうで、驚きは二倍である。そういえば、高千穂遙も、自転車をテーマにした漫画の原作を書いたり、自転車小説を書いたりしていたなあ。
高千穂遙には自分が趣味にしたものを、出版社をうまく丸め込んで何が何でも小説にして出版しまうところがあるから、特殊例だと考えていたのだが、自転車に関しては特例ではなく、ブームを牽引する一端を担ったというのが正しそうだ。となると、まず最初に手を出すべきは高千穂遙の作品か。これも検討しておこう。ものすごく詳しい説明が出てきそうだけど、まあファンタジーにボディビル用語の筋肉の名前なんかが出てくるのに比べれば耐えられるはずだ。
ところで、ここまで書き継いできて、最初に自転車マンガについて書こうと思ったときに、書きたいと考えたことを書いていないことに気づいてしまった。文脈の分かれ目で別の方向に向かってしまって、戻ってくるのを忘れてしまっていたようだ。それは、『アオバ自転車店』の主要キャラクターの一人、アオバ自転車店特製のロードレーサーに乗るモリオくんの台詞に大賛成だということである。
「男はクロモリ、ホリゾンタル」だったかな。「男は」の部分はともかくとして、自転車、特にドロップハンドルのロードレーサー系の自転車は、アルミじゃなくてクローム・モリブデン鋼のフレームの方が美しい。今は知らず、九十年代末のアルミフレームは強度を確保するためか、クロモリのフレームに比べると不細工なまでに太かった。タイヤも太くて全体的に、ロードレーサーの精悍さとは似ても似つかぬものになっていた。だからと言ってロードレーサーを「カトンボ」なんて言ってしまうのはどうかと思うけれども。
実は、高校に入学に際してお金をかき集めて自転車を購入したときに、注文用のカタログに書かれていた「クロモリ鋼」というのを見て、モリオくんと同じように「黒森」と誤解してしまったことはみとめねばなるまい。そして、これは「黒森」という人か、会社が開発して商標登録をした鋼材だろうと考えていたのである。カタログにもクロームとモリブデンを何パーセント含む鋼材なんてことは書いてあったはずだけど、見た目で選んだ自転車だったからなあ。パナソニックになる前のナショナルの自転車だったかな。
見た目で言えば、当時のいわゆるママチャリではない男の子用の自転車は、フレームの上部のパイプは水平になっていたから、90年代末のマウンテンバイクのフレーム上部の形状も何とも納得しがたいものがあったのだ。当時は「ホリゾンタル」なんて言葉は知らなかったから言葉ではうまく説明できなかったけど。
知らなかったのは他にもあって、『アオバ自転車店』を読む前は、「ランドナー」とか「スポルティーフ」とかいう自転車の細分化された種類は知らなかったから、クロモリのホリゾンタルフレームでドロップハンドルに細いタイヤの自分が買った自転車のことは、ロードレーサーだと思っていたけど、泥除けや荷台、ブレーキの補助レバーなんかが標準装備だったから、ロードレーサーではなく、ランドナーかスポルティーフだったのかもしれない。
だから、チェコに行ったら自転車を買うぞと決めたときに、自転車通勤をしていた知人と、アルミの太いフレームは嫌だなんてことを話していたら、あれこれ調べてチェコのオロモウツには、元軍需企業で自転車のチタンフレームを生産している会社があることを教えてくれた。チタンフレームがアルミと違ってクロモリのように細いのかどうかも、値段がどのぐらいするかも考えずに、地元の製品を買うぞと気分は大いに盛り上がったのだった。
しかし、チェコに来て自転車を買うために入った自転車屋に並んでいるのは、アルミフレームの物ばかりだった。念のために店員さんにチタンフレームってないのと聞いたら、笑われてしまった。レースに出るわけでもない素人が購入するには過ぎたものなのはわかっていたけれども、店員さんの説明によるとフレームだけでも何万コルナになって、それをもとに自転車を組んだら10万コルナじゃ足りないかもしれないということで、こちらが思っていた以上に高値の花であった。早々にチタンフレームはあきらめて、自分でも買えそうな自転車を探したのだけど、クロモリ、ホリゾンタルは見つけられなかった。
探せばあったのかもしれないけれども、つたないチェコ語では何と言っていいかわからなかったし、チタンフレームの件で懲りてもいたので、手に入りやすいもので妥協することにした。結局マウンテンバイクほどごつくない、チェコではトレッキングバイクとか言っていたかな、そんな自転車を購入した。当然チェコのブランドがいいということでAUTORである。でも生産は台湾だった。ちょっと残念。
それからもう一つ、単発のキャラクターが言っていた「ロードバイク」なんて言い方は許せないと言うのも納得。コルナゴというメーカーの自転車がいいかどうかは、乗るどころか見たこともないから知らないけれども。
2018年4月26日24時。