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2018年03月23日
形容詞格変化複数(三月廿日)
形容詞の複数の各変化は、単数変化以上に共通の形が多く覚えることは少ないのだが、男性名詞の活動体に付く場合の1格は、子音交代が起こるものをちゃんと覚える必要がある。
とりあえず男性名詞複数に付く場合の格変化は次の通り。
1格 staré(不活動体)/staří(活動体)
2格 starých
3格 starým
4格 staré
5格 staré(不活動体)/staří(活動体)
6格 starých
7格 starými
このうち、2、3、6、7の四つの格は三性共通である。大切なのは、2格と6格が同じ「-ých」という語尾をとること。6格は、名詞の複数の語尾にも「-ch」が出てくるから覚えやすいのだが、2格は名詞の場合には、語尾なしか長母音で終わることが多いので気をつけなければならない。
それから、7格の語尾の「-ými」は、女性名詞の複数七格に出くる「-mi」と同じものだと考えておけばいい。名詞、形容詞に限らず複数の7格の語尾には「-mi」が出てくることが多い。いや、語尾が「-mi」で終わっていたら複数七格だと考えることができるのである。ただし、「do Příbrami」は2格で例外である。
先に女性名詞と中性名詞に付く場合を説明すると、1、4、5格は同じ形をとるので、
1格 staré(女性)/stará(中性)
2格 starých
3格 starým
4格 staré(女性)/stará(中性)
5格 staré(女性)/stará(中性)
6格 starých
7格 starými
軟変化は、硬変化の語尾の長母音をすべて「í」に変えてやれば出来上がり。その結果、1格から7格まで3性共通になってしまう。そのため、読むときに名詞の性がわからなくなることもあるのだが、理解には影響しないからいいか。
1格 jarní
2格 jarních
3格 jarním
4格 jarní
5格 jarní
6格 jarních
7格 jarními
名詞だけでなく形容詞まで格変化をするのは、勉強する際にはやめてくれと言いたくなるようなことではあるのだが、格変化を覚えていくつかの形容詞がついた名詞節を正確に変化させて使えたときの達成感は大きい。特に6格か7格に女性名詞がつくと、語尾が「‐ch」「‐mi」でそろうから、うまく最後まで言い切れたときは、やったぜとこぶしを握りたくなるぐらいである。そのせいで、しばしば無駄に形容詞を使って話している自分も何が言いたいのかわからなくなることがあったのもいい思い出だと言えば言える。勢いあまって名詞の二格の語尾も「‐ch」にしてしまうなんて間違いもよくやらかしていたなあ。
実は、形容詞にはここまで書いてきた格変化とは別に、述語として使う単語尾形という特別な使い方もあるのだけど、ちょっと古い形で現在ではあまり使われないからあえて覚える必要はない。出てきたときに形容詞の単語尾形だとわかるように簡単に説明だけしておくと、形容詞の語尾の長母音を取り除いて、対応する名詞に典型的な語尾をつけてやればいい。男性名詞なら語尾なし、女性なら「-a」中性なら「-o」という具合である。
自分では意識しては使わないので、例があまり思い浮かばないのだけど、「hotový(完成した)」という形容詞がよく単語尾形、特に中性と対応する形で使われることは覚えておいたほうがいい。「Hotovo?」なんて一単語で、もう終わったかどうかを聞かれるのだけど、こういうのはチェコ語では無人称の文だとか言って中性単数扱いにするんだったかな。
それから昔、知人に「Já sú zvědav」と言われて困惑したことがある。翌日師匠に質問したら、師匠も妙な組み合わせだねえと笑っていた。「sú」は典型的なモラビア方言で、「zvědav」は、「興味がある」という意味の形容詞「zvědavý」の単語尾形。方言と今では文語的な感じのある単語尾形の組み合わせというのは、普通ではないのである。
ということで、形容詞の格変化についてはこれで「hotovo」である。
2018年3月21日10時。
2018年03月22日
形容詞格変化単数(三月十九日)
チェコ語の形容詞の格変化は、名詞ほど厄介ではない。硬変化と軟変化の区別はあるけれども、それぞれ別の形容詞で、後ろに来る名詞によって硬軟が変わるわけではないし、硬変化も軟変化も語尾は似ていることが多い。その上、複数では三性共通になるものも多い。だからと言って正確に使用するのが簡単になるわけではないのがチェコ語の困ったところである。
ということで、硬変化の単数、男性名詞に付く場合から。例は「starý」を使う。
1格 starý
2格 starého
3格 starému
4格 starý(不活動体)/starého(活動体)
5格 starý
6格 starém
7格 starým
活動体に付く場合と不活動体に付く場合が違うのは、4格だけである。この違いは、男性名詞の活動体は2格と4格が同じで、不活動体は1格と4格が同じだというのに対応している。注意が必要なのは3、6、7格が微妙に違うところだろうか。とりあえず、3格の語尾が「-ému」と母音で終わることを覚えて、6格はその母音を省略、7格は「é」を「ý」に換えると覚えておけば間違いない。
軟変化の場合も男性名詞はほぼ同じで、「jarní(春の)」は以下のように変化する。
1格 jarní
2格 jarního
3格 jarnímu
4格 jarní(不活動体)/jarního(活動体)
※欠けていた「ho」を追加。
5格 jarní
6格 jarním
7格 jarním
4格が活動体と不活動体で違うのは硬変化と同様。気をつけなければいけないのは軟変化では6格と7格が同じになることである。
硬変化の形容詞が、女性名詞に付く場合には、以下のようになる。
1格 stará
2格 staré
3格 staré
4格 starou
5格 stará
6格 staré
7格 starou
覚えておくべきことは、2、3、6格が「-é」、4、7格が「-ou」なるということで、実質的に形は三つしかないのである。注意しなければいけないのは、形容詞は4、7格が「-ou」で共通だが、女性名詞の硬変化はそれぞれ「-u」「-ou」になることである。この違いがあるから格を見分けられるとも言えるけれども、自分が使う場合には負担であることは間違いない。
軟変化は、女性名詞の場合には、1格から7格までまったく変化しない。最初の頃はこの変化しないのが救いのように思えるのだけどね……。
最後は中性名詞に付く場合だが、男性名詞の場合とほとんど同じである。
1格 staré
2格 starého
3格 starému
4格 staré
5格 staré
6格 starém
7格 starým
男性名詞に付く場合と違うのは、1格と同じ形になる4、5格だけで、ほかはまったく同じである。このことからも予想できるように、1格が三性共通である軟変化の場合には、1格と4格が同じになる男性名詞不活動体につく場合の格変化と1格から7格まで全て同じなのである。
共通する形が多いとは言っても、常に対応する名詞の性と格を意識した上で使わないと間違いを連発することになる。意識しても間違えるときには間違えるのだけどね。
2018年3月19日23時。
2018年03月20日
形容詞の話(三月十七日)
最近、チェコ語の話を書いていないことに気が付いた。体調不良が続いていた間は気にもならなかったし、書こうという気にもならなかったのだけど、体調が回復してコーヒーも美味しく感じられるようになってくると、間が空きすぎているのが気になるようになってきた。ということで久しぶりにチェコ語の話である。前回何を書いたか覚えていないので、名詞の次に取り上げようと考えていた形容詞の話をしよう。
チェコ語の形容詞を勉強するとき、最初にうるさいぐらいに注意されるのは、形容詞と名詞の性と数の一致である。これは格変化以前の問題で、後に来る名詞が一格の場合にも、その名詞の性、単複の別によって形容詞の語尾が変わるのである。形容詞が述語になっている場合には、主語になっている名詞にあわせて形を変えなければならない。
チェコ語には形容詞にも硬変化と軟変化の二つの種類があり、硬変化は長母音の「ý」、軟変化は「í」で終わるのが原形である。どちらになるかは、末尾の長母音の前に来る子音によって決まっているのだが、「n」のように、どちらの長母音も取れるものがあるのが厄介である。チェコ人は「ný」と「ní」では子音が違うと言うのだが、その違いを耳で聞き分けられるぐらいなら、最初から厄介だなどと言ったりはしないのである。
いつものように硬変化から説明をすると、男性名詞の単数につくときには、活動体であっても不活動体であっても、形容詞の語尾は「ý」となる。わかりやすい例を挙げると、「starý muž(年老いた男)」「starý hrad(古城)」といった具合である。女性名詞の場合には「á」で、女性名詞硬変化の語尾「a」と対応するので覚えやすい。中性名詞は残念ながら「ó」にはならず「é」を取る。これも例を挙げておけば、「stará žena(老婆)」「staré město(旧市街)」ということになる。
それに対して軟変化の場合には、ありがたいことに名詞が男性でも女性でも中性でも語尾は変わらない。これについて、黒田龍之助師が、「nárdná banka」にならないのは、スラブ語の原則に反しているようで気持ち悪いと書いていたと思うが、チェコ語からスラブ語に入った人間には、他のスラブ語は勉強していないけど、スロバキア語で「nárdná banka」となるののほうが気持ち悪く感じられるのである。やはりチェコ語では、「národní tým(代表チーム)」「národní banka(中央銀行)」「národní divadlo(国民劇場)」となるのが自然である。男性名詞の活動体で「národní」がつけられるものは思いつかなかった。
せっかくなので複数の場合も説明をしておくと、男性名詞活動体、不活動体、女性名詞、中性名詞の四種類を考えなければならない。一番厄介なのが男性名詞活動体なので、それ以外から行くと、男性名詞不活動体と、女性名詞の場合には形容詞の語尾が中性の単数と同じで「é」となる。この二つの形容詞の語尾が同じになるのは、硬変化の名詞の語尾が「y」で共通しているからだと考えておこう。例は「staré hrady」「staré ženy」。中性名詞の複数につく場合には、硬変化の複数一格の語尾が「a」になることから予想できるように、女性の単数と同じで、形容詞の語尾は「á」で「stará města」になる。
男性名詞の活動体につく場合には、硬変化の名詞の複数の単語尾形が「i」となるように、形容詞の語尾も「í」となる。問題は「軟らかいイ」と呼ばれる「i」が、硬子音の後では使えないことで、その場合子音交代が起こってしまうのである。だから、年老いた男の複数一格は「staří muži」になるのである。
他の硬子音の場合、「-tý」「-dý」「-ný」で終わる形容詞に関しては、「ý」を「í」に変えれば子音も変化してくれるからあまり気にする必要はない。「-ký」「-hý」「- chý」で終わる形容詞に関しては、女性名詞の硬変化の三格、六格を思い出そう。あれと同様に、「-cí」「-zí」「-ší」と子音が変化するのである。
それぞれ形容詞だけ例を挙げておくと次のようになる。
bohatý→bohatí(お金持ちの)
mladý→mladí(若い)
silný→silní(強い)
velký→velcí(大きい)
mnohý→mnozí(多くの)
hluchý→hluší(耳の聞こえない)
しかし、厄介なのは「-ký」で終わるもの中に、もう一つ前の子音まで意識する必要があるものがあることで「-ský」「-cký」で終わるものは、「-ští」「-čtí」となるのである。
český→čeští(チェコの)
politický→političtí(政治的な)
軟変化のほうは、複数でも一格は三性共通である。一体に形容詞の複数変化は硬変化でも三性共通の格が多いのだが、軟変化は一格から七格まで全て三性共通で覚えるのは楽である。ただし使うときには、後に来る名詞の性が意識しにくくなるという問題があるのだけど。
形容詞における最大の問題は、硬変化と軟変化の区別がつかないことがある点にある。特に数の多い「-ný」「-ní」で終わる形容詞は、教科書に出てきて書いて覚えたもの以外は、毎回のように頭を悩ませ、しばしば間違えることになる。名詞から派生したものは軟変化であることが多いとか、区別するためのヒントになる傾向は存在するのだけど、例によって100パーセント割り切れるものではないし、耳で聞いただけでは「-ný」「-ní」の区別はつかない。いや、チェコ人の発音を聞いた場合には区別できるかもしれないが、自分で確認のために「-ný」「-ní」と発音してみても、どちらが正しいのか全く確信が持てない。
チェコ語の発音自体は、自分が区別して発音することは、それほど難しくないのだけど、正しく聞き分けるのは滅茶苦茶難しいのである。真面目に勉強していた頃は手で紙に書いて覚えたからよかったんだけど、PC上では何度書いてもなかなか覚えられないのである。
2018年3月18日12時。
2018年02月15日
七格を取る前置詞(二月十二日)
七格単独での使い方は大体説明したので、次は前置詞と組み合わせて使う場合である。七格をとる前置詞は比較的わかりやすいものが多いので、それほど使うのには苦労しないのではないだろうか。
教科書に一番最初に登場するのは、「s」のことが多いだろうか。「~と(一緒に)」という意味で使われる前置詞である。「一緒に」という意味の副詞「spolu」と共に使うことも多いが、なくても大して意味が変わるわけではない。
Pojedu zítra s kamarádem do Prahy.
(明日友達と一緒にプラハに行きます)
Včera jsem se díval spolu s kamarády na olympiádu v televizi.
(昨日友達と一緒にテレビでオリンピックを見ました)
長くなると語順がこれで自然なのかどうかが怪しくなるのだが意味は通じるはずである。最初の文は「vlakem(電車で)」なんてもう一つ七格を入れることができるし、二つ目の文は「s pivem v ruce(ビール片手に)」なんてのを加えてもいいかな。
大切なのは、移動を伴う動作であれ、その場での動作であれ、「s+七格」を使ってその動作を一緒にすることを表せるということである。よくわからなくなるのが「bojovat(戦う)」で、これに「s+七格」で人を付けた場合に、「〜と戦う」になるのか、「〜と一緒に戦う」になるかである。要は「s」の後ろに七格で来る名詞が敵か味方なのかよくわからないということなのだが、いつまでたってもよくわからないので、「bojovat」は「s」と一緒には使わないようにしている。
冗談でよく言うのは、「s+七格」なのか、ただの七格なのかよく考えて使おうねということで、それは次の二つの文を比べてみてもらえばわかるはずである。この二つの文に関しては、実際に使える正しい文であるかどうかは気にしないでほしい。使う動詞は「hrát si(遊ぶ)」。
Hrál jsem si s bratrem.
Hrál jsem si bratrem.
如何であろうか。
もう一つ、「s」で注意しておかなければいけないとしたら、後ろに来る名詞が「s」「z」で始まるものだった場合に、発音上の要請から「se」になることで、これが「stát se(〜になる)」のような、最初から「se」を必要とする動詞の「se」なのか、「s」なのか気を付けなければいけないということぐらいか。
もしかしたら、「s」の後ろに二格、四格が来るような例にあたった人もいるかもしれないが、二格を取る「s」は、現在では「z」が使われるようになっているし、四格の「s」は慣用的な表現にしか使われないから、どちらも古い用法として、現在のチェコ語を勉強するのであればあえて覚える必要はなかろう。問題はしばしば目にする「s koho」という表現の「koho」が二格なのか四格なのかだけど、自分では使えるようにはならないから、無理して考えることもないか。
二つ目の七格をとる前置詞は「před(前)」である。時間的なものも、場所的なものもどちらも示すことができて便利なのだけど、時間的なもの場合には日本語の「100年前まで」のような便利な使い方ができないことは以前書いた通りである。
Přijel jsem do České republiky před rokem.
(一年前にチェコ共和国に来ました)
Odešel jsem z práce před pátou hodinou.
(五時前に職場を出ました)
Musím pít pivo před vínem.
(ワインの前にビールを飲まなければなりません)
何か最後のはちょっと怪しいけれども、これが時間の前後関係を表すのに使う「před」である。もう一つの場所を表す「před」の場合には注意が必要で、動詞が移動を表すものだった場合には、後ろに来る名詞が七格ではなく、四格になる。最初に「před」の後ろは七格だと強く覚えこんでしまうために、「jít」など移動する動詞と一緒に使ったときには、四格が必要だというのがなかなか身につかず間違いを繰り返した、否、今でも繰り返しているのである。これは、「na」の後ろが場所の場合には六格になって、方向を表す場合には四格になるのと同様に区別すればいいはずなのだけど……。「na」も間違えるからなあ。
とまれ、例文を挙げておく。
Budu čekat na vás před nádražím.
(駅の前で待っています)
Přede mnou sedí prezident.
(私の前に大統領が座っています)
なんだけど、
Vyšel jsem před budovu školy.
(学校の建物の前に出た)
この「před+4格」は使わないでいようと思えば使わずに住むのだけど、「na」のほうはなあ。
Dám tuto knihu na stůl.
(この本を机の上に置く)
Nechám tuto knihu na stole.
(この本を机の上に置いておく)
訳し分けてみたけど、あんまり意味のない訳し分けである。こんなのが自然に使えるようになれば、チェコ語の感覚が発達してきたと喜べるのだろうけど、いつまでたっても考えないと仕えないのである。いや、問題は考えても間違えることがあることか。
2018年2月13日24時。
2018年02月11日
七格の話(二月八日)
先日の記事の冒頭に、チェコ語に関する記事にコメントをもらってありがたいなんて話を書いたら、なんだかチェコ語について欠かなければならないような気がしてきたので、予定を変更して、予定なんてものが本当に存在したのかどうかは自分にもよくわからないのだが、以前コメントちょっと話題になっていた七格の使い方について書いておく。
七格は一般に手段方法を表すといわれるのだが、日本語の「手で食べる」「車で行く」の「で」に当たるものだと思えばいい。ただし、ちょっと注意が必要なものもある。例えば、「行く」に関しては、
Jedu autem.(車で行く)
Jedu vlakem.(電車で行く)
なのに、
Jedu na koni.(馬で行く)
Jedu na kole. (自転車で行く)
になるのである。トラムやバスなども七格を使うから、動力を使う交通機関は、七格を使って、生き物の力で動くものは、「na +六格」になるのかなと思わなくもないのだが、バイクは「na motorce」だったと思う。ということは、乗り物の中に入るものの場合は七格で、上に乗る形のものは「na +六格」だということにしておこう。
質問の場合には、
Čím pojedme? (何で行く?)
と聞くことになって、答えは使うものによって、七格か「na +六格」を選ぶことになる。
それから、同じ「行く」に関するものとしては、ある場所を通り抜けていくときに、七格を使うことがある。その場合にはただの「jít」「jet」ではなく、接頭辞の「pro」をつけることが多い。
Prošel jsem městem.(町を通り抜けた)
Jdu svou cestou.(自分の道を行く)
最後のは比喩的に、自分なりの方法でなんて意味で使われることの方が多いかもしれない。十年以上前に耳にすることが多かった曲に、出だしが「cestou necestou」で始まるのがあったなあ。MIG21だったかなあ。これは、「道があろうがなかろうが、通り抜けて進む」という意味だろうか。
質問は「kudy」を使って、
Kudy jste šli do města?
答えは、「tudy(こっちから)」「tamtudy(あっちから)」を使ってもいいけど、「touto cestou(この道を通って)」とか七格で答えたくなる。多分答えても大丈夫だと思うけど、「kudy」を使った質問をされる機会自体が少ないからなあ。昔はモラビア方言で、「tady」の七格っぽい「tadyma」なんてのを使ったこともあるなあ。「z kama」があるなら、「tadyma」があってもいいはずである。
もう一つの七格単独での使い方は、職業や役職などを表すときに、普通は一格を使うところを七格にするというものである。人名とか基本的に一生変わらないものは仕えないようだが、「私があなただったら」のような仮定法でも使うことがある。この使い方で一番よく使うのは、動詞「být(〜である)」「stát se(〜になる)」の二つである。
Jsem student.(私は学生です)
Studentem jsem já.(学生は私です)
On se stal prezidentem. (彼は大統領になった)
ただ単に七格にして「jsem studentem」でもいいのだろうけど、強調するときに使うことが多いような気がするので、語順を変えてみた。有名な「テラスキ・ソム・マヨロム・ヤー」もスロバキア語だけど七格が使われているし。
他にも、まだ説明していないけど動詞を受身にした場合の実際の動作主も七格で表す。これについては受身の説明をするときにまとめて説明した方がよさそうである。いつになるかはわからないけどさ。
ということで、次は七格をとる前置詞の話である。
2018年2月9日22時。
2018年01月25日
二格の使い方5(正月廿二日)
予定の倍を越えてしまった二格の使い方だけれども、今日でお仕舞いである。前回も書いたけれども、二格をとる動詞がいくつかあるのである。そのうちの重要な、いやぱっとその場で思い出せるものを紹介する。日本語の「の」には全く対応しないので慣れるまでは大変である。
日本語だと、形容詞で表現するけれども、チェコ語では動詞を使うというものがいくつかあるが、そのうち
のひとつが「怖い」である。三人称では、動詞の「怖がる」を使うこともあるけれども、チェコ語では、「bát se」である。その一人称単数は「bojím se」で、過去のL分詞は「bál se」となる。この動詞が、なぜか怖がる対象を示すのに二格をとるのである。
Bojím se psa. (犬が怖い)
Bojí se psa.(あの人は犬を怖がっている)
二つ目は、「聞く」である。「音楽を聞く」の「聞く」ではなく、「質問する」という意味の「zeptat se」が、質問する相手を二格で表現する。男性名詞場合は、聞く相手は必ず活動体になるので、二格と四格は同じになるが、日本語で「誰々に質問する」と助詞「に」を使うところから、三格を使ってしまいがちなので注意しなければならない。
Zeptal jsem se učitele/učitelky, odkud je.
先生にどこの出身か聞いた。
三つ目は「参加する」という意味の「zúčastnit se」である。これも日本語だと助詞「に」を取るので三格だと思いがちだけれども、二格をとるのである。念のために例文を上げておこうか。
Nemohl jsem se zúčastnit olomouckého maratonu.
オロモウツのマラソンに参加できなかった。(理由は省略)
以上三つとも「se」を取るのだが、二格が必要な動詞に共通の特徴であるというには例が少なすぎる。ただチェコ語を勉強するうえで大切なのは、動詞が何格をとるかを全部覚えるのではなく、日本語の感覚とずれがある部分をしっかり覚えることである。
日本語では「誰々を助ける」という「助ける/手伝う」に当たる動詞「pomoct」は、チェコ語では四格ではなく、三格を取るなんてのは、覚えなければどうしようもない。反対に「誰々にあげる」という場合の「dát」は、チェコ語でも三格なので頑張って覚えなくても自然に使えるようになる。だから、日本語の感覚で、一格=が、二格=の(ただし後ろから)、三格=に、四格=を、五格=よ、六格=×、七格=で、と考えて使えばそれほど間違いは多くならないはずである。間違いだと言われたらそれを重点的に覚えていけばいい。
話は変わるけれども、ふどばさんのコメントの「ドイツ語やっていると格を数字で表すのが便利ですが後々日本語でない教材を使うことを考えると 7や造でなく最初からInstrumental、NGDAVLIで覚えればよかったと後悔しています」というのは、どうなんだろう。こっちに来てから頑張って覚えたけどあんまり役に立った記憶はない。
日本語の教科書で、ある程度格変化や、前置詞や動詞の取る格を覚えておけば、最初に見たときには「ダティフって何だっけ」と思うかもしれないけれども、周辺の変化の形や前置詞を見ていけば、「何だ三格なのか」と理解できるはずだし、「ダティフ」だのなんだのは、普通のチェコ人、言語学を専攻しているわけでもないチェコ人に質問をするときに使えないのである。チェコの人は、チェコ語で「ブルブニー・パート」なんて言うか、「co」「kdo」の変化形を使うことが多いので、上の「zeptat se」だと、「zeptat se koho」と口の中で言ったあとしばらく、二格だっけ四格だっけと悩んだりすることもある。
日本人でも、日本語について質問されたときに、中学高校で勉強した国語文法の終止形だの五段動詞だのは覚えていて何とか使えても、外国人向けの日本語の教科書で使われている日本語の文法用語なんか知らないなんてことは多いはずである。それと同じで、チェコ人が高校までのチェコ語の勉強で使うのはラテン語起源の格の名前ではなく、「co」「kdo」の格変化、もしくは順番を表す数詞を使った表現なのだろう。
以前も、確かサマースクールのことを書いたときに、触れたと思うけれども、日本の教科書だとあんまり重視されていない感のある「co」「kdo」の格変化は絶対に覚えておいた方がいい。そして、チェコ人に「zeptat se koho na co」でいいんだっけ? なんて質問できると素晴らしい。「co」「kdo」の代わりに、「ně」を付けて「něco」「někdo」にしてもいいと思うけど。
とりあえず念のために格変化を示しておく。
1格 co kdo
2格 čeho koho
3格 čemu komu
4格 co koho
5格 co kdo
6格 čem kom
7格 čím kým
「co」は不活動体で一格と四格が同じ、「kdo」は活動体で二格と四格が同じなのである。五格は入れたけど使う機会はあるのかな。大声で「ツォ」なんて叫ぶのが呼格ってことになるのかね。
ふどばさんが「7格は便利なものでジョーカー扱いにしている」という七格については、また機会を改めることにする。二格が予想外に長引いて、ちょっと疲れてしまった。二格を取る前置詞で、「podle(によって/よれば/したがって)」「místo(の代わりに)」なんかを取り上げるのを忘れたのもそのせいである。
2018年1月23日10時。
2018年01月24日
二格の使い方4(正月廿一日)
今日はチェコ語の二格の続きである。前回は方向を表す前置詞を説明したが、今回は場所を表す前置詞から始めよう。側、隣などの場所を表す前置詞も、二格を取る。「u(ところに/そばに)」「vedle(となりに)」「blízko(近くに)」などがあって、後に来る動詞によっては、助詞は「で」にしたほうがいい場合もあるだろう。
すでに「誰々のうちで/に」というのを現すためには、「うちで/に」を表す「doma」に、「u+人の二格」を組み合わせて使うという話は、チェコ語の場所の表しかたの厄介さを嘆いた記事で紹介したとはずだが、「doma」なしで、「u+人の二格」だけで使えば、「誰それのところで/に」という意味になる。「u nás」は、「私たちのところでは」という意味だが、「我が国では」と訳したくなるような使い方もする。その場合は、「u nás v České republice」とか国名と一緒に使うことも多いか。
それから、同じ名前の町や村が複数ある時に、識別のために近くにある大きな町の名前を後に「u+二格」でつけることがあるのだ。オロモウツの近くだと、プシェロフの近くと、プロスチェヨフの近くにそれぞれブロデクという小さな町があるので、「Brodek u Přerova」「Brodek u Prostějova」と区別するのだ。
この手の区別のために後ろにつけるものとしては、ほかにも、地方名を使った「na Moravě」「na Hané」「v Čechách」などがあるし、近くの川の名前を使って、「nad Vltavou」「nad Moravou」なんてやりかたもある。チェコの地名ではないけれども、ドイツのケルンは、チェコ語では「Kolín」で、プラハ近郊のトヨタの工場ができたことで日本でも多少知られるようになった「Kolín」と区別するために「nad Rýnem」をつけるのである。チェコのコリーンには何もつける必要はないが、あえてつけるとすれば、「u Prahy」か「nad Labem」かな。
「vedle」と「blízko」はもともとは副詞なので、後に名詞を二格でつけることなく単独で使うこともできる。特に「vedle」は、単独で使われていると、「ずれている/はずれている」と訳したくなることも多い。「となりにいる」とか、「隣で仕事している」なんてことも言えるんだけどね。
以前ことわざを紹介したときの「bez práce, nejsou koláče」に出てくる「bez」も二格をとる前置詞である。「〜なしで」とか「〜抜きに」という意味だが、個人的に一番よく使うのは、喫茶店でコーヒーを注文して、「s mlékem?」と聞かれ、「bez mléka」と答えるときである。もちろん、「bez cukru」でもあるんだけど、チェコ風トルココーヒー以外は、ブラックで飲むからさ。
前置詞扱いになるのか自身はないけれども、「bez mála」で「ほとんど」という意味で使うこともある。「bez mála 20」というと、あとちょっとで二十、二十にちょっと足りないという意味になるはずである。ただし「bezmála」で一語化しているかもしれない。
もう一つ気を付けたほうがいいのは、名詞の「bez」も存在していることで、これはニワトコの木を指す。ヨーロッパのものなのでセイヨウニワトコになるのかな。白い小さな花がいくつも固まって咲くのが特徴で、実の色によって、「černý bez」「červený bez」と呼び分けられている。小さな粒粒の実は食べられるはず。レモネードとかお茶も、この「bez」から作られているはずなので、目にする機会は少なくない。
「〜以外は」を表すのもチェコ語では前置詞を使う。その「kromě」は本来「クロムニェ」と読むはずなのだけど、チェコ人の中には発音をはしょって、「クロミェ」とか「クロム」とかで済ませてしまう人がいる。「mě」の正しい発音がわかっていない人が結構いるのには、こちらに来て何度か驚かされたことがある。
この「kromě」の後に、数を表す言葉と名詞をともに二格で使うという例を挙げておこう。「kromě několika výjimek(いくつかの例外を除いて)」の「několik」は二格、三格、六格、七格では「několika」になる数詞のような副詞のような言葉である。「いくつ」を表す「kolik」に「ně」をつけて「いくつか」にしたものだと説明したほうがわかりやすいかな。チェコ語と日本語が対応するもののひとつに、疑問詞にチェコ語で語頭に「ně」をつけると、日本語では語末に「か」をつけるというのがあるのである。「něco」「někdo」とかいくつも例を上げることができる。
それから「kromě」が便利なのは、「ten」の二格の「toho」をつけて「それ以外は」という意味で使えるのと、さらに「že」使って、それの内容を表現することができることだ。
Já umím česky. Kromě toho jsem normální Japonec.
チェコ語ができます。それ以外は、普通の日本人です。
Kromě toho, že umím česky, jsem normální Japonec.
チェコ語ができる以外は、普通の日本人です。
なんか微妙に変な文のような気もするけれども、それが文法的な問題なのか、内容的な問題なのかがよくわからない。
もう一つ覚えておいたほうがいい二格をとる前置詞は「během」であろうか。普通は後に名詞を二格でつけて、時間的に「〜の間」という意味で使われるのだが、こちらもちょっと複雑な文を作るのに使いやすい前置詞である。「〜している間に」ってのは、日本語ではよく使うしね。
Během toho, co jsem pracoval doma, začalo sněžit.
うちで仕事をしている間に雪が降りだした。
基本は、「kromě」のときと同じで、後に「ten」の二格の「toho」をつけること。これだけで前の文を受けて単独で「その間」という意味でも使えるし、後ろに説明の文をつけることもできる。ただし、「během」の場合には、「co」もしくは「kdy」を使って何をしている間なのかを示すことになる。
チェコ語のこの手の一見ややこしい表現というのは、日本語風に工夫して使ってみると意外と問題なく使えることがあるし、だめもとであれこれ試してみることをお勧めする。うまく行くと楽しいものである。もう一つ二格を使うものとして、特殊な動詞を上げるつもりだったのだけど、また次回である。
2018年1月21日23時。
2018年01月21日
二格の使い方3(正月十八日)
普通はこれから書く二つを最初に説明するのかもしれないが、まず一つめは前置詞と一緒に使う場合である。二格をとる前置詞は、チェコ語の勉強を始めてすぐのころから登場するので、初学の人であっても二格に触れる機会は多いはずである。
最初に勉強するのは、場所の起点を表す「z」だろうか。「Jsem z Japonska(私は日本から来ました/日本の出身です)」というのは、自己紹介の一部にもなるので、名詞は単数一格だけで格変化が説明される前に、登場しているかもしれない。厄介なのは、「日本のどこ?」と追加で質問されたときで、日本の地名を格変化させるのに抵抗があったり、語末がチェコ語の名詞にはありえないものだったりして、格変化のさせ方がよくわからなかったりすることがある。
東京=Tokioのようにチェコ語化している地名ならいいのだけど、それ以外の地名だと、格変化させた場合に一格の形がわかってもらえるかどうか心配だというのもあって、ついつい語尾をもごもごとあいまいにして済ませてしまう。そんなときには、地名の前に、都道府県や、市町村、場合によっては地方を表す一般名詞を置いて、固有名詞は格変化させないという方法をとる。
Jsem z Tokia.
Jsem z prefektury Čiba.(千葉県)
Jsem z oblasti Kantó.(関東地方)
Jsem z města Mito.(水戸市)
なんてところである。これは目的地を示す前置詞の「do」の場合にも同様に使えるので、便利である。場所を表す「v」や「na」にも使えるけど、その場合には、一般的な名詞を六格にする必要があるというのは、大丈夫だろうと思うけど念のため。
それから数詞と「z」を一緒に使って、例えば「五個のリンゴのうち二つ」なんてことも表現できる。この場合に「数詞(二格)+名詞(複数二格)」という形が現れるのである。多いのは「数詞(一格)+名詞(複数二格)」なんだけどね。
Jedl jsem dvě z pěti jablek.(リンゴは複数二格)
Jedl jsem dvě jablka z pěti.(リンゴは複数一格)
名詞の「リンゴ」をどっちの数詞につけるのが自然なのかは、よくわからないけれども、どちらでも問題ないはずである。多分。
二格を取る前置詞の二つ目は、さっきも出た「do」と、その反対の「od」である。場所の場合には、「z」と「do」が、「から」「まで」を表す組み合わせだが、時間の場合には、「od」と「do」になる。「do šesti hodin(六時まで)」なんてのは「hodin」を省略することもできて楽なのだけど、「六時半から」とか「一時まで」とかになると、「od půl páté」「do jedné」でいいのか今でも自信がない。後ろは大丈夫だと思うけど、前はどうかなあ。
時間について言えば、「do dvou hodin」は、「二時まで」でも「二時間以内に」でも使えたはずなので、時々混乱する。数が大きくなれば「以内に」の可能性は減っていくし、時間ではなくて、分とか、日、週なんかなら、「以内に」の意味でしか使えないのははっきりしているからいいんだけど。「do dvou týdnů(二週間以内に)」「do příštího týdne(来週までに)」と使い分けることができるのである。
厄介なのは、名詞のような副詞のような時間を表す言葉で、「dnes(今日)」「včera(昨日)」あたりは、意識が強いのか、「od」と「do」を付けるために特別な名詞を使うことになる。一格では、いや二格以外ではほとんど使うことのない「dnešek」「včerejšek」に、「od」と「do」をつけて、「ode dneška(今日から)」「do včerejška(昨日まで)」としなければならない。明日とか、月曜日、火曜日なんかもこの手の特別な名詞を使うことがある。
それに対して、「ráno(朝)」「večer(夕方)」は、そのまま使って、「od rána」「do večera」になるから、よくわからない。まあ「předevčírem(一昨日)」「pozítří(明後日)」になると、正直お手上げなので、それに比べればマシと言えばましである。
チェコ語に対する大きな不満の一つが、日本語では普通に使える「一年前まで」とか「百年後から」という表現ができないところである。チェコ語では「前」も「まで」も前置詞で処理するため、前置詞を重ねることができない以上、「去年まで」とか「2118年から」という微妙に意味の変わってしまう表現を使うしかないのである。「後までに」は、「以内に」と意味はほぼ同じだから、「do」を使って何とか処理できるけど、「に」のない「後まで」は厄介かな。ちょっと思いつかない。
前置詞だけでもあと二つ三つ紹介しておきたいので、もう一回続く。次のまで行くと長くなりすぎそうなので、一度ここでお仕舞である。
2018年1月16日22時。
2018年01月19日
二格の使い方2(正月十六日)
続いて、後ろから「の」の意味で使うのと似ている二格の使い方から説明をすると、名詞の前に、「たくさん(mnoho)」「少ない(málo)」などの日本語では副詞だったり、形容詞だったりするけれども、チェコ語では量の多少を示す副詞(数詞扱いかも)が来たときに後ろに来る名詞は、原則として複数二格になる。ただし、複数では使えない数えられない名詞に関しては、単数の二格を使うし、格変化させて三格、六格、七格にする場合には、二格にはならない。つまりは一、二、四、五格の場合には、全部二格になるということである。五格は使わないだろうけど。
なので、「たくさんの学生がいる」という場合には、学生を複数の二格にして「studentů」をつかうのである。一格と四格の場合は次の通りになる。
Je mnoho studentů.(一格)
Máme mnoho studentů. (四格)
気を付けなければならないのは、語順を入れ替えた結果、名詞と副詞が生き別れになって、日本語的には「学生が多い」と主語述語の関係になりそうなものも、動詞が間に挟まるのに複数二格になってしまうことだ。
Studentů je mnoho.(一格)
Studentů máme mnoho.(四格)
もう一つ注意すべきことは、「たくさんの学生」を一格で使うと、単数中性扱いになるということである。これ慣れるまでは大変なので、いや慣れても大変なので、最初のうちから気を付けるようにしておいた方がいい。たくさんだから一つじゃないはずなのに単数扱いで、名詞が女性でも男性でも中性になる。あらゆる場面でこんないい加減さを発揮してくれたら、日本人には使いやすくなるのだけど、なかなかそんなわけにもいかない。
というわけで、上の一格の例を過去の文にすると、
Bylo mnoho studentů.
Studentů bylo mnoho.
二格で、「たくさんの学生」を使おうと思ったら、前置詞を使うか、二格をとる動詞を使うかするしかないので、後でまとめて説明する。ただ、その場合「mnoho」も二格にして「mnoha」になるというのだけは覚えておこう。「málo」も「mála」ね。
ちなみに、複数にならない名詞としては、水とかビールなんかが挙げられて、レストランで注文するときには、普通の数詞ではなくて「dvakrát」を使わなければならないなんてことを勉強するわけだけれども、実際には普通に「dvě piva」なんて言い方をするんだよね。それはともかく、「水が少し」と言いたいときには、「málo vody」と単数の二格を使うはずである。
量の多少を表す言葉の後ろが複数二格になるのと同様に、数詞の後ろも複数二格になって全体としては単数扱いになる。ただし、1の後ろは単数で単数の格変化をし、2、3、4の後ろは複数が来て普通に複数の格変化をさせる。「mnoho」「málo」などと同じ扱いになるのは、5以上の数詞を使う場合である。これからチェコ語では5以上をたくさんとみなすんだなんてことを言ってみたことがあるけれども、それは冗談だということにしておく。
同様に「五人の友達がいる」なんてのをチェコ語にしてみよう。
Je pět studentů.(一格)
Máme pět studentů. (四格)
語順を入れかえることももちろん可能である。
Studentů je pět.(一格)
Studentů máme pět.(四格)
この5以上の数詞と数量の多少を表す副詞と組み合わせて名詞を使う場合に、直接している場合は問題ない。離れていてもここに挙げた例のように短い単語が入っているだけなら、複数ではなく中性単数扱いになるというのも何とか対応できる。ただ、語順をあれこれいじって、間に長めの連体修飾節が入ったりすると、名詞と数詞、そして動詞の人称変化形がばらばらになってしまうことがある。
具体的な例を挙げると、「十人の友達がうちに来た」という文を頭の中で考えてチェコ語にする際には、最初に「deset kamarádů」が出てくるので、動詞の過去を三人称単数にするのも問題なくできる。いや、気をつけていればすぐできるようになる。
Deset kamarádů přišlo ke mně domů.
これに、時間を表す「昨日」なんかを加えても、日本語では動詞より前に、数詞と名詞が出てくるから対応はできなくはない。
Včera přišlo ke mně domů deset kamarádů.
しかし、これを日本語で「昨日うちに来た友達は十人だった」とちょっとややこしい言い方にすると間違えることが増える。人数を意識する前に、「昨日うちに来た友達」の部分をチェコ語にすると、友達が一人ではなかった場合には、複数であることを意識して、
Kamarádi, kteří přišli včera ke mně domů,
と文を始めてしまう。そして十人で三人称単数扱いになるからと数を意識した結果、文頭と文末の平仄が合わなくなってしまう。
Kamarádi, kteří přišli včera ke mně domů, bylo deset.
正しくは、最初の「kamarád」を複数一格ではなく、二格にしなければならないのである。
Kamarádů, kteří přišli včera ke mně domů, bylo deset.
書くときには後でチェックしたりして修正できることも多いのだけど、思いついた順番にしゃべっているときには、途中で数を意識したり、その数を変えたりして、名詞と数詞、動詞の平仄が合わなくなって、それに気づいて混乱してしどろもどろになってしまうことも多い。一番の対処法は、間違いに気づいても気づかないふりで、修正なんぞ考えもしないで話し続けることだと言うと師匠に怒られるかな。
チェコ語で数を言いたいときには、まず数を決めてから話し始める必要があって、途中でその数を変えてはいけないということを教訓にしておこう。一番いいのは格変化も厄介な数詞は使わないことなんだけど、そうもいかないのである。
2018年1月16日23時。
2018年01月17日
名詞の二格の使い方1(正月十四日)
頂いたコメントを読んでいて、格の説明をちゃんとしていないことに気づいた。日本語の「テニヲハ」のようなものだとは書いた記憶があるけれども、細かい使い方については放置していたなあ。ということで、まずは沙矢香さんが、「格の勉強を始めた時、2格は所属や所有を示す、と説明文がありましたので、私の頭では「英語で言うmy your his her their と似てるかな?」と思っていたのですが、まさかの「můj moje tvůj tvoje」の存在、更にそれらにも格変化がある」と嘆いている二格から。
説明にあったという名詞の「2格は所属や所有を示す」というのは、確かにその通りで、うまく使えれば便利な機能ではあるのだけど、一般的にどんな名詞でもどんな状況でも使えるというものでもない。所属や所有を表す日本語の助詞「の」をチェコ語で表現するときには、形容詞にしてしまうことが多いのである。例えば日本は、Japonskoだが、「日本の」は、二格のJaponskaではなく、形容詞の「japonský」を使うことのほうが多い。
人名などの固有名詞からも、特別な所有を示す形容詞のようなものを作ることができる。例えば、「Karlova Univerzita(カレル大学)」、「Karlovy Vary(カルロビ・バリ)」はカレル4世にちなむ名前だが、最初の単語、「Karlova」と「Karlovy」は、「Karel」から作られた形容詞のようなもので、それぞれ女性名詞単数一格、男性名詞複数一格につけるときの形である。
それから人称代名詞の二格も、「の」を表すのに使われることはない。「můj/moje/tvůj/tvoje」などのこちらも所有を表す形容詞めいた言葉が存在して、形容詞同様に格変化する。言ってみれば「můj」は英語の「my」と同じように考えてもいいけれども、格変化があるとというところなのだ。昔、「誰の」と言おうとして、一生懸命考えた上で、「kdo」の二格、「koho」を使ったら、そういうときには、「čí」を使うんだと言われてげんなりしたことがある。
ではどんなときに二格を「の」の意味で使わなければならないかと言うと、ひとつは形容詞型の名詞である。特に形容詞型の名字は多く、これから所有を表す形容詞を作ることはできないために、二格が使われる。ここで注意しなければいけないことは、名詞の二格は前ではなく後ろに持っていかなければならないということだ。オロモウツにある大学は、パラツキー大学だが、略称UP、つまり「Univerzita Palackého」となるのである。ただし、古い用法だと形容詞型の名詞の二格を前からかけることもないわけではないらしい。
もう一つ、二格にして後ろから賭けなければいけないのは、姓名のように二つ以上の名詞、もしくは形容詞+名詞でできている名詞節に「の」を付けたい場合である。日本語に訳すと「の」はつかないけれども、プラハのルジニェにある飛行場は、バーツラフ・ハベル空港という名前が付けられたが、チェコ語では姓名は二格で後からかけて、「Letiště Václava Havla」となるのである。チェコ共和国の首相も、同様に「premiér České republiky」となる。
形容詞型でも二つ以上の言葉の組み合わせでもない場合、つまり普通の名詞を二格にして後ろからかけて「の」の意味で使うこともあるけれども、自分で使うのは、「の」を付けたい名詞から作られる形容詞が思いつかない場合、単数と複数を区別する名詞で複数に「の」を付けたい場合ぐらいでいい。後者の例としては、チャンピオンズリーグは、チェコ語では、チャンピオンを表す「mistr」を複数二格にして「Liga Mistrů」というのを挙げておこう。
それから、何とか省、かんとか庁という役所、役職の名称は、一単語でも後ろから二格でかけることが多いか。「ministerstvo obrany(防衛省)」「úřad práce(労働局)」とかね。それから「mluvčí prezidenta(大統領広報官)」なんてのは、オフチャーチェクって名字と一緒に覚えておいても損はないかも。そして総理大臣は、「premiér」という言葉があるのに、「předseda vlády」、直訳すれば「政府の議長」なんて表現も使われる。
この名詞を二格にして後ろからかけて、日本語の「の」のように使うのは、形容詞の格変化を覚えていないとき、思い出せないときなんかには重宝するから、使えるようになるのはいいことなのだけど、日本的な「の」の連続する文でこれをやると、チェコ語では日本語以上に意味不明になりそうなので注意が必要である。日本語では単に「の」で済ませるようなものでも、前置詞を使って処理した方がよかったりすることも多いしさ。
ただ、スポーツやイベントの世界では、チェコ語の伝統的な二格にして後ろからという手法が、英語の順番に並べるという手法に浸食されていて、チェコのサッカーリーグの一部は、長らくスポンサーを務めるピルスナー・ウルクエル社のビールのブランドであるガンブリヌスの名をとって、「Gambrinus liga」と名付けられていた。スパルタの本拠地スタジアムの命名権を日本のトヨタが購入していた時期は、「トヨタ・アレーナ」なんて呼ばれていたし、この手のチェコ語の文法にうるさいチェコ人にとっては許容できないような語法がはびこりつつある。
一番ひどくて何がなんだかわけがわからなかったのは、アイスホッケーのプレーオフだっただろうか、プレーオフだけのスポンサーがついたため、「スポンサー名(一格)・プレーオフ・スポンサー名(1格)・エクストラリギ(2格)」という並びになっていたかな。スポンサー名は適当に再現してみると、「ジェネラリ・プレーオフ・ティップスポルト・エクストラリギ」とか何とかで、耳を疑ったことがある。途中に「ホケヨベー(ホッケーの形容詞の二格)」も入ったかな。
この2格、特に日本語の「の」のように使う二格は、便利だけど奥が深いのだよ。とにかく日本語で前に来る名詞が、チェコ語では後ろに行くというのだけは、しっかり覚えておいた方がいい。他の二格の使い方に関しては、また明日。
2018年1月15日16時。
動詞を名詞化した場合に、後に名詞を二格でつけるという使い方もあったなあ。
sestavit vládu(組閣する)→ sestavení vlády(組閣)
動詞とともに四格で使う名詞を二格にすることが多いかな。1月16日追記。