2018年01月17日
名詞の二格の使い方1(正月十四日)
頂いたコメントを読んでいて、格の説明をちゃんとしていないことに気づいた。日本語の「テニヲハ」のようなものだとは書いた記憶があるけれども、細かい使い方については放置していたなあ。ということで、まずは沙矢香さんが、「格の勉強を始めた時、2格は所属や所有を示す、と説明文がありましたので、私の頭では「英語で言うmy your his her their と似てるかな?」と思っていたのですが、まさかの「můj moje tvůj tvoje」の存在、更にそれらにも格変化がある」と嘆いている二格から。
説明にあったという名詞の「2格は所属や所有を示す」というのは、確かにその通りで、うまく使えれば便利な機能ではあるのだけど、一般的にどんな名詞でもどんな状況でも使えるというものでもない。所属や所有を表す日本語の助詞「の」をチェコ語で表現するときには、形容詞にしてしまうことが多いのである。例えば日本は、Japonskoだが、「日本の」は、二格のJaponskaではなく、形容詞の「japonský」を使うことのほうが多い。
人名などの固有名詞からも、特別な所有を示す形容詞のようなものを作ることができる。例えば、「Karlova Univerzita(カレル大学)」、「Karlovy Vary(カルロビ・バリ)」はカレル4世にちなむ名前だが、最初の単語、「Karlova」と「Karlovy」は、「Karel」から作られた形容詞のようなもので、それぞれ女性名詞単数一格、男性名詞複数一格につけるときの形である。
それから人称代名詞の二格も、「の」を表すのに使われることはない。「můj/moje/tvůj/tvoje」などのこちらも所有を表す形容詞めいた言葉が存在して、形容詞同様に格変化する。言ってみれば「můj」は英語の「my」と同じように考えてもいいけれども、格変化があるとというところなのだ。昔、「誰の」と言おうとして、一生懸命考えた上で、「kdo」の二格、「koho」を使ったら、そういうときには、「čí」を使うんだと言われてげんなりしたことがある。
ではどんなときに二格を「の」の意味で使わなければならないかと言うと、ひとつは形容詞型の名詞である。特に形容詞型の名字は多く、これから所有を表す形容詞を作ることはできないために、二格が使われる。ここで注意しなければいけないことは、名詞の二格は前ではなく後ろに持っていかなければならないということだ。オロモウツにある大学は、パラツキー大学だが、略称UP、つまり「Univerzita Palackého」となるのである。ただし、古い用法だと形容詞型の名詞の二格を前からかけることもないわけではないらしい。
もう一つ、二格にして後ろから賭けなければいけないのは、姓名のように二つ以上の名詞、もしくは形容詞+名詞でできている名詞節に「の」を付けたい場合である。日本語に訳すと「の」はつかないけれども、プラハのルジニェにある飛行場は、バーツラフ・ハベル空港という名前が付けられたが、チェコ語では姓名は二格で後からかけて、「Letiště Václava Havla」となるのである。チェコ共和国の首相も、同様に「premiér České republiky」となる。
形容詞型でも二つ以上の言葉の組み合わせでもない場合、つまり普通の名詞を二格にして後ろからかけて「の」の意味で使うこともあるけれども、自分で使うのは、「の」を付けたい名詞から作られる形容詞が思いつかない場合、単数と複数を区別する名詞で複数に「の」を付けたい場合ぐらいでいい。後者の例としては、チャンピオンズリーグは、チェコ語では、チャンピオンを表す「mistr」を複数二格にして「Liga Mistrů」というのを挙げておこう。
それから、何とか省、かんとか庁という役所、役職の名称は、一単語でも後ろから二格でかけることが多いか。「ministerstvo obrany(防衛省)」「úřad práce(労働局)」とかね。それから「mluvčí prezidenta(大統領広報官)」なんてのは、オフチャーチェクって名字と一緒に覚えておいても損はないかも。そして総理大臣は、「premiér」という言葉があるのに、「předseda vlády」、直訳すれば「政府の議長」なんて表現も使われる。
この名詞を二格にして後ろからかけて、日本語の「の」のように使うのは、形容詞の格変化を覚えていないとき、思い出せないときなんかには重宝するから、使えるようになるのはいいことなのだけど、日本的な「の」の連続する文でこれをやると、チェコ語では日本語以上に意味不明になりそうなので注意が必要である。日本語では単に「の」で済ませるようなものでも、前置詞を使って処理した方がよかったりすることも多いしさ。
ただ、スポーツやイベントの世界では、チェコ語の伝統的な二格にして後ろからという手法が、英語の順番に並べるという手法に浸食されていて、チェコのサッカーリーグの一部は、長らくスポンサーを務めるピルスナー・ウルクエル社のビールのブランドであるガンブリヌスの名をとって、「Gambrinus liga」と名付けられていた。スパルタの本拠地スタジアムの命名権を日本のトヨタが購入していた時期は、「トヨタ・アレーナ」なんて呼ばれていたし、この手のチェコ語の文法にうるさいチェコ人にとっては許容できないような語法がはびこりつつある。
一番ひどくて何がなんだかわけがわからなかったのは、アイスホッケーのプレーオフだっただろうか、プレーオフだけのスポンサーがついたため、「スポンサー名(一格)・プレーオフ・スポンサー名(1格)・エクストラリギ(2格)」という並びになっていたかな。スポンサー名は適当に再現してみると、「ジェネラリ・プレーオフ・ティップスポルト・エクストラリギ」とか何とかで、耳を疑ったことがある。途中に「ホケヨベー(ホッケーの形容詞の二格)」も入ったかな。
この2格、特に日本語の「の」のように使う二格は、便利だけど奥が深いのだよ。とにかく日本語で前に来る名詞が、チェコ語では後ろに行くというのだけは、しっかり覚えておいた方がいい。他の二格の使い方に関しては、また明日。
2018年1月15日16時。
動詞を名詞化した場合に、後に名詞を二格でつけるという使い方もあったなあ。
sestavit vládu(組閣する)→ sestavení vlády(組閣)
動詞とともに四格で使う名詞を二格にすることが多いかな。1月16日追記。
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