2021年03月31日
チェコ語の動詞と名詞の関係(三月廿八日)
これまで、チェコ語について書いてきた文章を振り返ると、大部分がすでにチェコ語のことを知っている人向けというか、チェコ語を知らない人には呼んでもわかりにくいものだった。ということで、チェコ語を知らない人向けに、チェコ語はこんな言葉なんだという説明をしてみようと思い立った。うまく行くかどうかはわからないけどさ。
チェコ語に限らず、最低限の短い文を作るために必要なのは動詞と名詞である。例外はあるけれどもとりあえずそういうことにしておく。そして大切なのは、動詞と名詞の関係、もしくは文中における名詞の役割をはっきりさせることである。動詞はひとつしかなければ、それが述語として使われることは明らかだが、名詞の場合は一つしかなくても、動詞に対する主語になるとは限らない。
日本語では、文中の名詞の役割をはっきりさせるために、助詞を使う。どんな助詞を必要とするかは、文中での役割に基づいて動詞が決定することになる。大抵は、役割が同じなら同じ助詞を使うが、例えば場所を表す場合には、「で」と「に」、さらには「を」の中でどれを使うかは、動詞によって決定される。それは、ほぼ同じことを表した「この会社で働く」と「この会社に勤める」を比べれば、理解できるはずである。
日本語の場合で、重要なのは、文中での役割と動詞が同じであれば、どんな名詞であっても同じ助詞を付けるという点である。例外として「は」があちこちに放り込めるというのはあるけれども、ここでは無視する。つまり、日本語では、どんな助詞を使うかに関して、名詞には決定権がないのである。格助詞ではあっても、格変化ではないから、などというと先走りすぎかな。
一方、チェコ語の場合は、助詞の代りに格変化と前置詞があり、どの格、前置詞を使うかをきめるのは動詞である。たとえば、同じように「わかる/理解する」という意味の動詞でも、「rozumět」は理解する対象となる名詞は3格で表され、「pochopit」は4格を取る。これは動詞の意味そのものよりも、恐らくは語源にまでさかのぼって解釈する必要のあることだろうが、とにかく、動詞が決まれば必要な名詞の格も決まるのである。
では、日本語の助詞と対応させたくなく名詞の語尾はというと、どの名詞でも同じなのではなく、名詞の格変化のタイプによって異なり、同じ名詞でも単数と複数でどんな語尾が使用されるかは違う。チェコ語には、男性、女性、中性という三つの性があり、それぞれの性の中でも、男性名詞は生きている活動体と、それ以外の不活動体に分けたうえで、硬変化、軟変化、特殊変化などいくつかの格変化のタイプに分類されるのである。
さらに厄介なのは、すべての格変化で、1格から7格まですべて語尾が違うというものは存在せず、それぞれいくつかの格が共通の語尾を取ることがあり、その共通の語尾を取る格が、格変化の種類によって異なるという点である。だから、文中である名詞を使う場合には、動詞から何格が必要かを確認した上で、名詞の格変化のタイプに基づいて、必要な語尾をつけるという作業が求められる。少なくとも最初のうちは、入念にやらないと、自動的に使えるようにはならない。
書かれたものを読む際、話されるのを耳で聞く際には、逆の手順で文中の名詞の格を確定した上でないと理解できないということになる。大抵は動詞や前置詞のおかげで細かいことは考えずに格が確定できるけれども、二つの名詞を別の格で伴える動詞の場合には、どちらが何格なのか正確に理解することが重要になる。
別の言い方でこのことを説明すると、例えば語尾に母音「u」が現れている場合、真っ先に思い浮かぶのは、女性名詞硬変化単数4格だが、ほかにも男性名詞活動体単数3格と6格、不活動体2格と3格、6格、中性名詞硬変化単数3格と6格である可能性もある。語尾を見ただけでは、何格で使われているかは確定できないのである。知らない名詞の場合は、動詞から格を確定して、単数一格の形に戻してやらないと辞書も正確に引けないから困ったものである。
2021年3月29日10時30分。
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