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2021年01月19日

4格を取る前置詞4(正月十六日)



 ハンドボールの世界選手権、開催国エジプトが強い。初戦のチリは相手が相手だったので勝っても、相手を圧倒してもそれほど驚かなかったけど、チェコでも苦戦することの多い、相手ホームではほぼ絶対に勝てない北マケドニアを粉砕していた。準々決勝を目標にしているというのは、本気だったようだ。

 とまれ、チェコ語の4格の話、前置詞を使って動作の対象を表す使い方の続きである。二つ目は、個人的にすべての前置詞の中で一番厄介だと思っている「za」をとる動詞である。


・děkovat(感謝する)
 お礼を言うときに使う動詞で、感謝する相手は3格。確か千野栄一氏がチェコ語のお礼の言葉は「十九番」と言っておけばいいなってことを言っていたけれども、「Děkuju vám」まではお礼の言葉として、観光でチェコに来る人でも覚えている人が多いのではなかろうか。一歩進むと、その後に「za + 4格」で何に対してお礼を言うのか表現できるようになる。「za pomoc(手伝い)」「za pozvání(招待)」「za radu(助言)」なんかがよく使われる。さらに先に行くなら、名詞で済ませずに、「za to」の後ろに「že」で始まる節をつけて文で具体的な御礼の対象を表現することができる。去年は「Děkuji vám všem za to, že jste všichni dodržovali vládní opatření(みなさま、政府の規制をまもってくれてありがとうございます)」なんて、心にもなさそうな発言を何度も聞かされたものだ。


・omlouvat se(謝罪する)
 謝罪のための動詞も、感謝のときとまったく同じように使う。謝罪する相手は3格、謝罪の対象となることは「za + 4格」で、「za to, že」でより具体的にすることもできる。初めて聞いたときには、「Já se vám omlouvám」の、「vám」で韻を踏んでいるような最後の二語の響きが美しくて聞きほれたのを覚えている。
 謝罪するときには、もう一つ「prominout」という動詞を使うこともあるが、こちらの本来の意味は「許す」で、命令形の「promiň(te)」を謝罪の言葉として使うのである。ただし「omlouvat se」とはちがって、具体的な謝罪の対象については「za to」は使わずに、直接「že」でつなぐだけでいい。


・trestat(罰する)
 処罰の対象となる行為を「za + 4格」で表す。動詞ではなく名詞「trest」にも同様につけることができ、何に対する罰なのかを表現する。裁判での判決や、刑務所に入っているなんてことを説明する際に別の動詞が使われた場合も、処罰の対象となる行為は、「za + 4格」で表す。スポーツの反則も同様である。
 逆に表彰されるような行為についても、「za + 4格」で表すことが多い。一番有名なノーベル賞の中でもオリンピック度同様に役目を終えたものを例にとると、「Nobelova cena za mír(平和賞)」「Nobelova cena za literaturu(文学賞)」となる。


・považovat(みなす)
 これは対象と言っていいのかどうか微妙なのだけれども、「AをBとみなす」というときのBにあたる部分を「za + 4格」で表す。この言葉を覚えたばかりの頃は、なぜかすごく便利な言葉のように思えて、濫用していたのだが、最近はとんと使わなくなった。昔と違ってあえてややこしい言い回しを使わなくなったからかな。


 こちらも最後に、知っておくと便利な表現を紹介して終わりにしよう。一つ目は「stojí za to + 動詞」。この「stojí」は、「いくらですか」と聞くときの「stojí」だが、「値する」という意味だと理解できる。それに「za to + 動詞」を組み合わせると、「〜するに値する」とか「〜する甲斐がある」という意味になるのである。
 二つ目は可能を表す動詞「moct」と「za to」を組み合わせた表現で、「Za to můžeš ty(お前が悪い)」とか、「Za to můžu já(私のせいです)」などと使う。何でそんな意味になるのかはよくわからないけれども、便利なのでよく使う。よく使うのだけど、「za」はやっぱりよくわからんというのが正直なところである。
2021年1月17日23時。










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