2018年01月19日
二格の使い方2(正月十六日)
続いて、後ろから「の」の意味で使うのと似ている二格の使い方から説明をすると、名詞の前に、「たくさん(mnoho)」「少ない(málo)」などの日本語では副詞だったり、形容詞だったりするけれども、チェコ語では量の多少を示す副詞(数詞扱いかも)が来たときに後ろに来る名詞は、原則として複数二格になる。ただし、複数では使えない数えられない名詞に関しては、単数の二格を使うし、格変化させて三格、六格、七格にする場合には、二格にはならない。つまりは一、二、四、五格の場合には、全部二格になるということである。五格は使わないだろうけど。
なので、「たくさんの学生がいる」という場合には、学生を複数の二格にして「studentů」をつかうのである。一格と四格の場合は次の通りになる。
Je mnoho studentů.(一格)
Máme mnoho studentů. (四格)
気を付けなければならないのは、語順を入れ替えた結果、名詞と副詞が生き別れになって、日本語的には「学生が多い」と主語述語の関係になりそうなものも、動詞が間に挟まるのに複数二格になってしまうことだ。
Studentů je mnoho.(一格)
Studentů máme mnoho.(四格)
もう一つ注意すべきことは、「たくさんの学生」を一格で使うと、単数中性扱いになるということである。これ慣れるまでは大変なので、いや慣れても大変なので、最初のうちから気を付けるようにしておいた方がいい。たくさんだから一つじゃないはずなのに単数扱いで、名詞が女性でも男性でも中性になる。あらゆる場面でこんないい加減さを発揮してくれたら、日本人には使いやすくなるのだけど、なかなかそんなわけにもいかない。
というわけで、上の一格の例を過去の文にすると、
Bylo mnoho studentů.
Studentů bylo mnoho.
二格で、「たくさんの学生」を使おうと思ったら、前置詞を使うか、二格をとる動詞を使うかするしかないので、後でまとめて説明する。ただ、その場合「mnoho」も二格にして「mnoha」になるというのだけは覚えておこう。「málo」も「mála」ね。
ちなみに、複数にならない名詞としては、水とかビールなんかが挙げられて、レストランで注文するときには、普通の数詞ではなくて「dvakrát」を使わなければならないなんてことを勉強するわけだけれども、実際には普通に「dvě piva」なんて言い方をするんだよね。それはともかく、「水が少し」と言いたいときには、「málo vody」と単数の二格を使うはずである。
量の多少を表す言葉の後ろが複数二格になるのと同様に、数詞の後ろも複数二格になって全体としては単数扱いになる。ただし、1の後ろは単数で単数の格変化をし、2、3、4の後ろは複数が来て普通に複数の格変化をさせる。「mnoho」「málo」などと同じ扱いになるのは、5以上の数詞を使う場合である。これからチェコ語では5以上をたくさんとみなすんだなんてことを言ってみたことがあるけれども、それは冗談だということにしておく。
同様に「五人の友達がいる」なんてのをチェコ語にしてみよう。
Je pět studentů.(一格)
Máme pět studentů. (四格)
語順を入れかえることももちろん可能である。
Studentů je pět.(一格)
Studentů máme pět.(四格)
この5以上の数詞と数量の多少を表す副詞と組み合わせて名詞を使う場合に、直接している場合は問題ない。離れていてもここに挙げた例のように短い単語が入っているだけなら、複数ではなく中性単数扱いになるというのも何とか対応できる。ただ、語順をあれこれいじって、間に長めの連体修飾節が入ったりすると、名詞と数詞、そして動詞の人称変化形がばらばらになってしまうことがある。
具体的な例を挙げると、「十人の友達がうちに来た」という文を頭の中で考えてチェコ語にする際には、最初に「deset kamarádů」が出てくるので、動詞の過去を三人称単数にするのも問題なくできる。いや、気をつけていればすぐできるようになる。
Deset kamarádů přišlo ke mně domů.
これに、時間を表す「昨日」なんかを加えても、日本語では動詞より前に、数詞と名詞が出てくるから対応はできなくはない。
Včera přišlo ke mně domů deset kamarádů.
しかし、これを日本語で「昨日うちに来た友達は十人だった」とちょっとややこしい言い方にすると間違えることが増える。人数を意識する前に、「昨日うちに来た友達」の部分をチェコ語にすると、友達が一人ではなかった場合には、複数であることを意識して、
Kamarádi, kteří přišli včera ke mně domů,
と文を始めてしまう。そして十人で三人称単数扱いになるからと数を意識した結果、文頭と文末の平仄が合わなくなってしまう。
Kamarádi, kteří přišli včera ke mně domů, bylo deset.
正しくは、最初の「kamarád」を複数一格ではなく、二格にしなければならないのである。
Kamarádů, kteří přišli včera ke mně domů, bylo deset.
書くときには後でチェックしたりして修正できることも多いのだけど、思いついた順番にしゃべっているときには、途中で数を意識したり、その数を変えたりして、名詞と数詞、動詞の平仄が合わなくなって、それに気づいて混乱してしどろもどろになってしまうことも多い。一番の対処法は、間違いに気づいても気づかないふりで、修正なんぞ考えもしないで話し続けることだと言うと師匠に怒られるかな。
チェコ語で数を言いたいときには、まず数を決めてから話し始める必要があって、途中でその数を変えてはいけないということを教訓にしておこう。一番いいのは格変化も厄介な数詞は使わないことなんだけど、そうもいかないのである。
2018年1月16日23時。
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