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2018年09月02日
チェコ語の時間を表す表現についてC2格〈LŠSS2018〉(九月一日)
この時間を表す2格は、忘れている人もいるかもしれないけど、比較的初学の頃に登場する。日付を表す表現がそれである。今日が何月何日なのかを問うには、「Kolikátého je dnes?」という文を使うが、順番を問うための疑問詞の「kolikátý」が男性に付くときの2格になっているのはわかるだろう。これに対する答えは、数字を使って書けば、「Dnes je 1.9.」となるから、1格でも2格でもどうでもいいのだが、口に出して読むときには注意が必要になる。チェコ語では日付は日、月、年の順番で並べる。念のため。
問題は9月を言うのに順序数詞を使うか、月の名称の「září」を使うかなのだけど、「září」では1格も2格も同じだから、10月1日にしよう。10月は「říjen」だが、日付にすると、「1. 10.」は「prvního října」と読まれる。つまり日も月もどちらも2格にしなければならないのである。それに対して順序数詞を使うと、「prvního desátý」となり、日は2格だが、月は1格になるのである。
これは別々に説明されることが多く、どちらかを基準にしてもう一方を使おうとすると間違えることになるので注意が必要である。順序数詞を使った場合に月が1格になるのは、誤解と混乱を避けるためだろうと推測できる。月も2格にすると、例えば「dvacátého prvního」と言った場合に、単に21日を指すのか、1月20日を指すのか判然としなくなってしまう。その点、月の名称を使った場合には、勘違いが起こらないから2格でも問題ないのである。
と、これだけだと単に日付を表す場合に2格をとると思われるかもしれないが、その日付にこんなことが起こったと言う場合にも問題なく使える。普通の人が一番よく使うのは自分の生年月日を言うときだろうか。
・Narodil jsem se 28. 2. 1987.
1987年2月28日に生まれた。
この日付(年は除く)を数字を使わないで書くと、つまりは読むように書くと、次のようになる。
・Narodil jsem se dvacátého osmého druhý 1987.
・Narodil jsem se dvacátého osmého února 1987.
問題は年をどう読むかだが、これには二つの方法がある。一つは普通の数字と同じように読む方法で、2000年以降にも問題なく使える方法である。つまり、1987年は「tisíc devět set osmdesát sedm」とよみ、2018年は「dva tisíce osmnáct」と読むのである。
もう一つは、12世紀から20世紀にまで使われる方法で、前半の二桁と後半の二桁に分けて読む。1987年は「devatenáct set osmdesát sedm」となり、1192年は「jedenáct set devadesát dva」となる。ただし、11世紀の例えば1078年は「deset set sedmdesát osm」とはならず、「tisíc sedmdesát osm」となる。「set」は「sto(百)」の複数2格の形である。
この年の数字の前に「rok(年)」を2格で入れることもあって、すべてを数字を使わずに表記すると以下の通りである。
・Narodil jsem se dvacátého osmého února roku devatenáct
set osmdesát sedm.
日に関して2格で表すというのは、たまに出てくることがあって、昔、昔話っぽいもので、「或る日」という意味で、「jednoho dne」というのを読んだ記憶がある。それで、しばしば自分でも使ってみるのだけど、この場合には使わないと修正されることが多い。こういうのは母語話者は感覚で使っているので、学習者としてはあれこれ試して自分なりの規準を見つけるしかないのだが、現時点では使う機会が少ないこともあって、基準は発見できていない。
それからもう一つ、2格を使うものとしては、すでに挙げたけれども、年を、特に具体的な年号を示す場合がある。これは普通に使われる「v roce」と比べると、硬い書き言葉的な表現だと言うことなので、無理して覚える必要はないかもしれないが、「v roce 2018」と「roku 2018」は意味においては差がないことは知っておいたほうが良かろう。
ここで取り上げた時間を表す表現に加えるかどうか悩むのが、「〜間」を示す前置詞の「během」である。「během」の後に2格で時間を表す表現を置くことで、例えば、「během roku」で「一年の間(に)」などと使える。まあこの手の表現を取り上げていくと切りがないので、時間を表す2格に関してはこれでおしまいということにする。
2018年9月2日11時45分。
2018年09月01日
チェコ語の時間を表す表現について➂v + 6格〈LŠSS2018〉(八月卅一日)
この前置詞「V」に6格を合わせる形は、前置詞無しの4格と並んで、もっともよく使われる時間を表す表現である。時間を表す表現のまえに形容詞や指示詞がついた場合でも、この「v + 6格」が使われることも多い。この形を絶対に使わなければならないものとしては、月、年の二つを覚えておくといい。とりあえず例によって適当に分類しながら説明する。
➀一日のうちの大体の時間
・v noci(夜)
これだけ。他は使わない。
A週
・v tomto týdnu(今週)
ただし「tento týden(4格)」をよく使う。
・V minulém týdnu hodně pršelo, ale v tomto týdnu vůbec neprší.
先週はたくさん雨が降ったけど今週は全く降らない。
➂月、特に月の名前を使う場合。
・v lednu、 v únoru、v březnu、v dubnu、v květnu、v červnu、
v červenci、v srpnu、v září、v říjnu、v listopadu、v prosinci
・v tomto měsíci(今月)
ただし「tento měsíc(4格)」をよく使う。
・V červnu minulého roku jsem přijel do České republiky.
去年の六月にチェコに来ました。
・V Olomouci se bude konat v příštím měsíci tenisový turnaj.
オロモウツで来月テニス大会が行われます。
C季節
・v létě(夏) v zimě(冬)
ただしna jaře(6格)na podzim(4格)
・V létě bylo horko a v zimě je zima.
夏は暑く冬は寒い。
C年、年代、世紀
・v roce 2018(2018年)
ただしroku 2018(2格)も可。
・v tom roce(その年)
ただしten roku(4格)も可。
・v osmdesátých letech(80年代)
・v devatenáctém století(19世紀)
・V roce 2020 se bude konat olympiáda v Tokiu.
2020年にオリンピックが東京で開かれる。
・V příštím roce bude konec éry Heisei.
来年平成が終わる。
・V osmdesátých letech minulého století japonské automobilky
začaly stavět továrnu v USA.
1980年代に日本の自動車会社はアメリカに工場を建て始めた。
・V dvacátém století vypukla dvakrát světová válka.
20世紀には二度世界大戦が起こった。←ちょっと怪しい。
Dその他。
・ve chvíli(瞬間)、 v okamžiku(瞬間)
・v době(〜頃)、 v období(時代)、 v čase(〜時)
これらも形容詞などをつけた場合に4格と使うことが多いが
「v +6格」もよく使われる。
繰り返しになるがこの形を使う時間を表す表現は多いので、よくわからないときにはこれを使ってみるのが正しい。違うといわれた場合には、覚えればいいのである。
2018年9月1日12時35分。
2018年08月31日
チェコ語の時間を表す表現についてAv + 4格〈LŠSS2018〉(八月卅日)
二つ目は前置詞「v」に4格を付けるもの。これは特に時間(何時何分)を表す場合と、曜日を使う場合に使うことを覚えておくといい。
➀時間(何時何分)
・v pět hodin(5時)v pětだけでも可。
ただし順序数詞を使うとo páté(6格)となる。
・v pět hodin třicet minut (5時30分)
ただし順序数詞を使うとo půl šestéとなる。
・ve tři čtvrtě na šest(5時45分)
(間違い修正「čtvrti」→「čtvrtě」)
V sedm jsem vstal a o deváté jsem přišel do práce.
七時に起きて、九時に職場に出ました。
Sejdeme se v pět třicet / o půl šesté.
五時半に会いましょう。
A一日のうちの大体の時間。
・v poledne(お昼)
v ránoなども可能だが普通は前置詞は使わない。
➂日、特に曜日
・v ten den(その日)
ただし前置詞を使わない形のほうが一般的。
・v pondělí(月曜) v úterý(火曜) ve středu(水曜)
ve čtvrtek(木)v pátek(金) v sobotu(土) v neděli(日)
・v minulou sobotu(先週の土曜) v tuto neděli(今週の日曜)など
ただし前置詞を使わない形のほうが一般的。
V ten den, kdy jsem přijel do české republiky, silně sněžilo.
私がチェコについた日は強い雪が降っていた。
V pondělí jsem začal znovu chodit do práce, protože skončila
lední škola (v) minulou sobotu.
先週の土曜日にサマースクールが終わったので月曜日か
らまた仕事に出始めました。
時間を表す表現で、v + 4格を使うのは、時間(何時何分)と曜日(単独の場合)の二つだと覚えておけばいい。それに例外的なv poledneが使えれば何の問題もない。
リハビリ中ゆえ短いけどここまで。
2018年8月31日8時55分。
2018年08月30日
チェコ語の時間を表す表現について@4格〈LŠSS2018〉(八月廿九日)
サマースクールで先生にまとめをお願いした時間を表す表現について、それを参考にしながら簡単にまとめてみる。場所を表す表現の「v」と「na」の使い分けの大変さについてはすでに記したが、時間を表す表現の混乱ぶりについてはまだ書いていないと思うし。これ、実は場所以上にいろいろあってややこしい上に、どちらでもいいとかいうのもあるので、何とかしてくれと言いたくなることも多い。
あれこれ錯綜しそうだけど、適当に分類しながら話を進めてみる。
一つ目は前置詞を使わないで名詞の4格で表すもので、これが一番使う機会が多いかもしれない。ただし一部はすでに副詞として認識されることもあるようである。また前置詞無しの2格が使える場合は、2格の方が書き言葉的な硬い表現となる。➀〜➂は最初の方で勉強するから、特に今更覚えるまでもないだろうけど、Cは覚えておくと便利である。どの前置詞に何格を付けるかわからないときは、形容詞か指示詞を前につけて4格にするという手が使える。
➀一日の中における大体の時間
ráno(朝)、dopoledne(午前中)、
odpoledne(午後)、večer(夕方)など。
例外
v poledne(昼 v+4格)、 v noci(夜v+6格)、
o půlnoci(深夜o+6格)
A日の中で副詞とも解釈されるもの
dnes(今日)、zítra(明日)、pozítří(明後日)、
včera(昨日)、předevčírem(一昨日)
➂年の中で副詞とも解釈されるもの
letos(今年)、loni(去年)、předloni(一昨年)
C二語以上の単語で表される日、週、月、年
ten den(あの日)
ただし、v ten den(4格)、v tom dne(6格)も可。
(チェコ語の間違い修正「ve tom」→「v tom」)
・Ten den jsem nebyl v Olomouci.
その日は、オロモウツにいませんでした。
minulou sobotu(先週の土曜日)
ただし、形容詞がない場合はv sobotu(4格)。
・Minulou sobotu skončila letní škola slovanských studií.
先週の土曜日にサマースクールが終わりました。
tento týden(今週)
ただし、tohoto týdne(2格)v tomto týdne(6格)も可。
・Tento týden budu pracovat doma a příští týden budu chodit do práce.
今週はうちで仕事をして来週は仕事に出ます。
sedmý měsíc(七番目の月=七月)
ただし、sedmého měsíce(2格)も可。
・Sedmý měsíc tohoto roku tady vůbec nepršelo.
今年の七月は全く雨が降りませんでした。
tento rok(来年)
ただし、v tomto roce(6格)も可。形容詞がない場合はv roce(6格)。
・Tento rok budu v České republice, ale příští rok budu studovat v Japonsku.
今年はチェコにいますが、来年は日本に留学します。
その場で適当に書いたので。例文の正しさまでは保証しかねるけど、改めて強調しておく。時間を表す言葉の前に形容詞や指示詞などをつける場合に、前置詞や格に確信が持てない場合には、前置詞なしで4格を使うのが一番なのである。
2018年8月30日7時45分。
2018年07月05日
サッカーを見ながらチェコ語における日本人の名前の格変化に思いを致す(七月四日)
チェコテレビのスポーツ部門のアナウンサーたちは、事前に出場選手たちの名前の読み方を確認するなど入念な準備をしているはずなのだけど、今年のロシアでのワールドカップの中継に関して言えば、予算不足で、現地に出向かずプラハから画面を見ながらの実況が多いせいか、ひどいのが耳につく。担当者の数が少なくて一人で多くのチームの中継を担当するから準備に時間が足りないというのもあるかもしれない。自分にわかるのは日本人の名前だけなのだが、他のアジアやアフリカの国の人名も酷いことになっている可能性はある。いや、ひどいのは日本の試合、セネガル戦とベルギー戦の二試合を実況した奴だけかもしれないけど。ポーランドとの試合を中継したアナウンサーはそれほどひどくなかったし。
何がひどかったかというと、まず一つはヘボン式のローマ字表記の日本の名字を読む際に、チェコ語の読み方を混ぜていたことである。アクセントが変とか、発音が微妙に違うというのは、日本で選手経験や監督経験のある人でもそうなのだから批判するつもりはないけれども、読み方を混ぜるのはいただけない。一番問題だったのは「Shoji」選手で、この名字を「ショイ」と読んでいた。
日本語では「ショージ」と読むべきところだろうが、長母音が短母音になっているのは、最近の日本語のローマ字表記では長音符を表示しないから仕方がない。「ジ」が「イ」になるのは、チェコ語では「j」がヤ行の音を表すからである。つまり「ji」はチェコ語では存在しなくなって久しいヤ行のイ段の音を表すのである。ただ、チェコ語の読み方に合わせるとすれば、「Sho」も「ズホ」もしくは、「スホ」となって、「ショ」とは読めないはずなのだけどね。不思議なのは、同じ「ji」でも、キーパーのカワシマ選手の名前のほうは「エイジ」と「ジ」と読んでいたことである。
セネガルとの試合では、ナガトモ選手のことを「ナガモト」と何度も言い間違えて、解説のルデク・ゼレンカに訂正されていたし、準備不足を批判されても仕方あるまい。ただこの「ナガトモ」「ナガモト」の間違いは他のアナウンサーもやっていたような気がするから、チェコ人には「トモ」よりも「モト」のほうが言いやすいのかもしれない。
もう一つの問題は、日本選手の名前の格変化がめちゃくちゃすぎて何格なのか理解できなかったことである。「ホンダ」「カガワ」などの「A」で終わる名前については、チェコ語の男性名詞の中にも「A」で終わるものがあるからか、問題なく格変化させられていたようだが、「ナガトモ」「オーサコ」のような「O」で終わる名前の変化がひどかった。少なくともスロバキア人の中には「O」で終わる名字の人はいるし、チェコにも存在してもおかしくないのだが、もうぐちゃぐちゃだった。
この「O」で終わる男性名詞の格変化は、硬変化の男性名詞と5格以外は共通である。つまり、2格、4格の語尾は「-a」で、3格、6格は「-ovi」、5格は1格と同じで、7格は「-em」になる。気を付けなければならないのは、外国の人名なので、「O」をそのままにして、その後ろに語尾を付ける形も認められていることである。こちらの方が推奨されるのかな。つまり「Osako」の例えば二格は「Osaka」よりは、「Osakoa」のほうが推奨されるのである。それでも「Osaka」になるのであれば文句はない。「Osaku」「Osaky」など、一格の姿が見えなくなるような、何格なのかもわからないような形が頻出して、ものすごく聞きづらかった。
もう一つ格変化で問題だったのは、「タカシ」と「イヌイ」などの「I」で終わる名前の場合で、前者は子音に「I」がついているので、形容詞軟変化が男性名詞につくときと同じ活用語尾を取る。つまり2格、4格は「Takašiho」、3格、6格は「Takašimu」、5格は1格と同じで、7格は「Takašim」になるはずなのである。それなのに、2格が「Takaše」になっていた。これでは一格が「Takaš」という軟変化の男性名詞になってしまう。
では母音の後ろに「I」のついた「Inui」の場合にどうなるかというと、「Takaši」と同じように形容詞軟変化的な語尾を付けてもいいのだが、推奨されるのは、末尾の「I」を「J」に見立てて、男性名詞の軟変化と同じ語尾を付けるやりかたである。だから上に書いた間違いは、こちらに引きずられてのものだと言ってもよさそうである。気づいたのはたしか「Takaši Inui」の2格を「Takaše Inuie」(タカシェ・イヌイェと読む)と言ったときだったし。
「シバサキ」と「シバザキ」が混在するという問題もあって、一見漢字の読み方かと思ってしまったのだが、実際はドイツ語の影響である。チェコ語では特に外来語において、ドイツ語の影響で「S」を理由もなく濁らせることがあるのである。例えばチェコ人が「シンカンゼン」「ボンザイ」と言っているのに気づいた人もいるかもしれない。だから「Shibasaki」と書かれていたのを、チェコ語的に読んだりドイツ語なまりで読んだりしたというのが原因なのである。
日本人の名前の表記、読み、格変化に関しては、あちこちで気になる例に出会うのだけど、今回のワールドカップの中継は最悪だった。日本のチェコの人名表記とどっちがひどいかと考えると、それでも、やはり日本のマスコミの表記(即読み方)のほうがひどいな。チェコは、個々のアナウンサーが間違えることはあっても、ちゃんと読めている人もいるわけだけど、日本はマスコミ全体で変な表記を使っているし、自慢げに修正する人の表記も変だったりするからなあ。
2018年7月4日23時54分
ローマ字表記の誤りを修正。7月9日
2018年04月10日
副詞の比較級と最上級(四月七日)
副詞を比較級、最上級にするためには、形容詞の比較級、最上級を覚えておく必要がある。逆に言えば、形容詞の比較級、最上級ができれば、副詞の比較級、最上級は何の問題もなく作れるのである。子音交代などの厄介ごとは形容詞のところで覚えてしまったという前提で、比較級が「ejší/ější」で終わる規則的な形容詞を副詞にする部分だけを説明すれば、形容詞の比較級の語末の「-ší」をとって「i」に変えてやるだけでいい。それは最上級も同じである。副詞の比較級に「nej」を付けると考えてもいいし、形容詞の最上級の語尾を変えると考えてもいい。
形容詞の時に使った例をそのまま流用して、いくつか作り方の例を示せば次のようになる。左から順に形容詞原級、比較級、副詞比較級、副詞最上級となる。
blbý → blbější → blběji → nejblběji(バカな)
pomalý → pomalejší → pomaleji → nejpomaleji(遅い)
zdravý → zdravější → zdravěji → nejzdravěji(健康な)
chytrý → chytřejší → chytřeji → nejchytřeji(賢い)
přátelský → přátelštější → přátelštěji → nejpřátelštěji(友好的な)
それに対して、比較級が「-ší」だけのものは、「-ší」を取って「eji/ěji」を付ける。子音交代のことを考えると、「-e」で終わる副詞にしてその後ろに「ji」を付けると覚えたほうが簡単かもしれない。例は後者の説明にしてみる。つまり形容詞、副詞原級、副詞比較級、副詞最上級の順である。
tvrdý → tvrdě → tvrději → nejtvrději(硬い)
bohatý → bohatě → bohatěji → nejbohatěji(金持ちの)
starý → staře → stařeji → nejstařeji(古い)
tichý → tiše → tišeji → nejtišěji(静かな)
形容詞比較級の語尾が、「čí」になるものは「í」を取って「eji/ěji」を付けて副詞にする。順番は形容詞原級、比較級、副詞比較級、副詞最上級である。最後のはちょっと微妙だけど一緒にしてしまう。形容詞比較級の語尾は読んでしまえば「チー」になるし。
lehký → lehčí → lehčeji → nejlehčeji(軽い)
měkký → měkčí → měkčeji → nejměkčeji(軟らかい)
krátký → kratší → kratčeji → nejkratčeji(短い)
ただし、形容詞の比較級が「-ší」で終わるものの中には、副詞の比較級が規則的には導けないものも多い。形容詞よりも例外的な変化が多いのである。順番は上と同じ。
hluboký → hlubší → hlouběji → nejhlouběji(深い)
drahý → dražší → dráž(e) → nejdráž(e)(高い)
vysoký → vyšší → výš(e) → nejvýš(e)(高い)
blízký → bližší → blíž(e) → nejblíž(e)(近い)
下の三つは規則的な部分がなくないけれども、母音が長母音に戻ったり、末尾の「e」があってもなくてもどちらでもいいとか、例外事項が多いので不規則扱いにする。
もちろん形容詞で完全な不規則だったものは副詞でも、変な言い方だけど不規則性を維持する。
velký → větší → víc(e)? → nejvíc(e)?(大きい/多い)
malý → menší → méně → nejméně(小さい/少ない)
dobrý → lepší → lépe/líp → nejlépe/nejlíp(いい)
špatný → horší → hůř(e) → nejhůř(e)(悪い)
dlouhý → delší → déle → nejdéle(長い)
最初の「víc → nejvíc」は、副詞「mnoho(多く)」「moc(とても)」の比較級、最上級として扱われることが多いが、形を見ると、小さいと少ないが通じるのと同じように、大きいと多いが通じて「velký」の比較級から作られたものだと考えたほうが覚えやすい。「velice(とても)」なんて副詞もあるわけだし。形が変わっているから覚えやすいもくそもないと言われればそれまでだけど。
実は、一番間違いやすいのは、副詞を使うべきところで形容詞を使ってしまうことなのだけど、その辺は、おいおいというか、文章を作るときに名詞にかけるのか動詞にかけるのか考えられるようになれば、間違いは減る。母語である日本語では無意識に形容詞の連体形と連用形を使い分けているわけだが、チェコ語の場合には品詞を意識して使うようにしないとなかなか上達はしない。
チェコ語を勉強しているときに思ったのは、中学高校で習った国語文法というのは、内容がどうこうではなく、言葉に対する向かい方という点で、チェコ語の勉強に役に立っているということである。だから、英語をはじめとする外国語に堪能な日本人を育てたいのであれば、外国語教育よりも国語教育に力を入れて、日本語を意識的に使えるようにするのが一番だと思うのだけど、世界はそちらの方には向かっていないようである。文法的なことを取り払って単語を並べて喋れればいいなんていうのなら、何も言う気はないけれどもさ、そういうのを言葉ができるとは、わが日本語では表現しないのである。
2018年4月7日23時。
何でこんなものが日本で……。
2018年04月08日
形容詞を副詞にする方法2(四月五日)
二つに分けてみたはいいけれども、もう一回分書くような分量があるのだろうかと不安になって、一日間を空けてしまった。たまには短くてもいいかということで。
前回例としてあげた副詞「japonsky」のパターンは多くの国名を基にした形容詞に適用できる。チェコ語には、国名、民族名からできた形容詞は「-ský」か「-cký」で終わるという例外のない規則が存在する。例外だらけで規則性を疑いたくなることの多いチェコ語においては珍しいことである。そして、名詞である言語名も「-ština」「-čtina」という語尾を取る点で共通している。
これで国名が「-sko」「-cko」で共通していたら万歳なのだけど、残念ながらこの二つで終わらない国名も多い。それでもできるかぎりの一般化を適用すれば、国名が「Japonsko」のように「-sko」で終わるものは、言葉は「japonština」と「-ština」で終わる形になり、形容詞形は「japonský」となりそれを副詞化すると、語尾が短くなって「japonsky」となり、「Německo(ドイツ)」のように「-cko」で終わるものも同様に、「němčina」「německý」「německy」となるのである。
それ以外の国名から形容詞、言語名を作り出すところは、あまり規則がないので覚えていく必要があるけれども、形容詞と言語名の関係、形容詞から副詞を作る過程は共通しているので、安心して使うことができる。副詞形を使う機会なんて言葉と関係のある場合ぐらいなので、それほど機会が多いわけではないけれども、勉強し始めの自己紹介をする機会の多い時期には重宝する表現である。例を挙げておこう。「Francie(フランス)」から「francouzština」「francouzský」「francouzsky」ができ、「Anglie(イングランド)」から「angličtina」「anglický」「anglicky」ができる類である。
副詞が「-ky」で終わる形になるのは、国名からできた形容詞に限らず、「-ský」「-cký」で終わる形容詞に共通の特徴である。例を挙げれば、「přátelský」からできる「přátelsky」、「politický」からできる「politicky」などがある。文例も上げておいた方がいいかな。
Povídali jsme se přátelsky. (友好的に話をしました。)
Domluvili jsme se politicky.(政治的に合意しました。)
下はちょっと怪しいなあ。それはともかく、名詞ではなく動詞にかけるときにこの副詞の形を使うのである。しかし、残念なことに、長母音を短母音にするだけで、副詞、もしくは連用形が作れる形容詞はどちらかというと例外的なものになる。
では、一般的な場合はどうなるかというと、チェコ語で最初に勉強したやり取りの一つを思い出してみればいい。
Jak se máte? /Mám se dobře.
ってのは、嫌になるぐらい何度も繰り返したはずである。そして、この時点では勉強しなかったかもしれないけれども、「dobře」は形容詞「dobrý」の副詞形である。具合がよくないときに使う「špatně」も形容詞「špatný」からできたものなので、形容詞の語末の長母音を「e」に変えてやれば副詞が出来上がる、これが一つ目の作り方である。
ただし、問題は、いつものように子音交代が起こることで、これはもう数をこなして慣れていくしかない。とりあえず言えるのは、「r」にはハーチェクを付け、「t/d/n」の後ろでは、「e」ではなく「ě」を使うということ。あとは「k→c」とか「ch→š」「h→z」なんてのもあったかな。
ということで、以下のようになる。
bohatý → bohatě
tvrdý → tvrdě
těžký → těžce
tichý → tiše
drahý → draze
そして一部の形容詞の場合には、「e」だけではなく、「o」を付けて副詞にできるものもある。「e」と「o」で微妙に意味が違って、それなりに傾向があったような気はするのだけど、記憶の奥の方でかすんでしまっている。気になる方は、まともなチェコ語の教科書で確認していただきたい。
těžký → těžko
tichý → ticho
drahý → draho
一番上の「těžko」は信じられるという形容詞と一緒に使って、「信じがたい」なんて表現にすることができるし、二番目の「ticho」は「静かにしろ」というときに、「Ticho!」と叫んでやればいい。一番下はちょっと例が思いつかないけれども、使われるのは確実である。
ところで、この形容詞の語末を「o」にしてしまうのは、二つの形容詞をつなげて一つの形容詞にしてしまうときにも使われる。間に「-」が入ったり入らなかったりよくわからないのだが、書くときはともかく話ときにはあってもなくても関係ないからあまり気にしないほうがいい。
例を挙げれば、大学書林から出ている『現代日本語チェコ語辞典』は、チェコでは「Česko-japonský slovník」と表記されている。外国どの辞書の題名は大抵この手の形容詞が使われている。また二つの国の会社の合弁企業なんかを形容するときにも使う。二つの国と言えば、昔はよく使われた「チェコスロバキアの」という形容詞は、「československý」と「-」は入れないのかな。これはチェコスロバキアが国名として一語化していたからだろうか。
それからよく使うのは、スポーツでユニフォームの色が二色になっているときに色を表す形容詞を二つつなげて間を「o」にする。スラビアのユニフォームはどのスポーツでも赤白半分ずつに分かれているので、「červenobílý」、ボヘミアンズは緑と白の縦じまなので「zelenobílý」といった感じである。古くは白黒テレビが「černobílá televize」だった。この「černobílá」と、オロモウツ郊外のチェルノビール、ウクライナの原子力発電所の事故が起こったチェルノブイリを聞き間違えることが結構あったなあというのは、いつまでたっても耳がよくならない日本人の愚痴である。
副詞も形容詞と同様に比較、最上級がつくれるのだが、その話は次回に回そう。ちょっと納得のいかない副詞の使い方なんてのもあるしさ。意外と長くなったなあ。
2018年4月6日21時。
2018年04月06日
形容詞を副詞にする方法1(四月三日)
高校生ぐらいまでまじめに国語の勉強をした人は、いわゆる橋本文法を基に学校での学習用に改定された国語文法というものを覚えているはずだ。中古の和文を解釈するのには、あまり大きな問題はなかったが、現代日本語の説明にはあれやらこれやら例外事項が多く、もっと適切な文法の解釈があるのではないかと言いたくなることも多かった。橋本文法以外の文法は存在するし、部分的には橋本文法の問題点を解消したものもあるけれども、日本語を全体として記述する文法としては、現時点では橋本文法を越えるものは存在しないと言っておく。
その橋本文法における現代日本語の説明において大きな問題になるのが、形容動詞と副詞である。形容動詞の問題はここではおくとして、副詞に関しては、品詞分類に際して、ゴミ箱と呼んでいる人も多いのではないだろうか。とりあえず、どの品詞になるのかよくわからないものは、副詞に入れておけば、たいてい正しいのである。
チェコ語の副詞の中にも結構その手のよくわからないものがある。よくわからないにもいろいろあるのだけど、最初は名詞なのか副詞なのかわからないというものを挙げよう。「今日学校に行きました」の「今日」は、副詞的な使い方ではあるにしても、名詞といっておけば問題ない。
では、チェコ語はというと、「dnes」は、名詞ではなく時間を示す副詞として扱われるようなのである。そのため、「今日から」なんて助詞を付けて言いたい場合には、「ode dnes」ではなく、「ode dneška」となり、「dnešek」という名詞を使うことになる。でも「do dnes」なんて表現はあったような気がする。あれは一語化して副詞になっているんだったかな。よくわからん。
「dnes」と同じように、「včera(昨日)」「zítra(明日)」にも名詞形の「včerejšek」「zítřek」という表現が存在するし、同じ時間を表す表現で「letos(今年)」にも名詞形「letošek」が存在する。悩むのが、「předevčírem(一昨日)」「pozítří(明後日)」「popozítří(明々後日)」「loni(去年)」なんかに名詞形があるのかだけど、ここではあることにしておく。
ということで空洞化の進む頭で考えて、前置詞を使わずに一単語で時間を表すことができるものは副詞扱いにするのだろうという結論を出した。つまり、一日のうちの時間をさす「ráno(朝)」「dopoledne(午前)」「 večer(夕方から夜)」なんかは、副詞として扱って、名詞ではないから前置詞をつけずに時間を表せるのだろうと。しかし「dopoledne」はともかく、「do rána」「do večera」というのは普通に使っている。日本人が使っているだけだと間違いの可能性もあるけど、直されたことはないし、チェコ人が使っているのもよく耳にする。ということは、この「ráno」と「večer」は名詞だということになるのだろうか。
チェコ語における時間を表す表現の混乱振りはまだ紹介していなかっただろうか。いくつもある時間の表し方の一つに、名詞の四格を使うというものがある。前に形容詞の付いたものが多いのだけど、たとえば「先週の土曜日(に)」というのは、前置詞も何も使わず「minulou sobotu」と四格で表現する。そうすると、上に挙げた「ráno」と「večer」は、名詞を四格で使っていると考えてもよさそうである。さらに「dnes」も一格と四格でしか使わない名詞と考えてもよくないか。なんてことを考えると思考の迷宮に落ちていってしまう。
品詞の分類なんてどうでもいいではないかと考える人も多いかもしれないが、品詞をしっかり区別できるというのは、チェコ語の学習においては大切なことである。初学のころに、「明日まで」というとして、「zítra」は「a」で終わるから二格はと考えて、「do zítry」なんて言ってしまったことはないだろうか。これが副詞だということがわかっていれば、前置詞をつけられないから、別の方法を探すことになる。その結果、どういえばいいかわからなくて先生に聞くというのが関の山だろうけど、自分で問題点を把握した上で、質問をすると間違いにくくなるものである。とは言いながら今でもあれこれ間違えるんだけどさ。
そして、もう一つよくわからないというか、そういうものだと考えるしかないのが、日本語では名詞と助詞で表すものを、チェコでは副詞と称する言葉で表現するものである。最初のほうに出てくるからすぐ慣れると言えばその通りだけど、「私は日本語を勉強している」というのは、「Učím se japonsky」となり、「日本語ができます」は「Umím japonsky」、「日本語で話しています」は「Mluvím japonsky」となる。日本語「を」も「が」も「で」もみな同じ「japonsky」で済ませてしまうのである。厄介なことに、同じ勉強するでも「studovat」を使うと、「Studuji japonštinu」と名詞の四格が必要になる。
それはともかく、この「japonsky」というのは、形容詞の「japonský」の副詞化したものだと説明される。名詞に接続するのではなく、動詞にかかっていくことから副詞と呼んでいるのだろうけれども、高々語尾の長母音が短母音に変わっただけのものを、別の単語として扱う必要があるのか。日本人としては形容詞が動詞にかかるときの形、つまりは形容詞の連用形として理解したいところである。文末の述語として、または名詞の前で使える「japonský」は終止形と連体形だと考えればいい。現代日本語では形容詞も終止形と連体形は同じ形を取ることであるし。
その形容詞の連用形=副詞の作り方の説明をしようと書き始めた文章なのだが、例によって枕が長くなりすぎて本題に入るのは次回ということになってしまった。
2018年4月3日24時。
2018年03月31日
形容詞比較級最上級2(三月廿八日)
承前
また「-hý」「-chý」で終わる形容詞の中にも、比較級で「ší」のみを使うものがある。その場合子音交代を起こして、「-žší」「-šší」となる。
drahý → dražší → nejdražší(高い)
tichý → tišší → nejtišší(静かな)
一部の「-ký/-oký」で終わる形容詞も同様である。この場合、語尾の長母音だけでなく「-ký/-oký」をとって「ší」をつける。語幹の長母音が短母音になったり子音交代を起したりする場合もある。
krátký → kratší → nejkratší(短い)
hluboký → hlubší → nejhlubší(深い)
vysoký → vyšší → nejvyšší(高い)
blízký → bližší → nejbližší(近い)
最後の不規則の中の規則は、「-ký」で終わる形容詞の中の比較級の語尾が「-čí」になるものである。ということで例を挙げると、
lehký → lehčí → nejlehčí(軽い)
měkký → měkčí → nejměkčí(軟らかい)
「-ký」で終わる形容詞には、原則どおりに「ý」を取り去って単に「ejší/ější」をつけるだけでいいというものは存在しない。全て何らかの形で不規則になってしまうのである。それを覚えておくだけでも、初期の間違いは減る。慣れてくると「kejší」という響きに気持ち悪さを感じて、これはありえないと気づけるようになるのだけど。
一つ今でもよくわからないのが、「horký」である。「horčí」にしても、「horčejší」にしてもなんだか落ち着かない。そんなときどうするかというと、副詞の「mnoho/moc」の比較級・最上級をつけてやるのである。
horký → víc horký → nejvíc horký(暑い)
副詞の比較級のつくりかた、いやその前に形容詞から副詞を作る方法が先か、についてはいずれまたまとめるけれども、形容詞の比較級に自信か持てないときには、他の形容詞の場合にもこの方法を使うことができる。乱用するのはお勧めしないけど。
正直な話、完全に規則的だといえる「ejší/ější」をつけるもの以外は全て不規則扱いにして、一つ一つ覚えていったほうがいいような気もする。ただ語末の長母音の前に来る子音によって存在する傾向はあるから、それを意識するために、パターン化しておくのは悪いことではない。問題は、規則的なのか、部分的に規則的なのかが、覚えていないとわからないことである。例えば、「šedý(灰色の)」の比較級が「šedější」になるのか「šedší」になるのかは、ワードの校正機能では後者が正しいとされているけれども、前者の方がいいような気がしなくもない。とにかく、比較級の語尾が「ejší/ější」にならない形容詞は、おぼえる必要があるのである。
最後に一般に不規則とされる形容詞であるが、数はそれほど多くない。多くないけれども、重要でよく使うものばかりである。語幹が似ているものもあれば全く違うものもあるので、いつものように覚えるしかない。
velký → větší → největší(大きい)
malý → menší → nejmenší(小さい)
dobrý → lepší → nejlepší(いい)
špatný → horší → nejhorší(悪い)
zlý → horší → nejhorší(ずるい)
dlouhý → delší → nejdelší(長い)
えっ? これのどこが簡単かって? 名詞の格変化よりは簡単に覚えられるし、問題は長母音の前の子音でどう不規則になるだけだし、動詞の現在活用と比べてもまだこちらの方が簡単な気がする。ああ、でも、この形容詞の比較級と最上級も、形は変わったとはいえ形容詞なので、各変化させる必要があるか。それでも幸いなことに軟変化の形容詞扱いになるから比較的楽なはずである。これで硬変化だったと思うと、さすがにちょっとげんなりする。
それもこれも、チェコ語を勉強しようなんてことを考えた自分が悪いのである。そしてこんなのチェコ語の難しさのうちには入らないと言えるようになった人だけが、チェコ語を身につけられるのである。いや、違う、難しいとか簡単だとかいうことを気にしない人の方がいいか。
2018年3月28日23時。
こちらはあまり使わなかった。
2018年03月30日
形容詞比較級最上級1(三月廿七日)
昔、日本でチェコ語を勉強していたころ、東京の四谷にある大学書林という語学系の出版社が運営する語学学校DILAに通っていたのだが、そこの先生が日本で普通の生活をしていても接する可能性のあるチェコ語として二つの例を教えてくれた。
一つは、『マスター・キートン』の浦沢直樹が連載していた『モンスター』で、舞台がドイツからチェコに移っていたのだ。当然、出てくるレストランの名前なんかはチェコ語で、「U tří žab(三匹の蛙)」なんて名前が付いていたわけだ。それから主人公がプラハのホテルでテレビのニュースを見ているシーンで、チェコ語のニュースを聞いて(もちろん吹き出しにアナウンサーの台詞がチェコ語で書かれていた)、「nemocnice u svatého Jakuba」というのを、「聖ヤコブ病院」と理解していたのを覚えている。この作品には、チェコ語ができる協力者が付いているのか、驚くべきことに正しいチェコ語が使われていると先生は評価していた。
もう一つが、チェコのピルスナー・ウルクエルと協力関係を結んでいたキリンビールのテレビコマーシャルである。たしか、外国で生産されている典型的なタイプのビールをキリンが期間限定で生産販売するという企画があって、そのうちの一つとしてピルスナー・ウルクエル的なピルスナータイプのビールが選ばれていた。日本のビールも多くはピルスナータイプに分類されるけれども、その特別ビールは原料を麦芽とホップと水だけにすることで、ピルスナー・ウルクエルに近づけていたのだったかな。テレビを持っていなかったので、そのコマーシャルを見たことはないのだけど、先生の話では、ピルスナータイプを手にした女性が早口で、「Pilsner je nejlepší」と言っていたらしい。
だから、形容詞の比較級、最上級を勉強しましょうねという話につながったと記憶しているのだが、「nejlepší」は、形容詞「dobrý」の最上級、「nej」を取った「lepší」は比較級になる。もちろんこれは規則的な変化ではなく、不規則な比較級、最上級の作り方だけれども、比較級の前に「nej」を付けると最上級になるというのは規則的である。また形容詞の比較級、最上級にも格変化が存在し、軟らかい長母音「í」で終わることから「jarní」などと同じように軟変化の形容詞として扱われることになる。
チェコ語でチェコ語を説明してもらうときのために、チェコ語での言い方を説明しておくと、ラテン語起源の文法用語では、比較級が「コンパラティフ(komparativ)」、最上級が「スペルラティフ(superlativ)」になる。格変化の一格、二格と同様のチェコ語的な表現もあって、「ドルヒー・ストゥペニュ(第二段階)」「トシェティー・ストゥペニュ(第三段階)」となる。本来の形を「第一段階」としての呼称である。人によってはこちらのほうを使うかもしれない。
では、規則的な比較級の作り方はというと、名詞の格変化なんかに比べたらはるかに簡単である。あれより難しいものを探すのは大変だろうけど、チェコ語学習者にとっては規準となるのは名詞の格変化であり、そのおかげで難しいというためのハードルはかなり高いのである。それがいいことなのか悪いことなのかはわからないけど。
まず、規則的な比較級、最上級の作り方から行くと、語尾の長母音「ý/í」を取り去って、「ejší/ější」をつけるだけである。ハーチェクがつくかどうかは前に来る子音次第である。ということで、例を挙げれば、以下のようになる。
blbý → blbější → nejblbější(バカな)
rudý → rudější → nejrudější(紅の)
pomalý → pomalejší → nejpomalejší(遅い)
známý → známější → nejznámější(知られた)
černý → černější → nejčernější(黒い)
žlutý → žlutější → nejžlutější(黄色い)
zdravý → zdravější → nejzdravější(健康な)
ここに挙げたのはすべて硬変化の形容詞だが、軟変化の形容詞は例外なく「ejší/ější」をつけるから、迷う必要はない。
完全に例外とは言えないが、子音交代を起こすものもあって、「-rý」で終わるものは「-řejší」になり、「-hý」は「-Žejší」、「-ský」は「-štějši」、「-cký」は「-štější」となる。
chytrý → chytřejší → nejchytřejší(賢い)
přátelský → přátelštější → nejpřátelštější(友好的な)
politický → političtější → nejpolitičtější(政治的な)
ubohý → ubožejší → nejubožejší(あわれな)
ある程度規則的な例外としては、「-dý」「-tý」で終わる形容詞で、「ější」ではなく「ší」のみをつけるものがある。その場合「dší」「tší」は、「チー」と読むのは言うまでもない。それから、「-rý」で終わるものの中にもこのグループに入るものがあるか。
tvrdý → tvrdší → nejtvrdší(硬い)
bohatý → bohatší → nejbohatší(金持ちの)
starý → starší → nejstarší(古い)
微妙な例外が多くて長くなってきたので以下次号。
2018年3月27日22時。
これで始める必要はないけれども、日本人でチェコ語を勉強する人は一度は使うべきである。