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2018年12月25日

数詞の格変化3と4(十二月廿日)



 次は順番通りに3である。3以上は1格から7格まで三性共通になるのがありがたい。また2と違って、形容詞や代名詞などの活用語尾との類似性も高く覚えやすいという利点もある。

 1 tři
 2 tří
 3 třem
 4 tři
 5 tři
 6 třech
 7 třemi


 1格が「i」で終わるというのが問題といえば問題なのだけど、それを除けば、難しい語尾は2格の「í」ぐらいしかない。ついつい1にならって「třech」にしてしまうそうになる。3格、6格、7格の語尾は、1の複数形の語尾と同じである。「ě」が「e」になっているのは「r」の後には「ě」が使えないからに過ぎない。さすがのチェコ語も1、2を経て3ぐらいまで来ると難しさを維持しきれなくなっていると考えていいのかな。5以上になるとさらに覚えるのが楽になるわけだし。
 この3も、2と同様に、種類を表す形、組を表す形があって、2の場合と同じ使い方、格変化をする。その「trojí(三種類の)」「troje(三組の)」よりも、個数を表すのには「třikrát」を使った方が楽なのも同じ。また、形容詞の「trojitý(三重の)」もある。ただし陸上の三段跳びは「trojitý skok」ではなく、一単語にして「trojskok」という。「trojitý skok」はフィギュアスケートの三回転ジャンプかな。普通は「skok」のところに、「アクセル」とか「リッツベルグル」とかジャンプの名前が入るけど。

 ということで4に行こう。3と同じで「i」でおわるから、格変化もまったく同じと言いたいところだけど、そうはいかないのがチェコ語である。

 1 čtyři
 2 čtyř
 3 čtyřem
 4 čtyři
 5 čtyři
 6 čtyřech
 7 čtyřmi


 2格で語尾の母音が消え、7格で母音なしで「mi」をつけるのが、一番気をつけるべきところだろうか。3に引きずられて「čtyří」「čtyřemi」としてしまわないように注意しなければならない。
 また、種類、組を表す数詞があるのも同じだが、形が2、3とは異なる。それぞれ「čtverý」「čtvery」となり、形容詞の硬変化と同じ格変化をする。種類、組を表す数詞が形容詞の硬変化に準じた格変化をするのは、5以降と共通している。「四重の」を意味する形容詞も、2、3とは形が微妙に変わって、「čtverný」となる。

 2から4の数詞に関しては、後に来る名詞は複数で、数詞と名詞の性と格は常に一致する。また2から4の数詞の付いた名詞が文の主語(1格)になっている場合には、動詞は複数形になる。つまりこの三つの数字はどんなときでも複数扱いになるのである。これは5以降の数詞とは扱いが違う部分で、当然だと考えられているのか、チェコ語の教科書ではあまり強調されないが、単複の区別に弱い日本人にはきっちり説明しておいて欲しいと思うところである。

 例を挙げておくと、

 ・Dva Japonci byli v této hospodě.
  飲み屋に二人の日本人がいました。

 ・Jel jsem do Prahy s třemi kamarádkami
  三人の友達と一緒にプラハに行きました。

 ・Studoval jsem na čtyřech univerzitách.
  4つの大学で勉強しました。


 5以上の場合との比較はまた次回。
2018年12月21日20時30分。









2018年12月24日

数詞の格変化2(十二月十九日)



 次は順番通りに2である。1と違うのは単数がなく、複数の形しか存在しない点である。ただし「二種類の」という意味の数詞は存在し、そちらは単数につけて使うことも多い。いや使う機会は少ないけど、その機会の中では単数につけることも多いというのが正しいか。避けようと思えば避けられる言葉だし。
 ということで、格変化の特徴だが、形容詞など名詞につける言葉の複数1格では、普通男性名詞活動体、男性名詞不活動体+女性名詞、中性名詞という三つのグループに分かれることが多い。しかし、この「2」は、男性名詞の活動体と不活動体に同じ形が使われ、女性と中性が共通の形を取る。4格と5格は1格と共通で、それ以外の2格、3格、6格、7格は三性共通なので、覚えることはそれほど多くない。

 1 dva(男)/ dvě(女・中)
 2 dvou
 3 dvěma
 4 dva(男)/ dvě(女・中)
 5 dva(男)/ dvě(女・中)
 6 dvou
 7 dvěma


 注意すべきことは、共通の形を取る組み合わせで、2格と6格、そして3格と7格という組み合わせになる。また3格は「m」で終わるものが多いだけに、「a」をつけるのを忘れてしまうことがある。7格の語尾の「ma」はこの「2」に特徴的な語尾で、他の形容詞や代名詞などには現れない形である。例外として手や足、目などの人間の体に二つずつついているものにしか使われない、単数と複数の間の、2つのときだけ使う形、いわゆる双数の7格に現れる。
 口語的チェコ語で、名詞、形容詞などの複数7格の語尾に、性を問わず「ma」が現れるのは、この「2」の格変化に影響を受けたものだろうか。普段から口語チェコ語を使っている人が、文法的に正しいチェコ語を使おうとして、「2」の7格まで「dvěmi」にしてしまう間違いをする人がいる。これを直しすぎというらしい。外国人も同じ間違いをすることはあるけれども、それは直しすぎではなく、他の形容詞や名詞などからの類推による間違いである。

 この「2」の後で特殊な形を取るものとして、これも数詞の「100」がある。チェコ語では「sto」で、原則として中性名詞の「město」と同じように格変化するのだが、「200」のときだけ、1格が「dvě stě」と中性複数の「sta」ではなく、見慣れない「stě」という形になる。文法的にはそれが正しいのだけど、チェコ人の中にも、それを知らず「dvě sta」が正しいと思っている人もいて、こちらがせっかく正しいチェコ語を使ったのに間違いだと指摘されることもある。間違いの指摘の間違いに気づけるようになると、それはそれで成長を感じられて嬉しいのだけどね。

 それで、単数に付けることのできる「2」の数詞は、「dvojí」で、「二種類の」という意味になる。末尾が「í」となっていることから想定されるとおり、形容詞の軟変化型の格変化をする。これは特に単数で表される集合名詞や、概念を表す名詞などの原則として複数形を取らない名詞につけて使うことが多い。ただし、例えば「dva druhy piva(二種類のビール)」などのように、種類という意味の名詞「druh」を使うことで、使用を回避できるから、どうしても覚えなければならない言葉ではない。
 それに対して、覚えておいたほうがいいのは、複数でしか使わない名詞とともに使う「dvoje」である。こちらは、種類ではなく「二組の」、もしくは「二つの」という意味になり、同じ種類のものが2つある場合にも使用できる。「dvoje boty(二足の靴)」「dvoje těstoviny(二袋のパスタ)」なんて具合である。格変化は、1格、4格、5格以外は、「dvojí」と同じで形容詞軟変化型である。こちらも「dva páry bot」「dvě balení těstoviny」という形で使わずに済ますことは可能である。

 以上の二つをまとめると、多分「dvojí noviny」は二種類の新聞で、例えばムラダー・フロンタとリドベー・ノビニまとめてさすときに使い、「dvoje noviny」は同じ新聞を二部という場合に使うのだと思う。「と思う」と日よってしまうのは、「dvoje」は滅多に使わないし、「dvojí」はチェコ語の授業以外では使ったことがないからである。同じものを二つなんてときには、「dvakrát(二つ/二回)」を使うというのが身についてしまっていて、よほど意識しない限り「dvoje」なんて口から出てこない。
 むしろ使うというよりは、よく聞くのは、形容詞化した「dvojitý」である。こちらは「二重の」という意味で「dvojité okno(二重窓)」のように使う。フィギュアスケートのジャンプもこれで「ダブル何たら」を表すし、他のスポーツの中継でしばしば耳にするのでいつの間にか覚えてしまったのである。問題は耳で覚えた言葉の常でつづりが怪しいことで、ついつい「dvojtý」と書いてワードに直されてしまう。耳で聞いても違いわからんし。

 この「2」と全く同じ格変化をするのが、「oba(両方)」で、派生する「obojí」「oboje」が存在するところまで同じである。ただし形容詞化した「obojitý」は存在しない。
2018年12月20日20時55分。










2018年12月23日

数詞の格変化1(十二月十八日)



 ということで、より厄介な、正確には一つ目の1がむやみやたらと厄介な数詞である。とはいえ、指示代名詞と格変化が共通だから、変化を覚えること自体はそれほど難しくない。一番厄介なのは、1なのに複数形があるという理不尽である。
 まずは単数から。「ten」は昨日取り上げたばかりなので、共通性の高い男性と中性をまとめて表にする。

 1 jeden(男)/ jedno(中)
 2 jednoho
 3 jednomu
 4 jednoho(活) / jeden(不)/ jedno(中)
 5 jeden(男)/ jedno(中)
 6 jednom
 7 jedním


 女性
 1 jedna
 2 jedné
 3 jedné
 4 jednu
 5 jedna
 6 jedné
 7 jednou


 問題は、形容詞「jediný(唯一の)」と形が似ているので、混同しないことだろうか。これは特に複数の格変化を覚えるときにも注意をしなければならない。複数もまとめて表にする。

 1 jedni(活)/ jedny (不・女)/ jedna(中)
 2 jedněch
 3 jedněm
 4 jedny(活・不・女)/ jedna(中)
 5 jedni(活)/ jedny (不・女)/ jedna(中)
 6 jedněch
 7 jedněmi


 格変化の語尾自体は「ten」と共通なので覚えること自体は問題ないのだが、末尾の子音の前につく「ě」が出てこないのである。ついつい形容詞の影響で、「y」や「ý」にしてしまって、ワードの校正機能に赤線を引かれてしまう。「ten」のほうではこんな間違いはしないので、やはり形容詞「jediný」が存在するのがいけないのだと考えている。こんな言葉、存在を知らなければよかったのだけど、使うと便利な言葉ではあるのだ。

 さて、本来単数である「1」に複数形が存在する理由だが、それはチェコ語には複数形しか存在しない名詞があるからである。「noviny(新聞)」「toalety(トイレ)」「boty(靴)」「kalhoty(ズボン)」「ústa(口)」「brýle(眼鏡)」などがそれにあたる。
 三性共通でない格では、「1」の活用語尾と名詞の活用語尾が一致することが多いから、「1」を使うためだけなら、性は特に意識しなくても問題ないのだが、名詞を正しく格変化させるためには性を判別することが重要なのは言うまでもない。また、地名にも複数の名詞が「Alpy(アルプス山脈)」「Tatry(タトラ山脈)」などしばしば出てくるが、地名に「1」を付ける状況は想像もできないので、気にすることはないか。

 それでも、「1」に複数形があるのが納得できないという人には、あまり触れられないけど(サマースクールの記事では触れたかな)、2以上の数詞にも、名詞の単数につける形(種類を表す数詞)と、複数でしか使わない名詞につける形が存在することを指摘しておこう。2なのに単数につく、これもまた変な話だけど、文句を言っても仕方がない。単数と複数という考え方自体が、日本人にはなじまないのだから、グダグダ言わずに覚える、それがチェコ語を身につけるための一番の方法である。といいつつ、ぽろぽろこぼれているものも多いのだけどさ。
 いや、でも「podle jedněch novin(ある新聞によると)」とか、何か落ち着かないのである。それでついつい「podle jedných novin」としてしまうのだけど、やっぱりワードに赤線を入れられてしまった。
2018年12月19日20時55分。











2018年12月22日

指示代名詞tenの格変化(十二月十七日)



 久々にチェコ語の文法の話をば。ややこしいので避けていたのだが、人称代名詞をやってしまった以上、数詞と代名詞tenの変化についても取り上げておく必要があろう。最初は厄介な数詞の1から始めようと思ったのだが、数詞の1を基準にして、指示代名詞や所有形容詞の格変化を説明するよりは、指示代名詞tenを基準にしたほうがいいことに気づいたので、予定を変更して指示代名詞tenからである。
 チェコ語の格変化も、日本語の漢字と同じで、最初の全く知識のない時点よりも、ある程度知識が蓄積されてからのほうが、新しいことを覚えるのが簡単になる。これまで勉強してきたこととの共通点が増えていくため、これはあれと同じとか、あれに似ているとか、すでに覚えたことを基準にして新しいことを覚えて行けるようになるのである。

 その点ではこの指示代名詞tenも例に漏れない。三人称の人称代名詞の格変化との共通性が、特に男性形と中性形において顕著で、活用語尾は全く同じである。男性形は、当然4格で、活動体につく場合と不活動体につく場合で形が違う。

男性
 1 ten
 2 toho
 3 tomu
 4 toho(活) / ten(不)
 5 ten
 6 tom
 7 tím


中性
 1 to
 2 toho
 3 tomu
 4 to
 5 to
 6 tom
 7 tím


 2格、3格、6格、7格は、男性名詞も中性名詞も共通の形をとる。4格は男性名詞活動体のみ2格と共通で、不活動体、中性名詞は1格と共通、5格はいずれも1格と共通。この辺りも三人称の人称代名詞の格変化を踏襲している。類似の指示代名詞「tento」「tamten」などは、「ten」の部分だけを格変化させることになるので、これだけ覚えておけば問題なく使える。

 女性の場合には、人称代名詞と完全に共通というわけにはいかないが、活用語尾の短母音、長母音の区別は共通する。つまり、語尾の母音は形容詞の女性単数と同じだが、長短の区別は人称代名詞の変化に基づいているのである。

女性
 1 ta
 2 té
 3 té
 4 tu
 5 ta
 6 té
 7 tou


 御覧の通り、語尾に出てくる母音は、形容詞硬変化の女性形とほぼ同じである。そして、三人称の人称代名詞「ona」の格変化で長母音が出てこず、短母音になっている1格、4格、5格で、形容詞の長母音を短母音に変えてやれば、「ten」の女性形の格変化が出来上がる。ただし、7格の「ou」と4格の「u」を長短の関係だと認識する必要がある。
 この認識が正しいかどうかはこの際どうでもいい。このように認識すれば覚えやすくなるというだけの話で、言語学者ならざる語学の徒にとっては、言語学的な正しさよりも、覚えやすさのほうが重要なのである。ってこんなことすでにどこかに書いたような気もする。

 複数は、1格と、1格と共通な4格(男性活動体は除く)、5格以外は三性共通である。違うところだけ先にあげると、活動体は1、4、5が「ti」「ty」「ti」の順番、不活動体は3つとも「ty」、女性形も三つとも「ty」で中性は三つとも「ta」ということになる。

複数三格共通部分
 2 těch
 3 těm
 6 těch
 7 těmi


  末尾の子音は形容詞の複数と同じ。ただ、その前の母音が長母音の「ý」ではなく「ě」になるだけである。人称代名詞の複数との共通性も高いので、ここ二つの格変化を覚えていれば、「ten」の格変化はそれほど難しくない。そして、「ten」の格変化を覚えてしまえば、男性単数が「en」で終わるほかの言葉、例えば「všechen(すべて)」「jeden(1)」などの格変化が覚えやすくなる。覚えれば覚えるほど、次を覚えるのが楽になるのである。問題は似ているものを混同してしまうところだけれども、それを問題というのは贅沢というものである。

 この「ten」は動詞のあとにくる名詞の格を示すのにも使われるので、できるだけ早めに覚えておいたほうがいい言葉の一つである。そんなのばっかりだと言われればその通りなので、自分なりの優先順位をつける必要はあるだろうけど、「ten」を後回しにして、中途半端に覚えた状態でチェコ語のサマースクールに出て苦労した人間としては、できるだけ早めにねと言うしかない。
 次もチェコ語ねたで、数詞かな。
2018年12月18日23時55分。









2018年11月23日

人称代名詞の格変化三人称(十一月十八日)



 チェコ語の人称代名詞の三人称は、人称と言いながら、人だけではなく、人以外の生き物、それに生きていない物も指すことができる。だから、男性形と女性形の区別だけではなく、中性形も存在するし、男性名詞を受ける場合には、活動体なのか不活動体なのかで、違う部分が多少出てくる。教科書では省スペースのためにまとめて表示されることが多いが、ここは個別に行こう。

 まずは男性を示す場合。単数1格は「on」、つまり男性名詞に特徴的な子音で終わる形である。

 1 on
 2 jeho / ho / jej
 3 jemu / mu
 4 jeho / ho / jej
 5 on
 6 něm
 7 jím

 2格、3格、4格に2つ以上の形が出てくるのは、一人称、二人称の場合と同様。ただし、2格、4格には3つの形が出てくる。また、三人称の人称代名詞は、前置詞に接続する場合には語頭に「n」を追加するので、常に前置詞とともに使われる6格は、「něm」と他の格と違って「n」で始まる形になっている。

 まず気づくべきは、原則として形容詞硬変化の格変化に似ているということである。1格、5格を除くと、活用語尾は「-eho」「-emu」「-eho」「-ěm」「-ím」となり、「-ého」「-ému」「-ého」「-ém」「-ým」となる形容詞の語尾を短母音に替えたものとほぼ同じである。一見違っている6格も、「jem」の前に前置詞につくときの「n」がついた形「njem」が「něm」と表記されているだけだから、これも形容詞の語尾を短母音化したものだと考えられる。例外は7格で長母音のままである。「-ým」になっていないのは、チェコ語のルールで「j」の後には「y」が使えないからである。ここも短母音化していれば、覚えるのが楽だったのだけどね。

 2格の三つのうち、「ho」は、前置詞なしで文の中の二番目の位置に置くときに使う形。「jeho」は強調で語順を変えるときか、前置詞とともに使う場合の形。「jej」は前置詞とともに使うことが多い形で、単独で使うと古さを感じさせる文語的表現である。前置詞とともに使った場合は、それぞれ「něho」「něj」となる。個人的には、二人称の場合と同じで、ここも短い形の「ho」を使うのが苦手で、「jeho」で代用してしまう。「jej」、もしくは「něj」は使ったことがない。
 3格の使い分けは、一人称、二人称単数の場合と同じ。「mu」が特に強調の必要もなく、文の二番目の位置で使うときの形で、「jemu」は強調のために語順を変えるとき、前置詞とともに使う場合には「němu」となる。ここは問題なく使い分けられる。

 4格で三つの形をすべて使えるのは、男性名詞の活動体を指す場合だけで、その場合の使い分けは、2格と共通である。問題は前置詞と組み合わせた場合に、「něho」にするか、「něj」にするかなのだけど、「něho」を使ってしまうことが多い。
 同じ4格でも不活動体には「jeho」は使えず、「ho」と「jej」しかない。前置詞とともに使う場合には「něj」を使うが、強調で語順を変えるときには、「jej」は文語的に過ぎるから「ho」を使うのかなあ。物を指す不活動体を人称代名詞で指すこと自体が苦手なので、どちらもちゃんと使えているとはいいがたい。

 6格、7格には特にコメントすべきこともないので、ちょっと特殊な女性は後回しにして、中性をさす場合の格変化を示す。

 1 ono
 2 jeho / ho / jej
 3 jemu / mu
 4 je / ho / jej
 5 ono
 6 něm
 7 jím

 1格は中性名詞に特徴的な語尾の「o」をつけて「ono」。5格も1格と同じだが、それ以外は男性名詞の不活動体を指すときと同じ格変化だと思っていい。4格に登場する「je」は非常に文語的で覚える必要はないし。男性名詞不活動体と同じで、中性名詞を人称代名詞で示すこと自体が苦手なので、格変化は覚えていてもうまく使えない。中性名詞でも、人間や動物の子供という生きているものを指す言葉もあるから、そういうのに対しては人称代名詞を使えてもいいとは思うのだけど。

 ということでちょっと特殊な女性を指すときである。単数一格は「ona」。これも女性名詞に特徴的な語尾である。

 1 ona
 2 jí
 3 jí
 4 ji
 5 ona
 6 ní
 7 jí

 1格と5格を除けば、形容詞軟変化の女性単数と同じと言いたいのだが、4格が違う。4格だけ語尾が短母音になっている理由はわからない。

 続いて三人称複数の変化だが、1格と5格以外は共通である。1格は、男性名詞活動体、不活動体、女性名詞、中性名詞、それぞれをさす場合、順番に「oni」「ony」「ony」「ona」となる。単数の際と同様、名詞の複数1格に特徴的は語尾が採用されている。
 2 jich
 3 jim
 4 je
 6 nich
 7 jimi

 この5つの格は形容詞軟変化の複数形の活用とほぼ同じである。2格、3格、6格は、活用語尾の長母音を短母音に変えただけだし、7格にいたっては長母音のままである。他が短くなっても7格だけは長いままと覚えておくといいだろう。例外は4格で、硬変化の男性不活動体、もしくは女性名詞につくときの語尾を短母音にしたものになる。

 だから、全体をまとめると人称代名詞三人称の格変化は、形容詞の格変化の1バリエーションだと理解しておけばいい。ただし、硬変化と軟変化が混ざっている上に、語尾の長母音が短くなったりならなかったりするので、その変わる部分をしっかり覚える必要がある。 
 また、前置詞をつけると、語頭に「n」がついて、「j」が消え、「ni」や「ně」になるのに気をつけなければならない。同じ「j」で始まるけれども、人称代名詞からできた所有を表す言葉「jeho」「její」などは、前置詞を使っても「n」をつける必要はないから厄介である。慣れればほぼ自動的にできるようになるのだけど、慣れるまでが大変というのは、他のチェコ語の文法事項と同様である。

 しばしば、慣れるまでが大変とか、慣れれば簡単とかいう表現を使うけれども、習うより慣れろでとにかく使えと言っているのではない。文法事項は、何度も繰り返し書いて覚えた上で使い、繰り返し使って慣れることが大切である。最初の覚えるという過程を省略すると、自分の間違いに慣れてしまって、いつまでたっても正しい言葉が使えない中途半端な学習者になってしまう。うっ、これは自己批判でもあるなあ。習うより慣れろでいい加減な覚えかたしてろくに使えない言葉、たくさんあるし。とまれ、チェコ語を勉強している方が、これを反面教師にして勉強を進めていってくれると著者としてこれ以上の喜びはない。ちょっと本のあとがきっぽくまとめてみた。
2018年11月19日22時55分。








2018年11月22日

人称代名詞の格変化二人称(十一月十七日)



 人称代名詞の二人称単数の形は「ty」で、一人称とは違って格変化させても語頭の音は「t」で変化しない。これは所有を表す形にした場合も同様である。

 1 ty
 2 tebe / tě
 3 tobě / ti
 4 tebe / tě
 5 ty
 6 tobě
 7 tebou

 一見、一人称単数の格変化とは大きく違うように感じられるかもしれないが、よく見ると共通性は高い。2格と4格、3格と6格が共通であるという点では、男性名詞活動体の格変化を踏襲しているし、7格が「ou」で終わるのも同じである。それから、二つの形のある2格、3格、4格の語尾が、順に「e / ě」「ě / i」「e / ě」となるのも一人称の格変化と共通している。問題は一人称単数と違って、最初の音節が「to」になったり、「te」になったりすることで、慣れるまでは混乱することがある。
 2格、3格、4格における2音節の長い形と、1音節の短い形のある短い形の使い分けは、原則として一人称単数の3格と同じなのだが、2格の「tě」はあんまり使わない気がすると書いたら、テレビから、「スター・ダンス」の司会者が「Ptám se tě」と言うのが聞こえてきた。一般的に使われないのではなくて、自分自身が使わない、いや使えないのだった。「Mohl bych se tebe zeptat?」とか、「Bojím se tebe」とか言ってしまうのだけど、間違いなのかなあ。間違いだと指摘されたことはないから、許容範囲内だと思いたい。

 日本人学習者が気をつけるべきことは、3格の「ti」の発音だろうか。チェコ語関係者が大声で「ti」の発音は「ティ」ではなく、「チ」だと喧伝しすぎたせいで、完全に「チ」、つまりチェコ語の「či」で発音してしまう人が多い。この言葉の発音が「ティ」ではないのはたしかだが、「チ」もないのだ。長い言葉の一部ならともかく、一音節の言葉なので発音が違うことに気づかれやすい。「ti」の発音が苦手で発音の間違いを指摘されたくない人は、ティカットは避けて、二人称単数に複数形を使う丁寧なビカットを使うしかない。「V」の音も問題ではあるのだけど、「ti」よりは身につけやすい。
 あっ、チェコ人と知り合いになって、ティカットしようと言われたときに、「ty」の格変化を覚えていないからとか、発音が苦手だからと言って断るのも面白いかもしれない。最初に師匠に言われたときにそう言って断っていればよかったのか。ティカットしようと言われてからも、先生だからという意識が強くて、ついついビカットをしてしまっていたのだよなあ。あれも実は、人称代名詞の二人称単数の格変化を覚えきれていなかったのが原因だったのかもしれない。今はもうほぼ問題なく使えるけどね。

 変化だけでなく発音も厄介な単数とは違って、二人称複数の格変化は簡単である。ことに普通は一人称を覚えてから二人称を勉強すると考えると、こんなに楽でいいのかと言いたくなるぐらい簡単である。

 1 vy
 2 vás
 3 vám
 4 vás
 5 vy
 6 vás
 7 vámi

 ご覧の通り、一人称複数の「n」を「v」に変えてやるだけで完成である。だから、二人称単数でも複数を使って丁寧にはなす方が簡単なのである。最近ティカットする相手を増やしていないのは、これも原因のひとつかもしれない。自分からティカットしようねと申し出るやり方がいまいちよくわからないからというのもあるんだけど。

 この二人称複数の変化形に関しては、特に丁寧さを表すために単数の代わりに使う場合に覚えておいたほうがいいことが一つある。それは手紙やメールを書く場合に、語頭の「v」を大文字で書くということである。これも敬意を表すための表現だと思うのだけど、所有を表す「váš」とその派生形は、人称代名詞ではないからか適用されない。わざわざ書くのは、何度も間違えたことがあるからに決まっている。
 二人称は書くことが少ないからこれでお仕舞い。
2018年11月17日23時55分。









2018年11月21日

人称代名詞の格変化一人称(十一月十六日)



 最近調子にのって仮定法の使い方とか書いてしまったけれども、よく考えてみたら、その前に人称代名詞や数詞など片付けておくべきことがいくつもあるのだった。人称代名詞は、これまでほとんど説明もせずに例文なんかに使ってきたし、問題ないのかもしれないが、自分の復習もかねて、まとめておくことにする。いちいち言い訳をしないと始まらないのは、最近のよくない傾向だなあ。

 チェコ語の一人称単数の人称代名詞は「já」で、複数は「my」である。単数の格変化を示すと以下のようになる。

 1 já
 2 mne / mě
 3 mně / mi
 4 mne / mě
 5 já
 6 mně
 7 mnou

 不思議なのは、格変化をさせると語幹に「m」が出てくることで、これは所有を表す「můj」の場合も同様なのだが、「m」は一格が「my」である複数にこそふさわしいのではないかと、ついつい論理的に考えてしまうのだけど、こんなところに意味や論理を求めても意味がないのが語学というものである。「my」を格変化させたり、所有を表す形にするとちょっと、文字が短くなって語頭に「n」が登場する。
 「já」の格変化は、一見してわかるように、1格と同じ5格、7格以外では、必ず「mě」「mně」という表記は違うけれども発音は同じという形が出てくるから、書くときはともかくしゃべるときには、とりあえず「ムニェ」と言っておけばほとんど問題はない。いや、ちょっとはあるけど。

 2格は「mě」「mne」という二つの形がある。書いてしまえば「mě」のほうが短いけれども、発音する場合の長さは同じである。だから、二格を取る、動詞「zeptat se」「bát se」などと組み合わせる場合にも、前置詞「od」「bez」などと組み合わせる場合でも、どちらを使っても問題ない。ただ、誰かが「mne」を使うのを聞くと、おっと思ってしまうから、一般的には「mě」が使われるといってもよさそうである。個人的には「mne」はちょっと堅苦しい印象を与えると理解しているので、ここぞというときにしか使わないようにしている。
 2格に関しては、普通の名詞の2格とは違って、所有を表すことはできないことは覚えておかなければならない。人を表す名詞の多くは、2格で名詞の後ろからかけるという方法と、名詞から所有を表す形容詞的な言葉を作って名詞の前からかけるという二つの方法で、所有を表すことができるのだが、人称代名詞は後者の方法しか使えない。その所有を表す形が「můj」で、形容詞と同様に後にくる名詞の性、数によって格変化させなければならない。

 3格は「mi」と「mně」だが、この二つには明確な使い分けがある。本来の三格、動詞と結びついて「私に」という意味で(日本語に訳すと変わってしまうものも多いけど)使う場合には、原則として「mi」を使い、文の中で二番目の位置に置かなければならない。「mně」を使うのは、強調のために文頭に出すような場合だけである。「それちょうだい」は強調前と後で次のように変わる。

 Dej mi to.  → Mně to dej.

 それから前置詞を付ける場合にも、「mně」を使わなければならない。3格をとる前置詞で私と一緒に使いそうなものといえば、「k」「kvůli」などがよく使われる。また三格の「ムニェ」を書くときには、この発音の一般的な表記である「mě」ではなく、「mně」と書くことに注意しなければならない。「mě」では2格か4格になってしまう。

 4格は二つの形も、その使い分けの必要がない点でも2格と同じである。つまり、人称代名詞「já」の格変化は、男性名詞活動体の格変化に準ずるのである。かつて、1匹の蚊と100人の女性を合わせて主語にすると動詞は男性複数形になると言ってチェコ語を男尊女卑的な言葉だと主張したアメリカ人のチェコ語学者のことをちょっと紹介したが、この人称代名詞の単数の格変化もチェコ語が男性形を元にした言葉だという証拠になるかもしれない。

 5格は、一応1格と同じということになっているけれども、自分で自分に呼びかけるという状況があまり思いつかない。二人称ならありそうだけど、1格と取るか、5格と取るか、微妙な感じもする。
 6格は、男性名詞活動体と同様、3格と同じ形になる。ただし常に前置詞とともに使うのが6格なので、「mi」は存在せず、「mně」だけである。話すときよりも書くときに表記に気をつけなければならないのも3格と同じ。
 7格は「mnou」で、「ou」という典型的な単数7格の語尾である。女性名詞と男性名詞活動体の一人称単数が「a」で終わるものがこの語尾を取る。

 全体を通しての注意点は、前置詞とともに使うときのことで、前置詞ともに使う形はすべて発音上は「mn」と二つの子音が連続する形で始まる。そのため、母音で終わる「kvůli」などの場合には問題ないのだが、子音のみ、もしくは子音で終わる前置詞の場合には、末尾に「e」が追加されることになる。「beze mě」(2格)、「ke mně」(3格)、「přede mě」(4格方向)、「ve mně」(6格)、「se mnou」(7格)といった具合である。

 単数と比べると複数の変化は、それぞれの格にひとつの形しかないこともあり簡単である。

 1 my
 2 nás
 3 nám
 4 nás
 5 my
 6 nás
 7 námi

 3格、7格あたりには女性名詞硬変化の複数変化の影響が見て取れる。それよりも大切なのは、2格、4格、6格が同じ形「nás」になることである。またこれは所有を表す「náš(私たちの)」と似ているので書き間違い、言い間違いに注意しなければならない。「ナース」と「ナーシュ」って意外と言い間違えてしまうんだよなあ。書くときも、しばしばハーチェク落としがちなのである。
 次は二人称の人称代名詞の格変化である。
2018年11月17日17時45分。








2018年11月17日

目的を示す「aby」(十一月十二日)



 仮定法で使う「kdyby」と「by」と同じような人称変化をする言葉がもう一つあった。それがここで取り上げる「aby」である。人称変化も、動詞の過去形と組み合わせるのも、文頭もしくは節の頭に置かなければならない点も、「kdyby」と同じだが、仮定ではなく目的を表す連体修飾節を作る。日本語の「〜するために」というと同じように使う。気を付けなければいけないのは、日本語の「ために」と完全に使い方が重なるというわけではないことで、原因、理由を示す「ために」には使えず、あくまでも目的としての行為を示すのに使う表現だということである。
 復習のために人称変化と動詞「být」の過去形を組み合わせて示しておく。過去形の語尾については以前の過去形のところを参照されたい。

 1単 abych byl/byla
 2単 abys/abyste byl/byla
 3単 aby byl/byla/bylo
 1複 abychom byli/byly
 2複 abyste byli/byli
 3複 aby byli/byly/byla

 二人称単数は、丁寧に話す時には複数「abyste」と動詞過去の単数男性形もしくは女性形の組み合わせになる。このことは仮定法のところには書き忘れてしまったけど、普通の過去形で丁寧に表現するときと同じである。三人称複数の「byly」は主語が男性名詞不活動体と女性名詞の場合に使用することも念のために指摘しておく。
 ここで、いくつか例を挙げてみよう。

 Půjčil jsem si peníze, abych si koupil nové auto.
 新しい車を買うためにお金を借りた。

 Zastavil jsem se v knihovně, abych vrátil knihu.
 本を返すために図書館に寄った。


 気を付けなければならないのは、日本語では「ために」ではなく、「ように」を使うような場合にも、チェコ語で「aby」が使われることがあることである。日本語に訳す場合には、日本語の中で自然になるように調整するから問題ないが、日本語からチェコ語に訳すときに、「aby」は「ために」だという思い込みが強すぎると、「ように」が使われている文をどう訳すかで悩むことになりかねない。
 以前、日本語ができるチェコ人が、「ように」を使うべき場面で「ために」を連発していて、なぜだろうと不思議に思ったことがあるのだが、それはどちらもチェコ語では「aby」で済ませてしまうからだったのである。これに気づくまでは、日本語の「ために」と「ように」に類似性があるとは全く思っていなかったので、目からうろこが落ちたような気がしたものだ。チェコ語を通して日本語の勉強をしたわけである。まあ、日本人の中にも「ために」と「ように」の使い分けが怪しい人もいるのは確かだけど、チェコ語で問題に気づくまでは、完全に意識の外にあった。
 ということで「ように」と訳すべき例文である。

 Spěchal jsem, abych nepřišel pozdě.
 遅れないように急いで行った。

 Půjčil jsem si peníze, abych si mohl koupit nové auto.
 新しい車が買えるように借金した。

 Řekl jsem mu, aby přišel včas.
 時間通りに来るようにあの人に言った。

 Psali mi rodiče mail, abych se vrátil domů.
 両親からうちに帰ってくるようにというメールが来た。


 日本語の「ために」と「ように」の使い分けについては、ここで説明する必要はないだろうが、チェコ語の「aby」には、もう一つ重要な用法がある。それは、動詞の「chtít」と結びついた用法で、「〜してほしい」「〜してもらいたい」という相手、もしくは第三者に対して行動を望むときに使う表現である。「chtít」の主語は一人称とは限らないので、二人称、三人称の場合には、必要に応じて日本語の訳を工夫しなければならない。

 Chci, abyste mi půjčil peníze.
 お金を貸してほしいんですが。

 Chcete, abych zavřel okno?
 窓を開けましょうか。

 Pavel chce, abychom s ním šli na pivo,
 パベルが、私たちに一緒にお酒を飲みに行ってほしいってよ。

 まあ、「chtít」を「ほしい」ではなく、「望む」「願う」なんて言葉で訳したら、二つの動詞の主語が異なっているから「aby」は「ように」、もしくは「ことを」を使って訳せなくはないけど、不自然な日本語になってしまう。「お金を貸してくださるように望みます」とか、「私が窓を開けることを望みますか」、「パベルは、私たちが一緒にビールを飲みに行くように願っているようだ」なんて、誰がどこで使うんだというお話である。丁寧な婉曲表現の「by」と組み合わせて。「Chtěl bych, abyste mi půjčil peníze.」としてもかまわない。
 こうでなければならないと組み合わせが完全に決まっているわけではないので、仮定法や婉曲表現なども含めていろいろな組み合わせを試してみるのもいいだろう。チェコ人の先生が変な顔をしたやりすぎだと判断すればいいのだしさ。語学というものは、教科書に書かれている基礎的な事項を演繹して、あれこれ実際に使ってみて、その結果を帰納して自分なりの使い方、ルールを見出すのが醍醐味なのだから。
2018年11月13日23時55分。








2018年11月14日

仮定法3(十一月九日)



 チェコ語を勉強していて、最初に出てくる「jestli」の意味は、二つのうちどちらだっただろうか。直接仮定法とは関係のないほうから説明すると、「vědět(わかる)」「přemýšlet(考える)」「říct(言う)」などの動詞と結びついて、日本語の「かどうか」と同じような使い方をする。

 Nevíš, jestli Pavel přijde?
 パベルが来るかどうか知らない?

 なんて感じなのだが、日本人がやりがちな間違いは、「来るかどうか」と「来るか来ないか」を混ぜてしまって、「Nevíš, jestli Pavel přijde, nebo nepřijde?」としてしまうものである。昔チェコ語を教えていた我が弟子がよくやっていたのだけど、考えてみたら弟子がやるということは、教えていたこちらの間違いが移った可能性も高い。いやあ申し訳ないことをしてしまった。

 もう一つの使い方が、仮定法になる。その仮定法の「jestli」を語源的に考えてみると、「jest」は「být」の三人称単数「je」の古い形で、それに仮定表現の「li」が付いたものだと考えられる。本当かどうかは知らないけど、師匠がそんなことを言っていたような気がする。違ったとしても、こう考えておけば、「jestli」が仮定表現に使われるのも納得できる。学習者にとって有用なのは、言語学的に正しい理論ではなく、言語学的には間違いであってもそれに従えば正しく使える理論もどきである。
 チェコ語学習者の中には、チェコ語では頻繁に使われる仮定の「jestli」を使った表現を聞いて、何か気に入らないと感じたことがある人が居るかもしれない。日本語だと「〜がほしければ」とか、「〜したければ」とか、相手の意思を「ほしい」「たい」を使って直接仮定法にするのは、かなり失礼な言い方で、よほど親しい間でもなければ、使うと相手を怒らせることになる。しかし、チェコ語では、「chtít」を使って相手の意思を直接確認するような質問もできるし、三人称でも何の問題もなく使えるのである。

 Jestli chcete, můžete se mnou přijít.

 この文を直訳すると、「もし来たかったら、私と一緒に来てもいいですよ」と誰に対してなら使えるかなと考えなければならない文になるのだが、チェコ人としては「よければ一緒に行きましょうか」ぐらいの感覚で使っているのだと思う。以前は親しい人ならともかく、よく知らない人に「Jestli chcete」と言われるたびに、一瞬むっとしていたのだが、最近は気にならなくなったし、自分でも使うようになってしまった。以前は使うのも避けていたんだけどね。
 この「jestli」は、文頭、もしくは仮定の節の頭に置くだけで、あとは動詞の時制も人称変化もそのまま使えるから使い勝手がいい。人を誘うときにも「時間があれば」とか気軽に使えるし。「kdyby」を使うと硬すぎというか構えすぎの感じがするので、軽く誘うときには使いにくいんだよね。この感覚がチェコ人と同じかどうかは知らない。苦労して覚えたことはできるだけたくさん使いたいと思うのと同時に、軽いどうでもいいことよりも何か重要な話をするときに使いたいとも考えてしまうのも学習者の性だろうか。


 もう一つ「jestli」と同様に使えて、同様に使い勝手がいいものに「pokud」がある。音の響きのせいか「pokud」が硬く強く響くように感じられるけれども、これもチェコ人がどう感じているかは知らない。使い分けは特に何かの基準に基づいているというわけではなく、感覚的に適当にやっている。決まり文句的にどちらかとしか使わない表現、使えない表現もある。

 二つほど「pokud」としか使わない例を挙げておく。

 Pokud možno, pošlete tento dopis do Japonska letecky.
 できればこの手紙を日本に航空便で送ってください。

 他の表現を使うと長くなるところを、「Pokud možno」だけで「可能ならば」という意味を表せるので、結構重宝する。しかもちょっと特殊な文法になるので、きれいに使えるとチェコ人を驚かせることもできる。こんなにチェコ語ができるんだよというハッタリ用の表現はいくつも確保してあるが、これもそのうちの一つ。他はほとんど口語的過ぎる表現や方言で使いどころが難しいけど、これはどこでも使えるし。

 もう一つは日本語で「確か〜だと思う」というような状況で使う表現。

 Pokud se nemýlím, měl by být Pavel v Japonsku.
 確かパベルは日本に行っているはずだと思うけど。

 直訳すると、「Pokud se nemýlím」は「私が間違っていなければ」となるのだが、そんな外国語をそのまま日本語にしたような表現は、翻訳以外では使うものではない。「確か」ではたりないと言うなら、「私の知る限り」とでも訳そうか。この表現、チェコ語では、個人的にもよく使う表現なので、自然な日本語の訳を当てておく必要があるのだ。

 改めて、「jestli」と「pokud」の使い分けについて考えてみると、無意識に使い分けしているから、本当にこんな使い分けをしているという確信はないけど、主語が二人称の場合には軟らかく感じられる「jestli」を使って、一人称の場合には「pokud」を使っているような気もする。多少変でも勢いで押し切ってしまえというのがこちらのチェコ語だからなあ。
 とまれ、日本語と同様に、チェコ語にもいくつかの仮定表現があって、日本語と同様にそれぞれ意味するところや使い方が微妙に違う。その違いは、これも日本語と同様に個人差が大きいようにも見受けられる。ならば、開き直って、間違いだと訂正されない限りは、自分なりの使い分けをしてもいいのではなかろうか。訂正されないということは、多少変でも許容範囲にはあるということだろうし。

 許容範囲を超えるたら、間違いだと指摘してくれる人がいるというのはありがたいことである。その結果、使うのを諦めた言葉があるとしてもである。ちょっと皮肉に響いただろうか。実は「pokud」に似た「dokud」という言葉を、使用するのをあきらめたのである。
 以前は「お金がある限り」というのを、この言葉を使って表現しようとがんばったのだけど、何回やってもうまくいかないので、ひよって「お金がある間はずっと」とか「お金がなくなるまでは」なんて言うようになってしまった。師匠の訂正も説明も毎回違っていたような気がするんだよなあ。だからチェコ語で使い方が一番難しいのは「dokud」だと断言しておく。

 これでチェコ語の仮定法についてはひとまずおしまいということにする。
2018年11月10日23時55分。







2018年11月13日

仮定法2(十一月八日)



承前
 一応念のために反実仮想的な仮定法について説明しておこう。これは本動詞の過去形に加えて、動詞「být」、もしくはその繰り返しを表す動詞である「bývat」の過去形を一緒に使うというものである。問題はどちらを使うのがいいのかよくわからないのと、両方一緒に使ってもいいのかどうか、使っているのもあるような記がするのだけど、よくわからないことである。これやろうとすると、必要以上にこの二つの動詞を使ってしまうので、必要ない限り使うのは避けている。チェコ人の中にも使えないと言う人はいるから、外国人ができなくても仕方はないのだけど、ちょっと悔しいので、機会があれば復習しておきたいところである。

 以下の例は、これまでの例も十分以上に怪しいけれども、いつも以上に怪しい例である。わかりやすいように昨日の分に使った例文を加工してみた。

 Kdybych byl čekal o trochu déle, byl bych se mohl setkat s Petrem.
 Kdybych býval čekal o trochu déle, býval bych se mohl setkat s Petrem.
 Kdybych byl býval čekal o trochu déle, byl bych se býval mohl setkat s Petrem.
 もう少し長く待っていればペトルに会えていたのに。

 正直、この三つのうちどれが正しいのかわからん。後半の部分は「se」があるせいで語順が怪しく感じられるし、最後の文はこんなに動詞を並べていいのか不安である。

 Kdyby se mi byla nelíbila Olomouc, byl bych tam nebydlel.
 Kdyby se mi býval a nelíbila Olomouc, býval bych tam nebydlel.
 Kdyby se mi byla bývala nelíbila Olomouc, byl bych tam býval nebydlel.
 オロモウツが気に入っていなかったら住んでいません。

 こちらはさらに語順がややこしいのに加えて、否定の「ne」をつけるのは本動詞だけでよかったと思うのだけど、確信が持てないという問題もある。サマースクールでやってくれるとよかったのだけどてんてん。この文も、仮定法でチェコ語にできるなあ。


 日本語同様チェコ語にも、「〜すれば」という順接の仮定法だけでなく、「〜しても」という逆接の仮定法も存在する。日本語の場合には大きく形が変わるが、チェコ語の場合には、順接の仮定法に「i」を付け加えてやれば完成する。人称変化や動詞の過去形との組み合わせ方などは順接の仮定法の場合と全く同じである。

 I kdybych měl hodně peněz, nekoupil bych si toto auto.
 お金がたくさんあっても、この車は買いません。

 I kdybych měl o 10 bodů víc, neudělal bych tuto zkoušku.
 十点多く取っていても、この試験には落ちていました。

 仮定法の「i kdyby」の代わりに本来「〜とき」を意味する「když」を使って、「i když」という表現で日本語の「〜しても」をあらわすことができる場合もあるが、チェコ語の「i když」は、日本語では「〜けれども」とか「〜が」という単純な逆説の接続表現を使った方がいいような場合にも使われるので、気をつける必要がある。日本語的に考えると、「ale」「přesto」なんていう逆接の接続詞を使いたくなるようなところにまで、「i když」を使うのである。
 例えば、「Pavel nepřišel, i když jsem na něho čekal dlouho」という文を日本語に訳す場合、普通は「私はパベルを長時間待ちましたが来ませんでした」となるだろう。どうしても「〜ても」を使いたいというなら、「私がいくら待っても、パベルは来ませんでした」とするしかない。これはチェコ語ができる日本人よりも、日本語ができるチェコ人にとっての問題になるかな。


 チェコ語には、動詞の現在人称変化ができれば、問題なく使える簡単な仮定法もある。それは動詞の人称変化の末尾に「-li」をつけてやれば出来上がりである。発音するときには切れ目は入れないが、書くときには「-」を「li」の前に入れることになっている。スロバキア人がこれ難しいと言っていたような記憶があるから、スロバキア語にはないのかもしれないけど、そんなに難しいかなあ。問題は、形を作るの自体は簡単だけど、それが使うのが簡単であることを保証しないことか。

 Máte-li nový tácek, můžete mi ho dát?
 新しいコースターがあったらもらえないでしょうか。

 なんてお願いもしていたわけだ。習ったばかりのころは、「kdyby」とちがって新しいことを覚える必要もなかったので喜んで使っていたのだが、「マーテリ」とかちょっと発音しにくい感じがしたのと、丁寧さに欠けるような印象を持ってしまったので、最近はあまり使っていない。そこに難しいのが使えたほうがうれしいという学習して言葉を身につけた人間に特有に心理が働いているのは否めない。

 もう一つこれの問題点を挙げておくなら、例の二番目にくるものの優先順位をある程度身につけてから学んだ方法なので、「se」や「si」が必要な動詞が出てきたときに、うまく整合性が取れないと言うか、「-li」を一語として認識してしまうのか、変なところにつけてしまうことだ。書くときは問題ないのだが、話すときについつい変な語順にしてしまって変な顔をされることがある。この形を使うときには、人称変化した動詞を文頭に持ってくることになっているので、その次、二番目にくるものが問題になるのである。いや、もちろん、そこで素直に「-li」をつければ何の問題もないんだけどね。
 例えば、「元気です」なんていうときの「Mám se dobře」に「-li」をつけたら「Mám-li se dobře」になるのは重々わかっているのだけど、頭の中で「Mám se」のつながりが余りに強いせいか、ついつい「マーム・セ・リ・ドブジェ」と言ってしまうのだ。「バディー・バーム・リ・ト」とか、「コウピーメ・シ・リ・トゥト・クニフ」とか、自分でもなんでそうなるのかわからない間違いを繰り返してきた。結局それで面倒くさくなって使うのをやめてしまったというのが落ちかもしれない。

 最後に、普通の動詞の現在人称変化と「být」の未来変化にしか使えないというのも、使わなくなった理由だろうか。過去でも現在でも何でも使えて、語順の混乱の起こらない仮定法的な接続詞を使った方が楽だということに気づいたのである。ということでこの件もう一回。
2018年11月9日23時50分。










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