2018年03月30日
形容詞比較級最上級1(三月廿七日)
昔、日本でチェコ語を勉強していたころ、東京の四谷にある大学書林という語学系の出版社が運営する語学学校DILAに通っていたのだが、そこの先生が日本で普通の生活をしていても接する可能性のあるチェコ語として二つの例を教えてくれた。
一つは、『マスター・キートン』の浦沢直樹が連載していた『モンスター』で、舞台がドイツからチェコに移っていたのだ。当然、出てくるレストランの名前なんかはチェコ語で、「U tří žab(三匹の蛙)」なんて名前が付いていたわけだ。それから主人公がプラハのホテルでテレビのニュースを見ているシーンで、チェコ語のニュースを聞いて(もちろん吹き出しにアナウンサーの台詞がチェコ語で書かれていた)、「nemocnice u svatého Jakuba」というのを、「聖ヤコブ病院」と理解していたのを覚えている。この作品には、チェコ語ができる協力者が付いているのか、驚くべきことに正しいチェコ語が使われていると先生は評価していた。
もう一つが、チェコのピルスナー・ウルクエルと協力関係を結んでいたキリンビールのテレビコマーシャルである。たしか、外国で生産されている典型的なタイプのビールをキリンが期間限定で生産販売するという企画があって、そのうちの一つとしてピルスナー・ウルクエル的なピルスナータイプのビールが選ばれていた。日本のビールも多くはピルスナータイプに分類されるけれども、その特別ビールは原料を麦芽とホップと水だけにすることで、ピルスナー・ウルクエルに近づけていたのだったかな。テレビを持っていなかったので、そのコマーシャルを見たことはないのだけど、先生の話では、ピルスナータイプを手にした女性が早口で、「Pilsner je nejlepší」と言っていたらしい。
だから、形容詞の比較級、最上級を勉強しましょうねという話につながったと記憶しているのだが、「nejlepší」は、形容詞「dobrý」の最上級、「nej」を取った「lepší」は比較級になる。もちろんこれは規則的な変化ではなく、不規則な比較級、最上級の作り方だけれども、比較級の前に「nej」を付けると最上級になるというのは規則的である。また形容詞の比較級、最上級にも格変化が存在し、軟らかい長母音「í」で終わることから「jarní」などと同じように軟変化の形容詞として扱われることになる。
チェコ語でチェコ語を説明してもらうときのために、チェコ語での言い方を説明しておくと、ラテン語起源の文法用語では、比較級が「コンパラティフ(komparativ)」、最上級が「スペルラティフ(superlativ)」になる。格変化の一格、二格と同様のチェコ語的な表現もあって、「ドルヒー・ストゥペニュ(第二段階)」「トシェティー・ストゥペニュ(第三段階)」となる。本来の形を「第一段階」としての呼称である。人によってはこちらのほうを使うかもしれない。
では、規則的な比較級の作り方はというと、名詞の格変化なんかに比べたらはるかに簡単である。あれより難しいものを探すのは大変だろうけど、チェコ語学習者にとっては規準となるのは名詞の格変化であり、そのおかげで難しいというためのハードルはかなり高いのである。それがいいことなのか悪いことなのかはわからないけど。
まず、規則的な比較級、最上級の作り方から行くと、語尾の長母音「ý/í」を取り去って、「ejší/ější」をつけるだけである。ハーチェクがつくかどうかは前に来る子音次第である。ということで、例を挙げれば、以下のようになる。
blbý → blbější → nejblbější(バカな)
rudý → rudější → nejrudější(紅の)
pomalý → pomalejší → nejpomalejší(遅い)
známý → známější → nejznámější(知られた)
černý → černější → nejčernější(黒い)
žlutý → žlutější → nejžlutější(黄色い)
zdravý → zdravější → nejzdravější(健康な)
ここに挙げたのはすべて硬変化の形容詞だが、軟変化の形容詞は例外なく「ejší/ější」をつけるから、迷う必要はない。
完全に例外とは言えないが、子音交代を起こすものもあって、「-rý」で終わるものは「-řejší」になり、「-hý」は「-Žejší」、「-ský」は「-štějši」、「-cký」は「-štější」となる。
chytrý → chytřejší → nejchytřejší(賢い)
přátelský → přátelštější → nejpřátelštější(友好的な)
politický → političtější → nejpolitičtější(政治的な)
ubohý → ubožejší → nejubožejší(あわれな)
ある程度規則的な例外としては、「-dý」「-tý」で終わる形容詞で、「ější」ではなく「ší」のみをつけるものがある。その場合「dší」「tší」は、「チー」と読むのは言うまでもない。それから、「-rý」で終わるものの中にもこのグループに入るものがあるか。
tvrdý → tvrdší → nejtvrdší(硬い)
bohatý → bohatší → nejbohatší(金持ちの)
starý → starší → nejstarší(古い)
微妙な例外が多くて長くなってきたので以下次号。
2018年3月27日22時。
これで始める必要はないけれども、日本人でチェコ語を勉強する人は一度は使うべきである。
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