2018年01月24日
二格の使い方4(正月廿一日)
今日はチェコ語の二格の続きである。前回は方向を表す前置詞を説明したが、今回は場所を表す前置詞から始めよう。側、隣などの場所を表す前置詞も、二格を取る。「u(ところに/そばに)」「vedle(となりに)」「blízko(近くに)」などがあって、後に来る動詞によっては、助詞は「で」にしたほうがいい場合もあるだろう。
すでに「誰々のうちで/に」というのを現すためには、「うちで/に」を表す「doma」に、「u+人の二格」を組み合わせて使うという話は、チェコ語の場所の表しかたの厄介さを嘆いた記事で紹介したとはずだが、「doma」なしで、「u+人の二格」だけで使えば、「誰それのところで/に」という意味になる。「u nás」は、「私たちのところでは」という意味だが、「我が国では」と訳したくなるような使い方もする。その場合は、「u nás v České republice」とか国名と一緒に使うことも多いか。
それから、同じ名前の町や村が複数ある時に、識別のために近くにある大きな町の名前を後に「u+二格」でつけることがあるのだ。オロモウツの近くだと、プシェロフの近くと、プロスチェヨフの近くにそれぞれブロデクという小さな町があるので、「Brodek u Přerova」「Brodek u Prostějova」と区別するのだ。
この手の区別のために後ろにつけるものとしては、ほかにも、地方名を使った「na Moravě」「na Hané」「v Čechách」などがあるし、近くの川の名前を使って、「nad Vltavou」「nad Moravou」なんてやりかたもある。チェコの地名ではないけれども、ドイツのケルンは、チェコ語では「Kolín」で、プラハ近郊のトヨタの工場ができたことで日本でも多少知られるようになった「Kolín」と区別するために「nad Rýnem」をつけるのである。チェコのコリーンには何もつける必要はないが、あえてつけるとすれば、「u Prahy」か「nad Labem」かな。
「vedle」と「blízko」はもともとは副詞なので、後に名詞を二格でつけることなく単独で使うこともできる。特に「vedle」は、単独で使われていると、「ずれている/はずれている」と訳したくなることも多い。「となりにいる」とか、「隣で仕事している」なんてことも言えるんだけどね。
以前ことわざを紹介したときの「bez práce, nejsou koláče」に出てくる「bez」も二格をとる前置詞である。「〜なしで」とか「〜抜きに」という意味だが、個人的に一番よく使うのは、喫茶店でコーヒーを注文して、「s mlékem?」と聞かれ、「bez mléka」と答えるときである。もちろん、「bez cukru」でもあるんだけど、チェコ風トルココーヒー以外は、ブラックで飲むからさ。
前置詞扱いになるのか自身はないけれども、「bez mála」で「ほとんど」という意味で使うこともある。「bez mála 20」というと、あとちょっとで二十、二十にちょっと足りないという意味になるはずである。ただし「bezmála」で一語化しているかもしれない。
もう一つ気を付けたほうがいいのは、名詞の「bez」も存在していることで、これはニワトコの木を指す。ヨーロッパのものなのでセイヨウニワトコになるのかな。白い小さな花がいくつも固まって咲くのが特徴で、実の色によって、「černý bez」「červený bez」と呼び分けられている。小さな粒粒の実は食べられるはず。レモネードとかお茶も、この「bez」から作られているはずなので、目にする機会は少なくない。
「〜以外は」を表すのもチェコ語では前置詞を使う。その「kromě」は本来「クロムニェ」と読むはずなのだけど、チェコ人の中には発音をはしょって、「クロミェ」とか「クロム」とかで済ませてしまう人がいる。「mě」の正しい発音がわかっていない人が結構いるのには、こちらに来て何度か驚かされたことがある。
この「kromě」の後に、数を表す言葉と名詞をともに二格で使うという例を挙げておこう。「kromě několika výjimek(いくつかの例外を除いて)」の「několik」は二格、三格、六格、七格では「několika」になる数詞のような副詞のような言葉である。「いくつ」を表す「kolik」に「ně」をつけて「いくつか」にしたものだと説明したほうがわかりやすいかな。チェコ語と日本語が対応するもののひとつに、疑問詞にチェコ語で語頭に「ně」をつけると、日本語では語末に「か」をつけるというのがあるのである。「něco」「někdo」とかいくつも例を上げることができる。
それから「kromě」が便利なのは、「ten」の二格の「toho」をつけて「それ以外は」という意味で使えるのと、さらに「že」使って、それの内容を表現することができることだ。
Já umím česky. Kromě toho jsem normální Japonec.
チェコ語ができます。それ以外は、普通の日本人です。
Kromě toho, že umím česky, jsem normální Japonec.
チェコ語ができる以外は、普通の日本人です。
なんか微妙に変な文のような気もするけれども、それが文法的な問題なのか、内容的な問題なのかがよくわからない。
もう一つ覚えておいたほうがいい二格をとる前置詞は「během」であろうか。普通は後に名詞を二格でつけて、時間的に「〜の間」という意味で使われるのだが、こちらもちょっと複雑な文を作るのに使いやすい前置詞である。「〜している間に」ってのは、日本語ではよく使うしね。
Během toho, co jsem pracoval doma, začalo sněžit.
うちで仕事をしている間に雪が降りだした。
基本は、「kromě」のときと同じで、後に「ten」の二格の「toho」をつけること。これだけで前の文を受けて単独で「その間」という意味でも使えるし、後ろに説明の文をつけることもできる。ただし、「během」の場合には、「co」もしくは「kdy」を使って何をしている間なのかを示すことになる。
チェコ語のこの手の一見ややこしい表現というのは、日本語風に工夫して使ってみると意外と問題なく使えることがあるし、だめもとであれこれ試してみることをお勧めする。うまく行くと楽しいものである。もう一つ二格を使うものとして、特殊な動詞を上げるつもりだったのだけど、また次回である。
2018年1月21日23時。
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