癌と共に生きる　手術→放射線治療→化学治療

敬老の日・・・父に会いに行った。
いつも通り、元気そうだったが、
目に見えて老いていく父。

その違いは表情にハッキリと表れている。
目じりのしわ、くぼんだ目、
歳と共に着実に老いて行っている父。
それは私も同じ・・・皆同じ・・・。

目に見えて老いて行くか、目に見えないところで老いて行くかの違いだけだ。
成長するも、老いて行くのも、どちらも同じ早さ。
誰にもそれを止めることはできない。

父に聞いてみた。
「今日は敬老の日だけれど、
敬老として扱われるにはまだまだだと思っているんじゃないの？？」

父は笑った。
その通りだ・・と言わんばかりの笑顔で笑った。
おれはまだまだ若い・・・そう言いたいんだろ？
そう聞くと、父は満面の笑みでうなずいた。

父は生前の母に対して「80歳まで生きる」と答えたそうだ。
母がうんざりした感じで私に言ってきたことを今でも思い出す。
母に支えられた50年。
特に脳梗塞を患ってからの15年は
介護という形で、文字通り母が命を懸けて父の面倒を看た。

あの頃、既に母の体力は限界を超えていた。
ダムに例えるなら、少しずつ決壊が始まっていた。

そんな非常事態にも気づいてあげることも出来ず
一気に音を立てて崩れ落ちていく母を見ているしかなかった。

68歳・・・まだまだこれからだった。
日本人女性の平均寿命よりも約20年若くしてこの世を去った。

対する父は、御年71歳。
日本人男性の平均寿命約80歳。
あと9年・・・現時点で父が他界するようには伺えない。

元気いっぱいでモリモリ食べる。
健康体そのものだ。
脳梗塞という病気を患ったことで
生活習慣が正常になったことが
健康になった要因の一つとも考えられる。

大酒呑みのヘビースモーカーが体調を崩さないはずがなかった。
左半身麻痺という深手を負ったことで手に入れた健康体。
何とも皮肉なものだ。
健康を手に入れた父は、体の自由が奪われている。

父がお世話になっている老人ホーム入所者の平均年齢は90歳を超えている。
父は71歳・・・確かにまだまだ若い。

日本人男性平均寿命まで9年。
施設入所者平均年齢まで19年以上。
まだまだ・・・父は、まだまだ若い・・・。

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