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2018年10月30日

理科部の生徒たち

「丹澤先生、理科部の子たちに指導してくださってありがとうございました。昨日は、たくさん集まりました。」

今朝出勤すると、理科部の顧問のI先生から過分の言葉を頂いた。

「いやぁ、何にもしてませんよ。」
謙遜ではない。本当に何もしてない、に等しいのだ。

先週、I先生が、
「よくサボる○○と△△と□□も声を掛けて下さい。」
などと言うものだから、土曜日の帰りの会に、理科部の三人に声を掛けたのだ。

このところI先生は、毎週のように放送をかけて、理科部の部員を呼び出していたので、少しでもお役に立てばと思ってのことだ。

ところが、やっぱり奴らはサボった。

だから昨日の帰りの会では、クラスに6名ほどいる男子の理科部員を立たせて、説教をしようとした。

「週3回しか活動してない文化部ですら、毎回参加できないというのは、そんなに面白くないということなのか? だったらやめちまえ。そして、他の部に変わればいいじゃないか…。」
私の学校では、退部時には、次の部への入部が義務づけられている。

そう、穏やかに話し始めたのだが、あまりの軟弱さと、いい加減さと、情けなさに、次の言葉が出なくなった。だから、6人は、立たされたままで、クラスはしばし沈黙した。

激しく叱責するわけでもなく、懇々と語るわけでもなく、ただの沈黙。

そして、そのまま数分が過ぎ、私は終わりの会を終えてしまった。
ただそれだけだ。

また昨日は、私の部活帰りに、理科室から叫び声が聞こえたので、ちょっと覗いてみた。
すると、何やら塩ビパイプで、段ボールを叩いて潰していた。
私には、何をしているか理解できなかったが、教室にいたI先生が、
「今日は、来てます…。」
と言うものだから、私は意味不明だったが、退散。

今日になって、その生徒に
「昨日のアレは、ストレス発散か。」
と尋ねると、「そうだ。」と言う。

やっぱり身体を動かした方がいいんじゃないかな。
発達期で、エネルギーのあり余っている中学生は、運動した方がいい。
週何回かの体育の授業だけでは足りないと思う。
「このまま、だらだら生活して、強靱で健康な大人になれるのだろうか。」
と、思う。

本当は彼らは、面白くないのでも、嫌なのでもない。ただ、面倒くさいのだ。
「面倒だから、行くのやめようぜ。」
と、お互い誘い合って、集団でサボる。
一人ではサボれないくせに、仲間を増やして、自分の罪を軽くしようとする。

暇さえあれば、スマフォをいじっているか、PCで動画を見ている。
ゲームをしているのかも知れない。

奴らの軟弱さには、あきれるばかりだ…。












お城で聞いた合唱

遠足で、会津若松の鶴ヶ城を見学。その天守から下りて、いよいよ、ボランティアガイドの案内が始まろうとした頃、水色のジャージを着た一団がやってきた。

初めは号令をかけて、バディのように番号を叫んでいたので、遠足の点呼かな、と思っていたが、そうではなかった。
彼らは、スタンバイすると、突然歌い出したのだ。
それは、混声四部のとても美しい歌声だった。

「城址で合唱するなんて、面白いな。」
遠く聞こえてくる歌声に耳をそばだてる。
見ると、次々とメンバーが替わり、歌っている。

「先生、あの人たち高校生ですか?」
私のそばの生徒が尋ねてきた。
「いや、ジャージを着ているから中学生だよ。でかいね…。」
遠目に見ても、体格の良いのがよく見えたのだ。

引率の音楽の先生に、
「ちょっと見てきて下さいよ。」
と、偵察を頼むと、それは地元の中学3年生だった。
一週間後の合唱コンクールに向けて、わざと声の響かない野外でリハーサルをしておこう、とやってきたのだ。

しかし、そのクオリティの高さは半端ではなかった。
ハーモニーはもちろん、その声量、発声、そして立ち居振る舞い、すべてが中学生のレベルを超えていた。男子も女子も、その声は高校生レベル。

見に行ってくれた音楽の先生、
「前任者がNコン(NHK全国学校音楽コンクール)常連なんだって…。」
前任者ってことは、もうその学校にはいない、ってことか。ちゃんと文化が引き継がれているようだ。

「うちの合唱部でも、あの声は出せないんですよ。私も勉強しなきゃ。」
と音楽の先生。
「連絡を取って、教えを請いたい。」
とも…。

平日の午後とは言え、観光客も多かったので、彼らの歌声に足を止め、聞き入った方も多いだろう。
なかなか洒落たイベントだ。

歌い終わると、彼らは、学校に戻って行った。学校は歩いて帰ることのできる距離にあるようだ。

鶴ヶ城址には、『荒城の月』の碑もある。ガイドさんの説明によると、全国三カ所のうちの一つだそうだ。

会津戦争によって破壊され、平地にされた城跡を、土井晩翠が訪れ(仙台の青葉城とともに)、作詞したという。

「あの名曲の詞ができたのは、この地であったか。」
と、以前訪れた青葉城ともに思いを馳せる。

学校の外に出ることでの発見は数多い。













2018年10月29日

授業、うまくいっていないの?

出張の先生の授業が空いたので、学活にして『合唱コンクール』の練習をしようと、音楽室の使用を打診したら断られた。

音楽の教員は、私のクラスの副担任で、席も隣。
昨年は少しトラブルもあったが、今年は仲良くしている。

「音楽室は空いてますか?」
と尋ねると、
「あの子たち、『練習しない』って言っていましたよ。」
と反駁。
「いや、私が練習させるんです。」

どうやら、先週、せっかく好意で「合唱練習しますか。」と問われたにもかかわらず、生徒たちが断ったらしい。

だらしのない行動をとり、提出すべき書類も出さず、歌詞の張り出しも作らず、などなど、やる気が見えなかったのも音楽の先生がへそを曲げた原因だ。

「あの子たち、やる気ないですよ。」
とも言う。
適当にはぐらかして、
「それでは、音楽室ではなく、別のところで練習します。」
と、紳士的に折れてみた。
すると、
「音楽室は次の中1の準備をするから使えません。あの子たち、先生の言うことは聞くんですね。」
と、捨て台詞を吐いて去って行った。

その時間の初めに、クラス全体に話をしてみた。
「音楽の授業はうまくいっていないんか?」

すると、一人の男子生徒が、
「先週の土曜日はできていました。」
と言う。

確かに、男子たちはだらだら、やる気がなさそうに、大して声を出すでもなく、うだうだしている。
その姿を見れば、
「自分たちで、やろうという気持ちがないクラスの面倒を見たくはない。」
という気持ちは分かる。

私が少し話をして、パート練習。

ほとんど口を出さなかったが、結構一生懸命やっている。

「やるときは、きちんとやらないと。やる気がないように見えると、損するよ。」
そう、諭してみた。

まだまだ、仕上がりにはほど遠いが、少しずつ男子も声を出すようになってきた。
女子も、何度かパート練習をすると、いい声になる。

まだまだ伸びしろはある…。

彼らを信じ、励まし、時にお尻を叩きながら、もう一踏ん張りしてみよう。













思いを切らさない

お隣クラスの担任のH先生。先週は体調不良で、辛そうだった。
しかしそんな時、どうしても「クラスへの思い」がいつもよりは薄くなる。
すると、途端にクラスにほころびが出る。
「先生、合唱練習がうまくいかないんです。」
と、女子生徒が泣きながらやってきたりする。
「私が、体調不良だから、いろいろ起こるんですね…。」
と、一言。

一方、バスケットボール部。
土曜日に一年生大会があり、新人の先生が引率した。
ところが、引率教員は、登録の教員ではなかったため、運営本部からお叱りを受けた。
登録した教員は、二人とも学年行事の出張。代理で引率した先生の名前は、メンバー登録用紙には記載されていなかった。

だから、登録教員になりすましての大会参加。「どうにもならないので、そうしなさい。」と大会運営本部のご指示だそう。

合わせて、選手も変更になっていた。だから、別の生徒が大会に行ったのだが、このメンバー登録(正確にはメンバー変更)もなされていなかった。本当ならば、試合に出場できないのだが、元のメンバーとして(なりすまして)、試合に出してもらったとのこと。

さらには、登録のメンバーと背番号が合わず、これまた、別の職員が、大会会場に届けるという始末。登録用紙の番号を間違えて記載したというミスだ。

すべては、顧問の手続きミスだ。だが、その原因は、この試合に思い向けていなかったことによる。
代理を頼むなら、周到な準備をして、何度も何度も確認した後に、他の先生に頼まなければならないのだが、ちょっと準備不足だったようだ。
と、共に、
「引率できないから、頼むね。」
などと、その重みを認識することなく、別の引率に出かけてしまったことに、その原因がある。

教育活動中は、思いを切らしては駄目だ。
ちょっとした油断や隙、ミスが、大きな事件の発端になる。

だから、行事が重なるときは、特に注意。
そして、これからの季節、体調を崩し、肉体的にも精神的に弱っているときも、要注意。

何があろうと、思いを切らさないのが、プロの仕事だ。
かく言う私も、先週末から喉が痛くなった。風邪の初期症状かも知れない。
症状には波があるが、ここ数日、薬に頼った生活をしている。

そんなときだからこそ、
「絶対に思いを切らさない!」
と、決意を新たにする。

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2018年10月28日

遠足は土曜日がいい…

金曜日に遠足が行われた翌日、中1の学年主任が声を上げた。

「中1は体力ないから、翌日が休みの土曜日に遠足を実施して欲しい。」
と言う。

今年の遠足では、各校とも遠足が重なり、なかなかバスの手配ができなかった。
それに、現地でも遠足だらけだったのだろう。
金曜日に遠足をしているのは、公立校では土曜日が休みなので、ちょうど良いのだろう。

「でも、土曜日だと、観光地は混雑してしまう。交通渋滞もある。団体での昼食の予約もしにくいかもしれない。それより、大会と重なってしまう可能性が高いですよ。」
と、お答え申し上げた。

「今日は4時間授業で良かったね。遠足が水曜日だったら、翌日は7時間授業だから…。」
私は、遠足の翌日、そう教室で生徒たちに話をした。

遠足については、いずれ、教務で検討されることになろうが、
「生徒が疲れない企画にしたらどうだ。」
「暗くならないうちにもっと早く帰ってきなさい。」
などと管理職に指摘されそうだ。

どんな行事をするにしても、中学校経験の長い先生は、中学校カルチャーで、教育活動を考える。
一方、高校経験しかない先生は、高校カルチャーでものごとを判断する。
だから、中高同時の行事企画は、たいてい揉める。

教務内勤は高校仕様。中学生でも授業中、保健室にいれば欠課だ。留年だってある。

中学校の遠足は、班編制一つ考えても、その中に教育活動がある。
また遠足後、班ごとに、そのまとめが行われ、教室や廊下に掲示される。
しかし、高校では、「ああ、楽しかったね。」で、終わりだ。

「中学では、一つひとつの行事が、準備からまとめまでを行う、大切な教育活動なのだ。」
と考え、気合いを入れて遠足の企画運営を行うが、高校の先生にはそうした思いは少ない。

「だいたい行事が多すぎるんだよ…。」
と、事務長。
「業者を使いたいくらい大変なら、行き先を変えて、企画を縮小しなさい。」
と,教頭。

どんどん話が逸れていく。
同じ土俵で話ができないのは、何とも悲しい…。

だから、
「中学生も6時間半くらいの睡眠時間で大丈夫でしょ。」
などと、スケジュールが組まれそうになったりする。

まだまだ黙っていられないな…。

秋空の下で

急に合同練習がなくなったので、自チームだけの野球練習。
今日は朝から秋晴れ。もう朝は10℃以下まで気温が下がる。それでも、日が照ってくると、太陽の光が暖かい。

いつもは、昼には練習を切り上げ、すぐに学校に戻るのだが、今日はグランドのある公園で、皆でお昼を食べることにした。

片付けを終え、グランド整備をして、着替えたあとに、暖かいお弁当を調達。
秋空の下、ワイワイ言いながら、楽しくお昼ご飯を頂く。

静かな公園は、自然の音しか聞こえてこない。
風で木々が揺れ、紅葉した葉が舞い降りる。
時折、野鳥が甲高い声で歌っている。

「至福の時間だな…。」
そう、私がつぶやくと、コーチをしてくれている高校生も同意してくれた。
自然の中で、とても気持ちがいいのだ。

「明日の授業もなければいいのに…。」
と、高校生。

私の学校の休日は日曜日だけなので、日曜日の夕方になると、何となく月曜日を迎えるのが憂鬱になる。いわゆる『サザエさん症候群』だ。

一方、中学生はいたって元気だ。
練習が終わると、おそらく、皆で買い物にでも出掛けるのだろう。

私も以前は、日曜日も終日練習にしていたが、最近は試合でもない限り、午前中で終わる。
「自分の体力が落ちてきて、休日の終日練習が辛くなった」、ということもある。「部員が少ないので、できるメニューが少ない」のも理由。しかしそれよりも、「長く練習しても、それほど効果は変わらない。」ということを知ったのだ。何年もかかったのだけれども、今では確信している。

昼になると、まだまだ強い日差しが注いでいる。それでも20℃には達していない。
「先生、バナナの皮、山に捨ててもいいですか?」
「だめー。」

時々、練習中に旬の果物をおやつに出すことがあり、その皮を自然に帰したことが原因だ。

「先生、汁はどうすればいいですか?」
「それは、山に返していい…。」

なんか矛盾しているな、と自分でも思っていると、コーチの高校生が、
「自然破壊じゃないですか?」
と言う。

「そんなに自然は柔じゃない…。」

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2018年10月26日

野口英世記念館

遠足で最初に尋ねたのは、猪苗代町にある、『野口英世記念館』だ。
野口英世が一度だけ日本に帰国してちょうど100年にあたる2015年にリニューアルされ、なかなか面白い展示内容になった。

夏に一度見てきたので、「遠足でも是非」と、先生方を説得し、見学地の一つに加えた。

私の学校では、中1の総合的な学習で『偉人研修』をさせているので、ほとんどの生徒が知っているが、ここまでわかりやすく、体験しながら学べる展示は他にないだろう。

販売されている書籍やマンガも、教材として使えるものばかりだ。
今回は購入してこなかったが、いずれもネットでも注文できる。

正面に磐梯山を望み、反対側には猪苗代を見る。天気も良かったので、その最高ロケーションの中で、野口英世の人物像から、功績、その生涯を学ぶことができた。

生徒たちはもちろん、先生たちにも、なかなか評判が良かった。
「次回も、野口英世記念館は外せませんね。」
という声は、やはり嬉しい。

引率者もきっちり入場料がかかるのだが、このリニューアルでかかった費用を創造すれば、仕方のないことだろう。

メモをしながら、展示内容をじっくり時間を掛けて見ている一般の方がいた。
何となく雰囲気が教員で、下見のように見えた。
「お行儀悪い生徒たちばかりで、すいません。」
と、心の中で謝る。

生徒たちは、展示を見ながら必死でワークシートを書いている生徒が多いので、傍目には頼もしく見えたかも知れないが、その動きは、中学2年生としてはちょっと幼い…。

退館時に、入館しようと整列している小学生とすれ違った。
5年生か6年生だと思うが、とても行儀良くきちんとしていた。
黄色の帽子をかぶっていなかったら、小学生なのか中学生なのか分からないだろう。

「先生、小学生に、『中学生だ!』って言われましたよ。」
と、小柄な生徒が私に報告する。

「そりゃ良かった。私服だったけど、中学生に見えたんだね。」

その言葉は、
「俺たち、真面目に見学しましたよ。」
と自慢しているようにも聞こえた。

彼らがそんな風に自覚しているのならよい。
こうやって一歩ずつ成長していくのだから…。

何だ、できるじゃないか…

今日は遠足。昼食は見学地併設の店で頂く。
店内の予約席まで、私が誘導。
私たちの席は小上がりになっていたので、靴を脱ぎ、「出船」にそろえて座席の指示。
そのとき、「私は靴を揃えなさい」とは言わなかった。
揃えた私の靴を見れば、同じよう脱いで並べると思ったからである。

学年生徒全員が上がったのちに、脱いだ靴を見ると、全員が「出船」にそろえてあった。
「指示しないでも、できたなぁ。」
と私はほくそ笑む。

せっかくの遠足なのだから、お子様向けのハンバーグだのカレーだのでは面白くないので、一般の旅行者が注文するような、少し高価な食事を選んでみた。

山菜のわっぱ飯に、野菜や茸の天ぷら、汁物はサトイモたっぷりの味噌仕立て、田楽味噌をつけた薄揚げ、などのメニューだったが、全員が完食してくれた。
片付けも、綺麗にできた。
「なかなかやるじゃん。」
と、心が躍る。

最期の見学地の講話では、全員が正座して、大きな返事をして、『什の掟』を唱和。

内心、
「返事が小さかったり、声を出さなかったら、どうしようか。」
と、思っていたのだが、きちんとこなしてくれた。

いろいろまだ指導すべきところは沢山あるが、とりあえず、遠足で出掛けた学校として恥をかかずに済んだ。

帰校後、学級委員になり立てのS君が、神妙な顔をして私の元にやってきた。
聞けば、バスの一番後ろに座っていた男子生徒のイタズラがひどかったそうだ。

「いろいろな人に迷惑を掛けていたにもかかわらず、自分は制止する力がありませんでした。すいません。」
と言う。

元気で明るいけれども、クラスで一番落ち着きがなく、すぐに流されてしまうS君。
学級委員になれば、本人の自覚と、その責任で、変わっていけるな、と思っていたのだが、遠足を通して、一歩成長したようだ。
「これからの精進だね。ありがとう。」
と、私は答えた。

思いも行いも幼く、周りからは、とても中学生には見られないだろうと思っていた遠足。
それでも、一定の収穫はあったようだ。

公園で、合唱コンクールのリハーサルをしていた地元の中学三年生の振る舞いには、遠く及ばないけれども、
「何だ、できるじゃないか…。」
と、感じた一日になった。












2018年10月25日

海外語学研修の餞別

中3が海外語学研修に出発した。6泊7日で、オーストラリアのシドニー近郊に行き、ホームステイを行う。

基本はホームステイなので、生徒たちがホテルに泊まることはない。
2人ペアで、オーストラリアの家庭に入り、英語漬けの生活をするわけだ。

この語学研修には、学年主任、担任、英語の先生が引率する。学年行事でありながら、学年所属でも引率しない先生もいる。費用はすべて寄付からまかなわれるので、最低限の引率人数になるのだ。

現地での初日と最終日に、シドニー市内観光、途中、現地の学校訪問がある以外は、原則、引率の先生たちの出動はない。ホームステイ、特にトラブルや事故がなければ、のんびり現地の下見をしたり、自分で見聞を広めたりすることもできる。

こうした引率でも、私の学校では、一切の手当はでないので、食事代や宿泊代はすべて教員の自己負担である。これに学校や居残り先生へのお土産代などの費用がかかるので、引率ながらも結構持ち出しが多い。

今からもう20年以上前になるが、私が初めて修学旅行の引率をしたときは、驚きの連続だった。
国内の旅行だったが、生徒を引率して行く先、行き先で、先生方へのお土産がつく。3泊も、4泊もすれば、段ボール一箱分くらいのお土産になった。

夜のミーティングは、オードブルとお酒が並び、さながら宴会のようだった。もちろん、飲酒の上での生徒指導は許されないが、夕食後にも、第二の夕食があるような感じだった。これらのお土産は、帰校時に各人に配られたので、先生たちの荷物が増えるということもなかった。併せて、引率時には手当がついたから、ちょっとしたお小遣いももらえたような感じ。

「これが、先生の世界なのか…」
と、新人だった私は驚きだった。生徒としての立場しか知らなかった私は、教員の世界の引率時の実態を垣間見た感じがした。

ホテルに着けば、「まずはビールで一杯」、というのも当たり前のように行われいたのである。

今の世の中、さすがにこんな風ではないだろうが、「少なくとも自己負担の方が多い」という訳ではなかろう。

だから、私の学校ではいつしか、引率代表に密かに『餞別』を渡すようになった。
あくまで善意だが、せめてお土産代の足しにしてもらえばいい、という思いだ。

職員室や事務室、親しい先生、不在の間、代わりに授業をしてもらった先生への土産代は、引率者皆で出し合ったとしても、結構な金額になる。

私が引率のときは、お土産リストを作っておいたくらいだ。それでも、帰ってからお土産が足りなくなるという自体が発生する。

「まるで、お土産買いに行っているみたいだな…」
まさに、その通りかも知れない。

さすがに交通費は自己負担ではないが、『海外語学研修』は、なかなか費用のかかる引率なのだ。

というわけで、今回も学年からカンパを募り、自分でプラスアルファして、『餞別』として渡した。
今頃は、空港で搭乗待ちの頃だろう。

元気で行ってらっしゃい。













『計算ブロック』

雑誌『高校への数学』(東京出版)に『計算ブロック』というパズルを解くコーナーがある。

この『計算ブロック』は、9×9の枠の中に1〜9までの数値を入れて、指定された条件を満たすように作り上げるものだ。縦と横には1〜9までの数字が一個ずつしか入らないが、「数独」とも違う。

例えば、指定枠3マス分に12と書かれていたら、和か積で12となる数を探す。また2マス分の指定枠だったら、和・差・積・商のいずれかで12となる数を探す、といった具合である。

私の数学クラスでは、このパズルを全員に配る。
「頭の体操」でもあるが、「工夫して数値を見つける先を見通す力」と「注意力」、「忍耐力」を養うことができるからだ。中1の生徒にとっては、解き上げるのに何日もかかる難問なのだが、学年が上がり、慣れてくると、ものの10分程度で完成させる鉄人も現れる。

「先生、解けました!」
と、充実感たっぷり、嬉しそうな顔をして、 完成したパズルを見せに来た生徒には、もう一度きれいに清書をさせて、答えを出版社に送る。正解ならば、パズルのページに名前と学校名、学年が載るのだ。

「今回、○○君が載ってるね…。」
ちょっとはにかみながら、 皆に注目されながら、内心わくわく感の○○君が、笑みを浮かべる。

ここ何年かは、掲載生徒が消えないように注意しながら、毎号のパズルを送り続けている。

たまに、
「今回は宿題。全員が解きなさい。」
と、強制力を発動することもある。
応募するパズルは、9×9だが、4×4から8×8のパズルも練習問題として紹介されているので、解けるなら9×9を、駄目ならマス目の少ないものでもよしとしている。
それでも、最終のパズルが解けない人は、それなりの悔しさを感じているはずだ。

試行錯誤しながら、時間をかければ、必ず正解できるのだが、その時間と手間を惜しむ生徒には、このパズルは解けない。

手慣れた生徒は、上手に数字を絞り込み、あたかも将棋の先読みをするかのように、ささっと、数字を決めていく。

だが、面倒がってしまう生徒は、途中であきらめてしまうのである。

このパズルを通して、『問題に取り組む姿勢』も計れるのは面白い。

このパズルが解けることと、試験の成績との相関もあまりないように思える。だから、成績面では上位にならない生徒が、パズルで活躍したりする。

決して暇つぶしではないが、無為にスマフォをいじっているより、はるかに頭の体操になるだろう。

中間考査も、模試も終わったので、次回のパズルは「宿題」にしてみようか…。

高校への数学 2018年 11 月号 [雑誌]












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