▼まず絵が抜群に好み。
女性キャラにしては顔も角ばってるしガタイ良すぎて男キャラの描き方のようだが、絵も綺麗だし、塗りも上手い。可愛い。
どうやら私は、派手過ぎない、少し前の少年漫画風の絵柄が好きらしい。
最近のフリゲだと「俺たちのギャルゲ」もいいですね。どのヒロインも少年漫画のヒロインにいる感じ
実際に漫画だと、いま連載中の作品では「湯神くんには友達がいない」が一番好みだね
ヒロインのちひろは、今やってる漫画のヒロインで一番可愛いと思ってる
最近の一般ゲームだと「危険な5つの密室」「裏切りの密室」が一番良かった。男性キャラは現実的なイケメンで美形とまでいかないバランスがいいし、女性キャラは可愛いけど少女じゃないのが良い(成人女性を成人女性っぽく、かつ可愛く描ける絵師は殆ど居ない)
デフォルメされすぎたキャラクターや過度の萌え系は嫌いなので、ある程度現実的な頭身で体型の絵が好きなんですよ。
昔、倒産したKIDの原画家がささきむつみの絵は肉付きが一番現実的と言ってたが、ああいう絵も好き
▼で、まさにその系統の絵が好きで、これだけ絵がいいならストーリーはまあ別になんでも。どうせこの3人のあいだで右往左往浮気する少年の話でしょ?程度に思ってたんだが…
まさかの思わぬ拾い物だったね…
これは怖い…怖いストーリーのゲームだよ…
終わってみるとやはりテーマやメッセージ性があるなら、「幸せとは、不幸とは」、ってトコだと思う
主人公の柿崎慎吾は、同じクラスの女子である柳瀬に淡い恋心を抱いていた。
そんなおり、突然、彼の前に「神さま」が現れる。
その神さまはこんなことを告げるのだった。
「その女と結ばれれば、お前は不幸になる」
神さまの放ったその言葉に、慎吾は動揺を隠せない。
続けて神さまは、こんなことも言った。
「お前が結ばれるべき相手は、この女だ」
指し示したのは、遠江可奈子という、慎吾が一度も話したことのない女子だった。
慎吾は揺れ動く。
神さまの言うとおりにすべきか、それとも自分の気持ちに素直になるべきか。
不幸になるという神さまの言葉は真実なのか。
慎吾の選んだ相手と、その結末はいかに。
柿崎慎吾
『神さまのいうとおり』の主人公
高校2年生、部活は入っていない
通学のために下宿している
遠江 可奈子
可愛いけれど、雰囲気が独特すぎてちょっと話しかけづらい感じの女の子
交友関係も広くなく、結構、謎が多い……
茶道部に所属しておりマイペースに活動している
どうやら同じ中学校の出身のようである
柳瀬 悠
顔よし、性格よし、快活明朗なクラスのアイドル
陸上部では走り高跳び中心に短距離・跳躍系の選手
慎吾は入学当初から惚れていた
また友達に隠して新聞配達のバイトをしているが、何のためにバイトをしているのかは不明
神さま
神社でいきなり現れた“自称”神さま
大雑把で我が侭、てんやわんやで慎吾の家に居つく
慎吾に悠と結ばれると不幸に陥ると忠告してくる
橘
慎吾の悪友、情報通の野球部キャッチャー
悠とも仲がよく2人の間を取り持とうとする
▼攻略順が完全に固定されたゲームで、可奈子をクリアして悠、その後に神さまと3つのシナリオがあるが、実は共通のテーマで書きつつも次のシナリオと全体像への伏線を入れているのが非常に上手い。(後述)
▼最初に読んだ神さまの正体は、可奈子の妹説と未来から来た娘説だった
前者は可奈子が実は主人公のことが好きで、でも恋愛には消極的だから妹が一肌脱いだという、よくある話
後者は、未来から不幸になった娘がやってきて、未来を変えるために神さまと名乗った説。殆どドラえもんのセワシ
結論から言うとこの片方がズバリ当たりでした
・可奈子ルート
▼よくあるクールというより意味不明で毒舌な女の子、友達も少ない…というタイプのヒロインで、徐々に打ち解けて仲良くなっていくが、間接的とはいえ、主人公のせいで交通事故により寝たきりになる
ファッ!?
ギャルゲーではヒロインが交通事故に遭うのはよくあるけど、大抵薄幸なタイプだし、明るくて健気なキャラに多いから、可奈子のようなタイプのヒロインが事故に遭う展開にはビックリ…
しかも車椅子とかじゃなくて、食事もトイレも自分ではできないほどの、ガチの障害者…
障害者をテーマにした「かたわ少女」でさえ、身体的、外見的なハンディキャップこそあれ、普通に生活していたというのに…
▼このあたりのシナリオ展開、とても怖い。
折角仲良くなったヒロインに完全に拒絶されるのも、爆発寸前で恨み言をいわれるのも、これまでの関係が崩れるのも。
ハッピーエンドはこの障害を乗り越えた先にあるので、セックスも出来ないから子供もいない夫婦だけど、これも一つの幸せの形なんだという感じはする
ハッピーエンド2は事故には遭わず、春香という娘も出来、神さまが望んでいた世界はこれだったんだな。主人公ももう顔も覚えていない神さまに感謝しているし、スチルこそないが、ベストエンドはこれでしょう
▼そして更に怖いのがバッドエンド。
可奈子に拒絶されたまま別れて、悠と付き合い、結婚した主人公。
自分のせいで人生が終わった可奈子のこともすっかり忘れて、リア充まっしぐらでこの世の春を過ごします。
神さまが悠と付き合うと身の破滅と言ってたことは、完全に忘れたころに、本性を現した悠と離婚し、娘の親権も仕事も奪われ、親友の橘との仲も遮断され、全てを失うという最悪のエンディングに。
このエンディング、このゲームで一番怖かった。上げてから下げるのが上手いね。
いやあ怖い怖い、急展開から急展開、また急展開。そして最後は破滅
そう、全部「神さまのいうとおり」
ノーマルエンドではオッサンになった主人公が恋人もおらず橘と仲良く過ごすがこれはこれで楽しそうだ。悠が結婚しているらしいが相手はどん底に落とされたのかな
・悠ルート
▼外伝くらいに思ってたら、可奈子ルートと同じくらいのボリュームに驚き。
なぜ悠の人格が歪んでるかってことを描いたシナリオだが、殆ど接点のない可奈子と親しくなるスピードが速すぎて困惑。しかも途中から全く登場しないし、もっとカラませてもよかったはず
悠の抱えてる闇が父親に恋愛感情に近いものを抱いてる…そしてそれに嫉妬している母親から虐待を受けているってのは予想外でした。
虐待はともかく、まさかの家庭内三角関係だとは…
悠が人知れずバイトをしてたり、休日でも制服なのはそのせいだったんだね(金が無い割にゲーセンやカフェで金を使っているが…)
▼可奈子ルートと違い、同棲している神さまとヒロインの接触があるが、暫定的につけた名前が「はるか」…
…お、これは神さまの正体はひょっとして
あ、でも可奈子との子供の名前も春香だったなー、これはどっちなんだ
▼バッドエンドは何も解決していないのですぐに破綻して不幸まっしぐらだろうけど、ハッピーエンドの主人公と悠は幸せになれたのかしら…(;^ω^)
前のEDで悠の本性を見ているし、作者ブログの適当なコメントを見るとどうにもわからないので、素直に喜べなかった(後述)
・神さまルート
▼可奈子も橘も一切出てこない。神さまも家出少女の遥として登場。
これまでの伏線が全て解き明かされるシーンは、なかなかのカタルシスでした。
悠が未来で不幸になった主人公に言い放った「あなたなんて彼の足元にも及ばなかった」ってのも、父親のことだろうね。
中年のおばさんになっても老人の父親に恋してるって、怖いというかキモイね悠は
▼遥と親子と分かった後の、高校生の父親と中学生の娘のシーンもこのゲームにしてはマッタリ
しかし悠は失踪し、主人公と結ばれなかったので不幸にこそならないが遥はSF的には消える事に。
だがなぜかご都合主義という謎の力で消えずに残る。
このまま幸せに暮らすかと思いきや、遥が歴史改変で消える筈だったもう一人の遥を妊娠し、そのままエンディング…
えっ?これで終わり!?
Σヽ(`д´;)ノ
割と感動的な親子の話だっただけに、最後が酷過ぎる。
ご都合主義に見せかけてやっぱり災いが降り注ぐってのは驚いたけど、可奈子ルートエンディングの爽やかな感動からすると、悠はなんともいえない終わり方で、神さまは後味悪すぎと、徐々にラストシーンが暗くなるのはおかしい
普通逆だろ
▼どうもこのライターはタイトルの「神さまのいうとおり」をラストで台詞として回収することを狙ったようだが(「言うとおり」とか表記の揺れはあるが)、もっといい着地点があったんじゃないかなあ
▼少し触れたように伏線の使い方がかなり上手い…というか独特で、初回である可奈子ルートと、2周目である悠ルート自体をラストシナリオである神さまルートの伏線に使ってるのが面白い
また、実の父親に片思いする悠→実の父親に片思いする遥。
母への想いを捨てきれない悠→母への想いを捨てきれない遥など、親子二世代で共通するテーマを持たせてる。この二人の親子関係以外でも、同様に仕込みから被せ、という流れがある
▼一番驚いたのは、悠ルートに出てくる主人公が好きな、「白いスーツを着たガタイのいいヤクザが歌舞伎町で大暴れするゲーム」
これもう明らかに「龍が如く」(って18禁だったよな。作中で18禁だからとエロ本は捨てられたのにゲームはやってる)で、作者がこのゲーム好きなんだろうなーというパロディ程度に思ってたら、なんと「龍が如く」のヒロイン遥の名前を、主人公が娘にもつけたというオチ。
これは読めんかったわ(悠がつけた可能性もあるけど)
可奈子ルートで生まれてくる春香は、遥と同一人物なのかしら…
▼まあそんな具合で、相当に癖はあるがかなりよく出来たゲーム。絵も音楽もほとんどが自作で、同人ゲームとしてのこだわりもなかなかです。
それだけに、表情パターンと背景の少なさが惜しい。キャラクターがほとんど真顔なのはやはり変だ。泣いてても真顔だ。
夕方や夜でも背景が昼だし、部活を抜け出してきた悠が制服なのも、ただの手抜きに見える。普通運動着でしょ。
極めつけは20年後の可奈子の立ち絵まで同じ。女子高生と中年女性が全く同じ顔で同じ服…
遥ではなく、むしろ可奈子がタイムスリップしてそう
キャラデザも可愛くて、ヒロインの私服まで可愛いと思ったゲームも珍しいだけに惜しい
問題はあるが、それでもやはり、特にいいのはシナリオですね。
文章表現も多彩で、
「水を遣らなければ枯れてしまう花のように、愛を形にし続けるには金がなければ枯れてしまう」
「こいつがキャッチャーをやってるときはホームスチールが多いらしいがそれも納得できる。タックルしがいのある顔だ」
「遠江さんの差し出したボールペンはとてもすべりがよかった。俺の右手は今日からフィギュアスケーターとしてデビューだな」
「幼いころスーファミで鍛えた連打力を発揮せずにはいられない」
「ひまわりも顔を背けてしまうほど明るい笑顔だった」
「寝返りを打ってこちらを向いた顔は、まさしく百科事典の安心の項目に写真を載せたいほど穏やかだった」
「行く。という政治家も倣うべき端的な答えが返ってきた」
とギャグでもシリアスでも相当語彙が豊富なのが面白い。同人ゲームでこういう表現ができる人って、あまりいませんね
▼評価A+
80点
ある意味怪作、不条理を受け入れられるなら、おすすめです。
このゲーム、ググった限りではネット上にレビューがほぼ無いが、完全に隠れた名作(迷作)ですよ、捨て置くにはもったいない
bush cloverというサークルも、3本ゲームを開発したらしいが、配信は2本しかしていないようだし、あと1本はどうなってるんだろう。
サークルのブログは数年間更新停止、中の人のマリツキ@MARITSUKI335氏もツイッターで年数回しかつぶやいてないし、ゲーム開発についてのツイートは1つすらない。
かたはばのブログ(アニメと中小企業診断士受検日記)をやってるプロデューサーやライターのカタハバ氏も、ブログを2017年2月から全く更新していない。
やはりどうやら実生活が忙しいということらしい。
『世界を夜にしたら、大事な玉が一個消えてた』『いつか天気になぁれ』という2本は自然消滅したんだろうか、飽きちゃったのかな
▼前記した悠ハッピーエンドの作者コメント……なんとも適当(笑)。
これを見ると、中の人のゲーム制作センスは飛び抜けてるが、ゲーム製作に熱心では無かったのかもなあ…
次、悠のハッピーエンドでの神さまの行く末について
ただ、未来へと帰ります
なんか色々裏設定があった気がしますが、全部忘れました(笑)
しかし、神さまは、誰も惨めにならず家族3人が幸せに暮らしている光景を思い浮かべているはずです
これが、バッドエンドとの一番の大きな違いでしょう
以上です
結構忘れているものですね
でも、大筋は間違っていないはずなので、これを以て返答とさせていただきます