「キャラホビ2012」【詳細版】レポート第5回は「たっぷりヤマトーク〜キャラホビ出張版〜」だ。当然の様に撮影録画録音禁止なので記憶を頼りに私が見聞きした内容を記録しておく。記憶をもとに書き起こしているので間違いがあったらその時は勘弁して頂きたい。(敬称略)
2) 8/26(日) 12:30〜13:40 たっぷりヤマトーク〜キャラホビ出張版〜
出演者は出渕裕総監督、西井正典(チーフメカニカルディレクター)、樋口真嗣(第三章絵コンテ担当/映画監督)の3名。
樋口監督は特撮派で「アニメ固有のパースを無視したデフォルメとバンクセルを流用する爆発シーンが嫌いだった。」のでアニメは見なかったと言う。「ところが『宇宙戦艦ヤマト』ではちゃんと爆炎の煙が流れて線を描くんです。これは違うな、と思いました。」とヤマトと出会い驚いたことを話す。「ヤマトは再放送組です。本放送時は祖父の家に住んでいてチャンネル権を持つ祖父が風呂に入りに行った隙にチャンネルを回すといつも『真赤なスカーフ』が流れていました。」と笑わせてくれた。
出渕監督は「予告が無かったんだよねえ。」と当時を思い出したかのように呟いた。「第1話冒頭の冥王星沖海戦と第2話Bパートでヤマトが発進するという構成は絶対変えたく無かった。変に変えたらヤマトでなくなる。」と熱く語った。「若い人達はテンポの良い展開に慣れているということも考慮しましたが。」とリメイクならではの苦労も忍ばせた。
「第2章の第3話ではワープと波動砲と言う2つも見せ場があったので盛り上げようと1.5話分の絵コンテを書いてしまいました。そしたら出渕監督にバッサリ切られてしまい、これはきっとガミラスのエピソードを十分に描くための尺を残そうとしているに違いないと思ったんです。」と妙に真顔で語る樋口監督に思わず出渕監督は「おいおい、人聞きの悪いこと言うなよ。」とツッコミを入れようとすると「完成した第3話を観たらヤマトが恰好いいんです。監督のヤマト愛を感じました。」としっかり持ち上げて観客の笑いを誘っていた。
出渕監督は「劇場限定版BDには絵コンテ集が付いていたんですけど、これカットする前のオリジナル版が付いているからきっとマニアの方は見比べてこのシーンが無いとか比較しているじゃないかな。」と劇場へ行ったファン向けの楽しみ方を教えてくれた。
樋口監督が描いた名シーンを出渕監督と西井ディレクター両名が選び紹介するコーナーがあった。出渕監督は「地球を旅立つヤマトの頭上に地球が見えるという構図が良かった。これを見て急遽第1章の第2話で巨大ミサイルを撃ち落としたヤマトをゆっくりと回転させてシーンが繋がるようにしたんです。」ともう一度そのシーンを見直したくなるエピソードを語った。
「だって地球が下だったら艦橋から見えないじゃないですか。」と樋口監督は笑いを取ることを忘れない。
「ヤマトがワープシーンから抜ける瞬間水面に着水するような描写も良かったですね。」と出渕監督が褒めると樋口監督は「あれはエーテルの海なんです。いいアイディアだと思っていたのに先日『銀河英雄伝説』を観ていたら同じ様なシーンがあったんですよねえ。”先にパクられて”ていました。」と悔しそうに語った。
「ワープシーンでは色々特別な光景が見えるじゃないですか。オリジナルのアイディアをどこまで取り入れるか議論しましたね。」と出渕監督が話を振ると「皆さんが期待していたシーンは入れましたけど、恐竜と原始人が登場するシーンは今のところ使っていないのが残念です。」と樋口監督が答えた。
出渕監督が「木星の一部が抉れて波動砲の威力を見せ付けるこのカットも素晴らしい。でも実は木星の大きさを考えるとこの角度は正しくないでしょう。」と指摘された樋口監督は「格好良く見せるにはハッタリも必要なんです。」と啖呵を切った。
第3章 第7話の古代進と森雪2人のカットが映し出されると「『さらば太陽圏!銀河より愛をこめて!!』において艦長室で沖田十三艦長が古代に対して『地球にサヨナラを言わんか!』と怒鳴りつけるシーンがあるじゃないですか。古代が正面を向いて手を振るんですけど実は地球は後ろにあるんですよね。本当なら艦長室の壁に向かって手を振らないといけないけど、それじゃあ絵にならないからあんなシーンになったと思うんですよ。」と樋口監督が力説する。
出渕監督が「展望レストランみたく艦長室も回転すれば良かったんだけどね。」と茶化すと「真田志郎さんが『こんなこともあろうかと密かに艦長室を改造しておきました。』とか言うんですか!?」と混ぜ返すから観客大爆笑。
「こんな矛盾点を解消するために太陽圏を離れる際のパーティ会場は3つに分かれてメインは食堂で・・・。」と樋口監督が第7話の設定を説明し始めた。出渕監督は「皆さんから質問されていた『真赤なスカーフ』ですが、最初からこのシーンで使う予定でいました。」と語った。
第10話では出渕監督が「トワノクオン」を手伝った縁でボンズのメンバー(名前失念)が参加しているという。出渕監督が故西崎義展プロデューサーの声色を真似て樋口監督を驚かせる一幕もあった。
第4章では再び樋口監督が絵コンテを担当しており「決戦!!七色星団の攻防戦!!」の前に2度もヤマトが大破する激しい戦闘があると言う。「ガチンコ戦艦バトルを描くにはあそこまで壊す必要があった。」と樋口監督が語り、出渕監督も「そのまま絵コンテを通しました。」と認めた。「1回は偶然敵艦と遭遇して戦闘となり、もう1回は戦術的に覚悟を決めての戦闘となります。」とワクワクさせるようなことを言う。
『実写版 宇宙戦艦ヤマト』の企画として「ガミラスが現実世界に出現して極秘の宇宙軍隊が迎え撃つというストーリー展開や、第二次世界大戦で沈んだ戦艦大和には実は既に波動エンジンを搭載していた設定」があったり、『のぼうの城』の公開が12/11/02まで延期された問題のシーン等の脱線話もあったりして一言も聞き逃せない充実した70分間だった。
オリジナル版への愛と2119への情熱が溢れた実に面白いトークショウで大満足だ。