俳句愛好会に参加し介護施設でアルバイトしている男子高校生チェリーは動画配信者で前歯の補正をしている女子高生スマイルとシッピングモール内で起きたトラブルが原因で出会う。介護施設に来ている老人フジヤマは中身の無いLPジャケットを持ち、無くしたレコードをずっと探している。彼の願いを叶えようと2人は友達と協力して探し回るうちに親しくなっていくが…というラブストーリー。
参考:『サイダーのように言葉が湧き上がる』
http://cider-kotoba.jp/
俳句という言葉と動画という映像の相反する創作者が恋に落ちる話だがアナログレコードが物語のキーアイテムとなっているだけにオーディオマニアとして興味深く観ていた。すると気になるのが登場人物たちのアナログレコードの持ち方だ。
レコードはジャケットに裸で入れてあるし素手でべたべた溝に触るし呆れる無知ぶりだ。閉店する中古レコード店の掃除をしていて「汚れた手で触ったらノイズの原因になるだろう」とその場にいたら我慢出来ず怒鳴りたくなる。
ジャケットのデザインから入っていたのはピクチャーレコードと推理するのは良いし意外なところから無くなったレコードが発見されるのもあり得そうな話で納得できる。それなのに当然埃だらけのレコードをクリーニングする者は登場せず。
再生したレコードはノイズレスの綺麗な音でまるでCD再生のよう。少しは針ノイズを入れてそれらしい音響処理をして欲しいものだ。感動的なシーンの筈が余りにリアリティがなくマニアとして興醒めしてしまった。
またヒロインが反ったLPレコードを平らにしようと力を入れたらレコードが割れてしまう。LPレコードの素材はポリ塩化ビニル製なので簡単に割れない筈。私自身LPが割れたと言う話は聞いたことが無い。これは脚本家がシェラック製でもろいSPレコードと勘違いしている気がする。
ということで調べてみると1950年に日本でLPレコードが発売されたがPVC製のLPレコードは1954年からと判明した。
映画は21/07/22(木)公開なので物語の舞台は2020年頃だろう。老人フジヤマの年齢を80歳と仮定すると妻のレコードが製造されたのは50年前の1970年前後と考えられる。ピクチャーレコードの絵柄からもアイドル人気の高まった時期と考えられるし裏面の風景写真は80年代ぽいから年代的に間違いないだろう。
やはりPVC製LPレコードは粉々に割れないと思う話だ。制作陣は1982年のCD発売以降のメンバーばかりでアナログレコードを実際に触ったことのない者ばかりだったのだろうか?
なおレコード店のオーディオシステムはJBLの青いフロントパネルのモニタースピーカーで4312シリーズぽいデザイン、プリメインアンプはビクターJA-S35ぽいデザインだったと記憶している。
ところで「FlyingDog 10周年記念作品」ってそんなに若い会社だっけと思い調べたら2009年にJVCエンタテインメントが株式会社フライングドッグへ社名を変更したそうだ。公開までに2年有した上にJVCエンタ時代の記憶があるから違和感があったのか。
オリジナル劇場アニメとして及第点だがJVCが関わっていてこのLPレコードの扱いはないだろうと再度呆れてしまった。(^_^;;
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