2018年05月08日
夢を見ることが将来の危険を回避する? 人によって異なる「夢の役割」
人は毎日夢を見るといわれています。人によって見やすい夢は異なるようですが、他の人がどんな夢を見ているのか、ちょっと気になりますよね。夢は起きている間に得た情報を脳で処理し整理するために現れているといわれています。つまり起きている間に得ている情報によって、夢の見え方も違ってくるのです。
起きている間に得た情報を夢として見る川崎医療福祉大学の保科孝弘教授らが1996年に発表した論文によると、生まれつき目の見えない人は、夢を見るときの感覚が健常者の見る夢と少し異なっているといいます。
映像として夢を見るためには、物体のイメージをあらかじめ持っていることが前提です。そのため、目の見えない人(後天的に視力を失った人)でも、目が見えていたころの記憶があれば、映像として夢を見ることが可能です。
しかし、生まれつき目の見えない人は、映像として物体のイメージを持っていないため、視覚的な夢を見ることができません。代わりに、盲導犬が横にいる感触を感じる「触覚的」な夢や、食べ物の味が湧いてくる「味覚的」な夢など、視覚以外の感覚でイメージされる夢を「見る」そう。映像ではありませんが、目の見えている人と同様に、起きている間に得た情報が脳で処理され、睡眠中に夢として現れているのです。
生まれつき目の見えない人は悪夢を多く見る。その理由は?ちなみに、誰しも良い夢を見る日もあれば悪夢を見る日もありますが、目の見えない人は、悪夢を見る確率が高いそう。
これを裏付ける研究結果が、2014年にコペンハーゲン大学の脳科学研究所から発表されています。この研究は、目の見える人と見えない人50人を対象に、生まれつき目の見えない人(11人)、後天的に視力を失った人(14人)、目の見える人(25人)を被験者として集め、普段見ている夢について調査を行うというもの。
すると、悪夢を見る確率に明らかな差が現れたのです。目の見える人が悪夢を見る確率が約6%、後天的に視力を失った人が約7%であったのに対し、生まれつき目の見えない人は約25%の確率で悪夢を見ていることがわかりました。生まれつき目の見えない人は、健常者の実に4倍以上も悪夢を見る確率が高いことになります。
生まれつき目の見えない人は、なぜ、そして、どんな悪夢を見ているのでしょうか? 調査で夢の詳細について聞いてみたところ、多くの人が、日常の中で危険な目に遭った場面を夢として見ていたといいます。その理由についてコペンハーゲン大学神経科学研究所の代表・アルバート教授は、「夢を見ることによって、危険を回避する能力を養っているのでは」と解説しています。
悪夢が、生きていく上で重要な情報を見せている人間は、起きている間に集めた情報を、睡眠中に脳内で処理していますが、これは、生きていく上で重要な情報を抽出し、記憶として定着させていくため。アルバート教授は、目の見えない人が悪夢を見るのは、この記憶処理の一環であるからではないかと推測しています。
生まれつき目の見えない人は視覚からの情報や映像イメージがない分、道を歩くときは自転車や車を警戒するなど、健常者以上に危険回避への意識を高く持っていなければなりません。その意識を保つために、夢に危険な場面が多く登場するというのです。
つまり、無意識のうちに、悪夢を通じて安全に対する意識や危険を回避する能力を養っているのではないかと考えられるのです。
誰もが見る夢ですが、このように、その人が生きるために大切な情報を与えてくれている可能性があります。もしかしたら、あなたが今まで気に留めていなかった夢にも、実は重要な情報が含まれているのかもしれませんね。