2017年04月24日
子どもに最多、卵アレルギー。アレルゲン除去の卵を日本が開発
産業技術総合研究所(産総研)をはじめとする研究チームは、新しい遺伝子改変技術「ゲノム編集」により、卵アレルギーの原因となる物質を作る遺伝子を含まないニワトリの開発に成功した。
卵アレルギーは赤ちゃんや子どもに多く見られるが、卵はさまざまな加工食品に使われているため、アレルギー対策が非常に大変だった。今回開発された新たなニワトリが産んだ卵は、それを改善できるかもしれない。
□卵アレルギー 命を落とすことも
子どもの食物アレルギーで最も多いのが卵アレルギーだ。0歳児では食物アレルギー全体の60%ほどを占めるなど、年齢が低いほど割合が高い。
原因は、卵の特定成分を免疫系が「異物」と判断し、過剰に反応してしまうことだ。
体のかゆみや軽いじんましんなど軽度のものから、呼吸困難、嘔吐(おうと)、けいれん、血圧低下などの劇的な症状(アナフィラキシー症状)を示し、最悪命を落としてしまうケースもあるため、決して軽視はできない。
□アレルゲン遺伝子除去ニワトリの開発に成功!
卵アレルギーでは、卵白に含まれる「オボムコイド」というタンパク質が最も強力なアレルゲンの一つである。
オボムコイドは熱にも強く、卵に火を通してもアレルゲンとしての性質を失わないとても頑固なアレルゲンだ。今回の研究では、このオボムコイドを含まない卵を産むニワトリが開発されたのだ。
産総研などの研究グループが、ニワトリの遺伝子を操作してオボムコイドの遺伝子を取り除いたのだ。オボムコイド遺伝子を持たないニワトリが産んだ卵にはオボムコイドが含まれないため、卵アレルギーが起こりにくくなるとされている。
□遺伝子を自在に操れる!? 注目の技術 ゲノム編集
ニワトリからオボムコイド遺伝子を取り除くために研究グループが使用したのが、「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)」というゲノム編集(遺伝子編集)技術だ。
この技術を使えば、望む遺伝子を導入したり、逆に、病気の原因遺伝子など好ましくない遺伝子を破壊したりすることが効率的にできる。
この技術を応用すれば、私たちの体に新たな遺伝子を導入することで、体(細胞)自体に薬を作らせることさえ可能になるかもしれない。今、このような夢のような技術がさまざまな分野で実際に応用され始めている。
□子どもの頃に食べられなかったものでも大人になれば大丈夫!?
子どものうちは食物アレルギーが起こりやすい。消化管が未熟なことやアトピー性皮膚炎との合併などが原因と考えられている。
乳児の10%程度は何らかの食物アレルギーをもっているが、年齢が上がるほどその割合は減少し、3歳児では4〜5%程度、成人では1〜2%ほどに低下する。
従って、子どもの頃に食べられなかったものが一生食べられないというわけではないのでご安心いただきたい。一般的には、放っておくと自然に治ることも多いものなのだ。
□アレルギーはコップのようなもの
アレルギーはしばしばコップに例えられる。コップに水(アレルゲン)を注ぎ、それがあふれると症状が出る。
コップの大きさは個人の体質により違い、小さければアレルギー体質となる。
しかし、このコップの大きさは体調の良し悪しや食習慣にも影響を受ける。体調が悪いときや食生活が偏っていればコップは小さくなり、アレルギーが出やすくなる。よく眠り、バランスの取れた食事を心掛けることが、アレルギーの予防にも大切なのである。