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2020年04月22日

非道・外道・陳宮!A



【FGO内での活躍】


人智統国真国シンで初登場。とある理由によってご当地サーヴァントが召喚できない状況解決後、はぐれサーヴァントとして物語中盤、汎人類史側の英霊として赤兎馬と共に召喚された。主人公をマスターとして自分が仕えるのに相応しい人物か判断するために、赤兎馬を使って試すことになる。陳宮がマスターとして仕える条件は「殺そうとしても死なない人物」が理想であるらしく、彼らしい対応である。
無事、赤兎馬に勝利できると、実装前ゆえ直接戦闘に出ることはないが、敵側にデバフをまき散らすなどの支援を送ってくれる。

満を期して2019年8月にフレポでの実装がなされたが、その性能や宝具については割愛。あまりにも尖り過ぎた能力から、みんな大好きロリンチちゃんを差し置いて、Twitterで話題になった。
蘭陵王の幕間のイベントでは、黒ひげ(エドワード・ティーチ)の背後に立ち、彼を自爆させている。
黒ひげに対する仕打ちはそれだけにとどまらず、期間限定イベント『アマゾネスドットコム』では彼を洗脳し社畜と化しただけではなく、洗脳させた卒業生をライバル社に就職させ、自爆テロを引き起こすなどの計画を立てていた。
アゾネスドットコムのでは社員が全員行方不明になり、ペンテシレイアから黒幕と疑われたが、本人は否定。マスターも「嘘をつくようなタイプではない」と発言しており、実際のところ、本当に黒幕ではなかった。

俺たちの課金でボイスが付いたことで有名な、清少納言主催の『いみじかりしバレンタイン〜紫式部と5人のパリピギャル軍団〜』で、正式に陳宮にチョコレートを渡すことが出来る。何かと必要なマナプリズムが入手可能なフレチョコなる新要素を含んだ、恒例のイベント。
チョコ返礼激重四天王(カルナ・アルジュナ・ロビンフット・ヘクトールが代表的)などが有名であるが、ここでもやっぱり軍師殿は通常運転であった。そしてちなみに、バーソロミュー・ローバーツもいつも通りであった。チョコ返礼はあらかじめ予想できていたものの内容が想像の斜め上であり、オタク特有の熱弁早口が終わり「いかがだろうか?」と尋ねられるが、「いかがわしい」の一言に尽きる。

さて、陳宮がチョコの返礼として渡されるものは「万年筆」と「木簡」。
陳宮いわく「日本の成人式では万年筆を送るのが通例」だと、聖杯知識かそれとも図書館の司書である紫式部本人、もしくは図書館の本で知ったのか不明だが、あの爆発霧散人間ロケット鉛筆にしてはまともな品だと思いきや、その万年筆の機能がまともではなかった。

返礼に渡された万年筆は通常通り使用することができるが、隠し要素……というより、文字が書けるのが隠し要素と断言して良いほどぶっ飛んでいる。
主な万年筆の効果をもったいぶらずに述べるなら、精密機械破壊機。
マスターの身に万が一精密機器が暴走状態になったときのセーフティが施されているだけではなく、ペン先からは閃光弾の如く非常に強い光源を発射でき、目眩まし用に使用できると述べるが、陳宮の口から直々に説明を聞いてこっちの方が目眩がする。その他に特許出願中であるが、自由自在に爆破爆散する機能までついた超テクノロジーの結晶だったのである。ペンは剣よりも強しってこういうこと?
さすがにマスターから隠せようもない渋い反応に、「改良の余地があるか」と述べているが、違うそうじゃない。
思ったよりも満足の得られない反応に「おまけだから」といって、木簡を渡されることになる。本人いわく木簡の内容は「すぐに内容が身につくわけでもなし、自分には必要のないもの」とゴミ処理をなされたような対応をされているが、これは別に陳宮がご自慢の爆発する万年筆に対して喜んでくれなかったから不機嫌になったというわけではなく、マスター(推定年齢15〜18歳)が、『万年筆を使える年齢(成人)になるまで生きて欲しい』という、ツンデレというよりも、非常に分かり難い臣下としての信頼表現だった……と深読みすることが出来る。
もっと言えば、万年筆の主武装は趣味に走り過ぎているきらいがあるが、ペンの方が建前で木簡の方が本命だったのではないだろうか? なお、陳宮が常に所持している木簡は古代夏王朝の魔術竹簡(ゲステラカモフラージュ)ではなく、マスターに渡したモノとは別物である可能性がある。木簡に記載された内容は兵法の心得。焦土作戦じゃないだろうな?
なお、陳宮の登場は一番最初のバレンタインイベント(チョコレート・レディの空騒ぎ-Valentine)で、すでに存在が示唆されており、呂布にチョコを渡すと基本雄叫びしか発さないバーサーカーの言葉を翻訳していた。

ちなみに声優は真殿光昭だが、これは那須きのこ直々の名指しである。彼?彼女?いわく、陳宮の声は「真殿光昭以外考えられなかった」とのこと。


【人間関係】


・葛飾孔明
一方的に毛嫌い(?)している。陳宮いわく「戦場に恵まれただけ。人を見る目がない。内政の化け物」と述べている。葛飾孔明の依り代であるウェイバー・ベルベット(ロード・エルメロイU世)に対してどう思っているかは不明。

・呂布奉先
史実では険悪な関係性であるが、FGO内では信頼し合っているなどそれなりに仲は良好。妻もしくは貂蝉のどちらか、もしくは両方に似ているとのこと。生前の軍師としての命令は「敵陣に突っ込んで暴れて自爆」オンリーだった模様。

・司馬懿
諸葛孔明とは異なり、それなりに評価している様子。しかし、司馬懿は疑似サーヴァントであり見た目は金髪の美少女であるライネスであるため、教えを乞うのは気恥ずかしいらしい。ちなみにライネスは、陳宮が毛嫌いする葛飾孔明の義妹である。しかも葛飾孔明と司馬懿は、史実では仇敵の関係。まあこういったことはFGO内ではインド兄弟みたいにそれほど珍しくないし、どうでもいいか。

・赤兎馬
色々フリーダムなUMAに突っ込みを入れたり、対処しきれない場合は放置している。名馬としての評価はしているが、なぜ馬が自分のことを主君である呂布だと思い込んでいるのか疑問に思っている。ペガサスみたいにヒヒィンと飛びたいのか、飛行能力を付けてもらえるよう頼まれている。
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2020年04月21日

非道・外道・陳宮!@



『陳宮』とはFGO内に出てくる、☆2キャスターのサーヴァントである。見た目は色黒で薄紫色の髪の毛に、額から延びるアホ毛が特徴で眼鏡をかけている。

初登場は異聞帯『人智統国真国シン』であるが、異聞帯クリア後、ちゃっかりカルデアに赤兎馬と共に紫式部のバレンタインイベントでちゃっかり在籍していることが判明。2020年の清少納言のバレンタインイベントで陳宮にチョコを渡すことができる。

彼は生前、冷徹な策略家で呂布に仕えていた。呂布の功績の中で同じサーヴァントである赤兎馬たる名馬の活躍も無視できないと評価する一方、自分のことを呂布と思い込んでいる赤兎馬に冷静なツッコミを入れていたりしている。
しかし、期限限定イベント『三蔵ちゃん、天竺へ行く』では白馬役になったり、『鬼楽百重塔』で呂布が、インスカンダルのブケパラスやアルトリアのドォン・スタリオンと共に温泉に入るなど、呂布と赤兎馬の中身が入違っているのではないかとの疑惑がある。その要因の一要素として、陳宮の攻撃モーションで呂布奉先に「そこで自爆です」と粗々過ぎる命令をし、狂化するだけじゃいざ知らず、馬と中身が入れ替わる形で逃れたのではないかと推測されている。

陳宮は呂布との主従関係の良さを強調させるかのように、呂布(及びバーサーカー)だけではなく、ガッツ持ちのサーヴァントと相性が良いが、基本的にプレイヤーからそのような使われることない。
フレンドポイント(無料)で低率ながらにも召喚できる他、リアリティ詐欺と言えるほど非常に有用な攻撃型宝具を有しており、全体宝具なのに素の威力が強化補正なく、23万を超えるほどの高威力を発する。フォウ君で強化させたり、他人のスキルアップや聖杯による強化を行えば、気軽に宝具を連発して最低50万もの威力が易々と出るほどである。
しかも、周回などにおいてゲーム環境を一変させるほどの革新的な能力を持っており、予想外の仲間の死を最も嫌い、様々な愛称で呼ばれており陳宮の有名な綽名として、

  • ラフム
  • ゲステラ
  • カムランの丘で大爆笑する男
  • 鬼畜眼鏡
  • カタパルトタートル
  • FGOでTRGしている男/FGOで遊戯王をする男
  • フレンドポイントから出てくるのに友情を否定する男
  • 人権無視サーヴァント
  • キアラに次ぐ最低最悪宝具
  • 労災ではなく人災


など、様々ある。でも一番最悪なのは陳宮のスペックを見て一週間もしない内に『陳宮システム』を考案したプレイヤーなんだよなぁ。

ちなみに「流星一条(ステラ)」とは弓の名手であるアーラシュが自分の命と引き換えに打ち、マンドリカルドに関しては自己犠牲系のスキルであるのに対して、陳宮に限って言うなら、他者の命を「掎角一陣(きかくいちじん)」により弾丸として射出し生贄にしているならいざしらず、宝具演出は真実ともに『演出』である。宝具モーションでは陳宮が弓を放つ表現がなされているが、これはただの幻影のようなもので、実際は爆発物のようなものを前方および後方の味方に取り付け、アーラシュよろしく強制ステラさせているのだ。

宝具終了後、「これも必要な犠牲です。分かりますね」などと度し難いことを平然と述べているあたり、(自他ともに認めてはいるが)乱暴者として有名な呂布ですら目を丸くするほどのサディストである。
あと、「命に価値に区別なく」と戦闘中、述べているがこれは恐らく言うまでもなく……。

陳宮の最低にして最高の使い方は、葛飾孔明などによる強化およびNPとデバフ付与が終了した途端、前方もしくは後方の仲間を生贄にして宝具を放ち、後方からフレンドの葛飾孔明を呼び出して、前述の戦法を行うといったものである。
葛飾孔明に限らず、Arts強化・NP配布・ガッツスキルさえあれば、陳宮の弾丸として利用され、Artsスキル及び宝具(双方、他者・全体)が強化されるたびに実質陳宮が強化されているといっても過言ではなく、多くのマスターたちによって高速周回のために生贄の屍の山が出来上がるのである。
陳宮にとってW孔明や玉藻前、キャスギル・スカサハスカディを筆頭にしたArts強化NP配布環境の御膳立ては必要なものの、キャスタークラスのサーヴァントであるのにも関わらず、ダメージが倍等であろうが、効果がイマイチなライダーやルーラーだろうが、相性や耐久性に関係なく高威力の宝具を発揮することができるのである。
唯一、難点があるとすれば、アビポチの回数が自然と多くなるため、面倒といったところだろうか。


次はFGO内の陳宮について。続きを読む...

2020年04月20日

本田鹿の子の本棚

『本田鹿の子の本棚』とは、佐藤将により連載されている漫画である。全体的なストーリーは、一話毎で終わる話が多い中、たまに二話連載など続くモノもある。
そんな『本田鹿の子の本棚』であるが、物語の事の発端は思春期がゆえに、ろくに娘と会話することが極端に少なくなった父親が、鹿の子と再び関係を持つために奮闘するという話である。左記の説明を聞けば、アットホームで心温まる話であるように思えるが、実際の内容はそうではない。
父親に限らず鹿の子は、どちらかと言えば無口な方で異様に山に詳しい友達はいるものの、基本的にかなりの読書家。彼女の自室には父親の身の丈以上の、天井に届くほどの高さを有した巨大な本棚が置かれており、本と本の隙間さえないほどにぎゅうぎゅう詰めに一冊一冊が押し込まれている。
かつて父親は鹿の子の誕生日に『星新一のショートショート集』をプレゼントし喜ばれた思い出があるがゆえか、その過去を基軸に無断で娘の部屋に侵入することになる。
父親いわく、彼の目の前で漫画すら読むことのなくなった、自室に引きこもりがちの彼女の本の趣向を把握するために、本棚に並べられた書物の傾向を把握するために犯罪者におけるプロファイリングよろしく、娘との関係性を冷え切ったものから仲睦まじいものとするため、娘より早く帰宅した彼は膨大な書物のある本棚の中からランダムに一冊選び、特技である『速読』を使って、趣味を合わせて中を取り持とうとするのであるが……。


【第1話】


一番はじめのストーリ。冒頭で述べたように、父親が娘よりちょっと早く帰宅して、無断で部屋に侵入し、巨大な本棚の中から一冊選び、速読するというものである。
全ての本にブックカバーが施されタイトル選びをできずに父親は適当に本棚の中から一冊選ぶのだが、運が良かったのか、それとも鹿の子の趣向を把握する上において引きが良かったのか全く以て不明だが、奇抜な内容の小説を選択することになる。

記念すべき第一冊の本の内容は、生まれ変わり出会うことを約束した男女が、再び来世で巡り合う内容。隕石の衝突で地球は滅亡したのであるが、死後、男女は閻魔大王に出会うことになる。二人は虫でも獣でも構わないから一緒の生物にしてくれと頼むのであったが、地球滅亡後、隕石に微生物か何か付着していたのか、往来の生態系を破壊して地表で唯一の生命体として存命しているのは、エイリアンの一種のみであった。このエイリアンはあらゆる環境へ高い順応性と、そうして放射線などの抗体及び単一で繁殖可能であり、同胞食いさえもする凶悪性の高いモンスターである。
閻魔大王はそれでも同じ生物として転生するのかと問い掛けるも、男女はそれを承諾するが、一度述べた通り、地球滅亡後、地表を跋扈するのは仲間さえも容赦なく食い殺すモンスター。運命的に来世での逢瀬を約束した男女はもはや人間ではないエイリアンであるがゆえに、殺し合う結末となるのであった。

読破した当然のことながら父親は「えらいもんを引き当ててしまった」と困惑の表情を表す。偶然この本の最初のストーリーが相当な内容だったと思いながら、全ページを網羅するも各短編集の内容全てが奇抜であった。
父親は自身でさえも、筒井康隆やクトゥルフなどを読んでいた時期があるが、さすがに娘の趣向に動揺を隠せなかった。鹿の子が帰宅した玄関の音を耳にした父親は、「ここまでか!」と判断し、娘の部屋から速足で脱出することになるのである。ところで鹿の子ちゃん家畜人ヤプーとか好きそうだよね。


【第44話】


物語はクリスマス前夜のイブ。暗所に監禁された彼らは「寒い」、「助けて」、「暗い」と訴える中、監禁所の室内が開きそこから顔を覗かせるのは凶悪な表情をした人間の女性であった。
人間は「あまりものの野菜炒めでいっか」と言いながら、キャベツ・モヤシ・ピーマン・ニンジンといった食材を手に取る。「寒い」、「助けて」の声を出していたのは、冷蔵庫に入れられた野菜たちの救済を求める悲鳴だったのである。
まず最初に犠牲になるのは、キャベツ。まるで頭部を真っ二つにされながらも辛うじて息絶え、苦悶の表情を示す。野菜たちが「何てこんなひどいことを!」と女性を非難する中、ニンジンはピーラーで皮膚(生皮)を剥がされ、ピーマンにあたっては身体を真っ二つにされた挙句、内臓(白いワタ)を包丁で抜き取られる。
その後、野菜の下準備を終えた人間はガスコンロに火を点け、油で炒めていくことになるのであるが、その時唯一生き残った男女のモヤシたちが悲痛と共に憤慨することになる。そして最後の犠牲者となったもやしは恋人の今生のような別れの言葉を交わした後、フライパンの中に投下され、地獄の釜の中の炎熱地獄のようにグルグルとかき混ぜられ炒められていくことになるのであった。
男性モヤシが人間に殺意を抱く中、フライパンから皿の中に入れられるのだが、その後も(食材たちにとって)凄惨な光景を目の当たりにすることになる。まず、炊き殺された白米と、腐乱死体と称された納豆。野菜炒めに納豆と白米のセットはそんなに変わりない献立内容であるが、絶望に苛まれる男性モヤシが激しい憎悪の感情を抱く中、素知らぬ顔で人間はテレビをつけるのであった。放映されている内容は料理番組であり、そこからも食材たちの阿鼻叫喚の絶叫が聞こえ、男性モヤシが人間に食べられたところで話は終わる。

父親は「ホラーか!」と至極真っ当な感想を抱きながら、あとがきを見ることになるのだが、この小説の作者はアンパンマンを見て着想を得たなど、作家でなければ危険思想極まりないサイコパスな内容が記載されているのであった。


【第54話】


話は毛利元就で有名な三本の矢。
父親は三人の息子たちに「一本の矢なら容易く折れてしまうが、三本合わせると強靭になる」と言い、息子三人協力し合うことを直々に示すも、長男は全く空気を読まず三本の矢を容易くへし折り、「やりましたぞ、父上―! 矢を折ることなど容易い!」と喜々としてはしゃぐ始末。長男のその様子に次男と三男は「いきってる」、「はしゃいでいる」など好戦的な様子を見せていた。
ムキというより自棄になった父親は、家臣たちにありったけの矢を集めてくるように命令する(これも血筋か…)。
毛利の元に三百本もの矢が集まったのであるが、「協調性を」といった趣旨からまたしてしてもズレ、元春は容易くもその矢をへし折るのであった。次男と三男は「三百本程度でおごるものではない!」と非難の言葉を向ける。
そのうち、息子たちから三千本持ってこいと挑発され、これがきっかけで完全に父親の目的と手段が逆転し、三人の息子たちの集められたのは六千本もの矢だが、念のためと称して近隣の木々を伐採する中、国が滅びかけているのにも関わらず、最終的に集まった矢の数は百万本の矢。
さすがにこれでは息子一人では矢をへし折ることができず、目的と手段が逆転したものの、兄弟三人が力を合わせることによって、ついには百万本もの矢を折ることに成功。父親が息子たちの力を合わせる姿に喜びながら死没するも、直後、他国により敵襲が行われることになる。

「毛利はこれで終わりではない!」とのラストエンディングを迎えるのであるが、このストーリを読み終えた父親は「史実無視も良いところだろう」と非常に冷徹な判断を下している。そもそも『三本の矢』におけるエピソードは作り話である可能性が高いと父親が説明するのであったが、素直にうなずく鹿の子はイマジナリーなる幻影であった。とうとう娘のおかしすぎる本棚に父親の精神がキていたのだろう。


【第59話】


話は小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)が執筆した小説を元ネタにした、バトルアクション風に描かれた耳なし芳一の後日談の話である。
内容は耳なし芳一が平家の亡霊たちに、復讐するところから始まる。いきなり苛烈な攻撃を受ける亡霊たちであるが、その攻撃は目に見えることができない。なぜなら、元ネタである耳なし芳一の話において、耳以外の全身のあますところなく般若心経が描かれていたように、その不可視性を利用した襲撃であったのである。
猛烈な攻撃を受ける亡霊たちであるが、そのうちにこの攻撃の仕業は芳一であると気付く。
芳一は両耳を奪われたことによる報復ではなく、「耳を失ったことにより以前と同じ音楽を奏でられているのか不安で、精神的に病んだ」ことが原因であった。耳を失ったことにより、芳一は心底共に自覚したのである……「音楽を愛していた」ことに。
芳一は三節棍を用いた攻撃を行うも、「見えていればわけはない」と亡霊は回避するも一番先端の部分にのみ般若心経が描かれ、直撃。実は三ではなく四節棍であったのである。
亡霊は一旦距離を保とうとするも、見えない壁に邪魔され一定距離を取ることはできなかった。なぜなら敷地内にあるあらゆる岩にも般若心経が描かれており、四節棍の巧妙なギミックだけでなく、徹底的なワナが仕掛けられたトラップ塗れの場所だったのである。
しかし、般若心経が弱点とは言えども平家の武士。復讐心を糧に邁進する芳一に泥をまき散らして可視化できるように対策するも和尚によって講じられた、

火薬による爆裂する般若心経


そして念入りに火薬の中に仕込まれた破片による、

刺さる般若心経


などで、平家の武士たちは追い込まれていく。

劣勢であることを悟ったのか、「後日再戦で」とタジタジながらに申し込むも――完全に、聴く耳なし芳一であった。


作品はこちらから http://leedcafe.com/webcomicinfo/hondakanoko/続きを読む...

2020年04月17日

聖剣伝説『LEGEND OF MANA』

聖剣伝説『LEGEND OF MANA』とは、1999年にスクエアエニックスから販売されたプレイステーション用ゲーム。2010年7月末にゲームアーカイブズで配信がなされている。
LEGEND OF MANA (以下、LOMと略)は、基本的アクションRPGであるが、アーティファクトである様々な街やダンジョンなどを好きな場所に設置できるなど、他のRPGとは異なった要素を含んだ内容である。
アーティファクトの配置は主人公のマイホームである果物園や武器製造に関与する要素であるだけでなく、イベントの発生の有無など影響があるため、設置場所はある程度、注意が必要である。ストーリー進行と自由度はロマサガに近い。というかロマサガ作成スタッフがいたのか、主人公の技の中にかっこよすぎることで有名な『乱れ雪月花』があったりする。
その他に、モンスター育成などやり込み要素が非常に多く、主人公の選択次第では大きくそれぞれ各章のエンドが変わるが、二週目などによりプレイ時間が長期化する傾向にある。初見プレイヤーの多くが、サボテンくんがマイホームに帰ることなくエンディングを迎えてしまった人も多いだろう。
また二週目ではマイホーム内で、ゲームの裏設定が記された内容を知ることが出来る。モンスターの強さも設定することができ、難易度を好きに弄れることが可能。

全体的な作風としては、絵本のような幻想的な世界とBGMや主題歌の良さなど、正しくスクエア全盛期の作品。特に煌めきの都市のBGMは人気がある。
往来の聖剣伝説シリーズから見れば異彩を放っており(ゲームの雰囲気だけでなくキャラクターが放つかなり哲学的なセリフなど)、意見が分かれるモノではあるものの、個人的にはかなり好きなゲームのひとつである。
宝石泥棒編・エスカデ編・ドラゴンキラー編及びその他短編など入り混じった構成をしており、どのストーリーから始めても構わないが、宝石・エスカデ・ドラゴン編のいずれか1つを終わらせると、事実上、最終編であるマナの聖域が発生する。

今回は全てとはいかないが、個人的にLOMで好きなストーリーやキャラクターについて、紹介していきたいと思います。


【宝石泥棒編】


宝石泥棒編は、珠魅と呼ばれる宝石を核に持つ種族のストーリー。
核を抜かれない限り基本的に不死であり、蛍姫を除き、涙を流すことはない。珠魅はかつて、煌めきの都市と呼ばれる場所で生活していた。都市にはそれぞれ階級があり、上から順に「玉石」、「輝石」、「半輝石」、「捨石」といった具合に4段階のカースト制度になっている。
閉鎖的ながらも煌めきの都市内で珠魅らは生きていたが、不死皇帝による侵略を受け、玉石を守ったレディーパールの核が負傷したことにより、最下層である「捨石」の蛍姫が涙(涙石)を流して、傷を癒すことになる。ほぼ幻と化していた珠魅内での癒しの効果のある涙石であるが、すぐさま彼女は玉石の場に祀り上げられるも、涙石は己の寿命を分け与える形で珠魅の核を癒すといったもので、絶えず他者を涙石で癒し続けた蛍姫の核はボロボロになっており、同胞の核を奪っていたアレクサンドルの手によって、時間が蓄積しない宝石箱の中に入れられていた。
煌めきの都市内で玉石及び核を癒す存在が一時的に姿を消したことから、珠魅らはそれぞれ各地に散っていき、アレクサンドルが宝石王に同胞の核を捧げていたこともあり、数える程度に珠魅の数が減っていくことになる。
宝石泥棒編の最初のストーリーは「迷子のプリンセス」、ドミナの町で瑠璃のパートナーである真珠姫が迷子になっているところから始まる。
珠魅は戦える力を持つ者が「騎士」の役割を持ち、戦えない者は「姫」として守護される存在となる。騎士と姫のそれぞれには性別による区別は関係なく、女性の珠魅でも戦える者もいる(特に顕著なのが半ばチートじみた力を持つレディーパール)。
宝石泥棒編のラストでボスである宝石王を倒すも、珠魅の命そのものである核がボス戦前に宝石王に取り込まれており、失われた存在が戻ることはなかった。そのことに主人公は悲しんで涙を流すのだが、レディーパールに「泣いてはいけない」と言われる。実は珠魅のために涙を流した人間は石になるからであった。主人公が珠魅のために涙を流して、ほぼ全員が復活するもほぼ石化した状態になっていた。
マイホームでバドとコロナの姉弟が待つ中、窓の外の風景は大嵐。嫌な予感を感じつつも嵐が過ぎ去った翌日、珠魅の皆が流した涙で主人公の石化が治り、
「ただいま…」
と、ゲーム内で唯一のセリフを主人公が言ったところでエンドを迎える。


【マナの七賢人】


かつて妖精大戦争で活躍したといわれる賢人。
物語開始時点で七賢人の一人である「傀儡師”アニュエラ」は戦争につかれ、アーティファクトの山(後にゴミ山と呼ばれる場所)で死亡しており、実質六名しか存在していない。エスカデ編に出てくるマチルダが、七賢者にスカウトされている。

・大地の顔 ガイア
リュオン街道に鎮座している、山に顔がついたような見た目をしている。実はアニュエラによって命を吹き込まれ創造されており、星の持つ知識がある所為か非常に博識。話はポキールに並ぶほど難解なものであるが、同行者が悩みを相談したとき、各々に適した知識を授けている。
ガイアの役割は「全知の意味を教えること」。

・獣王 ロシオッティ
妖精戦争で弓を武器に活躍した英雄の一人。見た目通り、獣じみた外見をしており、ジャングルの奥深くに鎮座している。会話する機会が極端に少なく、七賢人の中で最も印象が薄い。実はロシオッティは弓の名手であったと述べたように、本来は人間の姿をしていたと思われる。しかしジャングルを守護しているときに巨獣が現れ、捕食されてしまう。しかし、しぶといというか消化に悪かったというか、巨獣がロシオッティの知識と知恵を引き継ぎ、逆に乗っ取られることになっている。
ロシオッティの役割は「強い意志を守る」こと。

・海を渡るトート
カメの見た目をした賢人。カメであることが災いしてか初登場時、ひっくり返ってジタバタしていた。年老いたような外見に似合わず結構活動的であり、よく水のあるところにいる。次元を超えることができる存在であり、いつの間にかそこにいた存在である。かなりマイペース。ガイア・ポキールとは根源が同じであり、三者はどこか共通した点がある。
役割は「迷える者の相談者」であるが、何かをアドバイスすることはなく、悩み解決について本人自ら気付かせるというもの。

・風の王 セルヴァ
常にふわふわ浮いているためか、鳥や動物に慕われている存在。七賢者の穴埋めとしてマチルダをスカウトした張本人。ロシオッティに事故的に殺害されているが、アニュエラの手によって蘇っている。また世の世情について非常に詳しく、かなりの情報通。風の性質を持っているためか、居所を正確に把握するのは難しい。
役割は「道を示しきっかけを与える」。

・煉獄のオールボーン
玉ねぎみたいな見た目をした賢人。剣の達人でもあり、エスカデの師。奈落に滞在しており、セルヴァのマチルダスカウトを「わがまま」と称している。しかし人間が嫌いだというわけではなく、期待心を寄せているなど好意的な様子が窺える。死を恐れず、生死の境を何度も彷徨うことで悟りを開いた。
役目は「死の克服」。

・語り部のポキール
鳥の頭と人間の身体をした男性。ガイアに次ぐほど難解で詩的セリフが多い。トートと同じく、いつの間にかそこにいた存在。作中では、奈落ではセーブ係になったり、店番をするなど、掴みどころのない飄々とした印象を受ける。七賢者の中では比較的出番が多い所為か、最も印象の強い人が多いと思われる。アナグマ語を流暢に喋れるだけでなく、「人の愚かさばかり見る、キミの生き様に光明はあったかい?」など、詩人であるだけに核心を突く言葉を放つ。
役目は「共に歩く事」。
個人的にLOMの中で一番好きなキャラクター。続きを読む...

2020年04月16日

繰り返されたリメイク詐欺、ファイナルファンタジーZ

FF7とは1997年、スクエアエニックスにより販売されたプレイステーション用ゲームである。当時はドット絵が主流であったゲーム業界において、CGムービ及び、メインヒロインの死亡、ファンタジーでありながらも近代化した世界観など、今後のFFシリーズにおいて土台と言えるほど革新的な要素を含んだゲームである。
本作以外にもFF7の主人公であるクラウドではなくザックスを主題とした作品であるクライシスコア、本編終了後のアドベントチルドレンなど様々な前編後編作のある非常に人気の高い作品であるが、最も有名なのは「リメイク詐欺」を繰り返した所業であろう。
私はあまりのリメイク販売の信用性のなさに、コンビニなどの幟で「予約受付中」の文字を五度見しても信じなかっただけではなく、リマスター版の発表がなされるたびにラスボスであるセフィロスとのタイマン勝負に八つ当たりで、クラウドの最終奥義である『超究武神覇斬(武器 釘バット)』で幾度となく、ボコボコにしたほどである。だってエアリス派だし…。

リメイク発表から数年ほど経過してようやく発売されたFF7であるが、その内容はミッドガル編までと、かなりケチケチしている。作成側がクラウド並みの守銭奴であるが、やはりストーリーは非常に面白いので、購入する価値は十二分にある。こんな日が来るとは、思わなかったな…。ちなみに本作にはマザコンが多い。

【クラウドとは】


クラウドは、FF7の主人公であるツンツン金髪頭の青年。チョコボ頭とよく言われている。
物語始まり当初、「何でも屋」を開業し、反神羅勢のアバランチの仕事を請け負い、魔晄炉を爆破することになるのだが、この仕事の根本には、クラウドが神羅屋敷内で宝条博士によりジェノバ細胞の実験と魔晄に浸され続けていた。意識が朦朧とした状態でありながらも、親友であり恩人であるザックスに神羅兵に逃亡する途中に提案された内容を無意識ながらに覚えていたがゆえの、「何でも屋」である。本編終了後のアドベントチルドレンでも、配達屋をしているなど「何でも屋」の精神は続行しているかもしれない。
クラウドはザックスから受け継いだ「何でも屋」の他に、初期装備であるバスターソードを装備しているが、この武器もザックスの私物であり、遺品。アドベントチルドレンでは、恐らくザックスが死亡した場所に墓標変わりとして地面に突き立てられていたが、カタージュ一味に蹴り飛ばされたりしている。ちなみに神羅一般兵であるにも関わらずソルジャーの服を持っているのかというと、ザックスのおさがりだったりする。

「興味ないね」が口癖で常にクールな態度を取っているが、過去の回想編ではソルジャーになれなかったと恥じていた割には、ティファのちょっと背伸びしたパンツに興味を示していたりなどしている他に、蜂蜜の館(風俗店)に「ここには何かある。行くぜ!」と大声を出しながらノリノリ突っ込む、女装して骨太のおなごと呼ばれる、神羅社内にあったバイクが気に入ったのか、借りパクしている。
クラウドのキャラのブレが激しいが、これはジェノバ細胞(他者の記憶の読み取り人格を擬態する能力)による影響であり、クラウド本来の性格を端的に説明するなら、ネクラ。
しかし単純に性格が暗いだけではなく、ムッツリスケベで内向的で非常に責任感が強く、純粋な人物。そして一度決意を決めれば、とことんまでやるタチであり(怒りと恨みもあっただろうが背後からセフィロスをぶっ刺す)、真面目な側面を有している。大まかにクラウドの性格は内向的でありながらも、基本的に善良で、身寄りのない子供(デンゼル)を養うなど心優しい。
また、実年齢は21歳で成人しているが、精神崩壊し意識が朦朧としていた状態により、実質5年ほどの歳月を失っている。その点を考慮すれば、精神年齢は15、6歳程度と考えるのが妥当。肉体と精神の時間的な乖離性は、物語終盤あたりでシドにより「野菜の名前や一般常識さえ知らなかった」と言われており、ザックスと親しかったエアリスは観覧車に一緒に乗った時に「本当のクラウドに会いたい」など述べられており、幼馴染のティファ以外の仲間にも違和感を抱かれていた模様。

ニブルヘイムにいた幼少期の頃は、前述で述べた内向的な性格で、村内で人気者であったティファに憧れの感情を抱くも、子供達の輪の中に入ることができず孤立していた。しかし、母親を失ったティファをモンスターが徘徊する危険な山に入る彼女を心配して追いかけるなど大胆な行動を起こしている。山中の吊り橋から二人とも落下してモンスターに襲われることはなかったが、ティファの父親からは娘を連れ回したなどと勘違いされた。
その後ティファに星空の下、「セフィロスのようなソルジャーになりたい」と夢を語っているが、恐らく、橋から落下して数日間意識が戻らなかったティファを助けられなかったことが少し関与していると思われる。ソルジャーになりたい理由は自分の無力さが全ての原因ではなく、単純に英雄としてニブルヘイムの人たちに認められたいなどの願望があっただろうが、純粋にセフィロスに憧れていた模様。
実際、神羅屋敷にこもり本を読み漁って実母がジェノバだと勘違いし、村人を惨殺するだけでなく村を燃やすなどの残虐な行為を行ったセフィロスに対して、「憧れていたのに」と失望した言葉を発している。
ちなみにセフィロスはクライシスコア及びニブルヘイムでの村人惨殺事件前は、宝条が父親とは思えないほど理想の上司で、一般兵のクラウドに対して乗り物酔いする彼に心配する、「故郷に戻ったのだろう? 家に帰ったらどうだ」などと、肉体的に強いだけじゃなく性格の方もできた人物であった。全部宝条が悪いんだよ、宝条が。

実はセフィロスが狂った理由は、ニブルヘイムの山にある魔晄炉の隠された場所にあったモンスター製造機を見て、自分は実はモンスターではないかと疑いを持ち、屋敷内でジェノバを古代種として扱われていた誤った内容が含まれたガスト博士の資料を見、昔から「自分は他の人間と違っていた」と述べているが、これはセフィロスが古代種などではなく、地球の外敵といっても過言ではないジェノバの特性の1つ、リユニオンなる悪影響である。

リユニオンとは再集結の意味を持ち、バラバラになったジェノバの肉体が一か所に集うというものであり、作中でちょくちょく登場する黒マント(宝条の実験体)の人間が廃人当然になりながらも北の大空洞を目指しているなど、細胞レベルでも集合の特性がある模様。
クラウドの方もリユニオンの影響を受けており、セフィロスがクラウドの前に現れているのではなく、クラウドがジェノバの首を持つセフィロスの元に向かっていただけである。
セフィロスの出生の秘密は人工的な古代種を造ろうと、本当の母親であるルクレツィアから生まれる前にジェノバ細胞を植え付けられていた。北の大空洞でジェノバ発覚当初、仮死状態であったことから、ルクレツィアの方もほぼ不死に等しい肉体になるなど母体の方にも悪影響があった。ルクレツィアにもリユニオンの影響があるのか、自分の身体を水晶の中に封印し、自ら出られないようにしている。
正式な古代種はエアリスにのみ限られ、セフィロスの姿に擬態したジェノバライフにより彼女は殺害され、古代種は完全に絶滅している。全部宝条が悪いんだよ、宝条が。

ルクレツィアとヴィンセントのみに限らず、ガスト博士殺害など、FF7内においてあらゆる元凶といっても過言ではない宝条だが、クライシスコアではセフィロスのファンクラブ会長であることが判明。その他に物語終盤、魔晄エネルギーをセフィロスに与えるべくキャノン砲を放ったりしているなど、セフィロス本人から毛嫌いされているが、父親としての愛情があった。しかし単純に愛情といっても歪んだものであり、科学者として「自身の作品」としての感情なのかもしれない。

アバランチメンバーが魔晄炉を破壊する理由は「地球環境を考慮したため」と一見まともな活動目的を掲げる中、ティファ含め神羅に対する恨みの感情で動いていた。ティファはニブルヘイムでの惨殺事件、パレッドは妻子を殺された復讐心でアバランチを結成している。魔晄炉爆破後、ミッドガルの上部プレートの一部がタークスにより破壊され、無関係な市民を巻き込んだことをケット・シーの中の人から激怒されているが、クラウドの方はあまりそういった感情はない。
クラウドは当初仕事を依頼され魔晄炉を爆破した第三者であり(だからといって責任がないわけではない)、教会でエアリスと出会い、彼女が攫われた時は神羅に仇を成すことが目的ではなくリユニオンの影響もあっただろうが、動機そのものはエアリスを救出すること。
神羅が黒マテリアによりメテオが迫ってくる中、組織の計画を邪魔したが、そもそもセフィロスに黒マテリアを渡してしまったことによる責任感だと捉えることができる。
そして、ストーリー終盤ではエアリスが死に際で放った白マテリアの発動を阻害するセフィロスを倒すために北の大空洞の深部に向かうなど、行動原理はほぼ『誰かのため』。

責任感と自責の念が強く何かと引きずり易いクラウドであるが、「引きずり過ぎてすり減ったかな」とアドベントチルドレンで発言しているように、ある程度励ましの言葉やきっかけがあれば、自ら立ち上がる芯の強さを持つ。
その他にスマブラ参戦するなど積極的な活動をしているし、未発売であったゼノギアスの宣伝までしてくれているなど、サービス精神が豊富である。続きを読む...

2020年04月13日

少女椿

『少女椿』とは丸尾末広により執筆された漫画である。全体的な作風は、夢野久作の影響を受けている所為か、「エロ・グロ・ナンセンスが随所随所に横溢し、万華鏡のようにクルリクルリと……」といったものであり、1ページ目から閲覧注意が喚起される内容である。
ちなみに丸尾末広は、ちびまる子ちゃんに登場するキャラクターの一人、諸君私は戦争が好きだと演説する実は眼鏡を取ったら美形な丸尾くんの名前の元ネタでもある。
絵津久秋(原田浩)により自費でアニメ化されたものの、児童に対する性的虐待の内容を含んでいるだけでなく、見世物小屋が主題となっているため、地上波で放映されることはなかった。しかしアニメ内容は原作を忠実に再現しており、完成度は非常に高い。
アニメ化の他に虚飾集団廻天百眼により舞台化されるだけでなく、2016年5月、R15+指定されているものの、映画化された。
自費制作によるアニメ・舞台化、そして映画化など非常にグロテスクな内容ながらも根強いファンの多い作品である。

【内容】


時代は終戦間もない昭和13年、主人公・みどりは貧しい母親と共に生活をしていた。みどりは小学生の幼い身の上でありながら、病身である母親の治療費と生活の生計を立てるために、花売りの仕事をしていた。
父親は何かしらの理由で失踪しているが、母親亡き後、熱病に魘されるみどりの夢の中に出てくる父親はひたすらキュウリを貪り食べている姿と、みどりの不幸を呼ぶ体質が災いして、物語終盤においても『報われない』ではなく、『一巻の終わりであり救われない最後』を迎えたことから、xxxHoLiCのヒロインである両親は不幸の対象にならない九軒ひまわりよりも、その体質は相当なものだと思われる。

さて、花売りの仕事を夜な夜な行うみどりだが、その客の一人として『親切な山高帽のおじさん』と知り合うことになる。山高帽のおじさん(嵐鯉治郎)は貧しい身の上のみどりに「困ったことがあれば尋ねて来なさい」と言うも、その正体は見世物小屋である赤猫座の座長であった。

みどりは花売りの仕事だけでは母親を支えることが無理だと薄々ながら悟っていたのか、「親切にしてくれる人がいる」と喜々とした様子で帰宅し報告するも、病床の母親は体内をネズミにより食い荒らされていた。陰部からネズミが出たことから、その苦しみは相当なものであったことだろう。

父親が失踪するだけでなく母親も亡くし、完全に身寄りのなくなったみどりは鯉治郎の元へ訪れることになる。赤猫座に来訪当初、単なる客人だと思われ「嬢ちゃん、公演時間はまだ早い」と両腕が包帯塗れの男(鞭棄)に言われるも、鯉次郎の紹介でここに来たと述べた途端、態度が一変。みどりは見世物小屋に来て早々に性的虐待を受けることになるのであった。

騙される形で赤猫座の芸人の一員となったみどりであるが、彼女は容姿が美しい以外にこれといった特技はなかった。それゆえ、一応は座の一員として何らかの芸を磨かなくてはならないことになるのだが、その内容は豚や鳥の内臓を口に含むといった内容である。当然のことながら、生血が付着したナマモノであるがゆえに生理的嫌悪によって嘔吐するみどりに対して、「これぐらいで吐くようならやっていけない(鞭棄)」、「裸踊りを仕込んだ方がいい(紅悦)」など、座長のみならず冷ややかな態度を取られている。
『それつけやつけれ』なる、性行為を覗き穴で見せるなどの仕事を振り当てられることはなかったものの、雑誌の人生相談コーナーで「甘い言葉に騙されて見世物小屋の一員となりました。学校にもいっていません。これからどうしたら良いのでせう」と、頼りを送るなど精神的に結構キている描写があった。

赤猫座の中において何も出来ないみどりは、掃除・洗濯・小屋の修繕・買い出しなどの雑用を押し付けられることになる。そんな中、みどりが心の癒しとしていたのが神社内の軒下でコッソリ飼っていた子犬になるのだが、「出てきちゃダメよ。食べられちゃうからね」の言葉が皮肉にも実現することになる。
子犬と戯れた後みどりは神社から立ち去ることになるのだが、彼女の跡をつけていたのか、ポニテの女装男子であるカナブンが「みどりめ。しおらしいことを」と言いながら、犬を踏みつける形で殺害。
その後、何気ない様子で小屋に「いいものがある」とカナブンはみどりに言い、彼女のみならず座の一員全員に鍋の肉を食べさせるのだが、「よく肉を買う金があったな」との鞭棄の言葉に「買うわけないだろ、犬の肉なんか」と平然と答え、何もかも察したみどりは犬肉の入った茶碗を落とす。
「よほど苦労なさったのね」の一声に、「犬ぢゃ!犬ぢゃ!」とみどりは大声で泣くことになるのだが、このカナブン、かちかち山におけるタヌキ並みの外道である(だがしかし、子供ゆえの残虐性であり、みどりとの別れ際涙ながらに見送るなど、人の心が全くないわけではない)。

また、みどりもみどりで残酷なところがあり、雑用を押し付ける最中、ついでと言わんばかりに肉体がねじ曲がったような姿をした男性(芳一)と、四肢欠損した人たちの身体を洗うように命じられるも、その姿を目の当たりにした彼女は雑巾を芳一に投げつけながら、「ばけもの」と罵る。
当然のことながら、こればかりは完全にみどりに非があり、座の皆から折檻を受ける中、現実逃避的に「遠足にいきたい」と、小学生としては当たり前の感情をぼんやりと抱くのであった。

子犬を失い、汽車を見送ることを唯一の慰めになった不幸続きのみどりであるが、そんな彼女にも一時の束の間でありながらも、好機が訪れる。みどりが見世物小屋に入った途端、落ち目になった赤猫座であるが、西洋手品師の侏儒(小人症)の山高防を被った男性(ワンダー正光)が、新たに座に入ることになる。
まずは一芸というのか、赤猫座の全員に硝子瓶の中に入る奇術を見せる。瓶の入り口は辛うじて腕一本入るかどうかの狭さ。そうして瓶底も赤ん坊が入れる程度の狭いものであり、関節を外す、どれだけの軟体であったとしても、子供であっても非常に狭い硝子瓶の中に入ることは到底不可能である。
そしてワンダー正光は易々と硝子瓶から出、茫然とする赤猫座メンバーに反して、みどりだけが拍手を送るのだが、皆の咎めるような視線で、ハッとしたように自粛。しかしワンダー正光にとって、ロリコンの気があったのか、それともみどりの無邪気に喜ぶ姿に好感が持てたのか、彼女に親切に接するようになる。
しかしその親切心は独占欲が強くエゴ性が目立つものであり、当初はみどりの手に一瞬で花を出現させる、怪力自慢の大男(人間ポンプ赤座)に口答えしたとき、文字通りぶん回されるなどの暴行を受ける中、奇術を用いて助けたりしているが、みどりに映画のスカウトとして山高帽を被った男性が名刺を渡すも目の前でビリビリに破くなどの行動を行っている。
「私がみどりちゃんの保護者だ。ニセモノかもしれん」とのワンダー正光談であるが、そもそも見世物小屋に芸能スカウト人が来ることの不自然さがゆえの当然の反応であるが、後にみどりに対する独占欲のために殺人を犯している。

落ち目であった赤猫座がワンダー正光の瓶入りの芸で繁盛する中、何もできなかったみどりの立場が逆転していく。みどりはワンダー正光の助手(とはいっても芸のために瓶を運ぶだけ)になり、小遣いを貰って菓子を買いに行くなど多少裕福になった。
ワンダー正光による一人大繁盛の中、鯉次郎に給金の采配を取るなど事実上、座の中で実権を彼一人が握っていくことになる。鯉次郎の方も座長であるにも関わらず、ワンダー正光を「先生」と呼びへりくだった態度。客側も見世物小屋でどこにでもあるような一芸よりも、ワンダー正光による瓶入りを楽しみにしているのか、特にみどりを好いていた鞭棄は面白くなかった模様。
鞭棄は飴を食べるみどりの関心を寄せるためか謝罪し、「本当はお前が好きなんだ」と言うも、みどりは彼を全く見ておらず無関心の態度であった。
そして彼が「面白くない。みどりは俺のもんだ」と思う中、ふと地面を見るとそこには蟻が集う腕が落ちていた。鞭棄が同様する中、蟻地獄に落ち「誰か助けてくれ」と叫ぶとそこには自分と同じ姿をしながらも両腕を持つ存在(ワンダー正光)がいた。
助かりたいなら腕を伸ばせと言われる中、両腕を持つ自分そっくりの姿をした正体が誰なのか分かった鞭棄であるが、「お前はろくでもない奴だ。死ね」と言われ、後日、座の人から泥を食い窒息死した姿で発見される。
皆がなぜ泥を食ったのか、そもそも両腕がないのにどうして変死したのか疑問に思う中、みどりはその場から逃走。すぐさまワンダー正光が追いかけ、泥を口にねじ込む光景を目撃したことを見破られ、鞭棄に呪われると恐怖し、真夜中、魘される。みどりは「この人はいい人なのか疑問」に思うのであった。
償いかどうか不明だが、ワンダー正光の手によって葬儀の手配がなされる。この時、鞭棄の墓標が描写されているのだが、年齢は三十二歳と発覚。要はツンデレロリコンであった。

葬儀後、みどりの元に映画のスカウト人が訪れ追い返すも、こっそり名刺の破片を集めて布団の中でうずくまるみどり。仕事の準備だと呼びかけるワンダー正光に「頭が痛い」と言うものの仮病であり、彼が布団をめくるとそこにいるのは反抗的な目で睨み付けるみどりの姿があった。「自分の言うことが聞けないならじっとしていろ」と言われ、黒い布によって拘束される破目になるみどりだが、感情が高ぶったワンダー正光が見世物の仕事に出るも、客の煽りと暴言で瓶入りの芸を披露できず、怒りの感情の赴くまま、小屋に来た客人の肉体を思うがままに、顔を増やす・急激に老わせる・体をあらぬ方向に捻じ曲げるなどの大暴れをした。

どうやら、奇術……というより彼が使う術の正体は、ほぼ失われた幻術の継承者であり、実際に瓶などの中に入っていなかった。
物語中盤、みどりから「どうして瓶の中に入れるの?」と尋ねられたとき、

「それはね……
『夜はおどろくべき事あり
昼は飛びきたる矢あり
幽暗(くらき)にはあゆむえやみあり
日午(ひる)にはそこなう激しき疫(やまい)あり
されど汝畏るることあらじ』
……というわけさ。
分かった?」

と説明され、みどりは即答で「分かった」と述べているが、絶対分かっていない。
恐らく、『世の中には日常のすぐそこには知らなくていい事があるけど、怯える必要はない』的なことを言っているのだろうが、私にも分からない。幻術の理屈と理解が。

大暴れ後、鼻血を出して倒れることになるワンダー正光であるが、どういう心境の変化か小屋を辞めることを申し出る。鯉次郎がまたしてもへりくだった態度で「謝りますから」と述べるも、「興が削がれた」の一点張りで意見が変わることはなかった。
鯉次郎は、赤猫座がワンダー正光一人によって大儲けが出来ていると理解していたのだろう。以前と同じように落ちぶれることを悟り、金を持ち出して逃走。
鯉次郎逃走後、カナブンは女装することに意味がないと悟ったのか長く伸ばしていた髪の毛を泣きながら切る、紅悦は金持ちの男を見つける、人間ポンプ赤座は他の見世物小屋に誘われていたのか他の座員も紹介するなど、それぞれの道を見出す。
肝心のみどりとワンダー正光は一緒に行動することになり、どこに行くのか名言されていなかったが、鯉次郎が座から金を持って逃亡する直前、「もうどこにも行きたくない」と述べ、みどりに幻術で故郷である浅草の夢を見せていたことから、みどりの家に帰るはずだったのではないかと予想される。
ちなみに夢の内容は、父親の失踪・母親の死亡などがなかったことになっていたかのように、みどりにとって都合の良い夢の内容であった。「遠足に行きたい」と折檻を受ける中、密に願っていた内容を叶えるためか、父親が遠足用のおやつを買っていた。親子三人、川の字で寝り、ボンボン時計の音で幻術からみどりは目が覚める。

ワンダー正光と同行することになったみどりは座の皆と快く別れ、バス停に到着。バスの到達までまだ時間があるから弁当を買いにいった彼であるが、帰り道、殺人現場に遭遇。口封じのため腹をナイフで刺され、ワンダー正光は恐らくここで死亡したと思われる。

対して、バス停で彼の帰りを待っていたみどりは戻りが遅すぎるワンダー正光の身を案じて、街中を探し回る。しかし幾ら探し回れども、三度ほどくしゃみをする謎の荷物を背負った男性と通りすがるも肝心のワンダー正光に再会することはなく、途方に暮れるみどりの目の前(もしくは故郷の夢を見せた悪影響か)に、鞭棄を含めた赤猫座のメンバーと、そうして両親の幻影が現れる。
幻影の彼らは、まるで「一生幸せになれないみどり」を嘲笑するかのように存在しており、その事実を認めたくなかった彼女は、棒切れを片手に幻影に殴りかかるも空振り。そうして、桜の花弁と共に幻影は消え去り、その章のタイトル通り、坂口安吾の短編小説である「桜の花の満開の下」の秘密――彼女は完全なる天涯孤独になり、その現状と真相を骨の髄まで悟ったのか大声で泣くことになるのであった。

少女椿のラストでは、大量に降り積もった桜の花弁の中から福助が出て来て、

「これにて『少女椿』一巻の終わりでございます。
ではみどりちゃんに幸多からん事 せつに祈りつつ
御免なさひまし!」

との、皮肉すぎる言葉で締めくくられている。続きを読む...

2020年04月09日

ぼくの地球を守って

ぼくの地球を守って


『ぼくの地球を守って』とは、1986年〜1994年の間、花とゆめで連載された日渡早紀により執筆された漫画である。全体的な作風としては、SF及び前世記憶(オカルト)を取り入れながら、少女漫画らしく恋愛要素を取り入れた作品。主要人物の前世たちの奇妙な共通点として、植物名(ラテン語ではなく日本語)が本名として取り入れられている。

【地球(現世)での出来事】


冒頭、主人公兼ヒロインである坂口亜梨子は、小椋迅八と錦織一成の不穏な会話(二人からすれば同じ夢を見た内容の再現)を偶然にも聞いてしまうことになる。亜梨子は小椋と錦織の会話から、ソッチ系(♂)の関係だと勘違いしていたが、小椋の前世は男(ギョクラン)であり、錦織は女性(エンジュ)であった為、あらぬ誤解を招いてしまったのである。
後日、夢の再現を目撃された事と勘違いを解くため、「異星人であり、地球を監視する科学者」であったと前世の記憶を説明する。前世の記憶の人間は地球人とは異なり、テレパシーなどの能力、キチェ・サージャリアン(現神人や天女に近い存在)、月を拠点として基地を構えているが観測が困難なほど小型などの相違点がある。

亜梨子は近所に住む小林倫を両親不在のため一時期預かることになる。亜梨子は幼い頃から植物の気持ちが分かるといった異能を有しており、周囲からは単なる空想癖だと思われていたものの、弟からは単なる妄想だとは思われていなかった。その証左に学校で亜梨子は音楽部に所属していたが、彼女が歌う度に目に見える形で、亜梨子のいる部室付近の植物だけ目に見える形で異常な成長をしていた。左記の理由から亜梨子の歌声と植物の気持ちが分かるといった発言は虚実なものではなかったのである。
倫を預かった亜梨子であるが、倫が植物をベランダから落とすといったイタズラを行った際、感情的になり彼の頬を叩く。故意ではなかったものの、倫は叩かれた衝撃でベランダから落下することになるのだが、奇跡的にマンション下に植えられた植物により、意識不明になったものの、肉体の方は数日で退院できる程度の軽傷で済んでいるが、これは亜梨子の前世であるモクレンが助けたことによる結果である(地球の大気になりたいとの口癖が関係しているものと思われる)。
亜梨子の前世であるモクレンに見えないながらも倫に接触したのが原因か、軽傷に反するように意識不明になった要因は、倫(シオン)にとって最も因縁深い人物であり、意識覚醒してから、亜梨子の動向が分かるなど、明らかにテレパシーによる能力と、そうして前世の記憶を取り戻すようになった。
退院後の倫は、亜梨子に結婚を申し出る一方、裏面では無邪気な子供とは思えないほどの乱暴的な言動を行うようになる。ヤクザの息子と接触し、東京タワーを改造するように強請るなどの行動を秘密裏に計画。
倫は亜梨子と一緒に、前世記憶を持つメンバーと集会を行い、倫の本当の前世はシオンであるのにシュウカイドウと騙って、会合に参加することになる。ちなみにシュウカイドウを前世に持つ人物は笠間春彦であり、倫と春彦の姿は前世の姿に丁度入れ替わったような状態になっていた為、長い間このウソがバレることはなかった。ちなみに倫は春彦(シュウカイドウ)に罪悪感を刺激し弱みを握っているため、入れ替わりについて春彦の口から洩れることはなかった。倫(シオン)と春彦(シュウカイドウ)の関係性は、事実上、被害者と加害者のそれであり、春彦は自身が行った悪行ではないにしろ、虚弱体質も合わさって罪悪感に蝕まれていくことになる。

徐々に倫の性格が前世であるシオンに変貌していく間、同様に亜梨子もモクレンの記憶を見るようになり、徐々にその同調が強くなっていく。
その中で、シュウカイドウであると偽り続けた倫であるが、亜梨子は不信感を覚え、倫は誰であるのかと尋ね、ショックゆえか失踪することになる。失踪した倫はホームレスに世話になる一方、薬師丸未来路(地球人であり前世記憶がないながらも超能力が使える)とドンパチし、重要文化財を焼失させた。
その後、パシリにしていた田村(晴彦の恩人であり、ヤクザの息子の世話係)に亜梨子を誘拐して、倫のところへ連れていくよう指示するが、久方振りに現れた倫は「植物を枯らす歌を記録した電波を流すため東京タワーを改造すること」が目的であるのに対して、相反して「東京タワーを爆破する」など矛盾した言動を行う。
亜梨子はすでに月にある基地での内容を把握しているために、倫の精神状態を詳細に把握。
彼の意識による矛盾したせめぎ合いは、シオンの「地球上の植物を枯らしたい強烈な願い」と、倫の「夢の中で見ていたシオンの不気味な姿に嫌悪感を抱き、その目的を阻止したい」と言う、不均衡な状態であった。
亜梨子は倫の内面を把握した上で、「東京タワーを爆破する」ことを優先する。前世で婚約者であったシオンよりも、倫を尊重した上での判断したのである。
その後、倫は前世記憶を持つ人たちの中でも、特に強烈な人生を送ったシオンの前世記憶に、夜中、魘されることはありながらも意識が前世側に引っ張られることはなく、平穏な日常を送り、物語冒頭で結婚したいと述べていたように、正式に亜梨子と婚約を結ぶことになる。彼女の性癖がヤバいとはいってはいけない。恐らくシオンとモクレンのすれ違った関係性のやり直しの一環でもあるのだろう。


【月(前世)での出来事】



地球よりも高度な文明技術を有した種族。ギョクラン曰く、地球人の文明が未発達で野蛮なのは、植物の声を聞き取ることのできる存在がいないなどといった旨の発言をしている(しかし、彼はシュウカイドウ同様モクレンに片思いしており、好意を得るため言った節があり、本気かどうかは不明)。
異星人とホモサピエンスとの大きな違いは、個々人により超能力の種類とその強さは異なるものの、多くの人間が保有している点である。その他に大型のネコ・キャー(超能力あり)や、作中での重要部分となるキチェ・サージャリアン(植物の気持ちが分かる。聖歌を歌うと植物が急成長する)などが登場する。

月基地で地球を観測するために、モクレン・シオン・シュウカイドウ・ギョクラン・エンジュ・シュスラン・ヒイラギといった、考古学者・エンジニア・医学者など優秀な人材が集った施設内であるが、職務に真っ当なのは意外なことに人との軋轢を生み易いシオンである。モクレンが「地球ではみんなと同じ植物の名前がある」などと呑気に宣った際は、陰ながら憤慨し、真面目に仕事をしているのをバカらしく思ったほどである。ちなみにシオンは地球にこっそり探査機を用いて食料を調達する際に入手したのか、漫画好きである。

長期間、男女入り混じった7名(男:4 女:3)であるが、真面目に職務を全うしていないなどの一部問題があり順風満帆ではないながらも、仕事の方は順調に進んでいた。しかし、事態は一変し、月基地にいる7名の男女を残して、母星は戦争によって滅亡することになる。月基地の皆が戦火に巻き込まれなかったのは、月が母星より遠く離れた辺境の場所であった為、抗争に巻き込まれることはなかった。
帰るべき場所と、事実ともに最後の人類となってしまった彼・彼女らは精神的に追い詰められていくことになる。モクレンは大切な人を亡くしたショックゆえ頻繁に聖歌を歌うようになり、施設の大半を駄目にして皆が除草駆除する羽目になり、特に女性陣(ヒイラギ・シュスラン)のヘイトが募る結果となった。殊にヘイトを集める要因となったのは、モクレンに片恋慕していた基地のリーダーであるギョクランが、彼女一人によるやらかしなのに皆で手伝うよう指示していたのも関係している。

その後、地球へ降りるかどうか可決が行われるのだが、結構には至らず、7名は月基地に滞在し続けることになる。惑星が滅亡し伝染病が発生する以前、何かとシオンに接していたモクレンであるが、物語終盤になる頃にはシオンはモクレンのことを信仰の対象である聖女じみたキチェ・サージャリアンではなく、一人の女性としてみていた。シオンはモクレンに「愛している」と告白をし夫婦仲になるものの、相思相愛に近い関係であるにも関わらず、二人はすれ違った状態である。

キチェ・サージャリアンは純潔を失うと額の印(仏様の白毫のようなもの)が失われるのに対してモクレンは未だ有しており、このことに関して彼女は本気でシオンに愛されていなかったと思っていた。対してシオンの方は夫婦だと告げ、癒されながらも半ば強引な関係を迫ったため、「彼女に本気で愛されていない」と思い込んでいた。
そもそもシオンは生まれからかなり複雑な環境で育っており、自己防衛のためとは言え生まれつき強烈な力を持った超能力で殺人を犯した経緯があり、孤児施設で引き取られた後、ラズロから「家族ごっこをしよう」と言われ、巨大なネコ・キャーと共に生活していくにつれ、荒々しい気性から徐々に落ち着いていくも、キャーと共にラズロは悪天候の中、シオンのプレゼントを買いに行くも交通事故により不運にも死亡。彼らと過ごした期間は3か月未満と非常に短期であり、その上、ギョクランに対してコンプレックスとライバル視を抱いていた。
シオンとモクレンの夫婦仲に至る原因にギョクランが関わっているため、そのすれ違いは相当なものだったと思われる。

やがて、基地内に伝染病が致命的なレベルで蔓延ることになるのだが、最初にギョクラン・シュスランと順に、次々に死亡していくことになる。
特効薬が出来たのはシュウカイドウ・モクレン・シオンを残した3名になった頃であり、モクレンに恋愛感情を抱いていたシュウカイドウは夫婦になったシオンへの妬みとすでに伝染病を発症していた精神と肉体的極限下、特効薬をシオンにのみ打ち、モクレンには別の薬を注射していた。
シュウカイドウ死後、モクレンとシオンの二人は基地内で生活していくことになるのだが、そのうちに特効薬を投与されていないモクレンは伝染病で死亡。モクレンは死に際、「自殺したら輪廻転生できないから、自殺しないでくれ」と遺言を残すも、この言葉が更にシオンを苦しめる枷となる。

シオン以外誰もいなくなった基地内で地球の観測を行っていたが、そのうち観測映像から地球内で戦争が勃発している事実を目の当たりにする。幼少期の紛争、そうして母星が戦争により滅亡した経歴を持つシオンとしては地球人の愚かな行為を到底許すことができなかった。
そこでモクレンから聞き出していた植物を枯らす黒聖歌のことを思い出し、徐々に狂気により正気を失いながらある装置を作り上げていた。シオンは本人以外誰もいなくなった基地内で九年もの間、モクレンの呪いじみた遺言通り生き続けることになるのだが、この要因が他の転生者とは異なり、倫だけが高校生ではなく子供である時差を生じさせていたのである。
狂気に支配されながら亡骸を補完するコールドスリープ用の棺桶に、手向けの花として時折墓参りに訪れていたがこの様子を、前世記憶を見ていた倫いわく、花束を持ちながらシオンの微笑む様子が薄気味悪く見えていた。
狂気に支配されていた自殺しようにもできないシオンにそういった感慨を抱くのは仕方のないことかもしれないが、妄執じみた執念で装置を完成させたのだが、その装置はモクレンが歌っていた聖歌の音声を元に立体映像だった(歌はギョクランの提案で録音されていたもの)。
彼が天才的なエンジニアだったことが幸いしてか、少ない資源で完成した映像装置はシオンが思わず、「ここにいたのか、モクレン」と、涙せずにはいられないほど美しいものであった。モクレンの歌っている聖歌は植物を枯らす黒聖歌などではなく、散々基地メンバーに除草の迷惑をかけた繁栄のものであり、シオンはその後まもなくモクレンの歌によって栄えた植物の中で息絶え、絶えず歌唱する装置により、月の基地は植物の急成長によって完全に機能が停止し、施設は廃墟当然となっていたのであった。続きを読む...

2020年04月08日

ミスミソウ

鬱くしくも儚い漫画、ミスミソウ


『ミスミソウ』とは、押切蓮介により執筆された漫画。キャッチフレーズは「精神破壊(メンチサイド)ホラー」。

漫画の舞台となる場所はゲーセンをはじめとした娯楽のない過疎化した雪深い田舎町で、主人公「野咲春花」が父親の転勤に伴い転校することになる。転入当初、容姿共に美しかった彼女はすぐさまクラスのリーダー格である、美容師を夢見る小黒妙子と良好な関係を築いていたが、とある些細な出来事がきっかけで、春花を目の敵にして周囲のクラスメイトを煽動させ、酷いイジメに発展いき、放火事件でほとんどの家族を失う事になる。
春花は当初、「いじめられてまで学校に行くものではない」と、転校前イジメを受けていた妹の件もあって心配していたのだが、彼女は「卒業までもうすぐだから」と、心配させまいと気丈に振舞っていた。
イジメが過激化するにつれて、写真撮影が趣味である相場晄と交流を重ね、彼を頼りにしていく。本作のタイトルであるミスミソウだが、本作舞台である深い雪の中でも懸命に咲き、花言葉である「はにかみや」が相場いわく、春花にピッタリと言われ、その言葉にはにかむ彼女であるが……。

【大まかな流れ】


主人公であり、家族を放火により殺されたことを発端に復讐を開始する。
彼女は佐山流美(実質単独実行犯)の「人間バーべーキュー」の一言で、恐らく、放火事件にクラスメイトが関与していることに勘付いたものと思われる。

放火事件前、父親が学校にイジメの件について直訴を行うも、担任の先生は「もうすぐ卒業だから事を荒げないでください」とかなり冷たい対応が行われているだけでなく、春花の父親を廊下で上履きにつけた画鋲で蹴り飛ばすなど、異常な状況に直面する。

この件をキッカケに父親の説得により、春花は登校拒否するも、春花より前に小黒をはじめにしたクラスメイトにイジメを受けていた流美が、彼女が再登校するよう家に訪問。流美は「あなたが来ないと自分がイジメられる」と訴えるのだが、春花は応じることはなく、翌日学校で小黒により、長かった髪の毛をざんばらに切られることになる。流美は帰宅後、小黒ではなく春花に非常に強い逆恨みの感情を抱くことになり、ある意味では流美特有のドス黒い粘着性の矛先となってしまった。

流美の粘着的な性格は春花に向けられる前、クラスの中心的人物である小黒にも向けられていた。その執着心は度を越えたものであり、小黒の映った写真を所持しているだけでなく、どこか崇拝していたような様子さえ見せているが、小黒本人は相場と共に流美の存在を非常に嫌っている。
春花が復讐心を抱く根底になった事件前、流美はこれ以上イジメられたくないのか、「春花の家を放火する」との宣言を小黒にしているが、小黒は必死な流美に取り合わず「頑張って。応援しているから」と適当な態度で応じ、崇拝する彼女に期待を持たれたと勘違いした流美は本当に春花の自宅にガソリンを撒いて放火することになる。
しかし、放火してしまう事態になってしまったが、流美は本気で決行するつもりはなく、彼女の本当の目的は「放火」を建前にしているが、本音では「脅し(春花が学校に戻りイジメの標的から外れる)」が、本音だったのではないかと推測される。これは小黒により応援された地、一目置かれていると思い、自分がこれほどの凶行を実行可能といった力の誇示の双方の感情が入り混じっているのではないかと思われる。
一方、春花の母親を殺害した久賀は精神的に追い詰められた流美とは違って、愉快犯としての性質が強い。

春花の自宅に流美をはじめとした、橘吉絵・加藤理佐子・久賀秀利・真宮裕明・池川努らが乗り込んでいるとは知らず、父親から借りたカメラを使って、相場と共に自然の写真撮影を行っていた。春花はこの時点では唯一の味方だと思っていた相場との距離感が縮まり、陰ながら応援してくれている人物がいることに感謝しながらも帰宅することになるのだが、放火に怯え春花の自宅の方向から逃亡して来た加藤と三島に遭遇。春花はそのことを不審に思いながらも、嫌な予感を覚えながら帰宅し、轟轟と燃え上がる家を目撃することになる。
家の中には両親と妹がおり、半狂乱になる春花を押しのけて、果敢にも相場が火災現場に入り、妹を救出する。両親の方は助からなかったが、瀕死の重傷になるほどの大怪我(具体的には全身の皮膚が黒く焼き爛れている)を負いながらも、辛うじて生存している状態であった。

放火事件後、妹の祥子は病院に。春花は祖父の家に。
春花は毎日、意識の目覚めない全身に包帯を巻かれた――助かったとしても、今後の生活に確実に支障が出るであろう、妹の回復を願って頻繁に見舞いに行くことになる。
その内、春花にとってはイジメが続く過酷な環境に戻り、そこで通り過ぎ様、流美から作中一番の問題発言である、

「バーベキューの焼き加減はどうだった」

と、悪意たっぷりの発言を受けることになる。

その瞬間、春花の表情が豹変し、自分が優位な立場であり脅かす存在なぞいないと横柄に振舞っていたのだが、その表情は流美が思わず怯え、恐怖心を抱かせるほど。流美は即座に(計画の首謀者であるためか)、春花が犯人に気付いていると思い、復讐の対象になることを察知。
流美は放火事件の発端となった小黒に「助けて欲しい」との連絡を入れるが、「そんなことは知ったこっちゃない」と突き放した言動をしつつも、内心では転入当初、良好な仲を築いていた春花を相場に取られたくない些細な嫉妬心でイジメを煽動してしまったこと、そうして流美の「放火」を本気にせず、彼女の家族を殺める要因になってしまったことを悔いていた。

橘・加藤・三島の火災事件の関係者は自己保身か、それとも家族が燃え上がる様子に優越感を抱いたのか、それとも両方なのか、再登校をはじめた春花を校舎裏のゴミ捨て場に突き落としてガソリンを手に、彼女にここで自殺するよう灯油をぶちまける。
その際、橘は春花の家族が死ぬ様子を仄暗い興奮と共に語るが、その内容は人格破綻者そのもの。春花の大事な家族の死んでいく様子が「滑稽だった」と述べたことがキッカケとなり、彼女は本格的に復讐者として覚醒していくことになる。眼球に鋭利なものを突き刺す、鉄パイプで滅多打ちなどの因果応報自業自得による報復を連中に受ける中、加藤は「やったのは久賀」と命乞いによる情報提供するも容赦なく殺され、ゴミ捨て場にあった冷蔵庫の中に三人纏めて押し込まれ、証拠隠滅される。

次いで、復讐の対象の久賀は学校からの下校途中、ナイフを片手に襲い掛かってくる春花と遭遇することになる。春花は久賀の口を包丁で切り裂き、助けを呼ぶ声を封じた。結果的に春花は久賀を直接に仕留めることはできなかったが、追い詰めてくる彼女から逃亡すべく山中に入ったのは良いものの、『冷静な状態ではなかった・深い雪が災い』して、井戸の中に落ちることになる。春花は自力では脱出不可能なその井戸の中まで追い詰めることはなく、一命をとりとめたと勘違いした久賀であるが、そこは通常、人が立ち寄らない場所であり、声が出せない状況も合わさって、餓死。
久賀の春花に対する態度は、流美ほどではないにしろ小黒を慕い、髪まで染めてもらっていたが(小黒からすれば気まぐれ)、春花が転校してきてから優しかった小黒が変わっていく様子を春花に責任転嫁していた。

久賀の失踪に伴い放火事件に加わっていた真宮と池川は、いち早く春花の仕業だと気付き、彼女を抹殺することにする。
池川は真宮に改造したボウガンなどを貸し与え、春花を追い詰めるも彼女を狙ったボウガンが真宮の脳にあたりに当たり、中身が露出。真宮は春花に劣情の感情を抱きながら、イジメられる前からその美しさによる影響が周囲に対して毒であると認識しながらも、相場と仲良くなっていく様子に嫉妬していた。頭の中身が溢れた影響で池川を春花だと誤認し、彼の行動を阻害する。
池川は春花の手によってナイフで刺され、奪われたボウガンで背中を刺される。凍った池に逃げたものの、池の表面が体重により割れて、溺死する結果になった。


物語終盤、春花は小黒と出会うことになる。小黒は日々重責のように募っていく罪悪感と共にろくに学校に行っていなかったが、ある日、外出したところ春花と遭遇。春花は小黒が明確な復讐対象と未判明であるがゆえ報復の対象としなかったのか不明だが、久賀のようにいきなり襲い掛かることなく、落ち着いて話をすることになる。
その会話の中で転入してから両者の仲が良好であったこと、春花にあこがれていたことなどを述べ、小黒は心からの謝罪をした。その気持ちが伝わったのか、春花は小黒には復讐行為はしなかったが、二人が別れた直後、流美が小黒の前に出現。
流美は包丁を所持しており、小黒の夢であった美容師の夢を断つように指の数本を切断する。死闘の中、「キャ!って言った! あの小黒がキャっていった!」と喜ぶ流美に、小黒は「久賀もあんたも腰巾着で気持ち悪い!」と徹底的に拒絶と嫌悪感をあらわにした言葉を向け、素手の状態で健闘したものの、腹を刺されて死亡。死体は降り積もる雪に隠れる形で数日間、発見されることはなかったが、幸いなのは道路の真ん中で倒れ伏したことから、これ以上、肉体が傷つくことはなかった点であろう。


物語終盤、行方不明者多数の春花のクラスに大勢の子供達の両親が詰め寄ることになる。その親も子供と同等(もしくは橘などの異常性を持った人間を産み出した点においてはそれ以上かもしれない)の存在であり、モンペやアル中などの親がいる。
行方不明者が多く出たクラスの担当教師である南京子は、感情的に振舞う親たちに、過去この学校出身でいじめられていた過去を暴かれ、狂乱することになる。事なかれ主義の友達先生だった彼女であるが、南としての目的はどのような形であれ、この学校を『卒業』することによって、過去の自分に折り合いをつけて新しい人生をスタートさせることが目的であった。
しかしその望みが絶たれるだけでなく、思い出したくもない過去が公然に暴露され、狂乱状態になった彼女は詰め寄った保護者の目を潰し、学校から逃亡。地面に倒れ伏したところで、除雪車に轢かれ、無残な死体となった。


小黒を殺した流美は春花の妹がいる病院に、ガソリンを片手に侵入。流美は春花の容姿を「気持ち悪い」といいながら、病室にガソリンを撒き、春花が来るまで待機。
彼女が現れた瞬間、まるで全ての責任を転嫁させるように「死んで詫びろ!」と罵倒。だがその時、意識があるのか不明だが、重体状態であった妹が起き上がり、流美を指さすなどの行動を起こした。妹の容態急変に人が集まってくることを悟った流美はすかさず逃亡。
その後、雪山で春花に放火の真相を話すも、とある事情によって相場と敵対することになった春花の攻撃の肉盾となり、死亡した。


上記で、相場と敵対することになると述べた相場であるが、彼はこの作中において、流美に次ぐほどの異常人物である。
そもそも彼は母元から離れて祖母の元である舞台で暮らしているのだが、それにはとある事情があった。
相場の元々の家庭環境は母親が父親からDVを受けることで夫婦仲を繋ぎ止めていたが、母親が虐待されている状況に耐えきれなくなった相場が、父親をカッターで切りつけ、離婚のキッカケとなった。息子としては母親を、暴力を振るう父親から守ったのだが、母親から出された言葉は彼が予想していたものとは正反対なものであり、暴力面は父親から、精神の歪みは母親から受け継ぐことになる。祖母の元へ預けられるまでの間、母親に幾度となく暴力を繰り返しており、いびつな精神面がより強固なものになっていった。
自分の手には負えないと判断した母親は祖母の元(故郷)へ預けるのだが、相場に対する態度はたとえ電話越しであったとしても、恐怖をあらわにして接しないほど。
相当歪んだ精神を有した相場であるが、その本性は小黒から見抜かれており、流美以上に嫌っていたかもしれない。
母親から引き離された彼であるが、その精神面が矯正されることなどなく、祖母にまで暴力を振るうだけでなく、「一緒に東京で暮らそう」と提案した相場の提案を拒否し、「おじいちゃんと暮らす」と述べた春花に、彼女の祖父と話し合いをすると言いながら、実際行われたのは一方的な暴力で、老体を病院送りにしたほどである。相場のこうした精神的な歪みは、自分自身から離れられないか弱い存在にのみ発揮され、共依存の関係を望んでいるものだと思われる。
しかし、相場の上記の悪行はまだ優しいもので、春花のイジメ行為に加担することなどなかったものの、吐き気を催す邪悪として筆頭に挙げられる悪行は、火災現場に乗り込み妹を救ったときにある。
表面上、相場の行動は果敢だと思わしきものであるが、裏面にあるのは春花の妹を庇うように身を挺して守る父親の様子を写真撮影していた点である。しかも写真は一、二枚程度ではなく、激写さえされていたのだ。
流美との一戦でカバンの中身が暴かれ、その写真を目撃した春花は復讐者として更に感情を募らせ、彼女は偶発的に拾った真宮のボウガンを拾い、弱った春花を被写体にしようとしていたカメラごと頭部を矢で貫かれた。
全ての復讐を終えた春花であるが、既に彼女は満身創痍の状態である。
作中では明確に描写されていないが、春花は深い雪山で死亡したものだと思われる。

ミスミソウの完全版の上下巻の最後では、春花の祖父が墓参りに新幹線で訪れるのであるが、すべての家族を失ったといっても過言ではない祖父は懺悔の言葉を口にする。その時、目の前の相席に幻影か幽霊なのか、春花が現れるなど、多少、救いのあるエンドになっている。続きを読む...

2020年04月06日

度し難い魅力、ボンドルド卿について

ボンドルド卿とは


ボンドルドとは、つくしあきひとによる漫画及びアニメ、劇場版『深き魂の黎明』に登場する、探窟家兼研究者である。特徴的なスーツと紫色のフルフェイスマスクを着用している。
口癖は「おやおやおやおや」、「素晴らしい」。

ボンドルドの性格は紳士的で温厚、非常にポジティヴであり、孤児を引き取る慈善家。前人未踏のアビス内部にて驚異的なスピードで開拓し、アビス外の人に害をなす虫の被害を未然に防ぐなど、偉人でもある。未解明であるアビスの最高位の探窟家の証である白笛を所持しており、笛のデザインは恋人繋ぎ、もしくは両手を祈ったような形をしているが、アビス第一階層で頻繁に発見される祈りのポーズをした数千年前の大量の骸骨と関係があるのか不明。
血は薄いが愛娘であるプルシェカいわく「最高のパパ」であり、ここまでの説明を聞いた限りでは非常にできた人格者のようである。
見た目のデザイン・声の良さと上記で説明した性格ゆえ、読者から大変親しまれているキャラクターである。
その証拠としてボンドルドには様々な綽名が付けられており、

  • 汚いアヴィケブロン/汚いコーヒー豆
  • 子供達の愛を背負って戦う男
  • 倫理感ゆるキャラ
  • ワクワクさんオルタ
  • 憧れが止まらないやべー奴/黎明のやべー奴/エレベータのやべー奴
  • アビスでさえ目を逸らした男
  • 一人ダークソール
  • 人権すり抜けバグ
  • わくわくは止まらないがお前は止まれ


などが、挙げられる。

綽名の時点で十分に察したと思われるが、引き取った孤児を「あれは人間としての運用は考えておりませんので」と発言し、ナナチの親友であるミーティを慣れ果てにした本人であり、上昇負荷(降りる際は問題ないが上がる際は人間性を消失するアビス特有の呪いであり祝福)の実験で、幾多の子供達を犠牲にした人物である。
だが、本人には悪意はなく本物の愛情を以て接しており100パーセントの善意で慣れ果てになった犠牲者たる子供達に逐一お礼を述べるだけでなく、一人ひとりの名前と将来の夢さえも覚えている度し難い存在である。
なお、孤児をアビスのイドフロント(人が生きて戻ってこられる限界地)に誘う際、一応ではあるものの、謎の多いアビスの実験に「勇気ある若者」として実験に参加の有無について、選択肢は与えている。だが、ボンドルドの誘いは貧困層の子供達にその悪辣な状況から逃れると希望を煽り、騙しているといっても過言ではない。
そして非人道的な実験を受ける間際になって、慣れ果てになる上昇負荷の説明をするなど、筋金入りのロクデナシを超えた、偽りなき善意で人をためらいなく消費できる名誉終身ド畜生である。ところでパパ棒って何ですか?

……一応、名誉にならないだろうがボンドルドについて断っておくならば、そもそもメイドインアビスにおいて、まともな人物はほとんど存在しない。
主人公のリコにしてもナナチを取り戻すため対価(肉体の一部)を要求された際、身の危険ではなく、今後アビス深層を旅する過程において、どの部位を差し出したらいいのかを即座に考えるだけでなく、ボンドルドに「アビスにワクワクするその気持ちはわかるよ」と共感を示すなど、どう考えても普通ではない上、ボンドルドに「あなたは存外こちら側かもしれませんね」と、リコを評価すると同時に自分の異常性を自覚しているような節さえある。
その他に、レグの砲火により消えたミーティを完全復元させ、不死になった身体を良いことに、永久機関の食糧として彼女をチュルチュルしているベラフや、生き残るための最善策を選んだがゆえ、人として最悪な結末に至った元凶であるワズキャンなど、度し難い存在は多数。

さて、メイドインアビス劇場版『深き魂の黎明』でのボンドルド卿の活躍を説明していくと、冒頭から祈手(アンビバレンス)と呼ばれる、アビスの遺物である「精神隷属機(ゾアホリック)」によってボンドルドの洗脳された存在にアビス四層の花園で出会う。どこから隷属体を調達しているのか不明だが、ボンドルドは地上では指名手配犯扱いであり、彼を殺害しに来た人物ではないかと推測される。祈手の正確な数は不明だが、ナナチが手下を「事実上、殺すのは不可能」と述べていることから、相当なストックがある模様。

非常に綺麗な花園だが、そこから聞こえてくるのは、

「フフ……」「だれ?」「フフ……」

といった不気味でか細い声。
声の正体は、ほとんどミイラのようになったクオンガタリの苗床にされた冒険者が出しているものである。ちなみにクオンガタリとは植物の葉に擬態した虫であり、苗床になった人間を可能な限り生かすために、成虫が口内から侵入し、栄養源として苗床の胃を満たす。
祈手はレグにクオンガタリのレクチャーを親切に行った後、花園に大量発生している虫を火炎放射器で徹底的に駆除した。

その後、レグ一行はアビス深層を突き進み、イドフロントに到達。事前から、リコたちが来ることを事前に知っていたボンドルドは、娘であるプルシェカに部屋に案内をするよう指示を出している。
ボンドルドのやべーところを知っているナナチ(ミーティの慣れ果て後、恐怖心ゆえ手伝っていた)としては、基地内に入るどころか近寄ることすらしたくないだろうが、イドフロントには第七層に移動するための装置があり、アビスの最下層に到達するには避けて通れない道だったのである。

それから客人を歓迎するボンドルドはプルシェカに世話を一任。
客間でリコが目を覚ますのだが、室内には誰もおらず二人を探すことになる。
ナナチはボンドルドのところへ行き、家族への愛を説く彼に皮肉を述べた後、宝物であるミーティを亡くしたゆえの自暴自棄か「リコとレグに手を出さないのなら仕事を手伝っても良い」と交渉を提案するも、既に手遅れで、レグの方は祈手たちによってロボットであるレグの肉体がどうなっているのか、ワクワクした好奇心のため解剖されていた。
レグは腕一本失ったところで、プルシェカと共に助けに入ったリコと共に間一髪で助かり、イドフロントから逃亡することになる。プルシェカいわく「あいつらはおかしい。いつもはこんなことしない」と言い、別れの言葉を残して、リコ一行に舟を貸し与えて逃亡の手助けをした。

その後、プルシェカは「どうして友達にこんなことをするのか」と尋ね、ボンボルドは「あなたはもうすぐ一人前のレディなのですから、自分で判断してください」と言い、プルシェカと共にイドフロントから逃亡したリコ一行を追いかける。
ボンドルドが現れる前、ナナチがすでに視界が読まれていること(音声のない視界ジャック)を察知し対策を講じて、アビス内部で特に危険な原生生物により複数の祈手と共に現れたボンドルドの手下を殺害することに成功。
しかしボンドルド自身は祈手同様パワードスーツを着用しているが、脅威の身体能力を見せ原生生物を一人で撃退するも、レグによって圧死され、さすがはヒトの姿をした何かが人間の真似をしているだけあって、「素晴らしい…素晴らしい…」と、感激に打ち震えながら、三人の連携プレイを心から賞賛している。
やがて感激しながら絶命したボンドルドであるが、陰ながら激闘を見守っていたプルシェルカは彼の亡骸に近寄り、「どこにも行かないで」と父親の死を嘆き悲しむ彼女の目の前に、新たな祈手が出現。
死体の頭部……というか、首ごと仮面をもぎ取り、フルフェイスの中身を捨てて装着。
そして、

「どこにも行ったりなんかしません。あなたの愛があれば、私は不滅です」

と言い、生前(?)と寸分違わぬ姿で復活。
お前は何なんだと憤る度し難い存在に、「そういえば名乗っていませんでしたね」と言い、ボンドルドはここではじめて自己紹介をし、

「祈手は全て私ですよ」

と、ゾアホリックの洗脳を受けた人物がいる限り、彼自身は事実上、死ぬことがないと宣言しながら、眠ったプルシェカを連れてイドフロントに帰還。

その後、ボンドルドはプルシェカの身体に赤いマーキングを付けながら、

「パパ、あたし……夜明けがみたい」
「ええ、共に夜明けをみましょう」
(破棄 破棄)
「一緒がいい…一緒に冒険したい」
(破棄 破棄)
「ええ、いつまでも一緒ですよ」

と、不穏どころか嫌な予感しかしない会話をしながら話は進み、復活したリコ一行はゾアホリックの大元になっているアビスの遺物を破壊するため、イドフロントに侵入。

リコとナナチは一緒に行動するものの、レグは基地内の電源を落とす(ゾアホリックの影響低下)するため単独行動を開始。その際、電源を落とす前に祈手の一員と遭遇するのだが、ゾアホリックの影響が弱かったのか、ボンドルドに徹底的に使い潰されたのか不明だが、糞便を垂れ流しながら点滴による栄養のみで同じ単調作業を繰り返す、言葉さえも失った廃人当然の人間と遭遇。
性能の悪い祈手であるが、プルシェカにより偽でお手製の作り物でありながらも、感謝の言葉が記された黒笛が各自の首に捧げられている。プルシェカいわく「単調な作業を繰り返すのも大変だものね」とのことだが、脳みそがむき出しになって、誰から見ても正気を失っている人間にそれだけの言葉で済ませるとは、う〜ん、やはり度し難い。

レグは黒笛に書かれたメッセージをどう思ったのかわからないが、火葬砲を用いてイドフロントの施設の電力をダウンさせることに成功したものの、「自分は誰だっけ」と記憶喪失状態になって、暴走することになった。

変わって、リコとナナチの二人はとある部屋に入ることになる。
そこはナナチ曰く「解体場」であるらしく、人間が生存するにあたって手足をはじめとした器官を、麻酔をかけず生きたままバラバラにした後、皮袋に詰め、カートリッジと呼ばれる箱型の入れ物に詰め込むのであった。
ナナチはここでミーティと共にイドフロントを出る前まで、何人もの子供達を箱詰めにする作業を手伝っている。このカートリッジはナナチとミーティがまだ人間だった頃、第六層より下層に落とされ、つり上げられるのだが、その際、当然のことながら上昇負荷がかかる。ボンドルドとしては、アビスの呪いと祝福である上昇負荷を他人に肩代わりさせることが目的で、何も無暗に子供達を慣れ果てにしていたわけではない。
繰り返される地獄のような実験の中で、唯一の成功例(通常上昇負荷で人間性を失うのにナナチは知性と人型を。ミーティは呪いのような祝福である不死を会得)し、ボンドルドの中で両者は特別な存在になった。

ナナチからカートリッジの説明を受ける中、ボンドルドが現れ、リコは「プルシェカを解放しろ」と言ったところ、「プルシェカは今眠りについています。直に開放しますよ」と答えたところに、暴走したレグが登場。
砲撃によりイドフロントには大規模な大穴が生じ施設が半壊するのだが、その真の実力を見たいボンドルドとしてはその穴の中にレグと共に落ちることになる。
地底に落ちたレグであるが、穴の底にいるのは実験により大量消費された慣れ果てとなった子供達の吹き溜まりだった。ボンドルドは驚愕するレグに対して、一人ひとりの慣れ果てには名前があるんですよと言い、それぞれ軽く自己紹介している。

あまりの度し難さに激高しながら激戦する両者であるが、ボンドルドはカードリッジを限界まで背負った状態であり、膝やら顔の縦線やらビームを出すものの、ロボットであるレグには上昇負荷がかからないため、事実上、ボンドルドから逃げ切れれば勝ちであり、逃亡に徹することになる。

レグを追いかけるためナナチのようなふさふさとした白い体毛が出現するだけではなく、第六層に戻る頃には、激闘で破損した仮面の中から見える目からは複数の眼球を有した異形じみたものであった。
この時、あますことなく消費した四つのカートリッジがボンドルドの背中から排出されるのだが、

「ターキリ、トレイテア、ノベロ…」

「ああ、本当に素晴らしい冒険でしたね、プルシェカ

と言い、リコが懇願していたプルシェカを解放するだけでなく、彼女の「パパと一緒に冒険がしたい」といった望みを、全く望まない形で叶えている。

激高するレグを不思議そうな態度で対応するボンドルドに、暗所に隠れていたリコが不意打ちによる切り落とされた火葬砲により、木っ端微塵にされ遂には敗北した。

リコはその後、プルシェカの入ったカードリッジを抱きかかえ、「プルシェカが溢れちゃう」と号泣しながら、中身を抑えていたが、内臓に入り混じったモノに混入していた白笛の材料、『命を輝く石』が出現。
実は白笛は人間を材料に造られており、ボンドルドの場合、更に度し難いのは「持ち主が点々とするゾアホリックの精神的影響を受けながら(でも本人の精神性はヒトじゃない何かなのでリスクがリスクになっていない)、自分自身に望みを託すカタチで両手を合わせた祈りのポーズをしたような白笛を造っていたのである」。
要は、ボンドルドは白笛を所持している時点で本体の方は死亡しており、ゾアホリックの影響を受けた人物に対して、「死ね。いやもう死んでいたわ」などの罵倒はほとんど意味のない、どこぞの鬼舞辻無残のような末路を辿っていたのである。

そして二度目の死に際でも、恨み言を述べることなく勇気ある若者へ向けて賞賛の言葉を向けながら、「素晴らしい素晴らしい」と感激。ナナチに「どうか君たちの旅路に溢れんばかりの呪いと祝福を…」と言い、息絶えた。

その後、第七層へ向かうリコ一行に先輩として見送る形で、ボンドルドは祈手と共に最後に出現。
恩師のように後輩を見守りながら、見送ったのである。


原作はこちらから https://webcomicgamma.takeshobo.co.jp/manga/madeinabyss/続きを読む...

2020年04月03日

人類悪について

人類悪について


さて、アニメ・絶対魔獣戦線バビロニアで幾度となく出てきた「人類悪」であるが、そもそも人類悪とは何なのか、解説していきたいと思います。

人類悪とは人類が文明を高度に発展・複雑化するほど、巨大な力を増す存在です。人類悪の根底にある感情は「悪意」ではなく「愛情」という点が特徴的です。憎しみなどの感情は一時的なものであり時間の経過と共に薄らいでいってしまうものですが、愛情の方は絶えず一定の濃さを持ち、場合によってはその感情の度合いが深まるため、憎悪などの感情を動力としていません。アンリマユは「必要悪」として生み出された存在であり、人類悪とは明確に異なる存在です。
人類悪の根底をよりよく分かり易く表現するならば、魔法少女まどかマギカの劇場版「叛逆の物語」で悪魔化した暁美ほむらがインキュベーターに対して、『あなたには理解できないでしょうね。絶望よりも深く、希望よりも厚いもの――愛よ』と、言っていた例が一番理解し易いかもしれません。

そして、愛情を基軸とした人類悪ですが、ビーストには厄介な特性を有しており、それはビーストTが現れたら連鎖的に全てのビーストが顕現するというものです。

しかも、ビーストUであるティアマト神がそのまま野放しにしておけば、世界滅亡を容易に引き起こすことから、いずれ人類が立ち向かわなくてはならない強敵です。ギルガメッシュいわく「人類『を』滅ぼす悪ではなく、人類『が』滅ぼす悪。人間が知性を持つ限り存在する癌細胞であり、自滅機構」。

ちなみにビーストはT、U、V、W、X、Y、Zとあり全部で七体だと思われがちですが、正確には七つの座があるだけ。その証拠にビーストVのキアラとカーマ、自分のいた世界ではビーストYを倒したものの片割れの存在を探して、平行世界であるカルデアに訪れたプロト・アーサー(男の父上)から、ビーストの全てではないが、「対」になる存在がいることが判明しています。下手をしたら、人類悪の総数は14体であっても不思議ではありません。

人類悪のそれぞれには「憐憫」、「回帰」、「比較」などの理を有していますが、神・獣・人などの種族の違いがあります。外見的特徴な共通点として、必ず「角」が頭部に生えていますが、それぞれデザインは異なります。

いずれの人類悪もそうですが、ビースト同士は各々独自の愛情を以て、結果的に世界を滅ぼしてしまうため、例え「対」となる存在であったとしても、相互理解することはありません。むしろ、殺し合うほど険悪といっても良いでしょう。
ちなみに「対」になる存在にはそれぞれ左右を意味する「R」と「L」に区分されていることが、BBにより語られています。
ビーストVの基本的な獣性は「愛欲」ですが、キアラが「自己愛」なのに対して、カーマは「他者愛」といった具合に対極な上、通常の人類悪同士よりも分かり合えないものだと推測されています。

なお、人類悪には独自の固有スキルをもっており、

  • 獣の権能
  • 単独顕現
  • ネガ・〇〇


の三つです。

獣の権能とは、対人類に対して特攻効果を持つスキルです。人類が倒すべき悪でありますが、恐らくビーストに対する抑止力でありカウンターとして召喚される安全装置の冠位クラスのサーヴァントに対抗するため、独自に保有しているスキルなのでしょう。獣の権能も、詳しくはネガスキルと同様、個体差がある模様。理の性質によって種類があるものと推測される。

単独顕現とは、人類悪がひとつ現れれば連鎖的に現れることから得ているスキルだと推測されます。その他にもどの時空や世界に対しても存在を立証し、出現する対策として時間遡行などのタイムパラドックスによる未然の出現防止さえも無効化されます。

ネガスキルとは、人類悪の獣性や理が独自に異なっているため、個別により異なる能力を持っています。いずれもビーストの在り方を強調するようなスキル名と性能です。

その他にビーストは通常のサーヴァントが持っていないスキル、「啓示」、「万欲応体」、などを保有しています。


ビーストT ゲーティア
憐憫の理を持ち、七つの特異点に聖杯を贈り込み歴史を塗り替えようとした、人類史を最も利用した災害の獣、72の魔神柱の集合体。意思を持つ召喚魔術。
憐憫たる理を得た経緯は、世界を見通せる目を持ちながらも、人々を救おうとしなかったとある王の人間味の感じられない行いが、発端。ゲーティアの最終目標は2000年以降の歴史を焼却した後、時間遡行を行い人類史をやり直すというものである。
争いなどの悲しみにしか目を向けなかったゲーティアが創りなおそうとした世界は、人類の苦しみを取り除き、人間の不完全性をなくして、死ぬことのない生命体に変えるというものである。なお、原罪といわれているが、マルタ曰く「原罪はあの人が持って行った」と発言されており、原始の罪という意味ではなく、ビーストTであるがゆえの原罪であると推測される。
角のカタチは横向きになった、樹のような形状をしている。

  • 固有スキル

・召喚術
72の魔神がとある王の遺体に巣食い、人間の皮を被ることに成功した。英霊を召喚することはできないものの、多くの特異点で魔神柱を出現させることが可能なスキル。

・ソロモンの指輪(EX)
王の証。左中指には指輪が装着されていないが、残り九本の指それぞれに装備されている。

・啓示
天からの声を聞き最適な行動を取る、「直感」の上位変換スキル。だが、ゲーティアには使用できない。

・ネガサモン
サーヴァントによる一切の攻撃を無効化する、ビーストとしての独自スキル。だが、とある例外たる存在を除いて、ゲーティアに攻撃可能。


ビーストU ティアマト
回帰の理を持ち、全ての生態系を塗り替えて全ての母として君臨しようとした災害の獣。子である神々に虚数空間に落とされた創世の神。産み出すものであるゆえ、死の概念を生まれつき持たない。
回帰の理を持つようになった経緯は、自ら産み出した子である神々に存在を否定され、子供たちの独立を拒んだことによる。そもそも我が子に否定されるようになった理由は、地球上に生命体の生態が確立した原罪、アトランダムに新たな生命を産み出す母としての役割が災いし、肉体は二つに引き裂かれ、人世創造の儀式となった。
母として我が子を愛したい獣性を有して、本能的に活動。本来、「原初の海」と呼ばれている存在であり、陸地にあがることはできないがケイオスタイドを津波にように大地に押し寄せることによって、上陸することが出来た。
角のデザインは、緑色で丸みを帯びたもの。

  • 固有スキル

・生命の海
子を産み出すことが可能な、黒泥。真エーテルをたえず循環させているため、海の中では無限の魔力を有している。この海の中に落とされた存在はランダムに「増殖」や「融合」などのスキルが付与されるだけでなく、細胞レベルで遺伝子が改造され、強制的にティアマトの眷属となる。

・自己封印
自己を縛り付けるスキル。我が子である神々に「いらない」と存在を否定されたティアマトであるが、そのことについて「仕方ない」と甘んじ、最後の最後は人類の庇護にまわりたいと思っていた。しかし頭脳体が破壊されたことにより、理性と本能でせめぎ合っていた均衡状態が崩れることになる。

・仔よ、創世の理に従え
詳細不明。効果は「全体攻撃及び自己強化無効」。

・ネガジェネシス
固有結界の超上位変換。旧来の生命体を否定し、生態系を崩壊させる。正式な人類史におけるサーヴァントの宝具を無力化する、膨張する概念結界。


ビーストV 随喜自在第三外法改楽天 殺生院キアラ(ラプチャー)
愛欲(自己愛)の理を持ち、人を最短に救う大災害。
密教にして邪教、真言立川流の破戒僧。立川流の禁忌を全て破り、髑髏本山を奪い独自に使徒を増やしていた。ちなみに彼女の信者はキアラに愛されるために狂態を演じ財産さえ擲つも、キアラに愛されないことを悟った信者はいずれも自殺による末路を迎えている。
なお、キアラが人と定義しているのは己自身のみで、他の人類については有象無象の虫や動物のようにしか捉えていない。すべての生命体の愛を受け入れるべく、地球の性感帯になろうと海底から地表に現れようとした。キアラが受ける愛情は何でもよく、究極のマゾヒストにして絶対のサディストである。快楽があれば己の死さえも良しとするなど、常人には理解できない思考回路をしている。
CCCではムーンセルと同調していたために、自身がなぜ敗北したのか分からなかった。キアラのサーヴァントであったアンデルセン曰く、「パッションリップ、メルトリリス(双方恋心を抱いていた)存在を取り込み、勝てるものと思っていたのか馬鹿者め!」と、罵倒されている。更に「恋は現実の前に折れ、現実は愛の前に歪み、愛は恋の前では無力になる」と叱責されている。余談だが、散り際のキアラとアンデルセンの会話は見ものである。
FGO内でのキアラは、最初は真っ当なセラピストで聖人として相応しい人格者であった。しかし、魔神柱の残党であるセパルに善性を封印され、意識を乗っ取られる最中、魔神柱は肉欲の快楽を知り、キアラに教えを乞うことになる。その内に、双方の立場が逆転し、セパルの意識や存在は指先程度のものしか残っていなかった(キアラが意図的に爪先程度の立場を与えていた)。
鈴鹿御前が助けを呼ぶマスターの声により召喚に応じたのであるが、実はこれ、コフィン(棺桶)内でキアラにより何度も戦い合いが行われる状況を楽しみ、本人いわく「コフィン内の人間が擦り切れる」まで楽しんでいた。それゆえ「助けて」の声は戦いにおける救難信号ではなく、終わりの見えない苦痛に耐えかねてサーヴァントの存在を必要としていたのであった。
なお、ビーストTのゲーティアでもなしえなかった主人公の殺害に成功している(時間が巻き戻る空間なので、主人公の死はなかったことになっている)。
角のデザインは、魔人柱。ゲームでの攻撃モーションの際、セパルの残骸と思わしき黒いものが見えることから、残骸になっても手放さず使用しているものと思われる。

  • 固有スキル

・ロゴイースター
知性を持つものに対して強力な特攻を持つスキル。キアラの姿、声などに少しでも美しいと微塵でも思った時点でアウト。

・万色悠滞
精神や魂を丸裸にさせ精神的なケアを行う医療ソフトであったが、それは建前で「済度(救済)」と騙りながら、自身の信徒を増やしていた。

・カルマファージ
かつてBBが「愛情なぞ不要」と判断し切り離し、パッションリップ・メルトリリスを造った技術を自己流に改造したもの。具体的な効果は性感帯や五感を他者に分け与えるといったものである。

・ネガメサイヤ
救世主(セイヴァー)の資格を持ちながら、人は己のみと定め多くの人類を救済することのなかったビーストの末路。セイヴァー、ルーラークラスの攻撃を無力化するだけでなく、強烈なバフ効果を振りまく。


ビーストV カーマ/マーラ(ラプス)
愛欲(他者愛)の理を持ち、人を広域に救う大災害。
徳川廻天迷宮大奥にて登場した、ビーストVの片割れ。
キアラの片割れとあると同時に、同じ依り代(桜)のパールヴァーティの善悪における「悪」の部分である。カーマとマーラの比率は6:4でカーマ成分が多い。本来は男性神であるが、依り代の肉体が女性なので、女神となっている。
カーマはかつて、瞑想の修行を行っていたシヴァにより第三の目により焼き殺されたが、宇宙の化身といっても過言ではない存在に殺されたことから、宇宙の如く無限を有する肉体を有するようになった。それゆえ、星屑と同様(もはや無限)の自身が存在しており、個々人に対して、愛情を注ぐことが出来る。
唯一愛せないのは自分であるとのことだが、カーマは人間が嫌いであったとしても愛することが出来、人間のあらゆる行為・行動を許容する。その愛欲の対象になった存在は堕落することになる。具体的な例をあげるなら連続殺人犯の行いを許し愛するなど、ヒキニートを外に出すことなく、その状態を維持するなどといったものだろうか。
カーマの愛として特徴的なのは愛したことにより堕落したのではなく、堕落させるために人間を愛する。その他に特徴的な点として、第三者を愛することをさせない共依存のような関係にさせるのである。
角のデザインは、後光や王冠を彷彿とさせるもの。

  • 固有スキル

・万欲応体
あらゆる人間の煩悩や欲望に応じるため、あらゆる望みや欲を満たすように変化自在の対応力を見せる。個々人を愛し、万人が受け入れられない欲望であったとしても許容し、寄り添い、甘やかせて堕落させる。

・メガデザイヤ
煩悩の化身であるカーマが持つ、抗いがたい耽溺スキル。あらゆる人間の煩悩を無限に等しい愛を以て叶えさせることは、煩悩を消失させるものに等しい。三毒五蓋のない状況は人間の思考停止にも等しい。


ビーストW キャスパリーグ(プライミッツ・マーダー)
比較の理を持つ、人類の絶対的な殺害権利を持つ獣。
人間の妬みや闘争心を糧に成長し、相手よりも強くなる特徴を持っている。人類の殺害速度はORTと匹敵する脅威の獣である。本来の姿は大型の犬のような見た目をしており、アルトリアいわく「どこか既視感がある」とのこと。
ちなみにアーサー王伝説では、アーサーもしくはケイ卿により盾によって倒されたとある。
FGO内での活躍は初期から登場し、基本的に「フォウ」としか鳴かないが人語の入り混じった発言をしている。マーリンの使い魔であったが幽閉塔から突き落とされた。その後、カルデア施設内でマシュに拾われ呼び名を与えられ、主人公との特異点修復の旅路の中で善性に触れることにより、時間神殿ソロモンでマシュを救い、キャスパリーグは理性を失った。1.5部では「フォウフォウ」としか鳴かない状態になっていたが、二部では徐々に理性を取り戻しているような様子が度々散見される。
プライミッツ・マーダーにおける立場では、死徒二十七祖の中に加えられているが、吸血種でないのにも関わらず死徒の一員として数えられているのは、『月姫』の登場人物である、真祖アルクェイドの吸血鬼行為を真似していたため、死徒の仲間入りをしたものだと思われる。
角のデザインは、ウサギのような耳の形をした青いもの。
FGO内ではサーヴァントの能力(体力・力)を向上させるアイテムとして、重宝されている。


・ビーストX
未登場。


・ビーストY
プロトアーサーがLの瘴気と、Rの残り香を追跡して、カルデアに到着した。沙条愛歌がプロトアーサーに恋をし、ブリテン復刻のためビーストを召喚したものの、願いが間違いであることを悟ったアーサーの手により沙条愛歌は殺され、大聖杯にくべられたものの、ビーストのマスターとして復活している。
ネガメサイヤなるスキルを持っているが、詳細不明。


・ビーストZ 
終局を告げる獣。
ギルガメッシュの口から「ビーストZはすでに顕現済み」であると不穏な発言がなされているが、その他に情報が開示されていない。
が、オリュンポスの最終局で「愛玩」の理を持つビースト共に登場した。
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