2020年04月09日
ぼくの地球を守って
ぼくの地球を守って
『ぼくの地球を守って』とは、1986年〜1994年の間、花とゆめで連載された日渡早紀により執筆された漫画である。全体的な作風としては、SF及び前世記憶(オカルト)を取り入れながら、少女漫画らしく恋愛要素を取り入れた作品。主要人物の前世たちの奇妙な共通点として、植物名(ラテン語ではなく日本語)が本名として取り入れられている。
【地球(現世)での出来事】
冒頭、主人公兼ヒロインである坂口亜梨子は、小椋迅八と錦織一成の不穏な会話(二人からすれば同じ夢を見た内容の再現)を偶然にも聞いてしまうことになる。亜梨子は小椋と錦織の会話から、ソッチ系(♂)の関係だと勘違いしていたが、小椋の前世は男(ギョクラン)であり、錦織は女性(エンジュ)であった為、あらぬ誤解を招いてしまったのである。
後日、夢の再現を目撃された事と勘違いを解くため、「異星人であり、地球を監視する科学者」であったと前世の記憶を説明する。前世の記憶の人間は地球人とは異なり、テレパシーなどの能力、キチェ・サージャリアン(現神人や天女に近い存在)、月を拠点として基地を構えているが観測が困難なほど小型などの相違点がある。
亜梨子は近所に住む小林倫を両親不在のため一時期預かることになる。亜梨子は幼い頃から植物の気持ちが分かるといった異能を有しており、周囲からは単なる空想癖だと思われていたものの、弟からは単なる妄想だとは思われていなかった。その証左に学校で亜梨子は音楽部に所属していたが、彼女が歌う度に目に見える形で、亜梨子のいる部室付近の植物だけ目に見える形で異常な成長をしていた。左記の理由から亜梨子の歌声と植物の気持ちが分かるといった発言は虚実なものではなかったのである。
倫を預かった亜梨子であるが、倫が植物をベランダから落とすといったイタズラを行った際、感情的になり彼の頬を叩く。故意ではなかったものの、倫は叩かれた衝撃でベランダから落下することになるのだが、奇跡的にマンション下に植えられた植物により、意識不明になったものの、肉体の方は数日で退院できる程度の軽傷で済んでいるが、これは亜梨子の前世であるモクレンが助けたことによる結果である(地球の大気になりたいとの口癖が関係しているものと思われる)。
亜梨子の前世であるモクレンに見えないながらも倫に接触したのが原因か、軽傷に反するように意識不明になった要因は、倫(シオン)にとって最も因縁深い人物であり、意識覚醒してから、亜梨子の動向が分かるなど、明らかにテレパシーによる能力と、そうして前世の記憶を取り戻すようになった。
退院後の倫は、亜梨子に結婚を申し出る一方、裏面では無邪気な子供とは思えないほどの乱暴的な言動を行うようになる。ヤクザの息子と接触し、東京タワーを改造するように強請るなどの行動を秘密裏に計画。
倫は亜梨子と一緒に、前世記憶を持つメンバーと集会を行い、倫の本当の前世はシオンであるのにシュウカイドウと騙って、会合に参加することになる。ちなみにシュウカイドウを前世に持つ人物は笠間春彦であり、倫と春彦の姿は前世の姿に丁度入れ替わったような状態になっていた為、長い間このウソがバレることはなかった。ちなみに倫は春彦(シュウカイドウ)に罪悪感を刺激し弱みを握っているため、入れ替わりについて春彦の口から洩れることはなかった。倫(シオン)と春彦(シュウカイドウ)の関係性は、事実上、被害者と加害者のそれであり、春彦は自身が行った悪行ではないにしろ、虚弱体質も合わさって罪悪感に蝕まれていくことになる。
徐々に倫の性格が前世であるシオンに変貌していく間、同様に亜梨子もモクレンの記憶を見るようになり、徐々にその同調が強くなっていく。
その中で、シュウカイドウであると偽り続けた倫であるが、亜梨子は不信感を覚え、倫は誰であるのかと尋ね、ショックゆえか失踪することになる。失踪した倫はホームレスに世話になる一方、薬師丸未来路(地球人であり前世記憶がないながらも超能力が使える)とドンパチし、重要文化財を焼失させた。
その後、パシリにしていた田村(晴彦の恩人であり、ヤクザの息子の世話係)に亜梨子を誘拐して、倫のところへ連れていくよう指示するが、久方振りに現れた倫は「植物を枯らす歌を記録した電波を流すため東京タワーを改造すること」が目的であるのに対して、相反して「東京タワーを爆破する」など矛盾した言動を行う。
亜梨子はすでに月にある基地での内容を把握しているために、倫の精神状態を詳細に把握。
彼の意識による矛盾したせめぎ合いは、シオンの「地球上の植物を枯らしたい強烈な願い」と、倫の「夢の中で見ていたシオンの不気味な姿に嫌悪感を抱き、その目的を阻止したい」と言う、不均衡な状態であった。
亜梨子は倫の内面を把握した上で、「東京タワーを爆破する」ことを優先する。前世で婚約者であったシオンよりも、倫を尊重した上での判断したのである。
その後、倫は前世記憶を持つ人たちの中でも、特に強烈な人生を送ったシオンの前世記憶に、夜中、魘されることはありながらも意識が前世側に引っ張られることはなく、平穏な日常を送り、物語冒頭で結婚したいと述べていたように、正式に亜梨子と婚約を結ぶことになる。
【月(前世)での出来事】
地球よりも高度な文明技術を有した種族。ギョクラン曰く、地球人の文明が未発達で野蛮なのは、植物の声を聞き取ることのできる存在がいないなどといった旨の発言をしている(しかし、彼はシュウカイドウ同様モクレンに片思いしており、好意を得るため言った節があり、本気かどうかは不明)。
異星人とホモサピエンスとの大きな違いは、個々人により超能力の種類とその強さは異なるものの、多くの人間が保有している点である。その他に大型のネコ・キャー(超能力あり)や、作中での重要部分となるキチェ・サージャリアン(植物の気持ちが分かる。聖歌を歌うと植物が急成長する)などが登場する。
月基地で地球を観測するために、モクレン・シオン・シュウカイドウ・ギョクラン・エンジュ・シュスラン・ヒイラギといった、考古学者・エンジニア・医学者など優秀な人材が集った施設内であるが、職務に真っ当なのは意外なことに人との軋轢を生み易いシオンである。モクレンが「地球ではみんなと同じ植物の名前がある」などと呑気に宣った際は、陰ながら憤慨し、真面目に仕事をしているのをバカらしく思ったほどである。ちなみにシオンは地球にこっそり探査機を用いて食料を調達する際に入手したのか、漫画好きである。
長期間、男女入り混じった7名(男:4 女:3)であるが、真面目に職務を全うしていないなどの一部問題があり順風満帆ではないながらも、仕事の方は順調に進んでいた。しかし、事態は一変し、月基地にいる7名の男女を残して、母星は戦争によって滅亡することになる。月基地の皆が戦火に巻き込まれなかったのは、月が母星より遠く離れた辺境の場所であった為、抗争に巻き込まれることはなかった。
帰るべき場所と、事実ともに最後の人類となってしまった彼・彼女らは精神的に追い詰められていくことになる。モクレンは大切な人を亡くしたショックゆえ頻繁に聖歌を歌うようになり、施設の大半を駄目にして皆が除草駆除する羽目になり、特に女性陣(ヒイラギ・シュスラン)のヘイトが募る結果となった。殊にヘイトを集める要因となったのは、モクレンに片恋慕していた基地のリーダーであるギョクランが、彼女一人によるやらかしなのに皆で手伝うよう指示していたのも関係している。
その後、地球へ降りるかどうか可決が行われるのだが、結構には至らず、7名は月基地に滞在し続けることになる。惑星が滅亡し伝染病が発生する以前、何かとシオンに接していたモクレンであるが、物語終盤になる頃にはシオンはモクレンのことを信仰の対象である聖女じみたキチェ・サージャリアンではなく、一人の女性としてみていた。シオンはモクレンに「愛している」と告白をし夫婦仲になるものの、相思相愛に近い関係であるにも関わらず、二人はすれ違った状態である。
キチェ・サージャリアンは純潔を失うと額の印(仏様の白毫のようなもの)が失われるのに対してモクレンは未だ有しており、このことに関して彼女は本気でシオンに愛されていなかったと思っていた。対してシオンの方は夫婦だと告げ、癒されながらも半ば強引な関係を迫ったため、「彼女に本気で愛されていない」と思い込んでいた。
そもそもシオンは生まれからかなり複雑な環境で育っており、自己防衛のためとは言え生まれつき強烈な力を持った超能力で殺人を犯した経緯があり、孤児施設で引き取られた後、ラズロから「家族ごっこをしよう」と言われ、巨大なネコ・キャーと共に生活していくにつれ、荒々しい気性から徐々に落ち着いていくも、キャーと共にラズロは悪天候の中、シオンのプレゼントを買いに行くも交通事故により不運にも死亡。彼らと過ごした期間は3か月未満と非常に短期であり、その上、ギョクランに対してコンプレックスとライバル視を抱いていた。
シオンとモクレンの夫婦仲に至る原因にギョクランが関わっているため、そのすれ違いは相当なものだったと思われる。
やがて、基地内に伝染病が致命的なレベルで蔓延ることになるのだが、最初にギョクラン・シュスランと順に、次々に死亡していくことになる。
特効薬が出来たのはシュウカイドウ・モクレン・シオンを残した3名になった頃であり、モクレンに恋愛感情を抱いていたシュウカイドウは夫婦になったシオンへの妬みとすでに伝染病を発症していた精神と肉体的極限下、特効薬をシオンにのみ打ち、モクレンには別の薬を注射していた。
シュウカイドウ死後、モクレンとシオンの二人は基地内で生活していくことになるのだが、そのうちに特効薬を投与されていないモクレンは伝染病で死亡。モクレンは死に際、「自殺したら輪廻転生できないから、自殺しないでくれ」と遺言を残すも、この言葉が更にシオンを苦しめる枷となる。
シオン以外誰もいなくなった基地内で地球の観測を行っていたが、そのうち観測映像から地球内で戦争が勃発している事実を目の当たりにする。幼少期の紛争、そうして母星が戦争により滅亡した経歴を持つシオンとしては地球人の愚かな行為を到底許すことができなかった。
そこでモクレンから聞き出していた植物を枯らす黒聖歌のことを思い出し、徐々に狂気により正気を失いながらある装置を作り上げていた。シオンは本人以外誰もいなくなった基地内で九年もの間、モクレンの呪いじみた遺言通り生き続けることになるのだが、この要因が他の転生者とは異なり、倫だけが高校生ではなく子供である時差を生じさせていたのである。
狂気に支配されながら亡骸を補完するコールドスリープ用の棺桶に、手向けの花として時折墓参りに訪れていたがこの様子を、前世記憶を見ていた倫いわく、花束を持ちながらシオンの微笑む様子が薄気味悪く見えていた。
狂気に支配されていた自殺しようにもできないシオンにそういった感慨を抱くのは仕方のないことかもしれないが、妄執じみた執念で装置を完成させたのだが、その装置はモクレンが歌っていた聖歌の音声を元に立体映像だった(歌はギョクランの提案で録音されていたもの)。
彼が天才的なエンジニアだったことが幸いしてか、少ない資源で完成した映像装置はシオンが思わず、「ここにいたのか、モクレン」と、涙せずにはいられないほど美しいものであった。モクレンの歌っている聖歌は植物を枯らす黒聖歌などではなく、散々基地メンバーに除草の迷惑をかけた繁栄のものであり、シオンはその後まもなくモクレンの歌によって栄えた植物の中で息絶え、絶えず歌唱する装置により、月の基地は植物の急成長によって完全に機能が停止し、施設は廃墟当然となっていたのであった。
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