2022年03月29日
オベロンの絆礼装
オベロンの絆礼装とは、彼の絆レベルが10になることで入手可能な特殊礼装である。
効果は、秩序・善属性のサーヴァントに特攻が取れるというものであるが、特筆すべきはソレではなく、礼装に記されている内容文である。
新クラスのプリデンター(事実がねじ曲がる)特性と、そうしてアヴァロン・ル・フェ内で関係を持ったブランカへ対する愛情と、探し求めているティターニアの関係を思えば、思わずうならずにはいられないものとなっている。
【内容】
まず、オベロンに関して述べるなら、彼は本来ならば滅んでいて当然である異聞帯のブリテン島の意思で生み出された存在である。
かつてマーリンが予想した「白き竜と赤き竜」の予言の通り、本来の歴史ならブリテン島は妖精やサクソン人などの神秘を消失する運命が半ば約束されていたのだが、ルフェの異聞帯におけるブリテン島は、妖精の死骸が積み重なり風化することによってその領土を増やし、いつまでも滅亡しない状態でいた。
そのことが、『気持ち悪かった』ブリテン島の意思は終末装置たるヴォーティガンと半ば複合する形で誕生してしまった、奈落の虫である。
本来オベロンはシェイクスピア著主『夏の夜の夢』におけるトラブルメーカー的な役割を持つ存在であるが、自身のクラススキルがプリデンター(人理の敵対者・虚偽者)であるためにたとえ本音を語ったとしても、嘘――もしくは信頼に値しない情報となってしまう。
その嘘は、絆レベルを6にしないと彼の本当のプロフィールが見れないほどである(通常んサーヴァントはレベル5でほとんどの情報が解禁となる)。
その為、オベロンの姿が白い時でも、巧妙に真実を誤魔化している。
証左として分かり易い例を述べるなら、アヴァロン・ル・フェでサポートキャラクターとして起用する度、クラスがコロコロ変わっていたり、言葉を曖昧に濁しどうとでも取れるような言動を行うなど、役を羽織るものとしての本領発揮を裏面で行っていた。よく見ると白い姿でも、目が笑っていない……。
かなり分かり易く述べるなら、オベロンは相当な嘘吐きで、本音を語ればたとえそれが真実であったとしても嘘になってしまうという、利便性と不便性の双方を有したサーヴァントであると理解してもらってかまわない。
特筆すべきは、オベロンの言葉を真逆に受け取るのは正確ではなく、たとえ真相を離したとしても、歪曲された言葉だと念頭に置かなくてはいけない。
なお、ル・フェの最終局面において一時期フェードアウトしていたオベロンであるが、黒くなった姿(本性を出した)で現れた時の言動も、本音を伝えられないモノとなっている。
ル・フェ内におけるオベロンが本性を出した時の言動は、自分の代わりに呪いと穢れを受けてしまったブランカの亡骸を飛行船の看板に、文字通り、投げ捨てた。その際の言動は今まで身を粉にして働いてくれたブランカに「どうでもいい」と述べ、感心なさげに粗末に扱うものであったのだが……。
最終ステージは底がなく、一度入れば永遠に落ち続ける奈落の虫の体内に移行する。
紆余曲折を隔てカルデア一行は奈落の虫の体内から脱出するのであるが、オベロンはブランカの亡骸を投げ捨てつつも、奈落の虫の中に落としたと描写されていない。
恐らく、船の看板の片隅で横たわり、奈落の虫の体内の底へ未来永劫落ち続けることになったオベロンとは異なり、外に出られた可能性が高い。不幸な偕老同穴の出られない牢獄から、オベロンの非常に遠回りな労いと親切により脱出できたものではないかと思われる。
そして、話は絆礼装に戻るのであるが、そのテキスト内容に涙した人が多数発生した。
オベロンの絆礼装、「亡き王女のためのパヴァーヌ」には、白オベロンが唯一の領地だと述べていた秋の森の女王であるブランカとオベロンの双方における無垢な関係である。オベロンはティターニアを探しているが、ブランカがその役割を担っているとしか思えない。
秋の森の王女は恋をした。
生まれながら死体のようだった王子に恋をした。
森の仲間たちが王子の出現にはしゃぐなか、ただひとり、遠くから見つめていた。
王子が立ち上がり、その心を垣間見た後も、王女の心は変わらなかった。
捨てられた妖精たちの吹きだまり。
妖精國の底辺だと笑いながら、王子は決して、住む家を秋の森から変えなかった。
良いことをした後は丹念に森の川で手を洗っていた。
悪いことをした後は汚れた翅のまま落ち葉に倒れた。
王子はブリテンのすべてを嫌っていた。
妖精たちも、秋の森の仲間たちも嫌っていた。
けれど、
「神様じゃないんだ。放っておいても消える連中までは、手に負えないさ」
王子が本当に嫌っているものを知って、王女は、最後まで王子のために羽ばたくことを胸に秘めた。
それが唯一、冷え切った手足を温める火だと信じて。
◆
これは語られなかった断章。
大嘘つきが隠し通した、誇り高い、ある王女の物語。
【このカテゴリーの最新記事】
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/11141485
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
この記事へのトラックバック