カラフルでド派手な『CAFE JAPAN』収録の「田園」が売り上げ歴代一位なのはもちろんなのですが、このモノトーンで地味目な『GRAND LOVE』収録の「ルーキー」もじつは侮れない売り上げがあったようで、玉置浩二歴代シングル売り上げランキングでは11位の渋い位置(本記事執筆時)を確保しています。巨人でいうと淡口憲治です。打率は二割台後半でありつつも長打率が驚異の四割越え(原、クロマティは三割台)、押しも押されぬ代打の切り札的な存在だといえるでしょう。巨人はなんで放出しちゃったんでしょうねえ(〇岡のかわり)。大洋ファンのわたくし、セリーグの代打に淡口がいなくなってだいぶ安堵しておりました。というか、そもそもこの歌は当時ルーキーだった高橋由伸選手のことを玉置さんが歌ったものであって、けっして淡口のような渋いベテラン代打選手のことではありませんでした(笑)。
さて曲はアコースティックギターが心地よいリズムを刻む弦のミュート音と、なにやらパーカッションの「カツカツポコ、スコーン!カツカツポコ、スコーン!」で始まります。こういう何の音かよくわからないパーカッションにもかなりこだわりをもって、自分のイメージに近い音を探していったんでしょう。当時は全然でしたが、わたくし最近玉置さんのパーカッションにだいぶ耳が行くようになりました。アレンジを外注したりバンドメンバーに任せたりせず全部自分で決めているであろう玉置ソロの音を、こうやってひとつひとつ有難がって聴くようになって、ようやく音楽の楽しみ方がわかってきたなあ、なんて思うのです。わたくしもう当時の玉置さんよりだいぶ年上になったんですけどね。天才の仕事というのは、こうやってしゃぶりつくさせていただきながら自分を高めてゆくことができるものなのです。若いころにはそこらのメジャーミュージシャンより自分のほうがいい音楽を作れるような気さえしていましたが、歳をとるにつれ世の中には自分など全く及びもつかないエクストリームな天才がいるということがわかって恐怖するようになってゆくものなのでしょう。
話はまだ前奏でした(笑)。刻みの裏に鍵盤のストロークが入り、強烈なスネアと玉置さんのシャウト(「カモン!」ですかね)を合図にシンセがメイン旋律を奏で、玉置さんが「オーオーオーオーオ」と歌ってシンセに合いの手を入れます。これは前曲「DANCE with MOON」でもみられた手法で、自分の声を歌でなく楽器に近い使い方をしています。楽器「玉置浩二」みたいな感じです。何言ってんだ「田園」も「MR.LONELY」もそうだったじゃねえか、とお思いになる方、正解です。でも、わたくしに言わせればあれらは歌だったんです。厳密にどこって境界線を引くのは無意味なことではあるんですが、このアルバムあたりから玉置さんの声はしばしば楽器として「鳴る」ようになったように思えるのです。歌とは違う声の使い方を駆使するようになって音楽の幅を広げたというか……案外ご本人はそこまで考えてなくていつも通りやってるだけ、という可能性が一番高いんですが、ともあれわたくしがそう思うようになったタイミングがこのアルバムだったのでした。
ギターが左右に広く振られていて、歌が入るタイミングで中央からも聴こえてくる、そしてベースがギターよりも狭い範囲で左右を行き来する、ドラムもベースとだいたい同じ範囲で左右に適度に振られているようで、中央から歌と弾き語りのアコギ、その周りをベースとドラム、さらにワイドにギターというバンドサウンドとしては標準的といや標準的なセッティングです。これは音がナチュラルなぶんゴマカシが極めて効きづらいと思われますが、シンセピコピコの音圧高めでゴマカシだらけだった平成前期の音楽業界にあってあえて同じ土俵に乗っているんじゃないかと思われる、難易度の高いミックス思想を採用したといえるでしょう。
やっと歌です。手を伸ばせば届きそうな星……これは東京ではムリな表現です。東京どころか札幌でもムリです。軽井沢にあって、「東京」読売ジャイアンツの高橋選手がつかむ栄光を視界良好で眺めながら作った歌だということが示唆されるのです。軽井沢がそんなに星がきれいに見えるかどうかまでは知りませんが(笑)。いっぺん二‐三日滞在したことがある程度で、星まで気が回りませんでした。これはいけません。そして慶応大学野球部でスター選手として活躍し鳴り物入りで巨人入りする高橋選手にも、余人がうかがい知ることができるものではないのですが、それまでにきっと数えきれないほどの悲しみがあって、人知れず辛酸をなめたに違いないのです。傍から見てる分には、後にまだ現役選手なのに半分ムリヤリ引退させられて監督にされちゃったことのほうがよほど気の毒なんですが。生えぬきスターを監督にすることにこだわる巨人軍のスター選手が負う宿命ともいえるでしょう。というか、松井があっさり移籍したとばっちりを食った形になったようにしか見えません。それも「数えきれない悲しみ」の一つなのでしょう。
そんなこんなで、シンプルにスネアは二連打だけ、バックにアコギのストロークを入れ、大声で「なんだって!」とフィルインを入れてサビに入ります。そうです、この「なんだって」がフィルインなのです。玉置さんはここにおいて、自分の声を歌と楽器(しかも旋律楽器と打楽器の両方)として同時に使うというとんでもない大技をかましてきたのでした。しかも続く「精一杯」がフィルインのつづきとも歌ともつかぬシームレスな役割を果たしており、聴くほうも違和感全くなくサビ気分に移行することができるのです。おそるべし……思えば、近いことはやはり「MR.LONELY」でも起こっており、サビ前の「オオオオッオー!」はフィルイン的でしたがその後が「何もないけど」と完全に歌に切り替わっていたのに対して、この「ルーキー」ではその続きさえもフィルイン的でもあり歌的でもあるという進化を遂げているのです。
さてサビで歌われるのは、頑張っている君をみるとなぜか涙が出てくる、だから僕も君のためならなんだってするよ、という応援する気満々の歌詞です。これ、歳をとればとるほどよくわかります。なぜか他人事じゃないんですよ。わたしにとって高橋由伸選手は一つか二つ年下なだけの同年代の選手で、彼が巨人で何をしようとも完全に他人事でしたが(笑)、選手たちより上の年代になってから、若い人たちが頑張っている姿をみていると妙にジーンと来ることがあるのです。おいおいそんなに頑張っちゃって!もうおじさん感動しちゃって何でもしてやるからな!頑張れガンバレ、でも頑張りすぎるな、おれたち君の老後までは面倒見れない無責任な立場なんだからな!だからせめて今は応援するよ!という気持ちですかね、ムリヤリことばに直すとすれば。玉置さんはこのとき(シングル発売時)40直前、不惑にさしかかるときでした。落ち着いた生活、制作環境を手に入れたことによって紛れもなくルーキーを応援する立場、心境に至ったのだとじわじわと思わされます。じんわり感慨にふけっていると「飛んで行く!」とまた歌声フィルインで曲は切れ味鋭いアコギストロークのリフで短い間奏から二番へと入っていきます。
突然ですがここの「歩き回った」「曲がりくねった」って、みなさん歌えますか。わたくし実は歌えないのです。音程かリズムか、どっちかかならず失敗します。右四つに組めなかった時の荒勢なみにコケます。玉置さんは歌手なのですから比べたって仕方ないのですが、どういう活舌とリズム感してんだ!とちょっと驚かされるポイントだよーとわたくしがドヤ顔で紹介しているわけなのですが、けっこうみんなこの程度はサラッと歌えてしまって、単にわたくしが歌がドヘタだったとバレるリスクを冒してまで文章を書こうとしているくらいもうネタがない(笑)、いやいやまだ曲は中盤でしたね、がんばります。
今度のサビは「頑張ってやっていたあの頃」と、「君」ではなく自分のことを思い出して、自分も若いころあんなに苦労して精力を傾けていたからわかるんだよ君のこと、と高橋選手の頑張りに全力で受容・共感を示しています。玉置さんはそりゃボロボロになるまで頑張って、ボロボロから立ち直ってここまで来ていますから並大抵じゃないというか、日本の有名バンドマンで随一じゃないですか?ここまでとことん完全燃焼して燃えつきて、また這い上がって全力燃焼できている人なんて。野球選手でいうと(またこのパターンだ!)巨人の吉村、大洋の遠藤……ロッテの村田……いやピンときませんね。それぞれ奇跡的な大復活を遂げてはいますが、玉置さんの復活のほうがスゲえとわたくし思っておりますんで。ですから、玉置さんにこうやって応援されるということは、わたくしにとって往年の名選手を超える奇跡の復活を遂げたなみのとてつもないことなのです。それがあんな形で引退させられて、しかも監督としては十分な成績を残せずにまた原かよ……と思わずにはいられません。いや、原監督に恨みがあるわけじゃないんです(笑)。大洋のエース遠藤の後輩ですから!でもあなたは神奈川のスターなんですから巨人など断って地元の球団に入ってもよかったんじゃないですか?(45年前の恨み節)そんなこと言ったら高橋選手だって高校時代は桐蔭なんですから(以下略)。ちなみに玉置さんは巨人ファンだそうですから、ここに書いてあるのは100パーセントわたくしトバの願望であって、玉置さんの意向とは全く無関係であることをここにお断りしておきます。
さてなんのこと書いてるのかよくわからなくなってきましたが、「どうにかやってきた」経験と自信があるからこそ、「僕だってまだやれる」と玉置さんは力強く高橋さんを励ますのです。傍観者じゃない、大上段の指導者じゃない、一緒に険しい山を登っている求道者同士であって、自分が先達として後進を励ましつつ自分も登っているという姿勢を示します。前にも後ろにも誰もいない坂道を、人間は登れないものです。先を行ってくれる人がいて、そして後ろから来てくれる人がいてはじめて、人間は辛い道を前に進めるのです。玉置さんは音楽界での経験からそのことをよく知っているからこそ、プロ一年目のルーキーたる高橋選手にそういう姿勢を示すことによって強い強いエールを送ろうとしたのだと思われます。
そして曲は間奏のギターソロ、フレーズとしては非常に簡単です。音は異常にナイスですが、はっきりいってなんてことないソロです。ですが、「オ、オ、オ、オーオ、オオオオオ」という声楽器によってすべてが回収されるこの間奏になんと似つかわしく簡素で適切なソロであることか……超速弾きしちゃうぜ超ブルージーな泣きを入れるぜとか、そういうギタリスト的な野心が全くなさそうな玉置さんだからこそできる、声楽器と一体になって並び立つとんでもないソロです。ギタリストだと逆にこれはできないと思います。
「なんだって」と声フィルインからサビ二連発、倒れそうだって〜這いつくばってだって〜君のためなら……いや泥んこになったって?一番よりもっとひどいことになってる!それでも支えるんだ、力になるんだ!
「うまくいかんくたって」……『JUNK LAND』あたりから、こういう日本語としてちょっとおかしい言葉を歌詞に使う傾向が鮮明になってきていますが、リズムと語感に説得力がありすぎますから、これを日本語としておかしいと指摘するのはあまりに野暮すぎます。歌詞カードみて冷静に考える時間をもたなければそんなツッコミ入れることすら思いつかないでしょう。このブロークン日本語はそれくらい凄まじい必然性があるのです。英語ではAren'tをAin'tとブロークンにいうことがありますが、それに相当するものだと考えると納得がいきます。
君のためならいつだって……何するんだろう?笑って(い)よう?笑うだけかい?なんてツッコミも思いつかないくらい玉置さんがニコニコ元気でいてくれることを思い浮かべるとこちらも元気になってきます。「太陽みたいに笑う君はどこだい」と、この五年前に松井さんが書いた歌詞(光GENJIの「勇気100%」)に対する玉置さんからの返答なんじゃないかと思い、わたくししばし呆然として、涙が出ました。五郎ちゃん、俺やっとわかったよ、俺はいまここにいて、太陽みたいに笑っているよ、だから安心してねって玉置さんが言っているんじゃないかと思い……でも実はそんなこと全然なくて、この曲はやっぱり高橋由伸選手への応援歌なのでした(笑)。
「(高橋選手のために)笑ってよう」と繰り返し、曲はアウトロへ、エレキギター、シンセ、声が次々にリードをとり、最後にフェードアウトせず「ジャーン!」と終わります。わたくしの大好きなパターンです。だから玉置ソロシングル11位なんて全然納得いかない!(笑)1−3位あたりはもうどうしようもないのはわかってるから、4位くらいにはなってくれよ!と思わずにはいられない名曲なのでした。
価格:2,601円 |
おお、前に4Kかなにかで観られなかったやつですね。これは与薬!いや予約!かならず観ます。切腹しても観ます。
ごめんなさい、性は車、名はトランジスタで笑)
あなたには、安全地帯のもう言わずと知れた
泣かずにはいれない、泣くよ鶯、平成生まれは今では令和に続いて。
話が思い切り180℃カーブしまして、
Gwにようやく地上波で安全地帯40周年ガーデンシアター公演やるようです。要予約!!
なんか期待されてる!というか責任がズシリと!とりあえず一部伏字にして責任を果たそうとしてみました!(笑)というか、なんで〇性限定なんです?
北の富士はわたしが小さいときにはもう引退して親方でしたねえ。もう千代の富士が横綱に上がっていて、大関が若島津や隆の里のころから見始めたんだと思います。そのころ、もう安全地帯はセカンドのレコーディングしてましたね、いま思えば。
匿名は匿名でいいところもあります。でも昔はインターネットでさえ匿名でなかったころ……あ、いやあれは海外のサイトだったからなんですかね、よく実名でやり取りしてました。ICQとか使って。
六土さんがインタビューで話してましたとおり、その時期から種は蒔いてて、その芽が地球上にいまも根付き様々なアーティスト達にリスペクトされているのですなあ。
元横綱北の富士さん(元九重親方 横綱千代の富士の師匠)が、千代の富士さんが横綱に
なった際に千代の富士に言った言葉が、
「やめるときは、サッとやめような」
だったそう。北の富士さんも旭川出身で、
玉置さんは子供時代相撲が好きで、
北の富士の相撲のときは北の富士を応援し恐くてラジオを聴けなかった、机の下に隠れて聴いたそう。それくらい相撲が好きだったと、とんねるずの石橋貴明さんがゲストでみえたラジオで託さ話してくれました(笑)
何を言いたかったのかというと、
ここをみるひと安全地帯好きな方世界中に大勢いると思いますが、もっと匿名ではないコミュニケーションを僕ももちたいと思います。皆、本当はそういうことに飢えているんだと思います。悪いけど2ちゃんとか5ちゃんとか⚪⚪(笑)
話す言葉に全責任を負う必要が生じるけど、とりあえずこのブログの場合はトバさんがいちどは拾ってくださり世の中に出る流れになっていると思いますので、安全地帯好きな方がいろいろ人生であることを安全地帯の音楽で救われました勇気がもてました!みたいなのを僕も聞きたいです。絶賛、田園地帯募集中!(あなたにのピアノもしくはキーボードを弾ける10〜60代〇性限定)*一部伏字にしました
巨人はオロナミンCでしたね。とにかくオロナミンCと、「ファイト一発!」のリポビタンが有名すぎて、ほかがみんなパチモノ扱いになりかねないくらい群を抜いていました。
K町……はて。錦糸町かな?(いきなり当てに行くスタイル)錦糸町なら江東橋で馬券を買えるから便利……いやどうせなら中山行っちゃいますね。武蔵野線と中央線は誘惑魔列車なので乗ってはならない……。
重い荷物を抱える人を見て、胸が潰れるのが人間ってもんなんだと思います。でもいちいち胸を潰してるとこっちの身がもたないくらい荷物抱えている人がウジャウジャと佃煮にするほどいるのが都会です。おらこんな村やだーと東京さ出てきた人たちは、それらの人をいちいち気にかけないという暮らしに憧れているのかもしれませんが、少なくとも威張るようなことじゃないし、ちょっとはモゴモゴ(穏当でないのでちょっと伏字)いいんじゃないかなーと常々思っております。
ルーキー高橋選手の応援ソングで滋養強壮ドリンクのCMでよく流れててなつかしさ満点!確か1998年では?この時期わたしも東京はK町に(またぼやかす)居住し音楽に日々いそしむ浪人時代を送ってました。今ではすっかりとヘアーは自然な剃りこみも勝手には入っており、ライヴも相も変わらず閑古鳥が出たり入ったりしてます。早く田園地帯やりたいすね!マスカレード、真夜中過ぎ、どーだい、あなたに。
ルーキーは君のためならいつだって〜の、玉んソングの王道。すぐ後のベルも同じで、ちょっと玉置さんはその時期背負いすぎてるけど、愛は相手の重たい荷物を持ってあげようとする気持ちなんだと、このソングから教わりました。