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玉置浩二『GRAND LOVE』九曲目、「REALX」です。
曲は玉置さんの囁きから始まります。そうもっとやさしく……くちびるかさねて……いやちょっと待って!これ、指南してるでしょ!なんで?そんな指南されたくない!(笑)。と、のっけからわけのわからない状況です。
そして歌が始まります。ハットとバスドラに、たまに極弱のスネア……ギターでF♯mに装飾音を入れながら弾いたような単調なリズムの伴奏、すこしトーンの明るいエレキギターで入れたオカズ、そして時折入るチューブスクリーマー的歪みのギターがこの気だるい感じを切り裂きます。そして歌詞はひたすら情事の予感をさせるきわどさ、そしてリズムが幾重にも絡まって変拍子を思わせる複雑さ(そして実は変拍子はないという)……これは『安全地帯V』で玉置さんがBAnaNAと一緒にやっていた(と思われる)パターンでは!「こわれるしかない」とか「不思議な夜」とかですね。あのころはBAnaNAがこういう
そんなやりたい放題の玉置さん、徹底的に遊び心のみで曲を作ろうとしたかのように、ひたすら意味深さのみで突っ走ります。「そこで誰かみてて そして何もしないで」って、酷くないですか。あげくに鍵をかけてこいって?千夜一夜物語を残酷な王に毎夜語りつづけるシェヘラザードを必死にサポートした妹デゥンヤザードだって、そんな扱い納得しませんよ!とよくわからない怒りをいったん抑えて冷静に考えてみますと、最初の玉置さんの指南がウザいので部屋の中の恋人たちがそれをシャットアウトしたいという意味じゃないかと思い至ります。誰にも邪魔されたくない、ましてやガイドなんてされたくない、二人きりで愛を貫くためにかえって二人以外の誰か、外界シャットアウト担当者が必要になるくらいと思わせるほどにこの世はお節介で教えたがりの情報社会になっている、ということを訴えたかったんじゃないのか、という可能性を思いつくのです。まあ当時は情報社会といっても、端末がいわゆる「パソコン」と「ケータイ」でしたから、いまの情報社会とはその形態が全然違うんですけどね。
当時はたしか……わたくし今は亡きデジタルツーカーのケータイを使っておりました。そしたらいつのまにかJ-PHONEに変わっていました。勝手に何をしやがる!そしてほんの数十文字だけやり取りできるショートメールが流行り始めた時期でした。「なにしてる?」と打つのに「な」一回と矢印、「な」二回、「さ」二回、「た」四回、「ら」三回、「?」はもう打ち方も忘れました(笑)、と合計で十三回もボタンを押さなければならないという拷問仕様でしたが、若者たちは順応が早く、ほとんどブラインドタッチでバシバシとメッセージを送りあっていたのです。わたくしその手間に頭にきてメールは絶対PCで出すと決めており、携帯に来たメールは基本無視していました。そして1999年、わたくしの携帯電話番号が勝手に変更され、020-だったのが090-2になりました。いいかげんにしろ勝手に何しやがる!(笑)。まあ、いろいろ模索の時期だったんでしょうね。ほんの数年の間に、PCを立ち上げてないと来なかったメールが、それこそ情事の間にもバンバン来る時代へと移り変わっていたのです。当時若者だったわたくしでさえ戸惑ったったんですから、上の世代の人はさぞ驚いたことでしょう。
さてBメロというかブリッジというか、シェヘラザードを持ち出しておきながら情報社会への文句で浮いてしまった「アラビアンNight」を高音で歌い、一気にしっぽりきます。「アンティークのスタンドライドがひとつ」と見事なリズム感覚で一度上がったテンションをリラックスさせるかのようにまた低音に戻ってきます。こういうセンス、ゾクゾク来ますね。さらに歪んだギターで「ペーペペペー!」とまたテンションをじわじわ上げてきます。そして「ベサメベサメムーチョ」(kiss me kiss me more!)とわざわざ西語で淫靡な雰囲気を盛り上げてきつつ「指を絡ませて」と言語的な気分は盛り上げるのにメロディーは落ち着いていくという対比で煽ってきます。このあとドラムが入りますがギターソロ、佐野さんの管楽器で間延びしたんじゃないかってくらい登場人物のテンションをリラックスさせてきます。こっちの気分はあんまり緩まないんですが(笑)。そして玉置さんが何事か囁くんですが……おそらく焦らしているのでしょう。「ヒッフー!ヒッフー!ヒッフー!ヒッフー!」と謎のボーカルリフも焦らしているのです。それが証拠に二番に移行してしまいます(笑)。
間奏から引き続きドラムと佐野さんの管楽器をバックに加え曲はまたAメロ、また思わせぶりな言葉が並びます。ヴェルヴェットのラグを床に敷いて顎なんか這わせています。そして「ピンクシャンパンのシュプールSpur」と今度は独語です。スペインだったりドイツだったり忙しいことでと思いきや、とつぜんベースが入り、一気に下から、それこそ床から突き上げられたかのように曲のテンションが最高潮にまで高まるのです。これは初聴では予想できません。ドラムもこれまで曲に合ってるんだか合ってないんだかよくわからないアクセントで叩かれていたのに、ベースが入るや否や思い切りロックのアクセントでバシバシと攻めてきます。いままでリラックスさせられていたのに!これはいやらしい!(笑)。
そして「踊り明かそう」「裸になろう」「肌寄せ合おう」とシャウト気味にゴキゲンなセリフを歌うのですが、最後に「リラックスして」と二度も叫んできてすっかり混乱します。リラックスどころじゃないだろいま盛り上がってるんだから!と普通には思うのですが……
思いますに、欧米人の「リラックス」は通常わたしたち日本人が使う「くつろぐ」的な意味ばかりではないのかもしれません。けっこう緊迫したときでも平気で「Hey, relax!」と言ってきてイラっとさせられることがあるのですが(笑)、laxには緩むという意味がありますから、たぶん緊張を「緩めろ」って言っているんじゃないかなと思われるのです。普通に考えれば緊張しているのに緊張を緩めるなんてできるわけがありません。キノコを好きでないのにキノコを好きになれというくらい無茶な命令ですが、もちろんそんなことは欧米人だってわかっています。ですから、お前はいまテンションが高すぎて失敗する状態だぞって知らせているくらいの意味なのでしょう。この曲の玉置さんも、歌の登場人物もいま異常なテンション状態にあって、せっかくのふたりきりの夜が楽しめない状態になっているぜ、緩めろ、緩めるんだ……ああ、やっぱり指南している!(笑)。
曲はおそらくストラトキャスターの切り裂くようなトーンで最後まで突っ走ります。最初はロングトーン、そして「ギュバッバー!ギュバッバー!」と、おそらくかなり強く弦を押さえ相当強いピッキングで出したと思われるアタックの強い残酷トーン、そして「ギュギュギュギュ!ギュイーン」と、玉置さんのソロにありがちなメロディー的にはあまり必然性のないトレモロを駆使して曲は終わっていきます。
解説してみてわかったのですが、わたくしこの曲がいちばんこのアルバムで好きかもしれません。『安全地帯V』のころは「不思議な夜」を聴いて何だこの曲よくわかんねえと思う気持ちがなかったわけじゃないのですが、干支を一回りしていつのまにか大好物になっていたようです。「不思議な夜」をはじめて聴いたのは、1998年から数えて人生ちょうど半分のときでした。それから倍の年齢になって聴いたこの「RELAX」にはそれこそ一周回って引き付けられたのでした。ほんとうに長い一周でした。
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おお、ワンちゃん!生き物ですから敏感なんでしょうねえ、そしてわたしらもそれを隠し通せてないんでしょう、言葉にして喋らないだけで隠せるわけでない……玉置さんみたいにシャウトしてでもリラックスするべきなのかもしれません。
話変わりますが、自分、犬を飼っていまして、飼い主がリラックスしていないと、犬に移るんですよ。吠えやすくなったり…。人間同士でも同じなんですけどね…。
僕以外勝手に喋らないでください、ですか。玉置さん言いそうですね。というか当たり前のことなんですが。座れ座れと言いたくなる人の気持ちもわかります。
ビデオの「RELAX」楽しそうでしたね。聴いてて楽しい曲と演奏してて楽しい曲というのは必ずしも一致しないんですが、これはどっちも楽しい部類でしょう。CD聴いてるだけだとよくわからなくて、ビデオ観るとかライブ行くとかでわかることあるんですよね。
リラックスしてお読みください笑
グランドラブツアーを私、偶然初日と最終日に観に行っていました。初日は何故だかどこかの席で座れ座れ!と叫ぶお客がいて、客席からはあまりよくわかりませんでしが、玉置さんはMCで僕以外に勝手に喋らないでください、と確か言ってライヴは感動しました。最終日は…このリラックスのイントロを弾いて全員下がって、アンコールのメロディー。
グランドラブのライフインミュージック、のビデオでこのリラックスのギター間奏、コーラスをバンドメンバーで合わせてる映像が本当に楽しそうでした。
リラックス!とシャウトするのは何故だろう?とずっと考えてきましたが、答えは出ません笑 きっと合わないからそこが面白く狙いなのでしょう。リラックスが必要な位なド緊張する場面?を想像。
タイトルはリラックスですが、メインはその直前の踊ろう、裸になろう!ですから、リラックスして!はダメ押し若しくは壁ドン笑 効果でしょうか。