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玉置浩二『GRAND LOVE』七曲目、「カモン」です。
カッ!(カッ!)カーン!カッ!(カッ!)カーン!カッ!(カッ!)カーン!……というリズムに合わせてギターを弾いていたらこういう曲になりましたという、玉置さん一番搾りのニオイがプンプンする曲です。ジャムをやっていたらたまにいい感じになって、ああ畜生いまの録音しとけばよかったなと思いつつ演奏の中に消えていったアイデアというのはバンドマンなら誰でもいくらもあるんだとは思うのですが、玉置さんの場合はおそらくすべてがよいアイデアなので常に録音中でOKなわけです。この曲は、そんな無尽蔵な玉置さんのアイデア奔流を一部だけ切り取って新鮮なまま曲として仕上げたものなんじゃないかと思えます。最初に思いついた「ド」ラシが「ドなし」になって、ドがないんだから「レミファソラシ」だよね〜「ラシ」だから「無いらしい」「あるらしい」、「しい」だから「険しい」「悲しい」だよねえって遊んでいたんじゃないか、なんて思えてくるほど作曲の源流に近いところであるように思われるのです。
リズムはパーカッション……鈴の音と、なにやらカツーン!と響きと音抜けのやけにいい打楽器で、シンプルなセットです。そしてゴリッゴリのセッティングをしたベースです。前作までけっこう須藤さんが弾いていたベースを今作からは玉置さんがすべて弾くようになったわけですが、この曲が今作ベストのベースだとわたくし思います。遊び心と装飾カッティング音に徹しているギターではなく、このベースがこの曲をリードしているといっても過言ではありません。
曲は玉置さんの「カモン」というやさしい囁きではじまりすぐにクリーン〜クランチトーンのギター二本のアンサンブルがはじまります。シャリーン!カローン!というギターはほんとに武沢さんかと思うほどの鈴鳴りです。そしてリックを奏でるほうのギターもよくミドルの効いた音で……高音でキュイーン!と泣かせるタイミングもこれがまた……こんなふうにギターの音を中心に聴いてしまうのはギタリストのサガでもあるんですが、当時はそんな聴き方してませんでしたから、これは現在のわたくしの感想なのです。最初はなんか怠い曲だなくらいにしか思ってなかったと思うんですよ。だって当時はめちゃくちゃ過激に歪むエフェクターを手に入れて悦に入るとか、せっかくのPEAVEYアンプでドンシャリセッティングにしたスカスカなディストーションをいい音だと思っていた始末ですから。実家にいた頃に使っていたGAINツマミが二つある15Wくらいのフェルナンデスアンプをアパートの湿気ですっかりダメにしてしまって修理もせずにポイっと捨ててからはアンプをもってなかったくらいです。スタジオのジャズコさえ使えりゃいい!ジャズコにディストーションペダルをぶち込んでギャンギャンに鳴らせばそれでオーケーだ!というメタル脳でしたので、というか当時はベーシストだったような気もしますが、玉置さんのこういうギターの機微などに気がつくわけがないのでした。
よもやま話が続きますが、その後自前のアンプを買ったのは2002年ですかね、RolandのCUBE30を買いました。ジャズコモードがあったからです(笑)。いや、これいいですよ、ジャズコよりぜんぜん使いやすくていい音です。たぶんヤフオクとかで安く売ってますから、いまからギター始めようかなって思っている初心者さんはぜひねらってみてください。とにかく壊れにくいですし持ち運びしやすいです。30Wなんて数字を真に受けてはいけません。これは昔の感覚でいうと50Wくらいの音は平気で出ます。なにより筐体が頑丈なのでかなり音量アップにしてもちゃんと鳴ってくれるのが重宝します。500人規模のホールでもわりと十分に鳴らせる音です。あまりの使い勝手の良さにわたくし買い足して二台持ってます。初心者セットなどにフラついちゃダメですよ。あれはギターもたいがいですがアンプはマジでお察しです。わたしなら予算めいっぱいいいギターを買ってアンプなんか後回しでいいし、あとから中古でCUBEです。やや、田園地帯でギタリスト募集してますのでちょっと熱くなりました。ああ、ベーシストも募集してましたね。ベースは……ハートキーのA25かA35がいいと思いますし実際わたしもA35を使ってますが、こっちは数千円では手に入らないような気がします。鼻息荒くギターアンプのことだけ書きまくっておいて、ベースのことになるとぜんぜん役に立てません。
で、そのわたくしが役に立てないベースのことなんですが、この曲、ベースに注目するとガシーン!ガシーン!という歪みの多めなわりと攻めた音作りになっていますよね。ギターがチャリチャリポロポロと何本か重ね取りして音数が多いぶん、存在感あるベース音で全体を引き締めている印象です。ドラムのバスドラとスネアがないぶん、ベースが打楽器の役割も兼ねてるくらい重要な役割を果たしています。内閣総理大臣が閣議決定を阻もうとする国務大臣を罷免して自分が兼任しているくらい枢要、というか主人公にほぼ近いです。もちろんメインは玉置さんのボーカルなんですけども、もしかしたら玉置さんはベースを弾きながらこの重要さに気がついて、わざとあまり意味のない歌詞を作ったんじゃないかというくらいベースの存在感がボーカルに迫っています。
で、その存在感あるベースとごくごく控えめなピアノがサビ前で「ジャッジャッジャッジャッジャッジャッジャッジャッ!」と下降フレーズを何度か入れますね。これが一度で頭に入って抜けません。怠い曲だなと思っていた当時ですらそうでした。この曲の本体はここなんじゃないかってくらい印象が強く残ります。さらに、曲のラスト近く、「Tru ru ru…」「今日も一日元気でいらして」でベースがボーカルをなぞるように高音部を奏でます。これはベーシストだと思いつきにくいベースの使い方であるように思われます。ギターとユニゾンにすることはなくはないですが、ボーカルとユニゾンするとは!ベーシストはボーカルを活かすようにしつつ、かつ曲の屋台骨を支えるようにするフレーズを渋く弾こうとするものだとわたくし思っておりました。ハードロック馬鹿だからそうなのかもしれませんが、歌謡曲だってそんなにベースが攻めてくることは寡聞にして知りません。これはベースを玉置さんが弾くからこそ起こったことだと思うのです。ベースの定石などあまりこだわりを持っていない玉置さんと、ベースにどれだけ迫られてもそれによって存在感を消されることのない力量をもつボーカリストである玉置さんとが同一人物であるからこそのアレンジなのでしょう。わたくしベーシストの経験が豊富なわけではないからなおさらそうなのかもしれませんが、無意識にボーカルに遠慮しちゃってこんなフレーズ弾こうと思わない、というか思いつかない、こういう発想がないです。
さて、ひさしぶりに歌詞のことを後半でまとめて書こうかなと思っていたのですが……どこがカモンなんだかさっぱりわかりません。おいで!って言ったってなあ……たんなる穏やかな暮らしじゃないのかこれと思わされるのです。冒頭に述べた通り「ド」ラシが「ドなし」になって〜とそこから組み立てたんじゃないのか……まあ、それにしてもその穏やかな暮らしをちょっと覗いてみましょう。
最初は外を歩いていて家に帰ります。小脇にサボテン抱えて子猫まで拾ってます。園芸屋(店員が「気になるあの娘」)の帰りでしょうか。子猫に棘が刺さっていないか心配になります。家に帰ったのはもう日暮れ後だったらしく、明かりをつけて洗濯物を取り込んでいます。うーむなんという平穏な暮らし!当時のTVショーはまだまだ現代に比べて金つかってましたからやかましかった……ような気がします。当時からあんまりTVみないんでよく覚えていませんが。「ダウンタウンのごっつええ感じ」が前年97年に終わっていまして、わたくしテレビにエンターテイメントを期待するのをほとんどやめておりました。もっぱら深夜から朝にかけて衛星放送の副音声を流しっぱなしにしておりましたので、当時のテレビの思い出を友人と語り合うことがあんまりできないのです。ちなみにこういう生活はこのあと2001年でも続いていて、あの同時多発テロをほぼリアルタイムで観たのでした。
そして夜のテレビ、ダンディズム、ファンタジー、いろいろな趣向のドラマなり映画なりが流れますし、たまにハマり切った人物が出歩いていることもあるのでしょう。冷静に考えれば単なる痛い人たちなんですが、若いうちはそれが個性だと勘違いしたり、さすが都会は多様性と無関心の街だなどとうっかりちょっと感心したりするものです。ですが、そんな世界にあこがれるのは若いうちだけです。30代も後半になれば「晴れた空」こそがありがたいし、果てない人生の道を歩くことのほうがよっぽど重要事なのです。ちなみに軽井沢を含む地域を東信(東信州の略でしょう)というのですが、あそこは行くと大抵晴れているんですね。年間日照時間が長いような気がします。ですから「晴れた空」を求めて玉置さんが軽井沢に行ったということがあるかもしれません。
そして曲は二番、歯医者をサボったり友達の仕事を世話したりしています。まるでテレビドラマの主人公がビートルズの「ペニー・レーン」のようなほんわか具合の街で生活しているような描写です。そんな主人公がとつぜん旅に出るのです。あつかましいTOKYO STYLEにバイバイしちゃうそうですから、このペニーレーンは東京だったのでしょう。はあ、ダンディズムとか夢のファンタジーに……都会にはいろいろ演出はありますがぜんぶ作りもの紛いものですしねえ。
そしてTOKYOを離れた玉置さんは星の降る夜の下にやってきます。軽井沢の星はよく知りませんが、満天の星空の感激はよく知っています。少年のころ、とある独立峰に夜の涼しさを利用して登ったことがあるのですが、その夜は快晴で、信じられないような星空に休憩の間じゅうずっと見とれていました。華やぐ都札幌は遥か彼方、街の灯りはまったくないか、あっても気にならない程度です。あれは、そう……すべてが吹っ飛ぶくらいの衝撃でした。街の暮らしにあるもの、若かった自分が夢中になっていたものさえが、ひどくつまらなく思えてくるのです。ああ、なんにもいらないから、この星空だけ毎日観て暮らしたいなと思いつつ山頂は近づき夜は明けてゆきます。満員の山小屋になんとか場所を見つけて少しの間横になり、朝もやが消えてから下山しました。そして街に帰るとすべてが夢だったんじゃないかってくらいいつも通りです。部活には毎日出ないといけないし、テストは近づいてくるし、気になるあの娘はあいかわらずつれないし(笑)。
気づくといつのまにか控えめにドラムが鳴っています。曲は最後のパートで「〜て〜て〜て〜て」と連用形つなぎで終わっていきます。毎日同じことの繰り返しだ……という都会人の嘆きや失恋人の嘆きといった鬱なものをつぶやき続ける手法として非常にメジャーなんですが、玉置さんはなんと充実した生活の描写としてイキイキと歌います。今日も明日も一日元気、両手を広げて仰いでも何にもぶつからない空間の広さを楽しめること、天まで届けと大声で歌うこともできる開放感、眠る間に毎日明日もこうでありますように祈る余裕、眠る前KISSを交わすくらい体力や精神力が消耗しないでいられる……最高じゃないですか。わたくし眠る前KISSなんてありえないですよ(笑)。だって一秒でも早く寝ないと朝起きられないじゃないですか。あああ。
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わたしもコロナ騒ぎの間、やってられなくて酒を二年間くらいかな?飲んでました。普段は全くに近いくらい飲まないんですが。はだしのゲンでお父さんが竹ヤリ訓練にベロベロで出かけていったような感じです。ギャアア浩二あんちゃん大変じゃああコロナが、コロナが終わったそうじゃ、分科会のバカタレバカタレ、オドリャ許さんよ、とかブツブツ言いながら(笑)。おかげでまた酒は飲まなくなりましたが、別に嫌いでないのでまた世をはかなんで飲むかもしれません。
ギターはですねえ、マイク肝心ですよね。いちおうハードケースに入ったようなちゃんとしたコンデンサマイク持ってますが、毎回あまりにセッティングが面倒なのでピエゾを使っちゃいます。エレキギターならアンプ前に固定ですからそんなに大変でないんですが、アコギはもう大変で大変で。この前も一台ドリルで穴開けてFISCHER入れちゃいました。ギター本体はわたしもあまり舶来モノに興味がないのでヤマハです。バスカリーノとかギブソンとか弾きこなせる気が全くしない!
【追記】シールドはカナレばっかりです。モンスターケーブルとか使ってた時期もありますが、エフェクターの配線がカナレとかなのでほとんど意味がないという。ちょっとこだわってることとしては、アコギとかレスポールとか用にOYAIDEのL-Sフラグで作ってもらってるくらいで。わたくしハンダゴテ下手くそなんです。機材にこだわるとキリがないのでそのへんはテキトーでいいことにしてます(笑)。
いやぁ、大変愉しく酔わせて読ませて頂きまました。ギターも楽器は特に本体とその音を拾うマイクがまずは大事ですかね。それからシールドや、アンプなんかを順に揃えていくと。楽器で私もおそらくは国産の新車が悠々買えるくらいはお金を払ってまして、一時期は借りてましたから、その時期を終えて数十年はローンはしないで、友人から借りっぱなしのモーリスでずっとライヴやってました。(ドラムと並行してのソロでの話しです)
数週間前からようやくお酒を私は断ちまして笑
だんしゅイン天国(ダンスイン天国)
断水状態なので、非常に色々な音楽が酔わずに酔わせてくれる?不思議な気持ちがずっと流れております。三年前もコロナ禍で五ヶ月禁酒した時期もありましたが、ライヴ自体も禁止されていたので、また何となく飲み始めて三年が!!でもぴたりやめられましたし体重も減って参りました。ありがとうございます。
この曲の頃の玉置さんは軽井沢にどっぷりつかりはじめた頃でしょうか。暴れまくりの笑ワインレッドとニセモノの前。玉置さんらしいというか、親戚にひとりくらいいそうな、飄々とした超大金持ちの自由人みたいな風貌。ギターベース弾きこなす軽井沢音楽人になった感じです。
私も寝る前毎日祈って、眠る前キッスを交わしたいっす!(川の字の頃が既に懐かしいです)