価格:2,514円 |
玉置浩二『GRAND LOVE』八曲目「BELL」です。シングル「ルーキー」のカップリングで、リズムのプログラミングとアレンジを藤井さんが行っているとのクレジットが記されています。また、この曲も缶コーヒーJIVEのCMに使われていたようです。
なにやら笛ライクなシンセがメインメロディーを高音で奏でている後ろで、ポコポコしたパーカション(おそらくこれがカルロスさんです)と、ふつうのスネア音と「カシーン!」という歯切れのいいシンセパッドの組み合わせでいちいち曲を切り裂くほどの切れ味で鳴り響きます(これが藤井さんの手によるものでしょう)。そしてアコギを細かく高音弦だけカッティングしつづけ、ベースも細かくいちいちスライドをしつつブムムブムムム、ウン!ブムムブムムム、ウン!と……まるですべての楽器が打楽器かのようにあちこちで鳴らされています。まるで南米大陸のポンチョ着たラテンミュージシャンのライブを観たいるような感覚です。そんなの観たことあんのかと言われそうですけど、あるんですよこれが。なぜ誘われたのか謎なタダ券ライブでした。細かく刻まれる大量のリズム楽器をバックに、それに反するようにやけに抒情的に朗々と響く笛と歌……そのライブは1999年だったと思うんですが、あれこの感覚どこかで……ああ、「BELL」か、うわー玉置さんの音楽にはこんな方面の要素もあるのか!おれスゲエことに気がついちゃったかも!でも誰に言っても伝わる可能性ゼロ!(玉置リスナーの友達ゼロ人)という孤独な気付きでした。
そしてラテンミュージックのように玉置さんの歌が朗々と始まります。有名なムービースターが無名のヒロインと恋に落ちて……スターは「死ぬまで」って言ってるのにヒロインは「今夜だけ」なんてかわしています。いったいなぜ?ささやくような「抱いて」が切なすぎます。相手はスターなのに自分は無名、おおよそ釣り合うものではない、うまくいきっこないとヒロインが理解してしまっていたという悲しいストーリーはもちろん思いつきますが、真相は玉置さんしか知りません。
そしてハモリのコーラス……上下に入って三声になっていると思いますが、「WOW WOW」から引き続いて、おそらく玉置さん本人からの励ましとなるメッセージが力強く歌われます。運命に泣いたけども愛は失っていない、ここからはコーラスなしで、夢をもちつづけるんだ、さあ胸のベルを鳴らして元気よくまた歩き始めるんだ!……すでに何度も用いられた手法ですが、このコーラスありとコーラスなしのコントラストが鮮やかで息をのみます。
そしてまたケーナのような響きをもったシンセ……この旋律は全音符を大胆に使った抑揚数の少ないもので、作曲者からするとけっこう思い切りが必要なのですが、玉置さんは曲に最適だと判断したらためらいなく使う方なんですね。わたくしの場合ノーアイデアでコードトーンを伸ばしただけなんじゃないのか?と自分で疑ってしまって、なかなかこのような手法は取れません。まあ、疑ってしまう程度のメロディーなんでたいしたものじゃないってことなんですが。
そして二番、今度は世界的シンガーソングライター達です。うーむ、ボブディランとかですかね、「自由と平和の鐘を鳴らそう」……Belle Isle美しい島で出会った女性は女神のようで……いやBelleだから鐘Bellじゃないですね。ボブディランはおそらく関係ありませんが、彼くらい有名でないと「世界で有数」ってことにはならないでしょう。で、そのボブクラスのシンガーソングライター達が「自由と平和の鐘を鳴らそう」などと歌うと、清純なあの娘がすっかりシビれて「抱いていて…いつまでも」なんて言うようです!なんてこった!おれもシンガーソングライターになろうかなあってくらいビックリです。歌ヘタなんでうたえませんけど!
そしてまた「WOW WOW」から多声コーラスでサビに入ります。「すぐに走ってきて欲しい」……?どういうこと?ここでしばし考えさせられます。実際には曲は先へ流れていくんですからあとから歌詞カードとにらめっこして考えるんですけども。思うに、「ムービースター」や「シンガーソングライター達」は、すばやくないんです。彼らが不埒な遊び人だと言っているわけじゃないんですが(笑)、彼らは何しろ有名人で、忙しいうえに愛を届ける相手が多すぎるんですね。だから「今夜だけ」になってしまいますし、「いつまでも」って願ってもその場かぎりになってしまいがちです。「すぐに」といってもすぐには来られません。無名のヒロインや清純なあの娘はさみしがっているのにどうしようもありませんし、おそらく忘れられてるでしょう。かれらがもっている「力」は魅力的ですが、それよりもすばやくて「誠実な愛」がほしい、でもそうなると「力」は放棄しなくてはならないから魅力的じゃなくなる……というなんだかアンビバレントな切ない気持ちを表しているように思われます。口だけ平和の鐘鳴らしてる場合じゃないぜ!
そして曲は間奏、ラテンなパーカッションにのせてサックスに似た楽器(おそらくはシンセ)がソロを演奏します。歌メロに似ていない、なにやら陰鬱な音色、メロディーにギターのカッティングが絡んで一気に緊張感が高まります。玉置さんが終わり際に「ウン〜」とヒトフシいれるのもまたダークで……この曲は終始このような「陰」が見えていて、ラテンなリズムなのにぜんぜん陽気じゃありません。ラテンといったら陽気と思い込んでいるわたくしがラテンの人に失礼なんですが(笑)。
そして歌は最後のサビを繰り返します。「すぐに走ってゆくがいい」ムービースターよ、シンガーソングライター達よ、そして無数の忙しい男たちよ、言葉なんかで時を稼ごうとするな、彼女たちのベルは切実なんだ。リーン…リーン…リーン…愛してる…愛してる…愛してる…そのベルがいつまでも鳴っていると思うな、百の言葉よりも心だ、愛を失って泣く涙なんかいらない、泣くようなことになる前に会いに行くんだ!
そして無名のヒロインよ、清純なあの娘よ、そして無数の泣いている女性たちよ、負けてはならない、いまは運命のいたずらで離ればなれなだけだ、愛はまだ失われていない、夢を失わずベルを鳴らすんだ。リーン…リーン…リーン…愛してる…愛してる…愛してる…きっとそれは届くんだ。
曲はまたケーナライクなシンセがリードし、カツカツカツ……カツカツカツ……と悲しげに響くパーカッションをバックにホワン……ピーン!ホワン……ピーン!とシンセによるパッドの音を残して、曲は終わっていきます。どこにもベルの音はありません。言及されるだけ、歌われるだけだったのです。
リーン…リーン…リーン…それはまるで、また最初からやり直すような……会うといつでもまた恋に落ちるような感じなんだよダーリン(John Lennon. [Just Like] Starting Over, 1980)玉置さんが念頭に置いていたのは、この歌のベルなんじゃないかなあ、と思っています。最初に散々ボブとか言っておいてあれはたんにBelle Isle知ってる知ってる!とアピールしたかっただけで恐縮なのですが(笑)、ジョンこそは自由と平和を歌い、そして最も忙しく世界中を回ったシンガーソングライターであり、それだからこそ刹那の愛でなくておだやかな生活、家族、愛を求めてやまなかったミュージシャンであって、なにより軽井沢でその癒しの時を求めた人だからなのです。
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音楽の旅は果てしなく長い……わたくし安全地帯玉置浩二ファンの宿も経営しつつ自分もあちこち旅するような気持ちでおります。またぜひお寄りください。
音楽の旅、素敵ですね。安全地帯&玉置さんの旅をぜひトバさんに導いていただきたいな、と。これからも楽しみにしております!!
わたしもまだ観られてないんですが、NHKの深夜で安全地帯ライブやってたんですよ。わたし相撲とか碁とかみたいからNHKには喜んで金払いますけども、最近あんまり観られてません。
最近、NHKで番組やったんですね。
しかし、先日テレビが壊れまして、NHKも解約しました。
いろいろな意味で観づらいです。(笑)
愛を鳴らせ!ってやってましたよね。あれからもう10年近くたちました。ミュージシャンはいつまでも鳴らすのです。
昨日は眠れず、NHK深夜観てしまいました。きっと沢山のファンが見てるのだと思うと、コンサートに来てるような、不思議な気持ちになりました。田中さんの演出は見事でした。ありがとうございます!
アポロの二人組……ポルノグラフィティさんでしょうか?すみません不勉強でわからなくて。「暁」とかカッコいいなくらいしか……ラテン調のカッコいい曲もあるのですね。
べつにイレギュラーってことはないと思います。この曲、このアルバムの中でかなり早い段階で好きになってました。いい曲がいい曲の基準を作るというのは本当にあると思います。よい音楽の旅をこれからもしていきましょう。ひたすら安全地帯一箇所に留まり続けているわたくしが言っても説得力あんまりないんですけども(笑)。
この曲は玉置さんの楽曲的にはイレギュラーな曲かもしれませんが、個人的にとても好きな曲です。初めて聴いた時玉置さんの楽曲の幅広さに衝撃を受け、さらにのめり込むきっかけにもなりました。
ラテン調と言えば某アポロの2人組バンドの曲を後に好きになったのですが、玉置さんの曲を聴いていたことで良いと思える曲の土台が築かれていたからなのかなぁ、と妙に納得しました(笑)