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玉置浩二『GRAND LOVE』一曲目、「願い」です。
Music by Koji Tamaki, Satoko Ando
これは歴史的なクレジットです。玉置さんがほかの人と一緒に曲を作った?いや、作ったことくらいあるでしょうけども、共作を安全地帯・玉置浩二名義で発表するのは初めてのことだったのです。ましてやそれを玉置さんが歌うなど!わたくし衝撃を受けました。恥ずかしながら軽井沢に移住したことも知らなかったし、安藤さんと恋仲というか音楽を一緒に作るほどのパートナーになるほどの仲だったことにも気がついていませんでした。プライベートのことは全然知らず、しかしこれまでの安全地帯、玉置浩二の音楽を知っているからこそ、この衝撃は大きかったのです。
そしてその衝撃は流れてくるサウンドでさらに増幅され、わたしの五臓六腑に波及していきました。静謐に始まるシンプルなドラム、ガットギターの響き、飾りのないベースの音……これは!『カリント工場の煙突の上に』の復活じゃないか!そう思いました。ですが、もちろん『カリント工場の煙突の上に』とはいろいろ違っています。なにより違うのは、流麗なピアノです。詳しくないですがスタンウェイの音じゃないですかね?わたしが作る曲でスタンウェイのシミュレート音を使うとこんな感じになりますが……そこは詳しくて耳のいい人に教えてほしいです。そして低音高音がきれいに混じって響くこのフレージング!このピアノこそが軽井沢時代の玉置作品を特徴づけるもの、別の言いかたをすれば安藤さんこそが玉置さんの音楽を決定的に変えたわけなのです。
「ほとんどあれはさっちゃんの曲なんだ」(『幸せになるために生まれてきたんだから』より)
志田さんがこの本を出してくれなければ知り得なかったことなのですが、これは共作をはじめて歌ったどころでなく、他人の歌を歌ってはじめて自分名義で出した、という大事件だったのです。玉置さんは安藤さんの作曲・演奏に惚れこみ、安藤さんの曲を歌って自分のアルバムで発表しちゃうだけでなく、安藤さんのアルバムをもプロデュースしてしまいます。「この人とは音楽ができるなって思った。さっちゃんは音楽を作れる仲間だと思った。そういうやつが欲しかった」(同上より)。いやいや玉置さんいっぱいいるでしょ!矢萩さんとか武沢さんとか!星さんとか!実際いっぱいいて、その仲間たちでつくった安全地帯が壊れ、玉置さんは孤独の底に叩き落されたような気分から須藤さんと一緒に再出発をしてここまで来ていたのでした。そこでまた「音楽を作れる仲間」安藤さんと出会えたのは、これはもう運命としか言いようがないでしょう。
なお、矢萩さんはこの後この二人に合流しますし、六土さん田中さんもツアーメンバーとして帯同してくれます。さらには武沢さんもコンサートで少しずつ混ざってくれるようになります。コンサートっていうのはステージの上が全てじゃないですからね。むしろステージの上はごく一部で、リハに移動にとほとんど年単位で付き合いますから、もう一緒に生活するようなもんなんです。ジョンはヨーコといることでビートルズを壊すような恰好になってしまったわけですが、玉置さんの場合は逆に安藤さんがいてくれることで安全地帯も復活していったんじゃないかと思えるほどに安藤さんの存在は人間関係にも音楽にもプラスに働いた、壊れたままになっていたものを修復する作用があったかのようです。もちろん全部偶然ってこともあり得るんですけども、偶然だっていいっす!安藤さんありがとう!
音楽を一緒に作れる仲間というのは得難いものでして、えてして自分だけが作っているような錯覚に陥りがちですし、仲間の作ったところが自分の作ったものをダメにしているような感覚さえ覚えます。ですから、基本的には一人でやったほうが気が楽なんです。ですから、玉置さんと安藤さんはよほど波長が合ったのでしょう。ヘビメタ雑誌のインタビューでは「ケミストリー(化学反応)」があったとよく海外ミュージシャンがインタビューで話していますけども(ドッケン再結成とかで。ウソつけ!付き合わされたミックとジェフが気の毒だよ)、玉置さんと安藤さんにもまさにそのケミストリーがあって、形成された結晶群がこのアルバムであり、とりわけこの「願い」が純度の高い結晶だったといってもいいでしょう。
ピアノもギターも、ベースもドラムも音が全体的にクリアで生々しいです。『カリント工場の煙突の上に』も決して悪くないんですが、このシン!と張り詰めた感じ、背景を防音壁やノイズリダクションでわざと無音にした感じでなくホントに静かなところで演奏しているんじゃないだろうか?いくら軽井沢ったって……静謐すぎるだろうと思わされます(ちなみに実際行ってみると軽井沢はすごい賑わいです)。
「すみれの花……」と玉置さんの歌が始まり、ゾワワ!と逆毛立ったんじゃないかと思いました。耳元で歌われているんじゃないかと思ったからです。なんだこれ?たぶんわたくしプレイヤーにCDをかけてコーヒーかなんか淹れに行ったんだと思いますが、思わず動きが止まりました。電子的なリバーブを使ってないから?歌い方に何か根本的な変化があったから?ミックスの方法論が違うから?何が何なのかよくわかりませんが、この驚異的なボーカルサウンドにすっかりノックアウトされたのでした。
そして歌われるのは、野に並んで咲くすみれ、森に響くつぐみの声、そんな素朴すぎる小さな愛の世界でした。ふたりでそっと暮らしていこうか、生きてゆこうか……なんという!なんというささやかで温かいメッセージ!恋の罪とか恋の罠とかは完全に昔の話、なんと玉置さん、安藤さんという得難いパートナーを得てサウンド面では『カリント工場の煙突の上に』と『JUNK LAND』を、詞の世界面では『あこがれ』と『CAFE JAPAN』『JUNK LAND』をなめらかにしなやかに融合させて、新境地を作り上げてしまったのでした。過去のパターンの組み合わせだろ?予想できたじゃないか何をいまさら驚く?いや驚きますよ。恥ずかしながらまったくこの方向性は見当もつきませんでした。あとから冷静に考えて「こう来たか!」ともう一度驚くくらいなのです。巨人からFAで出てゆくというビックリな離れ業を演じた駒田が中核となるマシンガン打線が試合のどこかで火を噴き、最終回を大魔神佐々木が点差を守るという黄金パターンでいきなり優勝した横浜のように、ものごとには組み合わせの妙というものがあって、それがピタリとハマると(横浜だけに)とんでもない輝きを発するものだと誰もが驚いたあの1998年、わたしは部屋でひとりこの「願い」を聴き呆然としていたのでした。大丈夫か!まだ一曲目だぞ!
そして「いつまでもいっしょに〜」と、なんだか縮こまったというか、伸びやかなところのない旋律で玉置さんが震えるようにささやかな願いを歌います。そしてそれが歌の一番二番の切り替わる箇所になっています。いわゆるサビらしきサビでは全然ありませんが、位置的にはサビです。玉置さんの曲ではいつものことなのですがABサビなどという形式にはぜんぜん囚われることなく、曲は必殺の口笛を含む間奏でメインテーマを続けつつ二番に進みます。ここらあたりでストリングスくるでしょとか当時は予想していて外れたので驚いた記憶があります。曲はただただ静かにゆっくりと、歌ってないのに愛してるとわかる!というもはやエスパーじみた強力な曲の説得力を発揮しつつ、素朴ながらに強い祈り、願い、愛を紡いでいきます。
「雪割草」とはまた郷愁を誘う言葉!きっと北海道の雪の下から顔を出すフキノトウのことだろう……なんと健気な!と玉置さんとほぼ同郷であるわたくし、すっかり感じ入って二番の歌詞世界に入り込んでおりました。しかし、いま調べて知ったのですが、ぜんぜん別の植物でした(笑)。読むと、北陸以北の日本海側本州に分布するようで、どうもここでいう「ふるさと」とは北海道のことではないように思います。ついでにいうと軽井沢も該当地域に入らないような……これは現地でないとわかりません。北陸や羽後地方でなくても長野県北東部では雪割草と呼ぶ花が咲くのでしょうか?知っている方は教えていただけると幸いです。
玉置さんはここにおいて北海道以外を「ふるさと」と歌う心境に至った、いや歌なんだからべつにハイビスカスとか歌っても構わないんですけども、これまで玉置さんが歌ったふるさとは旭川、北海道を明確に意図していたとわたくし思っておりますもので、これはいささかショックというか、玉置さんの心境の変化・進化・深化が進んでいたことを伺わされたのです。そもそもこれまでもぜんぜん北海道とか意図としていませんでしたという可能性もなくはないのですが。
「ずっと二人で歩いてゆこう」
「暮らしていこう」「生きてゆこう」に続いて「歩いてゆこう」ですか……いや、誰でも思いつく歌詞なんですけども、けっして陳腐ではありません。「恋の罪も恋の罠も」「真夏の夢」「ステキな夢」とやはり誰でも思いつきそうな言葉を用いているのにぜんぜん陳腐に聴こえてない陽水マジックを彷彿とさせます。玉置さんの歌詞は前作までにかなりこなれてきて、わたくし玉置さんの歌詞に心酔するまでに至ったわけなのですが、この「願い」では、陽水さんの域に達したのではないか……とまで思わされました。ところでこの1998年、陽水さんはというと『九段』をリリースしておりまして、わたくしいまだに未聴なのでした。しまった!そんなわけでいま注文しました(笑)。90年代の陽水さんと玉置さんがどのような歩みをたどったのか、四半世紀を経て陽水さんの側からも考察してみたいと思います。
そして曲は最後のサビ……いやAメロ……あーもう!(笑)この素晴らしいセクションを繰り返して終わります。「願い」という曲タイトルがここにようやく登場するのですが、なんとその願いは自分のことではなく、地球全体に愛があふれることなのでした。なんと!この愛は……どなたか存じませんがある特定の女性(すっとぼけ)への愛ではなく大自然への愛で、それを人間の愛に喩えて表現していた?いやいやいやそんなバカな?でもそうとしか読めませんよね。ここには恋の罪も恋の罠もありません。さみしい夜に開く古い宝石箱もありません。ただただ、「風のように自然に」「花のようにやさしく」紡がれる愛なのです。そして人間同士の愛も究極的には大自然の愛なのだから、草も花も風も、そして男女も(笑)、そんな愛で世界を満たすのがいちばんハッピーに決まっているよね?という玉置さんの穏やかな笑顔を見るような歌だったのです。これはびっくり。なにがビックリって、その世界理解がです。もはやこれは仏陀(また仏教ネタ)にも似た、悟りの境地を示す歌だったのでした。
仏の目には英雄も貴族も独裁者もみな同じ、人間を分かつのは自然の仕組みでなくいつも俗世の業に満ちた傾向性のようなもので……ああいかん、次の歌の解説に入ってしまいそうですんで、今回はこのくらいで。
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若い頃、客席をノリノリにしたくていろいろやってしまったわたくし、アレがなければなあ……シリアスな音楽で勝負したい気分のときもあったんですよ(笑)。
非常にラフだけど、客席があまりに自由過ぎても演じる側はやりずらい。長年見に行っていて、玉置さんから客席がわへ初めて注文したようです。私は客席がわでしたから、最初のMCで何を言ってるのかはっきりわかりませんでしたが、ライヴはそれはそれは物凄く良かった!ただそうではあったのですが、そのツアー最終日の国際フォーラムスリーデイズに私は友人と参戦。
結果的に初日にあったようなものがシリアスに玉置さんには覆いかぶさっていたんです。辛いですね。二日目は素晴らしかったそうですが、ただただ、私らは楽しみに観に行ったのですが1曲目からはちゃめちゃ。明らかに何かがおかしい状態で、一旦曲の途中で中断し、確か一時全員袖に帰ってからまた最初からやり直しました。
でも、ジャンクランドの中の闇をロマンスにしてまで唱って終わり。お詫びとしてギター1本のメロディーで終了で、お金全額返金でした。
そんなこと、何があったのか、今ほど全くSNSがないから後日発送のファンクラブ会報を15年後に読むと「なるほど」と、納得。
玉置さんらしいといえぱらしいでしょう。ツアー最終日に爆発するのはこのツアーだけでは。
グランドラブの願いはビデオを見れば、客席にいってうたってたり、プライベートのように弾き語りして最終日に中断した理由を当時の心境を率直に語ってました。
まあ、あれはあれでやって許されるひとと許されないひと(大半ほとんどのひと)がいるんだろう、と醒めためで観ました。
話がだいぶそれましたが、
この願いからはじまるグランドラブから
玉置さんは軽井沢時代がいよいよスタート!
記念的アルバムです。乾杯!!
作曲 蛎崎弘・玉置浩二ですよ
おお、『魔界典章』と『撃剣霊化』ですね。わたくし「In the Mirror」と「Crazy Doctor」弾けましたよ。今でも弾けるかはちょっとわかんないですけども(笑)。あれほど憧れた高崎さんのギターなのに、おっしゃるようにベースとドラムのすごさに圧倒される今日この頃です。シンプルな曲もあるんですけど、あんなの叩けねえよ!弾けねえよ!と出音を聴くと思わされます。
良いですよね。すみれの花 の小道?
並んで咲いてる
最高です。
ラウドネス。
3枚目、4枚目
聴く度
良くなってます。
それはたぶん
安全地帯も全く一緒(安全地帯は玉置浩二という、とてつもないシンガーで作曲家)がリーダーでいたからですが、ベースドラムのコンビネーションが、抜群なんだと40年経っでも全く色褪せない!
玉置ソロの
ねがい。
いいんだよなぁ(志村けんのおじさんコント風)