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2017年12月01日

ウィンタースポーツシーズン開幕(十一月廿八日)



 いつの間にか、スケートやスキー、バイアスロンなどのウィンタースポーツのシーズンが始まっていた。来年の初めに韓国で行なわれるらしい(地名を聞いても覚えられない)冬季オリンピックに向けて、チェコ人選手たちの活躍を期待したいのだけど、現時点では、残念なことにあまり調子が上がらない。バイアスロンで銅メダルというニュースがあったけれども、これはソチオリンピックでロシアの選手がドーピングしていたことが明らかになった結果、繰り上がりでもらうことになるというニュースだったし。ドーピング問題、日本や、チェコだと犯罪に近い意識を持つけれども、国によってはばれなきゃ問題ないって考えの人たちも多いからなあ。

 最初の衝撃は、スピードスケートの長距離の絶対王者マルティナ・サーブリーコバーの不調だった。ゼマン大統領から勲章をもらった後の開幕戦で、3000メートルで7位に終わってしまったのである。サーブリーコバーは、長距離では負けたときの方が大きなニュースになるような選手である。それが3位以内にも入れないなんて、三年ぶりのことだという。長年悩まされている背中の痛みが原因だというが、よほどひどいのだろう。
 さらに、次の試合では5000メートルで、3位に終わった。背中の痛みに加えて病み上がりという状態で3位というのは、さすがサーブリーコバーと言うべきなのだろうが、このままで大丈夫なのかと心配してしまう。この3位でオリンピックの長距離の出場権は得たので、今後はオリンピックで最高の結果を出すために調整を進めて行くようである。ということは、ワールドカップのレースは二の次ということになるのかなあ。こういうのを見るとチェコ人と日本人の似ているところの一つに、オリンピック好きというのを挙げたくなる。

 何年か前にサーブリーコバーのチームを離れてオランダに拠点を移した短距離のカロリーナ・エルバノバーは好調である。500メートルでは、4位とか5位とか、もう少しで表彰台という順位を繰り返している。ただ、この種目は現時点では日本人の小平選手が絶対的に君臨しているから、優勝というのは無理そうである。どこかの大会で3位以内に入れれば御の字ということころかな。
 チェコのスピードスケートというのは、極端に選手層が薄く、ワールドカップや世界選手権で上位争いができそうなのはこの二人しかいない。この二人が頑張っている間に次が出てこないといけないのだが、未だに国内のスピードスケート用のリンクもないようだし、チェコのスピードスケートはメダルを狙える競技でありながら、存続の危機にもさらされているのである。

 二つ目の問題は、スキーのジャンプ競技を長年支えてきたヤクプ・ヤンダが引退してしまったことである。2006年のワールドカップで総合優勝を遂げたヤンダは、以後あまり成績が振るわなかったもののチェコチームの支えだった。年齢も39歳で潮時だったというのもあるのだろうけど、引退した理由は体調でも怪我でも、成績が落ちすぎたことでもない。国会議員に選出されてしまったことである。
 今シーズンの初戦を引退選と決めて、空飛ぶ国会議員として出場したのだが、個人戦では予選落ちを喫し、団体戦には出場できたものの、ヤンダを擁するチェコチームは調子が上がらず二回目に進める8位に入ることはできず、10位に終わって、空飛ぶ国会議員としての公式記録は一本のジャンプしか残らないという結果に終わってしまった。

 ここ何年もチェコのエースを務めてきたコウデルカも、ヤンダの引退のせいかどうかはともかく、調子が上がらず、個人性で予選落ち、出場できても二回目に進めないという結果に終わっている。個人戦が二試合終わったばかりとはいえ、ポイントを獲得できたチェコ人選手が皆無だというのは、今後に向けて心配である。

 三つ目は、バイアスロンで、ガブリエラ・コウカロバーが体調の問題で出場すらできていないことである。バイアスロンは調子の上がり下がりが激しく、もしくは射撃の際の風など運に左右されるところもある競技なので、突然上位に入る選手が出たり、その逆があったりするものだけど、チェコの選手の中で男女を通してもっとも安定して上位の成績を残してきたのがコウカロバーである。
 そのコウカロバーが欠場したチェコチームは、ワールドカップ初戦の男女混合リレーで、二桁の順位しか残すことができなかった。コウカロバーだけでなく、ほかの選手たちも調子を落としたり体調を崩したりしていたせいなのだろうけど、エース的な存在がいるのといないのとでは、チーム全体への期待感が違う。他の選手が調子と運のよさがかみ合えば、一桁の順位は十分に期待できるけれども、優勝までは期待しにくい。
 コウカロバーも、今後のワールドカップはオリンピックに向けての調整に使うようだけれども、どうなのかなあ。無理して今回のオリンピックに間に合わせるよりは、確実に健康問題にけりをつけて来シーズン以降の復活を目指した方がいいんじゃないかなあ。開幕に間に合わせようとして間に合わなかったということは、結構重大な問題のはずだしさ。

 ノルディックスキーのクロスカントリーでは、ルカーシュ・バウエルが、スキークラシックスという長距離のスケーティングが禁止されたレースに活動の場を移したことで、ある程度の結果を期待できる選手さえいなくなった。バウエルがいたときには、それまでの成績は振るわなくても、一発勝負ならもしかしてという期待が持てたのだけど。シャールカ・ストラホバーが引退したアルペンスキーも同様で、どちらもどこかのレースでチェコ人が一ポイントでも取れれば御の字という状態である。

 フリースタイルスキーとかスノーボード、ボブスレーにスケルトンはよくわからん。申し訳ない。

 ここ数年、あれこれのスポーツでチェコ人選手が活躍するのをテレビの中継で見るのが、長くて辛い冬の楽しみだったのだけど、今年の冬は楽しめる機会が減って辛いばかりの冬になってしまうかもしれない。ならば、せめて厳冬にならず雪があまり降らないことを願おう。
2017年11月29日17時。







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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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