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2017年07月31日
ウフリン若のムラダー・ボレスラフ(七月廿八日)
同じボレスラフでも、古いという意味の形容詞の付いたスタラー・ボレスラフは、チェコの歴史に於いて非常に重要な街である。このラべ川をはさんだブランディース・ナド・ラベムと一つの自治体となっている街は、プシェミスル家の聖バーツラフが弟のボレスラフ一世に殺された場所として知られている。ブランディースのほうからラべ川を越えてきた道が街の入り口の門を越えるたところから扇型に街が広がるというチェコにしては珍しい形をしている。
それに対して、スタラー・ボレスラフからラべ川の少し上流に行ったところで分岐するイゼラ川に沿って上って行ったところにある新しいムラダー・ボレスラフは、シュコダ自動車の本社工場があるところとして知られている。一応イゼラ川と支流のクレニツェ川に挟まれた崖の上にそびえる14世紀に建てられたお城など観光名所と呼べる場所もなくはないのだが、シュコダの工場の重要性には遠く及ばない。
そのシュコダの工場からほど近いところにある控えめなサイズのスタジアムを本拠地としているのが、FKムラダー・ボレスラフである。近年は一部リーグでも上位を争うようになっているが、十年ちょっと前までは二部にいたチームである。一部に昇格したばかりのチームを率いていたドゥシャン・ウフリンが、この夏ボレスラフに監督として復帰した。
ドゥシャン・ウフリンというと、国外では1996年のチェコ代表を率いてヨーロッパ選手権で銃優勝を遂げたドゥシャン・ウフリン爺が有名だが、こちらのドゥシャン・ウフリン若はその息子で、二十歳すぎにはすでに選手としてのキャリアを諦め、監督業に転進している。ユースチームの監督やトップチームのアシスタントを務めた後。二部に落ちて消滅目前だった旧ボヘミアンズ・プラハで監督デビューした。
その手腕を買われてボレスラフに移り、昇格したてで戦力の整わないチームを率いて、残留を果たしたんだったかな。その翌年ぐらいからは、戦力も整って上位を争うようになり、最高でリーグ2位になったことがあったはずである。上位争いをする現在のチームの基礎を作った監督だといってもいい。
その後、国外に出てルーマニアのティミショアラやグルジアのトリビシなどで監督を務め、経験も積んで、2013年にブルバが代表監督になった後のプルゼニュでチェコに復帰し、一年目はそれなりの結果を出したのだが、二年目の夏にヨーロッパリーグ予選での敗退を受けて解任されてしまった。そして、2015年にはスラビアの監督に就任し、前年、前々年と十位以下に沈んでいたチームを、ヨーロッパリーグの予選二出場できる5位まで引き上げたのだけど、中華資本のスラビアへの流入の結果、得点源のシュコダが中国に移籍するしないで混乱したこともあって、ヨーロッパリーグの予選で敗退、リーグでも低迷していたために解任されてしまった。
今回、ムラダー・ボレスラフに復帰したわけだが、正直な話、ウフリン若には、プルゼニュや今のスラビアのような資金的にも戦力的にも余裕があって、優勝を狙うというチームよりも、足りない資金と選手をやりくりして上位を狙うボレスラフの方が似合っている。あえて言えば、選手に合わせてチームを作るというよりは、チームに合わせて必要で金銭的に取れそうな選手を集めるという感じか。
最近、リーグで上位に入ってヨーロッパリーグへの挑戦権を得ても、いいところのないボレスラフなので、期待していなかったのだが、予選二回戦で、アイルランドのチームに二戦とも勝利して、三回戦に進出した。心強いのは永遠の若手フラモスタが好調なこと。この選手、点が取れているうちは手がつけられないところがあるのだけど、或る日突然ぱったり点が取れなくなるのである。
予選三回戦の相手は、二年前にアルバニアで史上初めてヨーロッパリーグの本戦に進出したスカンデルベウ・コルチャというチーム。チーム名は15世紀にアルバニアを統一しオスマントルコと戦い独立を維持し続けた英雄の名前に由来しているという。2010/11のシーズンからアルバニアリーグで五年連続優勝を飾ったが、賭博を巡る不祥事を起こして処罰を受けたこともあるらしい。ちなみに、2011/12のシーズンは現在スロバーツコの監督を務めるチェコ人のスタニスラフ・レビーに率いられてリーグ優勝とカップ戦での準優勝を飾っている。
ムラダー・ボレスラフで行なわれた初戦、ボレスラフが攻めて大きなチャンスをいくつも作っていたのだが、二回戦とは違ってなかなか点が入らなかった。前半終了間際にフラモスタのシュートで先制。フラモスタはこれで三試合連続ゴールである。
この調子なら二点差ぐらいで勝てるかなと思っていたら、後半終了間際の85分過ぎになって、相手がペナルティーエリア外から打った強烈なシュートが、チュモフシュの顔面に当たって、方向を変えゴールに吸い込まれてしまった。チュモフシュに当たっていなかったら、外れていたはずだけど、よけようのない強烈なシュートで、チュモフシュはしばらく朦朧としているようだった。
去年までのボレスラフなら、このまま引き分けて、二戦目で敗戦して敗退となるところだろうが、この試合では失点した直後に、相手ゴール前に攻め込み、混乱の中から途中交代で入ったヤーノシュがゴールして勝ち越し、もう一点ほしかったけれども、そのまま2−1で終了した。
スパルタの試合と比べて思うのは、マテヨフスキーの存在は大きいということだ。組み立て役のいないスパルタの攻撃が得点できそうな気配が全く感じられないのに対して、マテヨフスキーが指揮するボレスラフの攻撃は、期待に満ちている。
ウフリン若のボレスラフは、かつてフランスのマルセイユを破って、ヨーロッパリーグの前身UEFAカップの本戦に進出したこともあるから、期待しよう。今年はカップ戦で優勝したズリーンが本戦からの出場だし、スパルタはここで消えそうだけど、スラビア、プルゼニュを含めて、チェコのチームが四つヨーロッパリーグの本戦に進む可能性があるのか。
さすがに中堅チームのボレスラフの移籍情報までは追いきれなかった。そのため出場選手も省略。オロモウツ育ちのプシクリルはちゃんと活躍していたし、マゲラも途中から出場していたから、それで十分。ここもプルゼニュと同じで監督が最大の補強ということになるのかな。
7月28日23時30分。
2017年07月30日
スパルタ・プラハ買い物の夏(七月廿七日)
スパルタ・プラハが最後にチャンピオンズリーグの本戦に進んだのは、すでに十年以上前のことである。その後、オーナーが現在のクシェティンスキー氏に代わってから、補強にお金をつぎ込み、毎年のように大きな赤字を垂れ流しているにもかかわらず、チャンピオンズリーグの夢は叶えられていない。
今年は、昨シーズン泥沼にはまり込んだような状態から抜け出せそうで抜け出せないまま三位に終わったため、ヨーロッパリーグの予選に回ることになってしまった。スパルタがあの状態で三位を確保できたのは、他の上位を争うべきチームが、それぞれの事情で上がってこられなかったというのが大きい。特にリベレツはシーズン初めの国内リーグとヨーロッパリーグで日程的に厳しかった時期に、伝染病にやられてチーム全体が隔離状態に置かれてコンディションを崩してしまったところから、怪我人の多さもあって立ち直れないまま、下位に低迷してしまった。
さて、昨シーズンのスパルタの最大の問題は、監督だったのだが、ラダは予定通り退任し、ブルバに断られた後、イタリアからストラマッチョーニを招聘した。イタリアでの経験もあり、ギリシャでも監督をしていた若手の有望監督ということで、期待してもいいのかもしれないが、チェコのチームに外国人(ただしスロバキア人は除く)監督というのは、あまり合わない気がする。かつてプシーブラムを率いて二部から一部に引っ張り上げたイタリア人監督が、オーナーとチェコのサッカーを変えるぜとか何とか張り切っていたのに、あっさり解任されたこともあったしって、一部のチームの外国人監督の例ってこれぐらいしかないんじゃなかろうか。
それに、あの人種差別的で悪名高きスパルタファン、特にウルトラスと自称する連中のことを考えると、最初から結果が出ればいいけど、出なかったら監督もフロントも、そして選手たちも針の筵に座らされることになる。ヨーロッパリーグの試合で発煙筒たいて、トイレットペーパーを投げ込んで、人種差別的なヤジを飛ばして、クラブが罰金を取られるのが今から目に見えるようである。結果が出ていても、こうなることはありうるか。
ストラマッチョーニ監督は、就任と共に選手を大きく入れ替えるとして、第一弾でホレク、マズフのセンターバック二人に、サイドバックのヒプシュ、昨シーズンの反乱分子で混乱の原因の一つとなっていたコートジボワールのコナテーを放出することを決めた。さらにゴールキーパーのシュテフもスパルタを去っているが、この選手、若くしてイングランドに移籍して、レンタルで下部リーグをたらいまわしにされた挙句にスパルタに戻ってきた選手で、スパルタでも移籍当初を除けばほとんど試合に出ることはなかった。スラビアの16歳の選手が同じ道をたどらなければいいのだけど。
その後は、スパルタはひたすら新しい選手を獲得する。チェコ国内の移籍だけでも、GKにリベレツからスロバキア人のドゥーブラフカ、DFにドゥクラ・プラハから同じくスロバキア人のシュテティナ、スロバーツコからボスニア・ヘルツェゴビナのツィビチ、MFにはズリーンからセルビア人のブカディノビチを獲得。合計で6000万コルナぐらいかかったらしい。チェコ人選手がいないのがいっそ見事である。
ここまでだったら毎年同じようなことをしているといえるのだけど、今年はさらに外国に手を伸ばした。FWにスイスのバーゼルとの契約が切れた元オーストリアのコレルことヤンコ、マカビ・テルアビブから記録的な7600万コルナの移籍金でイスラエルの代表のベン・ハイム、MFにはベオグラードの日本だとレッド・スターかなからセルビア代表のプラフシチを2600万コルナで、フランスのメスからカメルーン代表のマンジェックを3400万コルナで、フランスのリールとの契約が切れた元フランス代表のマブバ、それにDFの選手として、ガラタサライからトルコ代表のセンターバックのカーヤを5200万コルナで獲得している。ここまで大枚はたいて選手を獲得したのって、初めてではなかろうか。中国資本で金満のスラビア以上の派手なお金の使い方である。
気になるのは出入りのバランスが悪いことで、外国人選手に出場機会を奪われて不満分子になりそうなチェコ人選手の名前がいくつか、いやいくつも思い浮かんでしまうことだ。だからと言って大金はたいて獲得した大物を使わないというわけにも行くまい。さらに補強すべき選手を探しているという話だから過剰になっている選手たちの一部は、八月末に移籍期間が終わるまでに放出されることになるのだろう。
先週プラハでリーグ開幕前の最後の親善試合がオランダのフィテッセ相手に行なわれ、外国からの新戦力もヤンコ、カーヤ、プラフシチの三人が出場していたのだが、前半はぼろぼろ、後半なんとか立て直して同点に追いついて引き分けに終わった。全体的な印象はまだまだチームとして連携が取れていないということと、各国の代表選手が並ぶ中で、チェコ人、スロバキア人選手が見劣りしかねないというものだった。攻撃は連携が取れずばらばらで、守備は相変わらずセットプレーからチャンスを相手に提供しまくっていた。
ヨーロッパリーグ予選の初戦、スパルタの相手はプラフシチの古巣ユーゴスラビアのチェルベナー・フビェズダ、いやレッド・スターである。予選三回戦とはいえ初戦から難敵である。セルビアのチームとヨーロッパリーグの予選というと、チェコのチームにはあんまりいい記憶がないんだよなあ。
ここを乗り切れるかどうかが、新監督のストラマッチョーニがスパルタファンに受け入れられるかどうかの瀬戸際であろう。駄目でもすぐに解任ということにはなるまいが、ファンの支持を失うとやりにくくなることはいうまでもない。そして単純なファンをひきつけるには最初が勧進なのである。去年のホロウベクのように。
今日の初戦はベオグラードでの開催されたが、チェコテレビが放送してくれた。ただセルビア側の問題で前半何度か映像が途切れてしまうことがあって、見ていていらいらしてしまった。試合内容にもいらいらいしたのだけど。
チェコ人で先発出場したのが、中盤のマレチェクとフリーデク、ユリシュの三人だけ、スロバキア人を入れても5人という外国人中心で挑んだのだけど、完敗だった。前半後半ともに一点ずつ決められて0−2での敗戦。細かいことは思い出したくもない。
このセルビアでの試合で最大の話題は、失われたチェコの才能の一人であるV.カドレツが招集外になってプラハに居残りを命じられたことだった。フィテッセとの前哨戦には先発で出場していたが、全くいいところがなかったし、後半から交替で出場したプラフシチと比べたら大幅に見劣りしたから出場しないのは予想していたけれども、帯同しないというのには驚いた。監督の話では、監督が求めることをしていないのが最大の問題だという。不満分子第一号である。
スパルタは、一説によれば、さらにロシツキー的な司令塔タイプの選手の獲得を目指しているともいう。昨シーズンの低迷は、ドチカルの中国移籍によって止めを刺されたのだから、もっとはやく代役を見つけておくべきだっただろうに。今回も怪我で欠場したロシツキーの復帰を待つしかないのかなあ。
とまれ、ストラマッチョーニ監督がシーズンの終わりまで続ける可能性を大きく減らす敗戦となったわけだ。来週のプラハでの試合次第だけど。ヨーロッパリーグの予選で敗退して、国内リーグだけとなった場合に、外国からやってきた選手たちのモチベーションは維持できるのだろうか。
7月27日23時。
2017年07月29日
ビクトリア・プルゼニュ2017年7月(七月廿六日)
昨シーズン一年を通して不安定な戦いに終始し、チャンピオンズリーグはおろか、ヨーロッパリーグの本戦にも出場できなかったプルゼニュは、かつてサッカー協会の会長ペルタによって、代表監督として強奪されたブルバを監督に復帰させた。プルゼニュにとってはこれが一番の補強であろう。
ブルバはプルゼニュをチェコ最強のチームに育て上げた監督であるし、チャンピンズリーグの本戦に進み、グループステージで三位を確保してヨーロッパリーグの春の部に進出させたこともあるのである。チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグの予選では、初期の頃を除いて、ほとんど負けたことがないというのも期待を抱かせる。
代表の監督としてもEURO2016は大失敗に終わったけれども、あの大会は予選を勝ち抜くのも難しいだろうと言われていたのだ。その予選を意外なほど楽に勝ち抜けたことで、期待のハードルが上がって、それに応えようとしたところが大惨敗に終わって、ブルバ叩きが始まったのだった。あの時の手のひらの返しようには、日本もチェコもマスコミってのは大差ないなあと思わされた。
個人的には大会に出場して、一瞬とはいえロシツキーがプレーするのを見られただけでも幸せだった。あの大会はロシツキーが代表と、いや代表がロシツキーと別れるために必要だったのだ。ロシツキーだけではなく、あの大会まで代表の中心となっていた三十歳を超えた選手たちの最後の花道としても機能していた。その意味では、チェコ代表にとっては、ブリュックネルが監督辞任に追い込まれた2008年のEUROと同じような意味を持つ。
だから、ブルバが協会の慰留を蹴って、代表の監督を辞任したのも当然の流れだと言える。ロシアのマハチカラの監督になったのは意外だったけどさ。2008年のブリュックネルも、電撃的にオーストリア代表の監督に就任して、チェコに驚愕を巻き起こしていたなあ。就任直後に、オーストリアのコレル発見と言われていたヤンコが、スパルタに移籍してきたのだから、ブリュックネルファンとしては何と言うべきか。
マハチカラでは期待通りの成績を残すことができず半年で解任されてしまったわけだが、今年の春にスパルタが何度も監督就任の交渉をしていたように、ブルバの監督としての実力が高く評価されているのは以前と変わらない。ブルバが混乱の極みにあったスパルタの監督を引き受けずに、古巣のプルゼニュを選んだのは、ある意味当然である。できれば、昨シーズン途中の不安定なところで復帰して立て直せるところを見せてほしかったけれども。
今シーズンのプルゼニュの補強は、スラビア、スパルタが、外国人選手を多数獲得し多国籍のチームなっているのに対して、チェコ人、スロバキア人の獲得が中心である。外国人をとるにしてもチェコリーグの経験者である。
コザーチクが怪我でシーズンに間に合わないゴールキーパーは、二部に降格したプシーブラムから元代表のフルシュカを獲得した。プシーブラムでは、下位に沈む中で奮闘するのに疲れたようにも見えたが、上位を争うプルゼニュでどこまでやれるだろか。しばらくは長きにわたってコザーチクの控えを務めているボレクと出場を争うことになりそうである。
シーズン前のキャンプで怪我人続出のディフェンスでは、今年の春に獲得したスロベニア代表経験もあるサイドバックのヤンジャをキプロスのチームにレンタルで出した。リンベルスキーの控えで出番がまわってこない本人の希望もあったのだろう。その後、リンベルスキーが怪我をして、緊急でボヘミアンズからU21代表のハベルを獲得することになったのだから皮肉である。フブニークが怪我をしたセンターバックは、いる選手でやりくりするみたいである。
中盤の選手としては、サンプドリアからレンタルしていたフロマダと、U21ヨーロッパ選手権で活躍したフリエンの二人のスロバキア選手が、フロマダはスラビアへ、フリエンはポルトガルのベンフィカ・リスボンへ移籍した。代わりに去年トルコに移籍して半年で契約解除してチェコに戻っていたベテランのコラーシュとズリーンとの契約が切れたクロアチアのジブリチ、それに昨シーズンの最終節のあと飲酒運転で自爆事故を起こしたスパルタのチェルマークを獲得している。ただ、チェルマークはしばらくは計算できなさそうである。
フォワードは、ズリーンで活躍して大きな期待とともにプルゼニュに移籍したものの上位チームでプレーするプレッシャーに負けたと本人が認めていて、ほとんど活躍できていなかったポズナルが昇格したばかりのバニーク・オストラバへ移籍、代わりにブルノからジェズニーチェクを獲得している。
全体的には、差し引きゼロみたいな、優勝を逃したにしては、意外なほど消極的な補強だった。繰り返しになるけれども、プルゼニュにとっては監督のブルバが最大の補強だということなのだろう。移籍期間はまだ終わっていないので、これからシーズンが始まって足りないところが見えてきたら、監督の要望にしたがって追加で獲得することになりそうだ。
それで、チャンピオンズリーグの予選だが、プルゼニュは非優勝チーム部門で三回戦の相手は、ブルガリアのFCSB、聞いたことのないチームだと思ったら、今年からステアウア・ブカレストがこのように改名したのだという。伝統的な名前を軽々しく捨てるなよ。初戦はブカレストで行なわれ、会場は去年チャンピオンズリーグの予選でブルガリアのアストラ・ギュルギュ(正確な読み方は不明)と対戦したときに使われた会場らしい。去年はプルゼニュ敗退しているんだよなあ。ちょっと縁起が悪い会場である。
この試合はチェコテレビで放送されたのだが、当日になってルーマニア側が国際映像の提供を拒否していて中継できなくなるとかいう情報が流れて、直前まで本当に放送されるのかどうか定かではなかった。ルーマニア、やっぱりあんまり近づきたくないなあ。
プルゼニュの先発は、ほとんどいつものメンバーだったのだけど、違いはキーパーが怪我のコザーチクに代わってボレク、ディフェンスは怪我の回復がよそうより早かったリンベルスキーが右サイドに入って、ジェズニークがセンターバックに横滑りして、ハーイェクと組んだ。左はリンベルスキーの代役として緊急獲得したハベルである。
中盤は、真ん中にいつものフロショフスキーと新戦力のジブリチ、右にペトルジェラ、左にコピツ、いわゆるトップ下に出戻りのコラーシュ、フォワードはクルメンチークである。あれ、ホジャバはどこに行ったんだ?
試合のほうは前半に、クルメンチークが自陣からゴール前に放り込まれたフリーキックからこぼれたボールに素早く反応して先制。相手にゴール前で与えたフリーキックで、壁に入ったフロショフスキーの頭の上を抜かれて、同点に追いつかれた。
後半も、コラーシュのシュートをゴールキーパーがはじいたところにつめたコピツが決めて勝ち越したのだけど、サイドからゴール前に放り込まれたボールを競り負けて再び同点に追いつかれてしまった。守備のゆるさは相変わらずである。そのまま2−2で試合終了。
監督のブルバも守備に頼るのが危険なのは、重々承知のようで、ホームで0−0の同点ならプルゼニュが勝ち抜けるのだが、0−0を狙うのは自殺行為だと言って、あくまでも得点を狙い勝ちにいくと宣言している。確かにブルバのプルゼニュが、ブルバのチームがヨーロッパの舞台で守って勝てるとは思えないからなあ。
ブルバ率いるプルゼニュは、チャンピオンズリーグの予選では無類の強さを発揮してきたのだが、今回初めて非優勝チーム部門での戦いである。強豪国の3位、4位のチームと予選四回戦で当たることを考えると本戦進出は難しいかなあ。スラビアとプルゼニュのどちらかが本戦に進めるといいのだけど。
7月26日23時30分。
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2017年07月28日
2017年のスラビア・プラハ(七月廿五日)
サッカーのシーズンが始まる前に、移籍の情報なんかをまとめておこうと思っていたら、今週末からスポンサーがペンキ屋になったヘット・リーガが始まり、スラビアとプルゼニュはチャンピオンズリーグの予選三回戦の試合が行なわれるところまで来てしまった。とりあえず、今日の記事ではスラビア・プラハについて書くことにする。明日はプルゼニュで、明後日はスパルタかな。今週はスポーツねたばっかりになりそうである。きゅうりの季節だから仕方がないのである。
去年の今頃、スラビアは中国資本に買収されたばかりで、手に入れた資金源の使い方になれていなかったのか、選手の放出も、獲得もちぐはぐで、ぎりぎりでシュコダの中国売却が破談になったり、スロバキアから緊急でファン・ケセルを獲得したりした影響もあってか、ヨーロッパリーグの予選で敗退してしまったのだった。
今年は、若手の有望選手を計画的に売却すると同時に、積極的に経験のある外国人選手を獲得して、二度目のチャンピオンズリーグ進出を本気で狙っているようである。
ゴールキーパーは、オストラバから獲得してA代表に選出されるまでになったパブレンカをドイツのブレーメンに一億コルナで売却。代役としてはこれも最初はオストラバで活躍してA代表に呼ばれるようになったベテランのラシュトゥーフカを獲得した。ラシュトゥーフカは長らくウクライナで活躍して去年カルビナーでチェコリーグに復帰して躍進の原動力となっていた選手である。それから16歳の将来を嘱望されるキーパーをリバプールに売ったというニュースもあったなあ。若くしてイングランドに行ったチェコ人選手、成功例ないんだよなあ。
ディフェンスの選手としては、昨年テプリツェから獲得して、U21ヨーロッパ選手権でも活躍したセンターバックのリュフトネルが、デンマークのFCコペンハーゲンに、4000万コルナぐらいで買われていった。代役としては、今年ヨーロッパリーグに出場するズリーンからこの前代表にも呼ばれたユガスを獲得している。これでちょっとズリーンが心配。
中盤の選手では、すでに一月の時点でイタリアのウディネーゼ移籍が決まっていたバラークがいなくなった。この移籍でスラビアには八千万コルナ入ってきたと言われる。また契約が終了したグルジアのケニヤは、契約を延長しなかったため、グルジアリーグに戻ったようである。この前の代表の試合で活躍したズムルハルにも移籍の噂はあるのだけど、現時点ではまだスラビアの選手である。
入ってきたのは、まずイタリアのサンプドリアからプルゼニュにレンタルされていたスロバキア人のフロマダ。それに契約切れのベテランを経験を買って三人獲得している。ウクライナからロタニュ、ドイツのアウグスブルクから元トルコ代表のアルティントップ、ロシアのペテルスブルクから元ポルトガル代表のダニの三人である。それにリベレツにレンタルされていたソウチェクが帰ってきたのも忘れちゃいけないか、チェコ代表に定着しそうだし。
あれ、移籍の収支黒じゃないか。中華資本は補強資金を出してくれるんじゃなかったのか?
これらの移籍の結果、ただでさえチェコにしては多かった選手の国籍が、一段と増えることになってしまった。英語が共通語なんてことになるのだろうけど、チェコのサッカー選手、国内でしかプレーしたことのない選手の英語って、かなり微妙らしいからなあ。あとは監督のシルハビーの英語がどうかなってのも気になる。ベテランの監督だから英語が多少できなくても問題ないかな。
逆にチェコに入ってきたばかりの選手にチェコ語で指示を出すのは無理がありすぎる。でも、十年ぐらい前のスラビアファンのアイドル、ブラジル人のアダウトなんかはがんばってたどたどしいチェコ語を使うことで、ファンに受け入れられていた面があったからなあ。調子がいいときはいいのだろうけど、結果が出なくなったときに英語しか使わない外国人選手に対してスラビアファンが我慢できるかどうか、ちょっと心配である。スパルタのファンよりはましだろうけどさ。
それで、スラビアはチャンピオンズリーグの予選三回戦の優勝チームの部で、ベラルーシのバテ・ ボリソフと対戦することになった。初戦はスラビアの本拠地プラハのエデンスタジアムでの試合である。スラビアホームの試合だからチェコテレビが放送するかと思っていたら、携帯電話会社のO2が設立した有料チャンネルでの放送だった。うちのテレビで見られるO2 TV Freeじゃ、試合開始前の10分と、後半開始前後の10分しか見られないというふざけた状態であった。
ボリソフは、プルゼニュがチャンピオンズリーグのグループステージで同組になったことがあるんじゃなかったかな。確かそのときはプルゼニュが三位でボリソフが四位だったはずである。スラビアも勝てる?
出場メンバーは、ラシュトゥーフカ ― フリドリフ、ユガス、デリ、ボジル ― ヌガデウ ― ファン・ブレン、ロタニュ(66メシャノビチ)、フシュバウエル、ダニ(75ミンガゾフ)― シュコダ。新戦力としては、ラシュトゥーフカ、ユガス、ダニ、ロタニュの四人が先発で出場している。このうちチェコ人は六人だけである。
試合は、前半20分ぐらいに、フリドリフが倒されてもらったPKをシュコダが決めて先制。このプレーで相手に退場者が出たのだけど、数的優位を生かすことはできずに、そのまま1‐0でスラビアが勝利した。フシュバウエルのシュートがゴールバーとポストを叩いたり、シュコダのシュートがゴールポストに嫌われれたりと、ニュースで見るかぎりチャンスは作っていたようだが、決め切れなかった。
内容については何とも言えないのだけど、ホームで1‐0というのはどうなのかなあ。スラビアが前回予選を勝ち抜けたのは、ゴールキーパーのバニアクさまが、ほとんど神がかり的なセーブを連発してアヤックスを絶望の淵に叩き落したからだし、その働きが同じベテランのラシュトゥーフカに期待できるのかな。
最低でもここは勝ち抜いて、ヨーロッパリーグ本戦の出場だけは勝ち取ってほしいところである。中堅国の優勝チーム枠での予選だから、ボリソフに勝てれば次も行けそうな気はするのだけど、プルゼニュではなく、スラビアなので期待はしないでおこう。シルハビーもヤブロネツ時代はヨーロッパの舞台でいいところがなかったしさ。
7月26日12時。
2017年07月27日
ハンドボール界のあれこれ2017年夏2(七月廿四日)
これももう、一月前には決まっていたことだが、来年一月にクロアチアで開催されるヨーロッパ選手権の組み合わせが決まった。こちらは16チームの出場だが、世界選手権が24ヵ国中15チームがヨーロッパの代表であることを考えると、世界選手権に出るのも、ヨーロッパ選手権に出るのも大変さは変わらない。
チェコ代表は、スペイン、デンマーク、ハンガリーと共にグループDに入った。こちらは上位三位以内に入れば次のステージに進める。クラブレベルではドイツと並ぶハンドボール大国スペインに、リオオリンピックで金メダルを取ったデンマーク、北欧系の端正なハンドボールが身上のデンマークには好勝負はできるかもしれないが、どちらのチームにも勝てそうなイメージはわかない。
そうなると、ハンガリーと三位の座を争うということになるのだが、ハンガリーもクラブレベルではチャンピオンズリーグの常連を擁する国である。十年以上もチャンピオンズリーグから遠ざかっているチェコと比べると、格上なのは否定できない。救いは恐らく両チームとも二連敗した後の三試合目で直接対決することだ。この三試合目の相手が、バルカンの汚いハンドボールをするマケドニアとか、モンテネグロとかだったら、チェコには勝ち目はない。でもハンガリーならぎりぎりバルカンに入るかどうかだし、何とかなりそうな希望が持てる。
希望といえば、チェコ代表の実力を、国内の若手選手を積極的に登用することで引き上げることに成功したダン・クベシュとヤン・フィリップの二人の監督との契約が延長された。選手としてヨーロッパでもトップレベルのクラブで活躍し、チェコ人選手の評価を高め国外に出る道を築いたと言ってもいいこの二人は、監督としてもスイスやドイツのクラブで実績を上げており、世界の最先端のハンドボールをチェコにもたらしてくれる存在だと考えていい。
代表を引退したばかりのこの二人に監督の座を託したチェコのハンドボール協会の決断は英断だったし、今後も長期にわたって代表の指揮を取らせることで、チェコ代表をヨーロッパ選手権、世界選手権で上位争いができるところまで引き上げてもらえたらなあ。
そのためにも、チェコのクラブチームから、次々に若手が出てくる必要があるのだけど、男子のチェコリーグの現状は、一言で言って混乱である。当初の予定では今年の九月から始まるはずだったスロバキアとの共同リーグは、スポンサーの確保ができなかったことで、チェコのチームが参加に二の足を踏み、実現しなかった。
その直後は、スロバキアとの共同リーグが実現していた場合と同じ10チームでチェコリーグを開催するということになっていたため、リトベルとコプシブニツェの二チームが降格し、昇格をかけたプレーオフでフラニツェに負けたストラコニツェは、二部リーグに参戦することになっていた。それが、六月に入ってやはり去年までと同様に12チームで開催されることになった。一部から二部に降格するのはリトベルだけで、ストラコニツェは一部に昇格することになった。
今年のエクストラリーガは、女子よりも少し遅れて、九月九日に開幕する。できれば久しぶりにモラビアのチームの優勝を見たいのだけど、期待できそうなのはカルビナーとフリーデク・ミーステクぐらいかなあ。今年も昨シーズンに優勝を争ったドゥクラ・プラハとプルゼニュが優勝候補の筆頭ということになりそうだ。プルゼニュには代表のステフリークが加入するというし。
そのドゥクラとプルゼニュが出場するEHFカップの予選一回戦の対戦相手も決まっている。ドゥクラの相手は、アイスランドのHafnarfjardarである。共産主義の時代からヨーロッパのカップ戦で活躍してきたドゥクラにして初めてのアイスランドのチームとの対戦だという。当たる可能性のあるチームの中で一番遠方のチームだというのは、財政的にはちょっときついかもしれない。代表は、ヨーロッパ選手権の予選で一勝一敗、得失点差でかろうじて上に立てたけれども、クラブレベルではどうかな。厳しいだろうなあ。
プルゼニュは、ギリシャのXyni Dikeasとの対戦である。ギリシャはハンドボールが強いというイメージのない国なので、こちらのほうが勝ちぬけられそうな気がする。チェコの優勝チームが、アイスランドの準優勝チームとの対戦で、準優勝チームがギリシャの優勝チームとの対戦。優勝チームと準優勝チームの組み合わせという点では問題ないのだろうけど、くじ運のないドゥクラがかわいそうになって来る。
一回戦を勝ち抜けた場合、ドゥクラはロシアのペテルブルクとの対戦で、プルゼニュはスペインのAnaitasunouが対戦相手となる。これはもう、どちらかのチームが一回戦を勝ちぬけてくれたら万々歳ということでいいんじゃないかな。
それから、今年のチェコハンドボール界の大ニュースとしては六月十九日から廿一日にかけてプラハで行なわれた大イベント「フビェズディ・プロ・レゲンディ」がある。日本語には訳しにくいのだけど、強いて訳せば「スター選手が伝説となるために」とでもなるだろうか。世界中からハンドボール界のスター選手、伝説的な選手を招待して、オールスターゲームを行なったり、ハンドボールマラソンと称して、チームや選手を入れ替えながら、延々マラソンの距離と同じ42.195時間プレイし続けるなんてことをやったりしていた。
これは今年がいくつもの記念年に当たるからだという。まず1947年にプラハで初めての七人制ハンドボールの試合が行なわれてから七十周年、1957年に女子のチェコスロバキア代表がユーゴスラビアで開かれた世界選手権で優勝し、男子のドゥクラ・プラハがチャンピオンズリーグの前身であるPMEZで優勝してから六十周年、1967年に男子のチェコスロバキア代表がスウェーデンで行なわれた世界選手権で優勝してから五十周年、1972年に男子のチェコスロバキア代表がミュンヘンオリンピックで銀メダルを獲得してから四十五周年に当たるというのである。
チェコの歴史では、末尾が8で終わる年に、歴史を変える出来事が起こると言われるが、チェコのハンドボールの歴史では7で終わる年に、大きな成功を収めてきているようだ。ということは、今年のヨーロッパのクラブチームのカップ戦、女子の世界選手権は期待できるかもしれない。とはいえ、最後に7で終わる年にチェコのチームが、いやチェコスロバキアのチームが優勝を遂げたのは五十年前のことだから期待はしないほうがいいのかもしれない。
オールスターゲームでは、引退した選手も含めて、世界中からやってきた言わば世界選抜対チェコ、スロバキア選抜という形で試合が行なわれた。世界選抜の選手たちはチェコとの試合で見たことはあっても、顔と名前の一致しない選手ばかりだった。日本の選手は誰も呼ばれていなかった。ヨーロッパが中心のスポーツだし、まあ当然か。この試合中継はなかったからどんな試合になったのかは知らないんだけどね。
チェコハンドボール界の総力を結集して行なわれたこのイベント、とりあえず成功裏に終わったようである。教育省からの補助金は出たのだろうか。
7月25日23時。
2017年07月26日
ハンドボール界のあれこれ2017年夏1(七月廿三日)
ちょっと、頭を使う話に疲れたので、気楽にスポーツのシーズンオフの話をしよう。まずは、当然ハンドボールからである。
ドイツで今年の十二月に開催される世界選手権の出場権を得た女子のチェコ代表は、抽選の結果グループBに入ることになった。グループステージでは、スウェーデン、ポーランド、ハンガリー、アルゼンチン、そして前回の優勝チームであるノルウェーと対戦することになった。南米はブラジルが驚くほど強くなっていたけれども、アルゼンチンはどうなんだろう。北欧のノルウェーとスウェーデンには、歯が立たないような気がする。
チェコチームの目標は、6チームからなるこのグループで上位4位以内に入って、ベスト16に進出することだという。今年の一月のヨーロッパ選手権では、初戦でハンガリーに勝ったけれども、それ以外は全部負けたのだった。強豪のハンガリーが、チェコ相手に二回連続で負けてくれるとも思えないから、最悪でもポーランドよりは上に行く必要があるのか。厳しいグループだなあ。
他のグループを見ると、ヨーロッパのチームが5つも入っているのはBだけじゃないか。ヨーロッパ以外で上位を争えそうなのがブラジルぐらいしかないことを考えると、昔は韓国も強かったんだけど、一番厳しいのがグループBということになりそうだ。
ちなみに他のグループは、Aがフランス、ルーマニア、スペイン、スロベニア、アンゴラ、パラグアイ、Cがデンマーク、ロシア、ブラジル、モンテネグロ、日本、チュニジア、Dがオランダ、ドイツ、セルビア、韓国、中国、カメルーンとなっている。日本、グループステージで最下位にならなければ御の字である。まあでも、アラブ諸国が女子ハンドボールに力を入れていないのは、出場権争いの面でも、中東の笛の面でも幸いなことである。
クラブチームのヨーロッパのカップ戦では、優勝チームのモストが、チャンピオンズリーグに出場できなかった。クラブ側は出場しようと申請したらしいのだが、会場となるホールの規模がチャンピオンズリーグの規定を満たしていなかったということらしい。ということは今後、モストが優勝して出場する場合には、最低でも別の会場を探さなければいけないということになる。
そこで考えるのが、チェコのハンドボールチームが使っているホールというか体育館で、チャンピオンズリーグの規定を満たすような観客を集められるような規模のものがあるのだろうかということである。昔、カルビナーでは、開催されていたけれども、立見席も結構あったし、今現在の規定を満たしているかと考えると正直微妙である。この辺もなあ、各国のクラブチームの財政状況を考慮して、柔軟に対応してくれるなり、ヨーロッパのハンドボール連盟の主導でEUの助成金をひっぱて来てハンドボール用のホールを建てるなりしてほしいところである。
モストは、チャンピオンズリーグに出場できなかった代わりに、EHF(ヨーロッパハンドボール連盟)カップで、予選の一回戦を免除され二回戦から出場することになった。対戦相手は、一回戦のGalytchankaとMorrenhof Jansen Dalfsenの試合の勝者である。読み方がわからないのでそのままにするけど、前者はウクライナのチームで、後者はオランダのチームらしい。オランダのチームとは、去年も夏のシーズン前の大会で対戦したし、今年も8月18日にモストで対戦する予定があるのだという。オランダのチームとの対戦を希望しておこうか。
それから、二位にはいってEHFカップに出場することになったスラビア・プラハは一回戦からの出場で、BNTU-BelAZ Minsk Regionが対戦相手である。これもよくわからんけど、ミンスクのチームなのか、Regionがついているから、ミンスク地方のチームなのか、とにかくベラルーシのチームである。去年モストが対戦して勝ち抜けた相手だというので、今年もスラビアが勝ちぬけてくれることを祈ろう。スラビアからは、あまり遠いところでなくてよかったというコメントが出ている。
勝ち抜けた場合には、ノルウェーのベルゲンのチームTertnes Bergenとの対戦になる。ノルウェーリーグで上位に入っているチームだろうから、勝つのは難しいかなあ。かつてチェコで活躍した選手が、ノルウェーに買われていくことが多かったのを思い出すと、チェコのチームよりは選手層が一段上だろうしなあ。これまでもヨーロッパのカップ戦(多分EHFカップの一つ下のカップ戦)で上位に進出してきたモストと違ってスラビアには、一回戦だけでも勝ち抜いて、経験を積んでほしいところである。
女子のスロバキアと共同で開催しているインテルリーガの開幕は九月一日に予定されている。出場チームはチェコが8で、スロバキアが5の合計13チーム。チェコからは、バニーク・モスト、スラビア・プラハ、ゾラ・オロモウツ、ソコル・ポルバ、ズリーン、ソコル・ピーセク、ベセリー・ナド・モラボウの去年までの7チームに加えて、ホドニーンが昇格した。そのうち5チームがモラビアのチームである。スロバキア側からは、ミハロフツェ、シャリャ、トレンチーン、バーノフツェ、プレショウの5チーム。どうせミハロフツェの優勝なのだろうけど。
さすがにスロバキアのミハロフツェのヨーロッパの舞台での戦績まではチェコでは報道されないので、何とも言いようがないのだけど、チェコスロバキアの代表として、チャンピオンズリーグで活躍してほしいところである。ハンガリーのチームが頑張っているんだから、スロバキアのチームも負けていられないはずである。
女子だけで長くなったので男子についてはまた明日の分で。
7月24日12時。
2017年07月25日
二重国籍の問題3(七月廿二日)
承前(あんまりつながってないけど)
今回の件で、理解不能なのが、件の野党の党首を筆頭に、一部のマスコミ、国会議員の中に、この二重国籍の問題を差別とつなげようとする向きがあることである。過去に外国籍を売り物にしていたことがあり、自らの存在を党の多様性の象徴だと主張する人物の出自を云々することが、どうして差別につながるのだろうか。
仮に、帰化したことを隠して議員になった人の出自をあれこれ憶測して、あることないこと記事にしたりするのであれば差別と言ってもよさそうだし、対立候補の出自を攻撃の材料にするなんてもの差別的だといっていい。ただ、その場合でも、選挙に立候補する以上は、自らの経歴を出自も含めて明かすべきではないかとも思う。
去年だっただろうか、どこぞのテレビのコメンテーターが、発表していた経歴が嘘ばかりだったということで袋叩きにあっていた。テレビのコメンテーターなんて、そこに嘘があったとしても、経歴も含めて、エンターテイメントであるはずである。それを、鬼の首を取ったように、マスコミがぼろくそに批判していたことを思い出すと、今回の野党の党首が二重国籍を隠していたことを批判する声が小さいのは理解できない。
情報公開、情報公開というお題目の元に、何でそんなことまでという情報を垂れ流すことを求められるの現代の社会なのだ。政治家になろうというのなら、そのぐらいの情報を表に出すことは覚悟の上であるべきだし、他人に知られたくないのであれば、政治家なんぞにならなければいいだけである。
それに、今回の野党党首の問題は、疑惑が浮かび上がったときに真摯に対応していれば、ここまでこじれることもなく戸籍謄本を公開する羽目にはならなかったはずである。今回の会見にしても、記事を読む限り、仕方なく謝罪をしているようにしか、もしくは悪いと思っているわけではないのに、ただ単に党の支持率がこれ以上下がるのを防ぐために謝罪のふりをしているようにしか見えない。
この辺、執拗に批判している首相を含めた与党の政治家たちと大差ないと言うか、これが日本の政治家という人種なのだろう。与党も野党も、こんな体たらくなのだから、チェコみたいに政治と関係のないところから、政治の現状にうんざりしている人たちの受け皿になるような政党が出てくることを期待したいところだけど、日本の場合に中途半端に既存の政治家を巻き込んでしまうから、すぐに既存の政党と大差なくなってしまうんだよなあ。日本の有権者も大変である。何でも反対する野党であることにしか存在意義のない共産党に政権を取らせるわけにもいかないし。
ところで、日本の左翼、左翼系のマスコミってのはいつの間にここまで落ちぶれたのだろう。昔はもう少しまともなことを主張していた気がするのだけど。
かつてこんな話を聞いたことがある。学生運動華やかなりしころの話である。金田だったか、金子だったか、とにかく金のつく名字の学生が、バリケードの中で仲間の活動家に、ここでは在日であることを隠す必要はないんだと言われた。自分は在日ではないと答えると、お前は仲間が信じられないのか、ここには在日だからといって差別するような人間はいないと言う。
そんな説得というか、脅迫というかが、本人が在日であることを認めるまで延々と続けられたらしい。ただ、問題はその金田さんだか、金子さんが、本人が最初に主張したように在日の人ではなかったという点である。
どこかで、在日の人で本名の名字が金の人は、日本名として金子とか金田という名字を使っているという話を聞いてきた学生活動家が、そういう名字の人はみな在日の人だと短絡した結果だったという。当時の左翼の活動家の視野の狭さ、愚かさを笑うのにしばしば使われる挿話なのだが、今回の二重国籍問題を差別と結びつける人たちに比べればはるかにましである。
同和問題、在日問題のないところに生まれ育ったので、差別の実態は知らない。しかし、差別が存在する以上、差別されることを恐れて、自らの出自を隠してしまうのは仕方がないことだろう。問題は、そんな社会をよしとするかどうかである。一般人として生活をしていくのであれば、現状を受け入れてそれに対処していくだけでいいのだろうが、政治家や、普段から偉そうなことをこいているマスコミがそれでいいなんてことはあるまい。
言い換えれば、今回の件を差別につながると主張する連中は、現状の出自によっての差別はあるけれども、隠せば差別されない今の日本社会を肯定しているのだ。その点、かつての左翼の活動家達は、出自を明かしても差別されない社会を目指していたわけだから、どちらが真面目に差別問題について考えているかは、明白である。
今回の二重国籍問題を軽視していた野党党首本人の対応や、それを肯定するマスコミの報道は、二重国籍について真面目に考えている人たちや、二重国籍を解消するためにどちらかの国籍を選んだ人たち、そして、何らかの事情で二重国籍状態を解消しないで、もしくは解消できないで密かに生活している人たちをバカにしているように見える。
それに、ささいなことを差別だ差別だとヒステリックに叫ぶのは、差別を助長することはあっても、差別の解消につながることはあるまい。何でもかんでも差別だと言ったほうが勝ちという面のある現状は差別解消にとってもいいものだとは思えない。この場合、差別だと言うのであれば、二重国籍者に対する差別の実態が語るべきなのだ。それなら、支持のしようもあったのだけど、自らを被害者の立場にしようとする足掻きにしか読めなかった。
与党第一党の党首があれで、野党第一党の党首がこれって、日本もチェコを笑えんよなあ。どっちがマシか。チェコ政治家の方がマシに思えてしまうのだけど、チェコ語だと政治家の発言の細かいニュアンスまで理解できないからだという可能性もある。マスコミも何だか腰の引けた報道ばかりで、読むに値する記事を発信していたのはほとんど「アゴラ」だけだったというのもお粗末である。チェコの新聞は、バビシュ傘下の新聞でも、バビシュ批判を書くこともあるぞ。
7月24日10時。
2017年07月24日
二重国籍の問題2(七月廿一日)
承前
さて、今回の二重国籍の問題で、争点の一つになっているのが、二重国籍で国会議員になれるのかということだろう。報道を見る限りでは、可能なようだ。前例として元ペルー大統領のフジモリ氏が国政選挙に立候補した際に、認められたことがあるという。
このことの是非を語るだけの知識はないが、日本のマスコミであまり大きく取り上げられておらず、この件に関して自らの考えを述べる人が少ないのも不満である。成人後も二つの国籍を持ち続けるのは法律で禁止されているというのだから、公職に就くのも禁止されていると考えるのが普通であろう。それが、なぜ禁止されていないのか、今後禁止するべきなのかというのは、スキャンダルをただのスキャンダルに終わらせずに、建設的に活用するためにも、この機会に議論されてしかるべきだと思うのだが、そんな意見はほとんど見られない。
オーストラリアで二重国籍だったのが発覚して、議員が辞職し議員報酬の返還を求められているというニュースを報道しているところもあった。あの国この辺は白豪主義の時代から厳しいのだよ。知人の大学の先生が、昔オーストラリアで大学教授に就任したときに、オーストラリアの国籍の取得と、日本国籍からの離脱を求められたと言っていたし。個人的には、この議員の件については、禁止しているのなら立候補のときに確認しろよと思っただけである。
それはともかく、このオーストラリアの件をどう評価するのかという部分が見えてこない。報道したマスコミは、日本もそうあるべきだと考え、無視した側は、二重国籍の国会議員を認めてもいいと考えているのかもしれないが、それなら互いにそう主張して、かみ合った議論をしてほしい。無視した側は、自分たちの主張に都合が悪いから無視したという可能性もあるわけだけど。
与党、野党で、それぞれこの件について試案みたいなものを作ったことはあるらしいが、そこからは一歩も先に進まなかったという。正直な話、どこぞの大学の認可がどうこういう話よりも、はるかに重要で、日本の将来にかかわる問題であろう。グローバル化なんてのが果てしなく進んでいる現代において、二重国籍を有する人たちの数が増えることはあっても減ることはあるまい。
もう一つの問題が、批判にさらされている野党の党首が、二重国籍状態にあったことを知っていたのかどうかという点だけど、見苦しい言い訳だよね。
この人は、八十年代半ばの法律の改正で、母親が日本人で父親が外国人という場合にも、日本国籍が与えられることになり、その手続きをしたことを、「帰化」とか「日本国籍取得」とか言っていたらしいが、この時点では、十代後半で未成年だったらしいので、どちらの国籍を選ぶのか選択は迫られなかったはずである。しかし、過剰に親切な日本の役所のことだから、二十歳を過ぎたら二年以内に国籍の選択の手続きをしなければならないことを説明し念を押したものと思われる。
そう考えると、知らなかったとか、勘違いしていたとかいうのは、到底信じられない。繰り返すが二重国籍状態を放置していたことを批判する気は全くない。意図的に無視していたのならいたで、それにふさわしい行動をとるべきなのだ。無視していたのには何らかの主張が、それが消極的なものであったにしても、あったはずなのだから、国会議員に立候補した時点で、二重国籍のことを問題にして、将来に向けて日本が二重国籍を認めるべきなのか、禁止し続けるべきなのかの議論を巻き起こすべきだったのだ。それをしないのなら、二重国籍の人がわざわざ発覚するリスクを冒してまで、立候補する意味はない。
個人的には、二重国籍を合法にするにしても、何らかの制限はあったほうがいいと思う。例えば選挙権は認めるけれども被選挙権は認めないとか。考えてみれば、二つの国の国籍を持っていて、両方の国で被選挙権を有しているとすれば、理論上は同時に二つの国で国会議員になれるのである。同時にではないにしても、ある国の首相をやめた後に別の国で首相をやれたりするわけである。それはさすがに問題があるだろう。
被選挙権なんて選挙に出て政治家になろうなんて考える奇特な人たち以外には、不要なものなのである。多少の制限があったところで問題はあるまい。政治家や官僚なんぞになろうという人は、要は国の体制の中に入ろうという人たちなのだから、政治家としての特権を求めるなら二重国籍の特権を捨てろというのは、無茶な話でもあるまい。それに、そうしないと、国籍を一つしか持たない人たちに対して不公平である。片や、二つの国のどちらに住んでいても、選挙権、被選挙権を行使でき、片やどちらもひとつの国でしか行使できないということになるのだから。
仮に、世界中でどこに移住しても、選挙権、被選挙権を含めてその国の国民と同じ権利を持てるような世界にするというのであれば、話は別である。昔の未来SFによくあった地球連合だか連邦だか、そんな世界統一国家みたいなものになるわけだから、国籍そのものの意味が、現在の本籍地と大差ないものになってしまう。そうすれば二重国籍もくそもなくなってしまうわけである。
しかし、現実には、主権者=国民=国籍を有するものであるという国民国家の枠組みが維持されているわけで、地球国家みたいなものは影も形もない。おそらく、二重国籍の問題は、このグローバル化が進んでいく世界で、国家の枠組みをどうするのかという問題と結びついている。そこをちゃんと考えないままに議論を進めても、場当たり的な妥協、もしくは水掛け論に終わってしまう。現在のEUの問題も、そこに端を発している部分がある。EUが国民国家的な枠組みを、なし崩しにしようとする政策に、反発の声が高まっているのだと考えていい。
とまれ、もう少し続く。
7月22日22時。
2017年07月23日
二重国籍の問題1(七月廿日)
日本の野党の女性党首が、二重国籍状態であったのを隠して、国会議員になっていたというのが問題になっているようである。あれこれマスコミの記事を読んでもよくわからないところもあるし、外国に住む日本人として、思いついたことをまとめてみよう。
日本の法律では、成人の二重国籍は禁止されているはずである。日本人と外国人の両親の間に生まれた子供の場合には、成人するまでは二重国籍の状態が認められているが、二十歳になったら、どちらか片方の国籍を選択する必要があるというのが、これまで認識していた日本の二重国籍に関するルールである。
今回の一連の報道で知ることができたのは、二十歳になってから二年間の猶予があり二十二歳までに国籍の選択をしなければいけないことと、その際に日本の国籍を選ぶだけではなくもう一つの国の国籍から離脱しなければいけないということである。
二重国籍の状態であるからといって犯罪になったり罰を受けたりすることはないというのは知っていた。その辺の事情に詳しい知り合いが、日本とチェコの二重国籍状態の若いチェコ人に、大使館では国籍を選ぶようにいわれるけど、知らない振りをしてその状態を続けるのが一番いいと助言しているのを聞いたことがある。その人は、日本人として日本に滞在して語学学校に通って日本語を勉強して帰国した後、チェコ人として日本政府が奨学金を支給する国費留学生に選ばれて日本に留学したんだったかな。
それを見てあんまりいい気持ちがしなかったのは否定できない。サマースクールに来ていた同級生の中にもパスポートを二つ持っているのがいて、どんな得があるのか自慢げに語るのを聞かされたこともある。こちらは、もうむかついたとしか言いようがない。うらやましいと思わなかったといえば嘘になるが、むしろずるいと思う気持ちのほうが強かった。
パスポートを二つ持つということは、ある意味アイデンティティを二つ持てるということである。スパイものや、ハードボイルドなんかで苦労して偽造したり、大金を積んで手に入れたりする二つ目のパスポートが苦労することもなく手に入るのである。しかも両方のパスポートで名前を変えられたりしたら最高である。これをずるいと言わずして、何をずるいというのか。
二重国籍でパスポートを二つ持つこと自体を否定する気はない。法律で片方を選ぶように決められているからといって、絶対にそれを遵守しなければならないと言う気もない。二重国籍ならではの特権を享受するのもよかろう。ただその特権を当然のように考え、パスポートを一つしか持たない人間に自慢するのはやめてほしい。
そもそも、二つパスポートを持っていることが周知の事実になってしまったら、いざというときに役に立たないではないか。それなのに浅はかにも自慢するなんてのはもう、アマチュアの仕事だとしか言いようがない。法律に違反しているのを自覚した上で、ひっそりこっそり二つのパスポートを使い分けるか、二つ目のパスポートは肝心なときまで秘蔵しておくべきものである。
俺だって、今でこそ、もう二十年近く前の話だから、時効だとして自慢げに話してしまうこともあるけど、一度は支払った国民年金の掛け金の支払いを拒否していた頃は、自分から口にすることはなかったし、聞かれてもごまかすことが多かったぞ。年金への加入を強制ではなく任意にするように主張して政治活動でもしていれば、声高に叫んでいたかもしれないが、政治活動なんてものに時間をかけられるほど暇でもなければ、能天気でもなかったしさ。一応、年金がもらえるようになる年まで生きるつもりのない人間から金を巻き上げるのは不当だという主張はあったんだけれどもね。
とまれ、本題に入る前の枕がまた長くなりすぎたので、今日の分は本題に入らないことにして、チェコの話をしておくと、2014年に法律が改正されるまでは、成人してからの二重国籍は原則として禁止されていた。しかし、日本と同様に二重国籍の状態を解消せずに、放置している人もかなりの数いたはずである。
原則としてというのは、共産主義時代に亡命を余儀なくされた人たちが、亡命先の国籍を取っていた場合に、チェコに帰国してチェコの国籍の回復をした結果、二重国籍になるのは、帰国を促す意味でも求められていたと聞いたことがあるからである。もちろん亡命先の国が二重国籍を認めていることが前提であるけれども。
それが、2014年の法律改正で、公式に二重国籍を合法として認めるようになり、ロシア人などで元の国籍を残したままチェコの国籍をとる人が増えたらしい。同時にチェコの国籍を取るための条件が厳しくなり、求められるチェコのの能力のレベルが上がったりしたんだったかな。
元チェコスロバキア国籍だった人は、分離後どちらか片方を選択してチェコ国籍かスロバキア国籍かになっていたはずである。猶予期間はあっただろうけれども、チェコとスロバキアの二重国籍という人はすでにいなくなっているものと思われる。ビロード離婚とまで言われた分離の際の協定で、EU加盟以前から、普通の生活をしている限りはチェコの国籍でもスロバキアの国籍でも大差ない状態になっていたのだ。ただ選挙権、被選挙権は、また別問題なので、スロバキア出身のバビシュ元財相も現在の国籍は、チェコのはずである。
こんな認識をもとに、今回日本で問題になっていたことについて考えてみようというのであるけど、以下次回。
7月21日13時。
2017年07月22日
暑い(七月十九日)
冬には寒いとわめき、夏には暑いと嘆く。年をとるとこらえしょうがなくなっていけない。暑いとは言っても二年前の連日三十度を超えるどころか、四十度に近づく日の続いた夏に比べれば、遥にましなのだが、自宅も、職場も屋根裏部屋である上に、クーラーなんてものが存在しないので、晴れて気温が三十度を超えると、頭が湯だってろくにものを考えられなくなる。今日も暑かったけれども、明日はさらに暑くなるという。
チェコで気温が上がるのは、アフリカからの熱気が地中海を越えて流れ込んでくるからである。アルプスという壁があるので、日本の夏のように最初から最後まで毎日暑いというわけではないのだが、涼しい日と暑い日の気温の差が大きすぎるのも結構辛いのである。この辺は冬と一緒か。いや、冬は引きこもっていれば、何とかなるけど、夏は引きこもっても暑いという違いがあるか。
アフリカからやってくるといえば、チェコで「アフリツキー・モル・プラサト」という病気が発見されて問題になっている。末尾についている「プラサト」は豚を表す言葉の複数二格なので、豚の病気である。「モル」というのは、中世に何度かヨーロッパを襲って人口を激減させた黒死病、つまりペストのことである。ということは日本語ではアフリカ豚ペストという家畜の病気になるのかと考えた。
『動物のお医者さん』で、主人公のハムテルたちが獣医師試験を受けるときに、唱えていた暗号のような文句の中に、アフリカが出てくるものがあった記憶があるので、正しい病名が出ていないかと文庫本を引っ張り出してみたけど、アフリカ何なのかは書かれていなかった。以前、誰かがハンガリーの首都ブダペストのことを、ネット上で間違えてブタペストと書いている人が結構いるなんてことをいっていたし、豚インフルエンザも存在するから、豚ペストも存在するだろう。
存在しなかった。いや、「豚ペスト」で検索してみたら、「豚コレラ」が正しい名称で、豚ペストという言い方もあるということのようだった。つまりチェコで発見された病気は、アフリカ豚コレラと言うことになる。読みは、「トンコレラ」かな、「ブタコレラ」かな。昔「トンコレラ」というのを聞いたことがあるような記憶もある。「トンコロリ」だったかな。
とまれ、発端は東モラビアのズリーン地方の森の中で、イノシシの死体が発見されたことである。このイノシシがアフリカ豚コレラに感染していることが判明し、近くに豚を飼育する農家がいくつもあったことから大きな問題になった。野生のイノシシの間に流行しているのだとすれば、ズリーン地方からチェコ各地に拡散しかねないし、いつ飼育されている豚が感染するとも限らない。
ズリーン地方ではこれまでに40頭近くの死んだイノシシが発見されており、そのうち30体ほどがアフリカ豚ペストに感染していることが確認された。ということは、かなりの割合で感染しているということになる。政府はズリーン地方の感染したイノシシが発見された一帯からの豚の移動を禁止するとともに、養豚業者に対して感染防止のためのいくつもの指示を出した。
またチェコ全土で、イノシシ狩りが始まった。感染した個体は殺処分にするしかないのである。もともと近年イノシシの数の急増が問題になっており、農業、林業に与える被害もかなりの額に上っているようで。毎年一定数は猟師が狩っているはずなのだが、それを上回るペースで繁殖しているようである。生息密度が高いということは、どこかで流行し始めたら拡散しやすいということでもあるから、ある程度間引いておくことは、流行の防止にもつながるのだろう。
農務大臣のユレチカ氏の話では、今回のアフリカ豚コレラは、人為的な原因でチェコ国内に入ってきたらしい。つまり、誰かが病気のイノシシをチェコに連れてきて、放ったということなのだろうか。
チェコでは今年の冬に、鳥インフルエンザが猛威をふるって、各地の養鶏場などの家禽を飼育している施設で、一羽でも感染が確認されると全羽殺処分なんてことになっていた。それだけでなく一般の人が卵を得るために庭で飼育している鶏の中にも感染して殺処分を受けるものが続出した。一羽あたりいくらで国から保証金が出たらしいけれども、手続きと支払いに時間がかかったり、飼育を再開する前に殺菌消毒をして置かなければならないのだが、気温が低すぎて薬品の効き目が落ちるというので、飼育の再開まで長い期間がかかったりと、被害を受けた業者や家庭にとっては踏んだり蹴ったりだったようだ。
そのとき、鶏肉の主要な輸出先であるロシアが、鳥インフルエンザの流行を理由にチェコ産の家禽の肉にたいして禁輸措置を発動し、直接鳥インフルエンザの被害は受けなかった業者にも打撃を与えていた。国もそこまでは補償しきれないだろうし。
ということは、今回のアフリカ豚コレラが、本当に人為的に持ち込まれたものであるのなら、チェコの養豚業に打撃を与えるための試みだったのかもしれない。すでにチェコ産の豚肉の輸入禁止の措置を取った国もあるようだし、どこの国の業者がなどと考えてしまうけれども、国内の業者の争いの可能性もあるのか。
とまれ、ズリーン地方で、感染したイノシシが発見された地域では、森の中の土壌の殺菌、消毒処置も進められているから、近いうちに終息することを願ってやまない。チェコ政府は、迅速な対応で、問題をズリーン地方に封じ込めることに成功したと評価されているようであるけれども、養豚業者にとってはたまったもんではあるまい。豚には直接の被害のなかった今回、国からの保証はあるのだろうか。
7月20日18時。
現時点でズリーン地方では約90頭のイノシシの死体が発見され、60体がアフリカブタコレラに感染していたという。まだ結果が出ていないものもあるというから、感染していた個体の数はまだまだ増えそうである。汚染地帯のイノシシを外に出られないように封じ込めるとともに、イノシシの殲滅作戦が始まるらしい。感染の拡大を防ぐには、感染したイノシシをすべて処分する必要があるけれども、見ただけではわからないから、とりあえず殺すということのようである。7月21日追記。