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2017年07月30日

スパルタ・プラハ買い物の夏(七月廿七日)



 スパルタ・プラハが最後にチャンピオンズリーグの本戦に進んだのは、すでに十年以上前のことである。その後、オーナーが現在のクシェティンスキー氏に代わってから、補強にお金をつぎ込み、毎年のように大きな赤字を垂れ流しているにもかかわらず、チャンピオンズリーグの夢は叶えられていない。
 今年は、昨シーズン泥沼にはまり込んだような状態から抜け出せそうで抜け出せないまま三位に終わったため、ヨーロッパリーグの予選に回ることになってしまった。スパルタがあの状態で三位を確保できたのは、他の上位を争うべきチームが、それぞれの事情で上がってこられなかったというのが大きい。特にリベレツはシーズン初めの国内リーグとヨーロッパリーグで日程的に厳しかった時期に、伝染病にやられてチーム全体が隔離状態に置かれてコンディションを崩してしまったところから、怪我人の多さもあって立ち直れないまま、下位に低迷してしまった。

 さて、昨シーズンのスパルタの最大の問題は、監督だったのだが、ラダは予定通り退任し、ブルバに断られた後、イタリアからストラマッチョーニを招聘した。イタリアでの経験もあり、ギリシャでも監督をしていた若手の有望監督ということで、期待してもいいのかもしれないが、チェコのチームに外国人(ただしスロバキア人は除く)監督というのは、あまり合わない気がする。かつてプシーブラムを率いて二部から一部に引っ張り上げたイタリア人監督が、オーナーとチェコのサッカーを変えるぜとか何とか張り切っていたのに、あっさり解任されたこともあったしって、一部のチームの外国人監督の例ってこれぐらいしかないんじゃなかろうか。
 それに、あの人種差別的で悪名高きスパルタファン、特にウルトラスと自称する連中のことを考えると、最初から結果が出ればいいけど、出なかったら監督もフロントも、そして選手たちも針の筵に座らされることになる。ヨーロッパリーグの試合で発煙筒たいて、トイレットペーパーを投げ込んで、人種差別的なヤジを飛ばして、クラブが罰金を取られるのが今から目に見えるようである。結果が出ていても、こうなることはありうるか。

 ストラマッチョーニ監督は、就任と共に選手を大きく入れ替えるとして、第一弾でホレク、マズフのセンターバック二人に、サイドバックのヒプシュ、昨シーズンの反乱分子で混乱の原因の一つとなっていたコートジボワールのコナテーを放出することを決めた。さらにゴールキーパーのシュテフもスパルタを去っているが、この選手、若くしてイングランドに移籍して、レンタルで下部リーグをたらいまわしにされた挙句にスパルタに戻ってきた選手で、スパルタでも移籍当初を除けばほとんど試合に出ることはなかった。スラビアの16歳の選手が同じ道をたどらなければいいのだけど。
 その後は、スパルタはひたすら新しい選手を獲得する。チェコ国内の移籍だけでも、GKにリベレツからスロバキア人のドゥーブラフカ、DFにドゥクラ・プラハから同じくスロバキア人のシュテティナ、スロバーツコからボスニア・ヘルツェゴビナのツィビチ、MFにはズリーンからセルビア人のブカディノビチを獲得。合計で6000万コルナぐらいかかったらしい。チェコ人選手がいないのがいっそ見事である。

 ここまでだったら毎年同じようなことをしているといえるのだけど、今年はさらに外国に手を伸ばした。FWにスイスのバーゼルとの契約が切れた元オーストリアのコレルことヤンコ、マカビ・テルアビブから記録的な7600万コルナの移籍金でイスラエルの代表のベン・ハイム、MFにはベオグラードの日本だとレッド・スターかなからセルビア代表のプラフシチを2600万コルナで、フランスのメスからカメルーン代表のマンジェックを3400万コルナで、フランスのリールとの契約が切れた元フランス代表のマブバ、それにDFの選手として、ガラタサライからトルコ代表のセンターバックのカーヤを5200万コルナで獲得している。ここまで大枚はたいて選手を獲得したのって、初めてではなかろうか。中国資本で金満のスラビア以上の派手なお金の使い方である。
 気になるのは出入りのバランスが悪いことで、外国人選手に出場機会を奪われて不満分子になりそうなチェコ人選手の名前がいくつか、いやいくつも思い浮かんでしまうことだ。だからと言って大金はたいて獲得した大物を使わないというわけにも行くまい。さらに補強すべき選手を探しているという話だから過剰になっている選手たちの一部は、八月末に移籍期間が終わるまでに放出されることになるのだろう。

 先週プラハでリーグ開幕前の最後の親善試合がオランダのフィテッセ相手に行なわれ、外国からの新戦力もヤンコ、カーヤ、プラフシチの三人が出場していたのだが、前半はぼろぼろ、後半なんとか立て直して同点に追いついて引き分けに終わった。全体的な印象はまだまだチームとして連携が取れていないということと、各国の代表選手が並ぶ中で、チェコ人、スロバキア人選手が見劣りしかねないというものだった。攻撃は連携が取れずばらばらで、守備は相変わらずセットプレーからチャンスを相手に提供しまくっていた。

 ヨーロッパリーグ予選の初戦、スパルタの相手はプラフシチの古巣ユーゴスラビアのチェルベナー・フビェズダ、いやレッド・スターである。予選三回戦とはいえ初戦から難敵である。セルビアのチームとヨーロッパリーグの予選というと、チェコのチームにはあんまりいい記憶がないんだよなあ。
 ここを乗り切れるかどうかが、新監督のストラマッチョーニがスパルタファンに受け入れられるかどうかの瀬戸際であろう。駄目でもすぐに解任ということにはなるまいが、ファンの支持を失うとやりにくくなることはいうまでもない。そして単純なファンをひきつけるには最初が勧進なのである。去年のホロウベクのように。

 今日の初戦はベオグラードでの開催されたが、チェコテレビが放送してくれた。ただセルビア側の問題で前半何度か映像が途切れてしまうことがあって、見ていていらいらしてしまった。試合内容にもいらいらいしたのだけど。
 チェコ人で先発出場したのが、中盤のマレチェクとフリーデク、ユリシュの三人だけ、スロバキア人を入れても5人という外国人中心で挑んだのだけど、完敗だった。前半後半ともに一点ずつ決められて0−2での敗戦。細かいことは思い出したくもない。

 このセルビアでの試合で最大の話題は、失われたチェコの才能の一人であるV.カドレツが招集外になってプラハに居残りを命じられたことだった。フィテッセとの前哨戦には先発で出場していたが、全くいいところがなかったし、後半から交替で出場したプラフシチと比べたら大幅に見劣りしたから出場しないのは予想していたけれども、帯同しないというのには驚いた。監督の話では、監督が求めることをしていないのが最大の問題だという。不満分子第一号である。
 スパルタは、一説によれば、さらにロシツキー的な司令塔タイプの選手の獲得を目指しているともいう。昨シーズンの低迷は、ドチカルの中国移籍によって止めを刺されたのだから、もっとはやく代役を見つけておくべきだっただろうに。今回も怪我で欠場したロシツキーの復帰を待つしかないのかなあ。

 とまれ、ストラマッチョーニ監督がシーズンの終わりまで続ける可能性を大きく減らす敗戦となったわけだ。来週のプラハでの試合次第だけど。ヨーロッパリーグの予選で敗退して、国内リーグだけとなった場合に、外国からやってきた選手たちのモチベーションは維持できるのだろうか。
7月27日23時。







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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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