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2017年07月31日

ウフリン若のムラダー・ボレスラフ(七月廿八日)



 同じボレスラフでも、古いという意味の形容詞の付いたスタラー・ボレスラフは、チェコの歴史に於いて非常に重要な街である。このラべ川をはさんだブランディース・ナド・ラベムと一つの自治体となっている街は、プシェミスル家の聖バーツラフが弟のボレスラフ一世に殺された場所として知られている。ブランディースのほうからラべ川を越えてきた道が街の入り口の門を越えるたところから扇型に街が広がるというチェコにしては珍しい形をしている。

 それに対して、スタラー・ボレスラフからラべ川の少し上流に行ったところで分岐するイゼラ川に沿って上って行ったところにある新しいムラダー・ボレスラフは、シュコダ自動車の本社工場があるところとして知られている。一応イゼラ川と支流のクレニツェ川に挟まれた崖の上にそびえる14世紀に建てられたお城など観光名所と呼べる場所もなくはないのだが、シュコダの工場の重要性には遠く及ばない。
 そのシュコダの工場からほど近いところにある控えめなサイズのスタジアムを本拠地としているのが、FKムラダー・ボレスラフである。近年は一部リーグでも上位を争うようになっているが、十年ちょっと前までは二部にいたチームである。一部に昇格したばかりのチームを率いていたドゥシャン・ウフリンが、この夏ボレスラフに監督として復帰した。

 ドゥシャン・ウフリンというと、国外では1996年のチェコ代表を率いてヨーロッパ選手権で銃優勝を遂げたドゥシャン・ウフリン爺が有名だが、こちらのドゥシャン・ウフリン若はその息子で、二十歳すぎにはすでに選手としてのキャリアを諦め、監督業に転進している。ユースチームの監督やトップチームのアシスタントを務めた後。二部に落ちて消滅目前だった旧ボヘミアンズ・プラハで監督デビューした。
 その手腕を買われてボレスラフに移り、昇格したてで戦力の整わないチームを率いて、残留を果たしたんだったかな。その翌年ぐらいからは、戦力も整って上位を争うようになり、最高でリーグ2位になったことがあったはずである。上位争いをする現在のチームの基礎を作った監督だといってもいい。

 その後、国外に出てルーマニアのティミショアラやグルジアのトリビシなどで監督を務め、経験も積んで、2013年にブルバが代表監督になった後のプルゼニュでチェコに復帰し、一年目はそれなりの結果を出したのだが、二年目の夏にヨーロッパリーグ予選での敗退を受けて解任されてしまった。そして、2015年にはスラビアの監督に就任し、前年、前々年と十位以下に沈んでいたチームを、ヨーロッパリーグの予選二出場できる5位まで引き上げたのだけど、中華資本のスラビアへの流入の結果、得点源のシュコダが中国に移籍するしないで混乱したこともあって、ヨーロッパリーグの予選で敗退、リーグでも低迷していたために解任されてしまった。
 今回、ムラダー・ボレスラフに復帰したわけだが、正直な話、ウフリン若には、プルゼニュや今のスラビアのような資金的にも戦力的にも余裕があって、優勝を狙うというチームよりも、足りない資金と選手をやりくりして上位を狙うボレスラフの方が似合っている。あえて言えば、選手に合わせてチームを作るというよりは、チームに合わせて必要で金銭的に取れそうな選手を集めるという感じか。

 最近、リーグで上位に入ってヨーロッパリーグへの挑戦権を得ても、いいところのないボレスラフなので、期待していなかったのだが、予選二回戦で、アイルランドのチームに二戦とも勝利して、三回戦に進出した。心強いのは永遠の若手フラモスタが好調なこと。この選手、点が取れているうちは手がつけられないところがあるのだけど、或る日突然ぱったり点が取れなくなるのである。
 予選三回戦の相手は、二年前にアルバニアで史上初めてヨーロッパリーグの本戦に進出したスカンデルベウ・コルチャというチーム。チーム名は15世紀にアルバニアを統一しオスマントルコと戦い独立を維持し続けた英雄の名前に由来しているという。2010/11のシーズンからアルバニアリーグで五年連続優勝を飾ったが、賭博を巡る不祥事を起こして処罰を受けたこともあるらしい。ちなみに、2011/12のシーズンは現在スロバーツコの監督を務めるチェコ人のスタニスラフ・レビーに率いられてリーグ優勝とカップ戦での準優勝を飾っている。

 ムラダー・ボレスラフで行なわれた初戦、ボレスラフが攻めて大きなチャンスをいくつも作っていたのだが、二回戦とは違ってなかなか点が入らなかった。前半終了間際にフラモスタのシュートで先制。フラモスタはこれで三試合連続ゴールである。
 この調子なら二点差ぐらいで勝てるかなと思っていたら、後半終了間際の85分過ぎになって、相手がペナルティーエリア外から打った強烈なシュートが、チュモフシュの顔面に当たって、方向を変えゴールに吸い込まれてしまった。チュモフシュに当たっていなかったら、外れていたはずだけど、よけようのない強烈なシュートで、チュモフシュはしばらく朦朧としているようだった。

 去年までのボレスラフなら、このまま引き分けて、二戦目で敗戦して敗退となるところだろうが、この試合では失点した直後に、相手ゴール前に攻め込み、混乱の中から途中交代で入ったヤーノシュがゴールして勝ち越し、もう一点ほしかったけれども、そのまま2−1で終了した。
 スパルタの試合と比べて思うのは、マテヨフスキーの存在は大きいということだ。組み立て役のいないスパルタの攻撃が得点できそうな気配が全く感じられないのに対して、マテヨフスキーが指揮するボレスラフの攻撃は、期待に満ちている。

 ウフリン若のボレスラフは、かつてフランスのマルセイユを破って、ヨーロッパリーグの前身UEFAカップの本戦に進出したこともあるから、期待しよう。今年はカップ戦で優勝したズリーンが本戦からの出場だし、スパルタはここで消えそうだけど、スラビア、プルゼニュを含めて、チェコのチームが四つヨーロッパリーグの本戦に進む可能性があるのか。
 さすがに中堅チームのボレスラフの移籍情報までは追いきれなかった。そのため出場選手も省略。オロモウツ育ちのプシクリルはちゃんと活躍していたし、マゲラも途中から出場していたから、それで十分。ここもプルゼニュと同じで監督が最大の補強ということになるのかな。
7月28日23時30分。





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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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