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2016年07月22日

ビネトゥー(七月十九日)



 チェコ人たちが愛してやまないドイツ映画、いや正確には西ドイツの映画がある。ドイツ映画だけれども舞台はアメリカ西部で、主人公はアメリカインディアンのアパッチ族、演じるのはフランス人の俳優、撮影地はバルカン半島の旧ユーゴスラビア。もう一人の主人公はアメリカ人をアメリカ人の俳優が演じ、イタリア人の俳優も出演するという何とも国際的な映画である。
 映画の名前は、というよりシリーズの名前は「ビネトゥー」。アメリカの西部開拓時代のインディアンと白人の争いを背景に、アパッチ族の若き酋長ビネトゥーと、白人ながら白人の不正を許さない高貴な心を持つ男オールド・シャッターハンドの立場を超えた友情を描いた映画である。

 最初に制作されたのは、1962年の「白銀の湖の財宝(仮訳)」だが、ストーリー的には、1963年に製作された「ビネトゥー」が先になるらしい。この「ビネトゥー」と、翌年の「ビネトゥー――紅の紳士(仮訳)」と翌々年の「ビネトゥー――最後の銃撃(仮訳)」は、ドイツ語の原題では「ビネトゥー」に1から3の数字が付いていて三部作のようだが、作中の時間の流れから言うと「白銀の湖」が「ビネトゥー」の1と2の間に入るようで、その順番で放送されることが多い。。
 「ビネトゥー」の本編を為すのは、以上の四作だが、周囲に同じ時代を舞台にして同じような上京を描いた作品が何作もあって、全部で十作ぐらいになるのだろうか。同一人物が出てくるのか、同じ俳優が出てくるだけなのか、よくわからない。オールド・シャッターハンドではなくて、オールド・ファイアーハンドという人物が主人公の作品や、オールド・シャッターハンド(もしくは俳優)が別名でマヤやアステカの末裔と絡む作品もあったなあ。とまれ、毎年夏休みなどに本編四作だけでなく類似の作品群も再放送が行なわれている。今年も例外ではない。

 チェコに住んでいるのに、わざわざ外国映画を吹き替えで見ても仕方がないという思いもあって、見ないようにしていたのだが、何度も何度も放送されるので、ちらちら見てしまうことは多い。しっかり集中してみているわけではないので、ストーリーは把握できていないし、主人公二人を除くと誰が誰かもわからないのだけど、見覚えのあるシーンだけは増えていく。
 白人だから悪人だというわけではなく、インディアンだから善人で白人の被害者だというわけでもないけれども、全体としては悪辣な白人たちを、ビネトゥーとオールド・シャッターハンドが協力して懲らしめインディアンを救うというのがストーリーの基調になっている。白人=アメリカ人ということで、共産党政権も喜んで受け入れたのだろうか。そして、一般の人々には、白人=ソ連という図式で受け取られたから人気が衰えないのかもしれない。

 チェコでは毎年必ず再放送されるような人気を誇っているのだが、本国ドイツではどうなのだろうか。サマースクールでドイツ人と話したときには、この作品のことなんか知らなかったからなあ。ただ、「ビネトゥー」シリーズのパロディーである「マニトゥーの靴」という作品をドイツのコメディアンのグループが制作していることを考えると、少なくともある程度の人気はあるのだろう。パロディーなんて本家を知っている人が見て初めて意味をなすのだから。とは言え、本編はまともに見たことがないのにパロディーは最初から最後まで通して見た私のような人間もいるだろうけど、それでは、半分ぐらいしか面白さが理解できない。いや、もっと少ないかも。パロディーだけでも、それなりには面白かったけど。

 ところで、この映画はカレル・マイ(チェコ語で聞くと「マーイ」にも聞こえる)というドイツの作家の作品をもとにして制作されている。これに関して恥ずかしい勘違いをしていた。「ビネトゥー」はチェコ人の作家の作品を原作としてドイツで制作されたと思っていたのだ。
 チェコの詩人にカレル・ヒネク・マーハという人物がいる。このマーハの代表作が「マーイ」である。名前が同じカレルで、姓と作品名が「マーイ」ということで、混同してしまって、カレル・ヒネク・マーイというのが「ビネトゥー」の作家の名前だと思っていたのだ。チェコ語に「ビネトゥー」などのマーイ原作の映画をまとめて「マーヨフキ」と呼ぶのも混乱に拍車をかけたかな。

7月20日23時。


 イタリアも制作に名を連ねているこの映画、マカロニウェスタンってことになるのだろうか。7月21日追記。




 購入はできないみたいだけど、紙の本発見。表紙の写真は映画とは関係なさそう。

2016年07月07日

きゅうりの季節(七月四日)



 きゅうりの季節、チェコ語で「オクルコバー・セゾーナ」というのは、七月、八月、つまり夏休みの時期のテレビの退屈さを指す言葉である。

 この時期は、国会も休会し、政治家も休暇を取るため、チェコのニュースのかなりの部分を占める政治ニュースが一気に減る。今年はイギリスのEU脱退のおかげで、EU首脳たちのヒステリックとしか言いようのない反応がニュースをにぎわしているが、例年のこの時期のニュースは、政治好きのチェコ人たちにとっては、退屈極まりないものとなるようだ。それに、毎週日曜日に放送されている政治家の討論番組もこの時期は中断するし。
 六月の終わりから七月の初めにかけてのニュースの目玉は、いかにしてチェコから、チェコ人に一番人気のバカンス地であるクロアチアの海岸まで車で行くかである。通過する国の高速道路の料金や、料金徴収のシステム、罰金のあり方など、こんなの公共放送のニュースでやることなのかと、初めて見たときには思ったが、最近は夏の風物詩だと思えるようになった。ただ、プラハからクロアチアの海岸まで、実際に車に乗って行ってみせる必要はないんじゃなかろうか。それに、どっちのルートで行ったほうが早いかなんてのは、BBCのトップギアをまねた自動車番組でやるべきだろう。

 きゅうりなのは、ニュースだけではない。この時期になるとテレビ番組は、新作の放送がなくなり、軒並み再放送となる。チェコのテレビは一体に再放送が多いのだが、この時期には終わらない連続ドラマも新作の放送を一時中断して、再放送ばかりになる。外国ドラマや映画のチェコ語吹き替え版も、新しいものではなくかつて自局で放送したものか、よその局で放送したものが放送されるばかりである。もっとも、民放のテレビ局ノバが数年前に鳴り物入りでゴールデンタイムに放送を始めたものの、最初の数週間であまりの人気のなさに見切りをつけて放送時間を変更することになったトルコのテレノベラ「千夜一夜物語」だけは、再放送でも見かけないような気はするけど。いや、そもそもこの番組最後まで放送されたのだろうか。

 共産主義時代のテレビドラマが再放送されることも多く、今年の目玉は、チェコテレビが週に二回再放送している「サニトカ」である。題名は日本語に訳すと救急車なのだけど、それではドラマの題名にはなりそうにないので、チェコ語のままにしておく。題名の通りにプラハで救急医療に携わる人たちの活躍を描いたドラマである。主人公はどこかの病院で上ともめて辞職して、救急隊に配属になった救急車に乗る医者だったかな。
 何年か前に確か三十年ぶりに続編が製作されたときにも、再放送があってちらちら診た記憶はあるのだけど、正直な話、主題歌が無駄にかっこよかったことしか覚えていない。今回ちょっとだけちゃんと見たら、主役のヤンデラ医師を含めて、有名な俳優が結構出ていて驚いてしまった。

 ノバでも、「クリミナルカ・アンデル」の初期の作品が再放送されているし、このきゅうりの季節も悪いことばかりではない。一度見逃してもどうせまた再放送があると思えば、ビデオなんて必要ないし、かつて日本ではやった昔の番組の一場面を探し出して見せるなんて番組も、一場面どころか番組全体が再放送されるのだから需要があるとも思えない。
 ただ、毎年大晦日に放送される長時間のバラエティ番組を夏の暑いさなかに延々再放送するのは、季節感の面からもうんざりしてしまうのでやめてほしい。とはいえ、本来クリスマスに放送されていた「ポペルカ」などの童話映画が、夏休みだけでなくイースターの時期にも放送されるようになって久しいし、チャンネルが増えすぎてコンテンツの奪い合いが起こった結果、放送する物が足りなくなったということだろうか。そう考えると、二ヶ月というきゅうりの季節は長すぎる。

 ちなみに、共産主義時代のドラマで意外な人気を誇り、最近しばしば放送されているのを見かけるのが「マヨル・ゼマン30の事件」である。秘密警察の将校の活躍を描いたこのドラマは、共産党政権のプロパガンダに満ち溢れているから見てもしょうがないという思想教育を受けたので、自分では見る気になれないのだけど、共産党に嫌悪感を隠さない人たちの中にもゼマンのファンはいるようである。ドラマとしての出来と、プロパガンダはまた別物だということなのだろう。そこはかとないプロパガンダ臭を振りまきながらも、人気のある共産主義時代の映画もいくつかあることだし。
7月6日10時。


2016年06月12日

オクレスニー・プシェボル――チェコテレビドラマ事情(六月九日)



 放置すると忘れてしまいそうなので、テレビドラマの話題をもう一つ。
 チェコの田舎をまわったことのある人は、人口が千人もいれば御の字というような小さな村にも、かなり立派なサッカーのグラウンドがあるのにびっくりしたことがあるかもしれない。一時は一部リーグにボヘミア地方のブルシャニとモラビア地方のドルノビツェという二つの村のチームが参戦していたこともある。この二つの村のサッカー場には、村の人口よりもたくさんの観客が入れる客席がついていたが、普通の村のサッカー場には、そこまでの客席はない。その代わりというわけでもないが、見事に整備された芝のグラウンドであることが多い。
 そして、グラウンドのあるところには、チームが存在し、チームが存在すれば試合が行われるのが当然である。チェコではサッカーリーグの一番下のカテゴリーは、かつて存在した行政区分のオクレス単位で行われており、オクレスレベルでの一番上のリーグがオクレスニー・プシェボルである。ここで優勝すると、一つ上のクライレベルのリーグに昇格することになる。ちなみにオクレスは郡、クライは県と訳されることもあるが、個人的には抵抗のある訳である。

 それはともかく、この下部リーグを舞台にして、田舎の小さな村のサッカーチームの姿を活写したのが、ノバ制作のドラマの怪作「オクレスニー・プシェボル」である。いい意味でとんでもないこのドラマ本編は、チームの監督がなくなり、その妻が火葬にした灰をグラウンドにまくという監督の遺言とともにチームのクラブハウス(というほどのものでもないけど)を訪れるところから始まる。そして、チームの経営陣、選手達、村の人々がサッカーを巡って繰り広げる悲喜こもごものストーリーが展開される。
 主役の一人、選手から新監督に就任する人物を演じるのが、オンドジェイ・ベトヒーである。この武闘派の俳優は、日本でも公開された「ダークブルー」でも主役を演じているから、知っている人もいるかもしれない。あの映画では、かっこいいパイロットの役を演じ、中でも弟のように可愛がっていた後輩が自分をかばって撃墜されたときに、「カーヨ」と叫ぶシーンは、鮮明に覚えている。
 だけど、この「オクレスニー・プシェボル」では、プロになれるわけでもないのにサッカーに明け暮れて、嫁にいつもぶーぶー言われている情けない男を演じている。「コーリャ」でも、偽装結婚を仲介する怪しい男を演じていたし、この俳優の演技の幅は広い。でもね、あちこちの映画やドラマに同じ俳優が出てくると、どれがどんな話だったのか混乱をきたしてしまうのだよ。これはベトヒーだけのことではないし、ベトヒーはまだましな方なんだけど。

 ところで、このドラマには、前日譚を描いた単発の長編ドラマがある。こちらの主人公は、連続ドラマでは死んで登場した?監督で、むすっと不機嫌な面をしたクロボトという俳優が演じている。ベトヒーの役以上にサッカーに全てをつぎ込む爺さんなのだが、心臓に問題を抱えていて、ドナーを探して移植手術をすることになる。そのための検査などで村を離れることが多くなり、奥さんには若い愛人の存在を疑われ、チーム内には不協和音を引き起こすことになる。
 ドナーも決まって、これから移植手術というところになって、この爺さん、ドナーの部屋が見たいと言い出す。そしてその部屋であるものを発見した爺さんは、この手の手術につき物のコーディネーターの説得も空しく移植手術を拒否する。熱狂的なスパルタファンとして一生を送ってきた爺さんにとって、ドナー部屋で発見したスラビアのマフラーは許せるものではなかったらしい。スラビアの心臓を持つスパルタファンになるわけにはいかないという理由で、移植を拒否してしまうのである。

 スパルタファンとスラビアファンの間の対立は、かなり強烈で、両チームに在籍した選手はそれほど多くないし、特に直接移籍した場合には、両チームのファンからブーイングを受けることさえある。さすがに人死には、少なくとも最近は、出ていないと思うが、両チームのファンがぶつかり合って乱闘になることはよくある話なので、両チームのいわゆるプラハダービーは、リスクの高い試合として、普通の試合よりもはるかに厳重な警備体制のもとで行われる。だからと言って、相手チームのファンのものだからという理由で移植を拒否する人がいるとは思えないのだが、この偏屈爺さんなら、言い出しかねないという説得力のある演技だった。
 万人受けするドラマではないと思うけれども、チェコのサッカーの現実の一面を知るには役に立つ。このドラマが放送されていたころ、ノバの夜のニュースには、チェコ各地の村のチームの紹介をするコーナーが存在していたし。再放送して続編作ってくれないかな。
6月11日22時30分。

2016年06月09日

刑事たちのオロモウツ――チェコテレビドラマ事情その二(六月六日)



 テレビドラマの最近の傾向で、特筆しておきたいのは、いつの間にか、刑事ドラマが増えていることである。我がお気に入りの「チェトニツケー・フモレスキ」は、三度にわたって、13話ずつ制作されて、全39話で完全に完結したが、これは第二次世界大戦前の第一共和国時代を描いたチェコ的時代劇でもあった。

 現代を舞台にした刑事ドラマ、もしくは警察ドラマが流行するようになったきっかけは、ノバが2008年に放送した「クリミナルカ・アンデル」というプラハを舞台にした刑事ドラマの成功にある。このドラマは、警察の協力を得て説得力のあるストーリーを作り出すことに成功しており、つい見てしまうことが多い。
 一話で事件の解決まで完結するので、前の話を見ていなくても、それほど問題にならないのは、刑事ドラマの利点と言えようか。最初のシリーズが13話撮影されたあと、二年に一度ぐらいの割合で新しいシリーズが撮影されて、全部で四シリーズ、六十一話まで制作されているようだ。
 続編を制作してほしいと感じる数少ないチェコのドラマの一つなのだが、主役の一人を演じていた俳優が何をトチ狂ったのか、政治の道に志しバビシュのANOに入って、国会議員になり、現在では国防大臣を務めている。そのせいで既に第四シリーズで配役に調整が入って、登場人物を増やすことで、その俳優ストロプニツキーの出番を減らすという処置が取られた。
 この俳優は政治家なんかやるより、アンデルの続編の撮影に参加したほうが、はるかに世のため人のためになると思う。ただ、ハベル大統領の時代から、バチカンかどこかのチェコ大使を務めるなど政治への色気は見せていたみたいなので、日本のタレント議員とは、知識や意識の面でかなり違うとは言えそうだ。

 このノバのドラマに刺激を受けて、チェコテレビが制作した刑事ドラマを具体的にすべて上げることはできないのだが、現在は実際に起こって警察が解決に成功した事件をモチーフにした「捜査一課の事件」という番組が放送されている。もちろん、実際の事件そのままではないのだろうが、警察のアドバイザーがニュースで話していたところでは、ドラマ用の脚色はあるけれど、現場の捜査員の動きなども、実際に警察官たちがしていることとほとんど同じだという。警察が、ノバやチェコテレビのドラマ制作に協力しているのは、警察のイメージを上げようとか、警察官が不足気味の状況を解消しようとかの目的があるのかもしれない。
 半年ほど前だっただろうか、チェコテレビで「クリミナルカ・プルゼニュ」という刑事ドラマが放送されていた。西ボヘミアの中心都市とはいえ、人口せいぜい十万人ほどのプルゼニュで、連続ドラマにできるほど、事件が起こるのかという疑問はあるけれども、プラハ以外を舞台にした刑事ドラマが制作されることは、いいことであろう。何でもかんでもプラハでということになれば、プラハ以外に行かない観光客を批判することはできなくなる。

 さて、オロモウツで撮影された刑事ドラマも存在している。ただし、残念ながら連続ドラマではなく、「聖三位一体の碑の捜査員たち」というシリーズにはなっているが、基本的には単発のドラマで、一つの作品が、三回か四回に分けて放送され、合計すると三時間ぐらいになるから、日本の二時間ドラマのようなものだと考えればいいのかもしれない。これまでに、すでに三作、計十回放送されている。

 去年の春に放送された第一作は、「悪魔祓師のための事件」で、悪魔を祓うための儀式の一環で殺されたとみられる女性の死をめぐる物語である。その後。宗教関係者が事件に関係していることが判明して……。事件の捜査はオロモウツ市内よりも周辺の村が舞台になっていた。警察署はオロモウツのものなので、事情聴取なんかはオロモウツで行われたことになっているのだろうが、実際にオロモウツで撮影されたのかどうかはわからない。

 二作目は、「青い影」という題名で、今年の春に四回にわたって放送された。オロモウツにあるパラツキー大学における汚職事件を背景に、准教授が殺害されるところから話が始まる。高い地位にいる容疑者が政界の権力者とつながりがあって、最初に担当していた主任捜査官が容疑者に対する捜査をやめるように圧力をかけられたり、捜査から外されたりして……。こちらはパラツキー大学が舞台になっているので、実際の大学の建物の中で撮影が行われたらしい。サマースクールのときに入った部屋ができたような気がしないでもない。

 その後に続くように放送されたのが、最新作の「死せる五匹の犬」である。オロモウツ郊外のスバティー・コペチェクという丘の上にある動物園に、強盗が入り、警備員が殺され、熊が盗まれる(何か変な言い方だけど、誘拐も拉致も変なので)。同じころに山の中で、犬の死体がまとまって発見され、前回の事件でミスを犯して村の駐在警官に左遷されていた元捜査員が、退職してテニスクラブの管理人になっていた元捜査官と組んで捜査を始める。一件関係ないと思われていた二つの事件が、犬を戦わせてお金をかける非合法の闘犬のようなものによってつながることが判明し……。

 刑事ドラマとはいえ、推理ドラマの要素があるので、ストーリーは最後までは説明しない。興味のある人は、自分の目で見てもらえるとありがたい。これを見てオロモウツに来たいと思えるかどうかは疑問だけど。ドラマの良し悪しはともかく、こんな形でテレビにオロモウツが登場するのは、地元の人間にとってはうれしいことだ。「チェトニツケー・フモレスキ」でもオロモウツで撮影されたシーンはでてきたが、あれはあくまでブルノが舞台だったし。
 現在も、この刑事ドラマシリーズで主役の一人を演じたクロボトという俳優がオロモウツで何かを撮影しているというし、ミロシュ・フォルマンの映画で脚本をいくつか書いた人物の遺作の撮影もオロモウツで進められている。オロモウツが、ドラマや映画の舞台として世界中で有名になる日は近い、かもしれない。いや、その前にチェコ語の普及活動に力入れなきゃ。
6月8日17時30分。



2016年06月08日

チェコテレビドラマ事情その一(六月五日)



 チェコに来てテレビがある生活を始めたのは、三年目ぐらいだっただろうか。チェコ語の勉強の一環として、サマースクールなどで映画を見せられたりしていたので、映像をチェコ語の音声付で見るのがチェコ語習得に役に立たないわけではないのはわかっていた。
 テレビを見ることが語学学習の手段となると言われると、両手を挙げての賛成はできないが、少なくとも耳をチェコ語に慣らすのには役に立った。師匠や友人達の話す外国人にもわかりやすいきれいなチェコ語ではなく、ちょっと砕けた下品な発音も明瞭でないチェコ語に触れられたのは、後の仕事にも役に立ったし、語彙も増やせた。
 その結果、日本にいたころにはテレビも映画もほとんど見なかったので、映画やテレビ番組については、日本のものよりも、チェコのもののほうが詳しいということになってしまった。日本の人に90年代以降のテレビ番組の話をされてもわからんし。

 それでも、チェコのテレビを見ていて、日本と違うという点に気づいた。日本だと、各テレビ局が、毎年力を入れて連続ドラマを制作し、その視聴率の上下に一喜一憂しているものだが、チェコではチェコのテレビ局が制作したテレビドラマが放送されることは滅多になかったのだ。
 チェコテレビでは、例外的に新しいドラマの制作もしていたようだが、映画的な手法を取っているのか、完成までに二、三年かかるということが多く、ニュースでも現在撮影中のこのドラマは来年の秋に放送予定だとか言われていた。だから、一般にテレビで放送されるドラマといえば、アメリカドラマの吹き替で版、たまにチェコで制作されたものがあっても社会主義時代の古いドラマの再放送というのが関の山だった。
 チェコテレビで作成されたアメリカドラマの「フレンズ」の吹き替え版は、チェコテレビで何度か放送された後、民放のノバに買い取られて、現在まで延々再放送が繰り返されている。さすがにチャンネルの増えた現在では、ノバ本体ではなく、再放送用のチャンネルでの放送だけど。チェコ初の民放であるノバで、初めて吹き替えを制作して放送したのが、朝鮮戦争における野戦病院の医師たちを描いた「マッシュ」(チェコ風の発音だとメッシュ)である。記念すべき初のオリジナル(吹き替えだけど)作品として、ノバで再放送が繰り返されていたのだが、現在ではプリマに移って一日に二話、三話放送するという形で、全部で二百五十話を越えるシリーズが一年に二回か三回繰り返されている。
 この二作品は、極端な例だが、外国ドラマの吹き替えが放送されることが多く、再放送も多いというのは、現在でも大きくは変わっていない。ただ、チェコ独自のドラマが増えているのである。そのきっかけは十年ほど前にある。

 当時、第二の民放として誕生し、ノバの後塵を拝することに甘んじ続けていたプリマが、ノバ越えを目標にあれこれ新番組を導入していたのだが、その一環として制作されたのが、ドラマ「ロディナー・ポウタ」だった。チェコの民放がドラマを作ったことにはともかく、ドラマ自体には興味が持てず、見ていないのだが、ある一族の内部の人間関係を中心にしたドラマだったらしい。
 その後、「とても壊れやすい関係」と名前を変えて、継続し一時は終わらないドラマだと言われていた。それが、確か脚本家たちと何かでもめて、裁判沙汰になった結果、意外とあっさり終わってしまった。打ち切り的な終わり方だったのか、きれいに大団円を迎えて終わったのかは、見ていないのでわからない。
 その後も、プリマでは独自のテレビドラマの制作を続け、さまざまな作品を送り出している。去年あたりは南モラビアのワイン農家を舞台にしたドラマが、方言が間違っているとか、批判を浴びていたが、悪評も視聴者を引き付ける役には立っているようで、続編も制作されていた。個人的には「チェトニツケー・フモレスキ」で主役ではないけれども重要な役を演じていた俳優が出演していたのが、ショックだった。お前、南モラビアの出身なのにこんなのに出るのか、と思ったのだが、番組は実際に見ていないので、これ以上の批判は避けよう。
 とにかく、「ロディナー・ポウタ」の経験が、その後のドラマの制作に生きたということなのだろう。それで、見たい番組が増えたわけではないので、あんまりうれしくはないけど。でも、日本でも見たいテレビドラマなんてなかったから、状況は同じか。

 もちろん、ノバが手をこまねいて見ているはずもなく、対抗する番組として「バラ園の診察室」というドラマを始めた。こっちはお医者さんの話だと思うけど、中身に興味はないので見ていない。こちらは本当に終わらないドラマで、現在でもしばしば新作が放送されているような気がするのだけど、再放送だったかもしれない。このドラマと、プリマの「ロディナー・ポウタ」の間では、しばしば出演者のトレードが行われていて、コマーシャルの前か後ろに挟まれる放送予定の番組の予告を見ていて、あれこの人プリマに出てなかったっけととか、その逆を思うことは多かった。
 先日読んだチェコのサッカー代表のクレイチーのインタビューで、この番組を見るのが趣味だと答えていたのだが、理由を問われて、毎回ほとんど何も起こらないことだと答えていた。他のことをしながらでも見られるし、何かの用で二、三回見逃しても、次の回を見るのに何の支障もないのだそうだ。しかし、こんな見方をしていて趣味だとか好きな番組だとか言えるのだろうか。代表の同僚たちからは理解できないといわれたらしいが、うん、俺にも理解できん。
 ノバが投入したもう一つの連続ドラマ「ウリツェ」(通り)はもっとひどい。毎日夕方に放送されていて、三千話を越えているのだけど、一時期は一日分の放送を、二話に分けて話数を稼いでいた。それから、撮影が終わったものから順次放送しているようで、出演中の役者が入院した時には、別の役者を代役に立ててそのまま話を続けさせたらしい。撮影の都合で退院するのを待つ余裕はなかったのだろうが、黒髪の役者の代役に、金髪の役者を使ったんだったか、その逆だったか、いずれにしても鬘ぐらい使って同一人物に見える努力はしろよと思ってしまった。

 最初は、チェコで撮影されたテレビドラマがあまりないことが不満で、どうしてチェコまで来てアメリカのドラマなんか見なければいけないんだなどと感じていたのだが、チェコのドラマが増えたからと言って見たいものが増えたわけではなかった。日本でも毎年量産されるテレビドラマは玉石混交、と言うよりは、大半は石なのだろうから、その点ではチェコも日本も大差はないと言うことか。そもそも、テレビ自体がそんなに好きではなかったのだから、チェコでもチェコ語の練習という意味がなかったら、おそらくほとんど何も見ていなかっただろう。
6月7日22時。


チェコ、ドラマで検索したらこんなのが出てきた。面白いので載せておく。6月7日追記。

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2016年04月10日

シュムナー・ムニェスタ(四月七日)



 建築探偵と言う言葉を聞いて、「藤森照信」という名前がすぐに思い浮かぶ人は、この番組が気に入るはずである。日本の藤森建築探偵は、明治以降の洋風建築に関する調査から始まって、外国にも調査の足を延ばして、我々一般の人間にもわかりやすく書籍と言う形で提供してくれた。自分自身では建築ファンなどではないと思っているが、普通の人よりは建築や建築用語に詳しいのは、昔友人に勧められて、『建築探偵の冒険』以下の本を読んだからに他ならない。さすがに赤瀬川源平のトマソンには付いていけなかったけど。
 チェコ版『建築探偵』と言うべきものが、今回取り上げるテレビ番組「シュムナー・ムニェスタ」で、建築探偵の役を果たすのは、自身も建築家である俳優のダビット・バーブラである。バーブラは俳優としては、スクレプ劇団を立ち上げた人物として知られている。スクレプというのは本来、一軒家やアパートなどの地下にある物置のことを意味し、南モラビアの丘陵地帯にある丘の斜面に穴を掘って作られたワインの醸造、熟成用の地下蔵もこの言葉で呼ばれる。劇団はバーブラの祖母の家の地下室で誕生したことから、このように名づけられたらしい。地下劇団と訳してもいいのかな。ただし、この劇団が本当にアンダーグラウンドの存在だったのかどうかはわからない。

 この番組は、チェコ各地に残された建築物、特に過小評価されがちな近代の建築物を紹介するドキュメンタリーである。チェコの番組にしては珍しく、時間がほぼ一定で25分前後、建築物を紹介して回るさすらいの建築家を演じるバーブラのほかに、必ず最初と最後に子供たちが出てくる。子供たちに教えるという設定なのかもしれないが、子供たちは建築物めぐりには同行しない。建築家が移動に使うのは、毎回、何これといいたくなるような変なものである。古い自転車だったり、トラクターだったり、取り上げる町に関係のありそうなものを使っているのだろうか。
 それから、毎回欠かせないのが、喫茶店に入って、年老いたウェーターにコーヒーを出してもらうシーンである。その町で、かつてもっとも有名だった喫茶店があった建物に入るのだが、そこに喫茶店が残っているとは限らない。たとえば、オロモウツではモラビア劇場の隣の「喫茶店」に入る。そこが撮影当時は自転車屋になっていたため、コーヒーではなくスポーツドリンクのようなものが出てきていた。ちなみにこの場所は、番組のおかげか、自転車屋は撤退し、現在では喫茶店に戻って営業している。

 思い返してみると、かつての有名な喫茶店がかつての姿で喫茶店としてあり続けていた町のほうが少ないような気がする。荒れるに任されていて崩壊寸前という建物もあったなあ。カメラは、美しく改修された建物ばかりでなく、このような残酷な現実をも、そのまま映し出す。現在まで生き残った建築的に貴重な建物で文化財に指定されている建物であっても、所有者によっては、まったく改修もされず、改修されても本来とは違う使い方をされてしまうのである。
 オロモウツでは、かつて、ホルニー広場の市庁舎の天文時計の向かい側の一番目立つところにある建物に中華料理屋が入っていて、真っ赤な看板に漢字で店名が書かれていた。あれは、興ざめだったなあ。この店はなくなり、広場の反対側に入った中華料理店は看板が控えめになっているので好感が持てる。広場にはマクドナルドもあったけど、あれもあまり好ましいとは思えなかった。今では移転か撤退かで広場から姿を消したので、目に優しくなった。

 「シュムナー・ムニェスタ」は、全部で66本が制作され、すべてチェコテレビで放送された。最初のオストラバ、オロモウツ、オパバの三本は、独立した作品として作られたものを後から、シリーズに組み入れたものらしい。撮影年は古いのに真ん中付近に位置づけられているのはそのためである。それにしても、モラビア地方の町から始められたのが素晴らしい。そして、ブルノが最後の町というのも悪くはないが、プラハを完全に無視してしまったのが私にとっては最高である。プラハについて、プラハの建築物についてのドキュメンタリーなんて、すでに腐るほど存在するのだ。この番組の関係者なら新しい視点から面白い番組を作り出すだろうけれども、そんなことに労力を使うぐらいなら、これまで誰も取り上げなかった地方の忘れられた建築物に光を当てるほうがはるかに重要な仕事であろう。この番組で取り上げられたことで、保存が決まったり改修されることになった建物もあるのではないかと思う。

 さて、66ものチェコの町(場合によっては地方)に残る建築物の紹介を終えたバーブラたちは、今度は国外に眼を向ける。そして誕生したのが、続編とも言える「シュムネー・ストピ」である。こちらは、近代にチェコを出て国外で活躍したチェコ人建築家の活動の後を追ったドキュメンタリーである。今度は国ごとに、そして建築家ごとに作品が紹介されていく。
 その記念すべき第一回目の国が日本だったのである。よく知られた広島の原爆ドームを設計したヤン・レツル以外にも、東京の聖路加病院の建築にかかわったレーモンド、フォイエルシュタイン、シュバグルなど、日本で活動した建築家は意外に多い。一部はチェコ人としてではなくアメリカ人としての仕事だったりとよくわからない部分もあるらしいのだが。
 以上のチェコ人四人のうち、シュバグル以外の名前は、この番組を見る以前から知っていた。それは日本の建築探偵藤森先生の著作に登場していたからである。そうしたら、「シュムネー・ストピ」に、なんと藤森探偵自身が登場した。チェコの建築探偵と日本の建築探偵が、それぞれチェコ語と日本語で話すというなかなかシュールなシーンになっていたが、チェコテレビ、もしくはチェコ大使館の文化部、いい仕事したなあ。

 日本編が数回続いた後は、旧ユーゴスラビア、南米などのチェコ人建築家の足跡を紹介している。だから、南米にある製靴会社バチャの創った町なんかも出てくる。日本では企業城下町というと、悪いイメージで語られることも多いが、チェコでは、少なくともバチャの工場城下町に関しては高く評価されることが多いようである。
 とまれ、私が日本の人にオロモウツの建築物について、あれこれ説明するときの説明、特にジャーマン・セセッション様式の傑作プリマベシ邸の説明は、ほとんどこの番組が元ねたになっていて、建築用語は『建築探偵』で覚えたものを使っている。読書もテレビの視聴も、たまには役に立つということか。
4月7日18時。



 この本がまだ絶版になっていないのは、さすが筑摩書房というところだろうか。面白いので次々に新たな読者を獲得しているということなのかもしれないけど。4月9日追記。


建築探偵の冒険(東京篇) [ 藤森照信 ]


2016年03月23日

「トルハーク」再び(三月廿日)



 夕方、他に見るべきものもなきとて、のんびりサッカーを見ていたら、「トルハーク見ないの」と言われた。えっと思ってプログラムを確認したら、チェコテレビの第一で放送中だった。慌ててチャンネルを変えて、途中からだから入っていけるか心配しながら、見始めたのだが、心配無用、最後まで見てしまった。

 久しぶりに見ての感想は、一言、やはり面白い。面白いのだけど、以前書いた「トルハーク」についての文章に結構記憶違いがあったことに気づいてしまった。
 一番大きいのは、貴族然とふるまう男性の正体が肉屋であることを小学校の先生が知るのは、村の爆発シーンの撮影に失敗して予算不足でストーリーの改変を強いられてからだと思っていたのだが、実際は肉屋だとばれたシーンの次が爆発のシーンだった。ということはスビェラーク演じる脚本家の書いた脚本もそれなりにぶっ飛んでいたってことか。まあ、あの監督が映画にしようという台本だから、プラハの肉屋が田舎の城館で貴族のように振舞うなんてシーンがあっても不思議はないのかもれない。
 他にも、監督が試写会が終わった後に漏らす言葉は、「最後が最後が」ではなく、「天気が天気が」だったし、観客が帰りしなに漏らす言葉は「嵐」ではなく「雨」だった。自分が理解しやすいように理解してしまうのだろう。特にこのような難解な作品は。

 ここで改めて「トルハーク」という映画について説明しておこう。これは映画の中で『トルハーク』(区別のために二重鍵にする)というミュージカル映画を撮影するという作品で、監督や脚本家などの映画の撮影関係者には、作中の人物としての名前が付けられているが、映画中の『トルハーク』に出演する俳優達は、本編の「トルハーク」には本名(芸名かも)で出演するというややこしい構造になっている。登場人物が異常に多いので、本名であれ、役名であれ名前が出てくる人は一握りで大半は、エキストラ扱いだったり、名前ではなく役職名で呼ばれたりすることも多いのだが。

 主要な配役を説明すると、まず本編の主人公だと思われる映画監督を演じるのが、おそらくこの映画の生みの親であるラディスラフ・スモリャク。脚本が映画化されたものの監督の手法に不満たらたらな新人脚本家を演じるのが、もう一人の生みの親スデニェク・スビェラークで、この二人が出てくる映画は、多かれ少なかれツィムルマンの香りがするのである。またこの二人の映画に頻繁に登場する俳優達をツィムルマン軍団とか、ツィムルマン組と個人的には呼んでいる。
 湯水のように予算を浪費する監督に腹を立てて、着ている服のシャツを引き破ることになるプロデューサーを演じるのが、ツィムルマン組の一人ペトル・チェペクである。この人は、主役をはることは少ないけれども、ツィムルマン関係の作品以外でも重要な役を演じることが多く、チェコ映画に欠かせない俳優の一人である。それから、監督の脇で台本(だと思う)を抱えてシニカルな笑みをたたえている眼鏡の女性がイジナ・イラースコバーで、監督のお気に入りでカチンコを叩く役の女性を演じるのが、後に子供番組の象徴となるダーダ・パトラソバーである。

 映画中の『トルハーク』に出演して、映画本編では本名で登場するのが、まず主人公のティハーチェク氏を演じるヨゼフ・アブルハームで、この人は、「ヤーラ・ツィムルマン」でも、同じような外から村に訪れる人物の役を演じている。チェコの永遠のアイドル女優シャフラーンコバーと結婚したことでも有名である。小学校の女の先生エリシュカを演じるのが、アイドル歌手と言ってもいいハナ・ザゴロバーである。1989年のビロード革命に際して当時の共産党の書記長ミロシュ・ヤケシュがやらかした失言で高給取りの芸術家は不満をこぼさないという例として名前が挙げられてしまった。エリシュカの最初の恋人で、貴族のように振舞うが実はプラハの肉屋だというレンスキー氏は、スロバキア人のユライ・ククラが演じている。かっこいいおっさんを体現したククラは、先日テレビのトーク番組で見かけたが、相変わらずかっこいいおっさんで、「ユライ・ククラという名前は捨てて、ハンガリー風にゾルターン・マックスという名前に変えたから、ゾルターンと呼んでくれ」などとのたまっていた。この番組でかけていたみょうちくりんな眼鏡が妙に似合っていたなあ。

 他にも重要な役では、男やもめの森林管理官を、チェコの歌手の人気アンケートでカレル・ゴット神を実力で破った男バルデマール・マトゥシュカが演じ、その三人の娘のうちの一人は、後にハベル大統領の後妻となるダグマル・ベシュクルノバーである。この人、憲章77に対抗して共産党が制作したアンチ憲章に署名したらしく、そのせいもあってハベルとの結婚当初はかなり評判が悪かったようだ。三人娘の結婚相手のうちの一人飛行気乗りのイジー・コルンは、歌手で、ヘレナ・ボンドラーチコバーと組んで歌っていた番組がしばしば再放送されるが、その後四人組のグループを作って黒ずくめでセグウェイに乗って歌うなんてことをしていた。今では髪がなくなっているけれども、このころは結構ふさふさなのに時間の流れを感じてしまう。
 ルドルフ・フルシンスキー、ステラ・ザーズボルコバーなど、チェコの映画を見たことがあるなら、どこかで絶対に見たことがある人たちが、ちょい役で出ているのには、見るたびにびっくりさせられる。贅沢な映画なのである。

 さて、題名である。「トルハーク」は、引き裂くとか、ちぎるという意味の動詞から派生した言葉で、わかりやすいのは、マラソンなどでスパートして集団を引き離して独走するのを言う。ちょっと汚い言葉でいうと「ぶっちぎり」ということになる。映画に関係する状況で言うと、連日満員で立ち見続出というような「ぶっちぎりのヒット作」を指すことになるのだが、自作の映画に「ぶっちぎりのヒット作」なんて題名をつけてしまう監督というのは、やはり「ぶっちぎりに頭がおかしい」としか言いようがない。
 チェコ人でも知らないという人がいる映画だけれども、この映画こそ、チェコ映画がチェコ的であるという意味において、最高傑作であると確信している。傑作ではあっても、外国での受け狙いのようなあざとさを感じる作品もある中、わからない奴はわからなくてもいいという態度はすがすがしいまでである。
3月21日23時30分。



 どうして「トルハーク」が放送されたのかというと、スビェラークの80歳の誕生日だった。このおっさん80なのとびっくりしてしまったが、「コーリャ」「トマボモドリー・スビェト」「オベツナー・シュコラ」など数々の傑作にかかわってきたスビェラークの誕生日に放送するのが「トルハーク」であるあたり、チェコテレビもなかなかやるなである。日本で発売されたら……、売れないだろうなあ。それでも、チェコ語を勉強する人にとっては必見である。3月22日追記。

2016年03月19日

チェコで見る日本のテレビ(三月十六日)



 先日何気なしにテレビのチャンネルを変えていたら、どこかで見たことがあるような番組が放送されていた。懐かしい日本のアニメーションで、中学生か高校生のころに番組を見たのか、雑誌で見たのか覚えていないが、シャーロック・ホームズを犬にしてしまった『三毛猫ホームズ』と『迷犬ルパン』を足して二で割ったようなアニメだった。とはいっても、小説二作とは違って登場人物がみんな二足歩行する犬? なのだけど。

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 チェコのテレビでは、意外と日本の作品も放送されている。ホームズは、チェコテレビの子供向けチャンネルDで放送されたものだが、NHKのドキュメンタリーが、チェコテレビ第二やプリマ・ズームで放送されることがあるのは、以前にも書いたとおりである。ただNHKインターナショナルなるところの販売のため、日本語が聞けないのは残念である。

 「ポケモン」が「ポケーモン」となって放送されていたのは、ある意味当然だとしても、日本の映画が放送されることも多い。子供向けのアニメーションは吹き替えで、一般の映画は字幕付きで放送される。宮崎駿の「千と千尋の神隠し」は、「ファンタジーへの道」と名前を変えて何度も放送されているし、一度「ハウルの動く城」をちらっと見たときには、こんなものまで放送されるのかと思った。黒沢明の作品や、北野武の作品が放送されるのはともかく、最近の藤沢周平の原作をもとにして作られた時代映画が何作か放送されたのには、この手の話が外国人受けするのだろうかと不思議だった。
 字幕付きの映画を見るときには、チェコ語の字幕を読みながら、日本語の台詞を聞いてチェコ語の勉強に役立たせようと考えるのだが、たいていすぐに頭が痛くなってやめてしまう。それに聞くのか読むのかどっちつかずになって、話が理解できなくなるのが問題だった。それでも、チェコ語の字幕はわりとちゃんとしているからいいのだ。以前まだスロバキアテレビが見られたころに何度か見たスロバキアの字幕付きの日本の映画は、ところどころ台詞があるのに字幕が出てこないところがあってびっくりした。字幕を作る人が聞き取れなかった部分は省略したとかそんなことなのだろう。

 閑話休題。
 チェコでは、上記のホームズもそうだが、何でこんな番組がといいたくなるような日本の番組が放送されていた。今でも時々再放送で見かけるのだが、初めてテレビ番組表で、「Takešiho hrad」と書かれているのを見たときには、直訳して「タケシの城」だから、時代劇か、ファンタジーか、とにかく何かのドラマだろうと思った。それが、日本の番組っぽいから見てみようとチャンネルを合わせたら、何と、映画監督になってしまった北野武が、まだ、ビートたけしだったころにやっていた「風雲! たけし城」だった。
 誰が、こんな番組を外国に売り出そうと考えたのだろうか。放送されているから需要はあったのだろうし、以前ノバで放送していた視聴者参加型のバラエティ番組のモデルというか、放送のきっかけになったりしたのかもしれない。ある意味で後に世界中で流行ったリアリティ・ショウみたいなもんだし、受けたのかな。とまれ、日本でもろくに見たことのない番組に、チェコで出会うというのは奇妙な体験ではあった。

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 昔チェコ語の勉強していたころに、知っているかどうか、何度も聞かれた日本のテレビ番組がある。チェコ語での題名は「ゴロー――白い犬」というらしいのだが、題名を聞いても、引越しの際に飼い主の家族と別れ別れになってしまった飼い犬が、北海道から海を渡って飼い主を探す話という内容を聞いても、まったく心当たりがなかった。その後、西村寿行という作家の『黄金の犬』というハードボイルド小説を原作にして撮影されたドラマだということはわかったのだが、そんな番組は存在することも知らない。民放が二つしかない田舎では、東京辺りでは放送されて誰でも知っている番組であっても、放送されないことも多いのだ。もっとも、この番組に関しては、知り合いの日本人の中に知っているという人は、誰もいなかったのであるが。

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 そしてもう一つ、時代劇が放送されたらしい。映画ならともかく、連続ドラマで時代劇というのも不思議な気がするが、チェコ語では「はやぶさ何とか」という題名らしい。「ゴロー」のほうは、ある程度の年齢の人なら、みんな知っている有名なドラマだが、こちらはチェコ人でも知らない人の方が多いマイナーな番組だという。見たことがあるという知人の調査によれば、日本では1980年代の初めに放送された「幻之介世直し帳」という時代劇で、はやぶさというのは主人公の怪盗の名前なのだそうだ。いや、でも、これも知らんぞ。

 日本人の知らない日本の番組をチェコ人が知っているというのも不思議な話だ。いや、不思議でも何でもないのか。文学作品でも日本では忘れられた作家の作品が、翻訳を通してチェコではよく知られていることもあるし、最近の日本の芸能界の動向なんてまったく興味がないから、日本に関心のあるチェコ人のほうが、私よりよっぽど詳しいなんてこともあるに決まっているだろうし。

3月17日23時30分。




2016年03月15日

ベチェルニーチェク(三月十二日)



 午後七時から始まるチェコテレビのニュースの前に、他に見るべきものがなかったので、久しぶりにチャンネルをベチェルニーチェクに合わせた。以前はニュースと同じ第一放送で六時四五分から放送されていたので、チャンネルを第一に合わせて見るともなく見ていることも多かったのだが、子供向けの専用チャンネルDが誕生して以来、第二放送とDに移動してしまって、目にする機会がめっきり減っていたのだ。

 このベチェルニーチェクは、1965年にチェコスロバキアテレビで放送が始まり、それ以来五十年以上にわたって、毎日午後六時四五分から、十分弱、子供たちを楽しませてきた。いや、今でも楽しませている。時間になるとテーマ曲と共にキャラクターのベチェルニーチェク君が登場し、一輪車、自動車と乗り物を変えながら宣伝のチラシを投げるというオープニングがあり、番組が終わった後には、もう一度登場して「お休みなさい」と言って頭を下げる。小さい子どものころには、このお休みなさいを聞いたら、寝るのが決まりだったという人もいる。
 ただし、ベチェルニーチェクと一口に言っても、五十年以上も同じアニメやドラマが放送され続けているわけではない。子供向けに製作された短編のシリーズを放送する番組をベチェルニーチェクと読んでいるのである。内容はさまざまで、日本でも知られているモグラの「クルテク」や、パペットアニメーションの傑作「パットとマット」などは、本来ベチェルニーチェクで放送されたものである。他にも実写版映画も作られたアニメーション「マフとシェベストバー」、ひげ面の盗賊が主人公の「ルムツァイス」、クルコノシュ山脈の主が登場する実写版の「クラコノシェ」などが、よく知られている。 今でも毎年新しい作品が作られてはいるが、過去の人気作品が再放送されることも多い。親子で同じ作品を見る、いや孫まで入れて三代同じ番組を見て育ったなんて人もいそうだ。

 この番組で放送されるシリーズの特徴としては、実写であれ、アニメーションであれ、声を当てるのはナレーター役の俳優一人しかいない点が挙げられる。「クルテク」や「パットとマット」のように、そもそも台詞のないものもあるが、登場人物が多く台詞のあるものであっても、声や話し方を変えることで、違う人物であることを示しながらナレーターが一人で進めていくのである。これはおそらく、ベチェルニーチェクのコンセプトが、おばあさん(お母さんでもお父さんでもいいけど)が、子供に語って聞かせる昔話、物語のテレビ版というものだからだろう。
 ポーランドの外国番組の吹き替えは、一人の俳優が台本を淡々と読んでいくだけという話だが、チェコの吹き替えは共産主義の時代から評価が高い。フランスのルイ・デ・フィネーという俳優が、チェコ語に吹き替えられた自分の映画を見て、吹き替えた俳優の声のほうが自分の声よりも役に合っていると言って賞賛したという話もあるぐらいだ。だから、ベチェルニーチェクで一人の俳優が語るのは予算の削減のためではないと断言できる。

 現在放送中のベチェルニーチェクは「ビドリーセク」という動物が主人公の実写版である。ビドラ、つまりカワウソの子供が穴にはまって動けなくなったところを釣り人に救われて、町の中の家に連れて帰られ、部屋の中であれこれやらかすというのが、十二日の分のストーリーだった。この後は、家から逃げ出して、町を出て自然に帰るまでが、さまざまなエピソードを重ねて描かれるはずである。初めて放送されたのが2003年だから、すでに十年以上前の作品だけれども、古さは感じさせない。可愛い動物に対する愛情というものは普遍なのだろう。
 ベチェルニーチェクには、このビドリーセクのように、動物が主人公となるシリーズがいくつかある。いずれもバーツラフ・ハロウペクという映像作家の作品である。キツネ、オオカミ、ヤマネコ、イノシシなどの子供を使った作品が制作されているが、一番有名で評判の高い作品は「メーデョベー」という熊の子供たち三兄弟を主役にした作品だろう(自分が一番最初に見たものなのでそう感じるのかもしれないが)。動物園で母親が育児放棄した子熊を引き取って育てながら映像を撮影し、一つの物語を作り上げている。物語上はもちろん、そんな話にはならず、モラビア東部のベスキディの山の中で木こりが切り倒した木の下に、三匹の子熊がいたという話になっている。

 動物と子供に演技をさせるのは大変だとはよく聞く話ではあるが、このドラマでは、演技なんかさせずに、普通に過ごすさまを、もちろん、いろいろ起こりやすいように、熊たちのいる部屋の中に中身の入った買い物籠を置いて出て行ったり、車に乗せてチェコの各地に出かけて未知の環境の中に放り込んだりなんてことはするわけだが、全体としてドキュメンタリー的な手法で撮影されている。小さな子供のころはともかく、ある程度成長してくると餌代が大変だっただろうし、あちこち連れて歩くのも大変そうである。
 しかし、一番大変だったのは、大人になった熊たちの引き取り手を探すことだったらしい。他の小さな動物達なら、ペットとして家で飼える人たちもいるだろうが、熊を自宅で飼うというわけにはいくまい。最終的にはベロウンという町の自然公園みたいなところに引き取られて暮らしていて、インターネット上には今年の一月に熊たちの十六歳の誕生日をお祝いするイベントの告知が出ていた。ハロウペク氏は、今でも時々訪れて、旧交を温めているらしい。
3月13日16時30分。



 女の子向けっぽいのでちゃんと見たことはないが、これもベチェルニーチェク。3月14日追記。


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2016年03月11日

幸せな時代(三月八日)



 一部のハプスブルク時代を称揚する人たちと、共産主義の時代を懐かしむ人たちを除くと、ほとんどのチェコ人にとって、チェコ人が、チェコという国が、歴史上最も輝いていたのは、第一次世界大戦後の1918年に成立した、いわゆるチェコスロバキア第一共和国の時代である。初代大統領マサリクの指導の下に、中欧では、いや西欧諸国と比較しても民主的な体制が築かれていたと言われている。スロバキア人に対する扱い、国境地代のいわゆるズデーテンドイツ人などの問題はあったけれども、少なくともドイツでナチスが台頭するまでの間は、経済的に発展を遂げ、政治的にも安定していたのである。
 そんな、幸せな時代を舞台にしたドラマが、「チェトニツケー・フモレスキ」である。題名にある「チェトニーク」というのは、警察と軍の中間にあるような組織で、憲兵と訳すこともあるのだが、戦前の日本の悪いイメージの付きまとう憲兵ではなく、フランスのツール・ド・フランスなんかの警備にも駆り出される憲兵をモデルにチェコスロバキアに導入された組織らしい。普通の警察とは違ったレベルで犯罪捜査に当たっていたようである。一体にこの第一共和国の時代は、マサリクの夫人がフランス人だったからということはないだろうけど、フランスの影響が非常に強かったと言われる。ミュンヘン協定では裏切られるんだけどね。
 「フモレスキ」の単数の「フモレスク」は音楽の型式の一種で、日本語では「ユーモレスク」とか、「奇想曲」とか「狂想曲」などという言葉で書かれることが多いらしい。言われてみれば小説や映画の題名に使われているのを見たことがあるような気がしないでもない。とまれ、ブルノで捜査活動に当たる憲兵隊員たちの姿をふーモアを交えながら描いた作品である。

 ドラマを撮影した監督のアントニーン・モスカリクは、シャフラーンコバーの出世作であるニェムツォバー原作の「おばあさん」の監督としても知られているが、より重要なのは警察ドラマ、犯罪捜査ドラマの監督としての仕事である。特に、ビロード革命の前後に撮影された「犯罪捜査をめぐる冒険」では、指紋鑑定や血液型鑑定などの犯罪捜査史上画期的な捜査方法が生まれた経緯をドラマ化して好評を博したようである。そして、そのモスカリクが畢生の作品が「チェトニツケー・フモレスキ」なのである。
 「チェトニツケー・フモレスキ」は普通のチェコテレビのドラマとは違って、ブルノのスタジオで撮影された。主役のカレル・アラジムと、ベドジフ・ヤリーこそ、プラハから呼ばれたトマーシュ・テフレルとイバン・トロヤンという人気実力共に確かな俳優が演じているが、その他の脇を固める俳優の多くは、地元ブルノの、テレビよりも劇場で演劇俳優として活躍している演技の実力のある人たちで安心してみていられる。ヒロインのルドミラ役の女優はスロバキア出身の人だったけど。
 1998年に第一シリーズが13作、その後第三シリーズまで製作されて全部で39本、前後編になっているものが一つあるので、38本の作品が撮影された。日本のドラマとは違って、時間が厳密に定められていないので、作品によって長短はあるが、大体80分から90分の間に、中心となる大きな事件と、一つ二つの小さな事件の捜査を行うことになる。その中にチェトニークたちを巡る人間関係や、当時の社会の様子などが描きだされていて、一度見始めてしまうと最後まで見入ってしまう。

 最初の作品では、ブルノ近郊の農家で多発する鶏の盗難事件、国会議員のスレピチカ氏の所有する山林での密猟事件、そして盗電事件の捜査に当たる。当初はどの事件もなかなか解決できずに、捜査の中心にいたアラジムはあちこちから非難されるのだが、最後は内務大臣も登場して、盗電事件の犯人がスレピチカ氏であることを突き止める。このドラマで起こる事件の多くは、第一共和国の時代に実際に各地で起こりチェトニークたちが解決したものをモデルにしているという。
 第一シリーズは、1930年代前半の比較的平穏な時代を舞台にしているが、先に進むにつれて、いわゆるズデーテンドイツ人や、国境地帯のポーランド人、ハンガリー人たちが不穏な動きを見せ始め、第三シリーズでは、ミュンヘン協定が結ばれた結果、チェコスロバキア第一共和国が崩壊するところまで描かれる。最終話でアラジムは妻(ルドミラ)と子供たちを義兄に託し国外に脱出させ、自分は危険を承知でブルノに残ることを選ぶ。アラジムが第一次世界大戦でロシアにいたときに恋に落ちた貴族の女性との間に生まれ第一シリーズの最後でアラジムの元に現れた娘クラウディアを妻にしたヤリーは、妻子と共に亡命する予定で飛行機には乗ったのだが、最後の瞬間に飛行機を飛び降りる。ヤリーもアラジムや仲間達とともに残ることを選んだのである。
 ちなみに、主人公のアラジムは、第一次世界大戦でオーストリア軍として東部戦線に参戦した後、チェコスロバキア軍団に参加し、ロシア内戦を戦った人物として設定されている。チェコスロバキア軍団は日本のシベリア出兵の口実に使われたことで有名だが、アラジムを含むチェコスロバキア軍団は、ウラジオストックから日本に渡ったあとヨーロッパへと向かったのである。実は、その交渉のためにマサリク大統領は日本を訪れているのだが、あまり知られていないようである。

 時代考証もしっかりしていて、当時の服装も見事に再現されたこのドラマは、ストーリーも完成度が高く、どの回も面白いのだが、不満が一点。事件関係者として何回か登場するイジナ・ボフダロバーという人気はある女優が、プラハになど行ったことのあるはずもないモラビアの田舎の婆さん役だというのに、プラハ方言でしゃべりやがるのだ。視聴率対策なのかもしれないけど、「チェトニツケー・フモレスキ」ほどの作品であれば、ボフダロバーなんか出なくても、十分に視聴率は取れたと思うのだけど。
 このドラマの撮影はチェコ各地で行われており、オロモウツで撮影された部分もいくつかある。聖ミハル教会の脇についている修道院の入り口の前の通りとか、大学の中庭とか。そんな場面を発見すると喜んでしまうということは、オロモウツに愛郷心を感じるようになったということだろうか。
3月9日23時。



 なんだか疲れていて何にも思いつかないので、これ。3月10日追記。





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チェコとスロヴァキアを知るための56章第2版 [ 薩摩秀登 ]



マサリクとチェコの精神 [ 石川達夫 ]





















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