2007年08月12日
カエルツボカビ菌の被害
ツボカビ急がれる実態把握 「危険な病原体」の印象先行
環境省本格調査に着手
カエルなどの両生類を世界各地で絶滅に追いやっている「カエルツボカビ菌」。国内でもこの菌が確認され、恐ろしい病原体というイメージばかりが先行するが、謎は多い。環境省による全国調査が今月から本格的に始まるなど、実態把握はこれからだ。
野生のカエルからツボカビ菌を国内で初めて確認したのは、麻布大学(神奈川県相模原市)の宇根有美・准教授ら。同大学で6月に開かれたカエルツボカビフォーラムで報告するとともに、「国内での感染実態を早期に把握すべきだ」と訴えた。
報告によると、ペットや熱帯魚のエサとして売られているカエルの3割以上が感染。野外でも、北米産で日本に定着しているウシガエル4匹から、この菌と一致する遺伝子を見つけた。
フォーラムでは「もともと日本にあった菌ではないのか」「日本のカエルは大丈夫か」といった質問が会場から相次いだが、宇根准教授らは答えに窮した。実は、こうした事実すら、まだわかっていないのだ。
この菌は両生類の皮膚で繁殖し、発病した個体の9割近くが皮膚呼吸できなくなって死ぬ。アフリカ産の実験用ガエルの輸出入を通じて世界中に広がったとされ、各地で人の移動や水を介して感染を拡大。南米やオーストラリアなどでは、約120種の両生類が絶滅した。
一方で、米国や欧州での被害は一部にとどまっており、ウシガエルのように感染しても発病しにくいカエルもいる。国内で、昨年末に感染が確認されたのは、飼育されている外国産のカエルだった。果たして日本のカエルは、ツボカビ感染で発病するのだろうか。
宇根准教授らの報告で見逃せないのは、野生のカエルからは菌そのものは確認されず、菌の遺伝子しか見つかっていない点だ。菌を培養して増殖するのにも成功しておらず、菌の病原性や国産ガエルの抵抗性などの実験は難航している。
国内での実態については各地から寄せられる情報が頼りだが、「報道によって恐ろしい病原体という印象が独り歩きしている」(環境省)だけに、検出地は危険な場所、といったデマが流れるのを警戒した研究者が、公表をためらう事例が出かねない。そうなれば実態把握も遅れるばかりだ。
実際、菌の遺伝子を検出した宇根准教授も、神奈川県内の公園の池ということは明らかにしたが、それ以上の場所の特定は避けた。
この「公園の池」に不特定多数の人が知らずに入り込んで感染を拡大させる可能性がある。一方で、公表すれば、報道陣や興味本位のやじ馬が押し掛け、こうした人たちを介して広がりかねない。宇根准教授らは両者を考慮して、公表による感染拡大の恐れの方が高いと判断した。
いずれにしても、これまで明らかになった調査結果は、一握りの研究者の自発的な研究によるものだ。環境省による全国調査は、今月から本格化している。
各地の研究者や自然指導員らがカエルを捕まえて体の表面を綿棒でぬぐい、それを国立環境研究所に送って菌の有無を調べる。1万匹のカエルを捕獲するのを目標にしている。
国内には57種の両生類がいて、うち6割以上は生息地破壊などで既に絶滅の恐れがある。こうした実情が背景にある以上、最悪のケースを想定して、実態把握を急ぎ、対策を考えるのは当然だろう。それでも、「いたずらに恐怖をあおるのではなく、正確な情報を周知してほしい」と、全国に先駆けて調査に乗り出した「沖縄美ら海水族館」の戸田実・魚類課長は関係者に訴えている。
≪ツボカビ症とみられる両生類の被害状況≫
◆スペイン
カエル減少も
◆日本
感染確認
◆米国
数種が絶滅、もしくは絶滅の危機
◆オーストラリア
約10種が絶滅。10種以上が絶滅の危機
◆ニュージーランド
5種のカエルが絶滅の危機
◆メキシコ〜南米
約100種が絶滅。数百種が絶滅の危機
環境省本格調査に着手
カエルなどの両生類を世界各地で絶滅に追いやっている「カエルツボカビ菌」。国内でもこの菌が確認され、恐ろしい病原体というイメージばかりが先行するが、謎は多い。環境省による全国調査が今月から本格的に始まるなど、実態把握はこれからだ。
野生のカエルからツボカビ菌を国内で初めて確認したのは、麻布大学(神奈川県相模原市)の宇根有美・准教授ら。同大学で6月に開かれたカエルツボカビフォーラムで報告するとともに、「国内での感染実態を早期に把握すべきだ」と訴えた。
報告によると、ペットや熱帯魚のエサとして売られているカエルの3割以上が感染。野外でも、北米産で日本に定着しているウシガエル4匹から、この菌と一致する遺伝子を見つけた。
フォーラムでは「もともと日本にあった菌ではないのか」「日本のカエルは大丈夫か」といった質問が会場から相次いだが、宇根准教授らは答えに窮した。実は、こうした事実すら、まだわかっていないのだ。
この菌は両生類の皮膚で繁殖し、発病した個体の9割近くが皮膚呼吸できなくなって死ぬ。アフリカ産の実験用ガエルの輸出入を通じて世界中に広がったとされ、各地で人の移動や水を介して感染を拡大。南米やオーストラリアなどでは、約120種の両生類が絶滅した。
一方で、米国や欧州での被害は一部にとどまっており、ウシガエルのように感染しても発病しにくいカエルもいる。国内で、昨年末に感染が確認されたのは、飼育されている外国産のカエルだった。果たして日本のカエルは、ツボカビ感染で発病するのだろうか。
宇根准教授らの報告で見逃せないのは、野生のカエルからは菌そのものは確認されず、菌の遺伝子しか見つかっていない点だ。菌を培養して増殖するのにも成功しておらず、菌の病原性や国産ガエルの抵抗性などの実験は難航している。
国内での実態については各地から寄せられる情報が頼りだが、「報道によって恐ろしい病原体という印象が独り歩きしている」(環境省)だけに、検出地は危険な場所、といったデマが流れるのを警戒した研究者が、公表をためらう事例が出かねない。そうなれば実態把握も遅れるばかりだ。
実際、菌の遺伝子を検出した宇根准教授も、神奈川県内の公園の池ということは明らかにしたが、それ以上の場所の特定は避けた。
この「公園の池」に不特定多数の人が知らずに入り込んで感染を拡大させる可能性がある。一方で、公表すれば、報道陣や興味本位のやじ馬が押し掛け、こうした人たちを介して広がりかねない。宇根准教授らは両者を考慮して、公表による感染拡大の恐れの方が高いと判断した。
いずれにしても、これまで明らかになった調査結果は、一握りの研究者の自発的な研究によるものだ。環境省による全国調査は、今月から本格化している。
各地の研究者や自然指導員らがカエルを捕まえて体の表面を綿棒でぬぐい、それを国立環境研究所に送って菌の有無を調べる。1万匹のカエルを捕獲するのを目標にしている。
国内には57種の両生類がいて、うち6割以上は生息地破壊などで既に絶滅の恐れがある。こうした実情が背景にある以上、最悪のケースを想定して、実態把握を急ぎ、対策を考えるのは当然だろう。それでも、「いたずらに恐怖をあおるのではなく、正確な情報を周知してほしい」と、全国に先駆けて調査に乗り出した「沖縄美ら海水族館」の戸田実・魚類課長は関係者に訴えている。
≪ツボカビ症とみられる両生類の被害状況≫
◆スペイン
カエル減少も
◆日本
感染確認
◆米国
数種が絶滅、もしくは絶滅の危機
◆オーストラリア
約10種が絶滅。10種以上が絶滅の危機
◆ニュージーランド
5種のカエルが絶滅の危機
◆メキシコ〜南米
約100種が絶滅。数百種が絶滅の危機
以上、2007年8月12日読売新聞より引用。
「ツボカビ菌でカエルが絶滅するんではないか」と思ってしまうが、記事によると日本では“感染確認”の状態らしい。欧州や米国では一部でとどまっているというから、感染したカエルが必ず発病して死に至るわけではないようだ。野生のカエルから菌の遺伝子しか見つかっていない、というのも謎。意外に繁殖能力の低い菌なのだろうか?そもそも“菌の遺伝子”とは何なのだろう。何かカエル事態が弱るようなことが起こると菌の遺伝子が動き出して発病するに至るのか。温暖な地域のカエルの方が絶滅の危機に瀕しているところを見るとやはり気候の変化が原因か。環境省が調査に乗り出すことで何か進展するんだろうか。だいたい、両生類でないと感染しないツボカビ菌を「危険な病原体」だと煽るような報道をするのもおかしいし、それを受けた人たちがまた騒ぎ立てるのもおかしい。何につけても興味本位でことを荒立ててはいけない。
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