▼「はざまたそがれ」のラストシーンに
ケチをつけてから、早3年数カ月…
遂には完結譚が配信された。それが本作
「しまつかはたれ導」であり、
「はざまたそがれ」「かいきみなづき」の完全な続編なので、前2作をプレイしていることは必須。
この記事は、これまで通りレビューというより感想になるかな。
▼未プレイの人にネタバレにならない程度の紹介をすると、
本作でも
独自の世界観は全く崩れてなかったな。
中学生たちが怪奇現象や怪異に立ち向かうストーリーなのだが、
グラフィックやテキストの拘りが凄まじく、
すべてレトロゲーム的なグラフィックと、カタカナを使用しない制約のもとに作られてるんだよね。
日常には当たり前にある「タクシー」という言葉すら使わず、
「一般乗用旅客自動車」と記載したりね。
この書き手の
語彙力をゴリゴリに削る常軌を逸した拘りはすさまじく、
紹介文にさえ「ノベルゲーム」というカタカナを使わず、
「電子小説」を謳っているほどだ
「「かいきみなづき」は「古風で普通な電子小説」だが「はざまたそがれ」は「レトロな電子小説」って書いてあるじゃん?」ってツッコミはやめてね?お願い。
こういった独自のスタイルは、絵を見ながら文を読む
電子小説の拘りが感じられ、非常に面白い。
ストーリーも正統続編だが作風もそのままで、
1作目から大きな時間が経過した3作目だが、安心してプレイできたな。
▼もう1つの特徴として、
データサイズの少なさだな。
なんとこのゲーム、
ファイルサイズがたったの10,289KBである。
つまり2時間ものボリュームがあるのに、たったの10メガちょっと。
令和ではありえない小サイズにして省サイズ。画像1枚分にも満たない。
某漫画家が「ドラクエT」を「あの名作が俺のホームページのトップ画像以下のサイズぅぅ!?」とびびっていたが、令和にもその衝撃は、フリーゲームといえど健在だったわけだ。すげえ。
PCにも優しいので、是非プレイして欲しい。
▼というわけで以下はネタバレ感想だが…
もう私はこれを言いたくて言いたくてうずうずしているのだが…
長いあいだ長いあいだ待ち侘びた咲との決戦が、遂に来たか…
このシーンを数年待ったみつのおっぱいが相変わらずデカいとか
咲ちゃんがエッチだとかとおるは兄へのブラザーコンプレックスが劣等感に変わっただけで本当はブラコンだとか今作はストーリー構成が凝ってるとか色々言いたいことはあるが、もう「しまつかはたれ導」はこれに尽きる…
長いあいだ膠着状態だったストーリーが、3年数カ月ぶりに動き出した…この事実…
「かいきみなづき」という
大いなる寄り道にして完結編への布石を超えつつ、
「しまつかはたれ導」の最後、遂には「はざまたそがれ」の世界に戻ってきた…
▼キャラクターたちが一部の記憶を削除された設定がここで活かされてるが、
2人の主人公、2つの作品の仲間たちが力を合わせラスボスに立ち向かうのは、凄いドラマチックだ。
陽子とみつの邂逅にも胸の鼓動が速くなったが、どうもゲームや映画のこういう演出に弱い(前作主人公登場、的な)
長き時を経て、多くの戦いを乗り越え、
世界観が1周したような謎のカタルシスが8話にはあった…
9話はどうなるか。楽しみだ。
▼とはいえ別に咲は倒すべき敵ではないだろう。とは思う。
かつては彼女も仲間だった。友だった。
一緒にアヘ顔ダブルピースをした仲でもある。このシリーズって怪奇ホラーではあるんだが、本質は
少年少女の青春モノだと思うんだよなあ。
だから咲の末路もそう悪いようにはされない気がする…
ふだん不敵な彼女が自分をレイプした父親に迫られた時、はじめて強い感情を発露した。
あれが
咲の素顔で、所詮は中学生の女の子だと思う。
評価B+
75点
▼今回も傑作の匂いがプンプンしますねぇ。
じっくりと続編を待ちます。
最後になるけれど、
「しまつかはたれ」の由来はなんでしょうねえ。
前2作は主人公のネーミングとタイトルを文字っていたが、「しまつかはたれ」は
最後の最後にタイトルの意味がわかると予想。各話タイトルでやってる演出を、ゲームタイトルにも使うわけだ。
メッセージ画面には意味深な■があるし、その可能性は高そうだ。
「始末(末始)」「誰彼(彼誰)」と分解できる。
「誰彼」は「たそがれ」なので「はざまたそがれ」のこと。
とすると「始末」は「かいきみなづき」に関する言葉が入るはず。
「はざまたそがれ」視点で表示されるのが「誰彼」…
「かいきみなづき」視点で表示されるのが「末始」なので、的を外してはいないはず…
…
だが…なんだぁ…?不覚にも連想できないな。
続編、或いは完結までには閃きたい…
【ほかにプレイしたフリゲとか】▼ノベコレにアップされた「12月に雪は降らない」…見覚えがあると思えば、むかし引用レビューしたフリゲだった。
ヒロインが豆腐メンタルすぎるし、その割にストーリーにもキャラクターにもバックボーンが無く、
当時余りにも陳腐なストーリーで逆に驚いたのだが…
あれから
奥深さより手軽さがストーリーに求められる時代になったので、今やるには逆にいいんじゃないかな…
▼「THE LAST WISH」はやはり攻略断念。
バグ(エラー)が多いし、テンポが悪すぎる。
サクサク攻略を進めるためにはサブイベントの消化などが必要なんだろうか。
戦闘も敵が硬く、戦略性が高そうなシステムの割にワンパターンになりがちだ。
本当に惜しいフリゲ。せっかくの力作だが、
肝心の遊び易さがない。しかしレトロゲームを意識したフリゲなので、その世代のゲームが好きな人にはいいんじゃないかとフォローしておく。
クリアは今これを読んでいるあなたに任せる。
【期待の同人ゲームとか】▼作者が2023年中には出したいと言ってた「ひかげものがたり」はどうなっているのか。
2023年は、もうすぐ終わる。
このゲームからはなんとなく「かたわ少女」の匂いがするので楽しみだ。
【フリゲレビューの教科書】▼「実践!クリティカル・シンキング」「道徳的に考えるとはどういうことか」が、なかなか参考になった。
クリティカルシンキングとは
「批判的思考」のことだという。
私が学んできたこと、無意識に実践していたことが本に書かれており、驚いた。
よび方が違うだけで、こういう思考法はむかしからあるのでは。
何度か書いた話だが、私はライティング本を記事執筆の参考書にすることが少ない。
思考法や話し方の本を読んだほうが、結果として文章力や記事を作る能力が上がると思う。
ここまで言うとオーバーだが、なにかしらの経験値…「人生経験」を積むのは更に良い勉強法。
というか、最良の勉強法。
【ふとフリゲを連想した名著】▼石川宏千花の「G65」。本当に素晴らしい小説。
女性だけで脅威に立ち向かうのもいいし、安易にイケメンを恋人役に据えなかったのもいい。
ラストシーンは心底感動した。半泣き。
冒頭、視点がコロコロ変わるので違和感を感じつつ読み進めるが、
主人公の正体が巨乳の女の子が着けているブラジャーと判明する一文に大きな衝撃を受けた。
無機物が主人公の小説は伊坂幸太郎の「ガソリン生活」などがある。
あれは車が主人公だった。
フリーゲームでは「世界一彼女の近くで」は眼鏡が主人公だった。
眼鏡もブラジャーと同じくらい近視の女性には必須だろうが、普通ブラジャーを主人公にしようとは思わないだろう。
少年漫画でたまにある、男性キャラがブラジャーやパンツに変化する類いの話でもない。
もう創作のネタは尽きたと思っていたが、書こうと思えばあるものだ。
つーか「世界一彼女の近くで」は世界一近くはないな。
ブラジャーのほうが肌に密着している分、近い。
タイトルに偽りありだ。