「国際博物館の日」ということで23/05/18(木)は以下の施設も入館無料だった。
・台東区立書道博物館 [鶯谷駅北口から徒歩約4分] 一般500円
せっかくの機会なので日頃行かない博物館見学へ行ってみた。15時前に鶯谷駅から歩くと目の前の道路は車両通貨禁止となっているので分かり易い。入口に「本日無料入館日」と掲示されており、館内をじっくり見学していると今回行った博物館の中で一番入館者が少なかった。
参考:「没後80年 中村不折のすべて」
https://www.taitocity.net/zaidan/shodou/
「書道博物館」と言うから日本の書道に関する博物館だと想像していたら中村不折という書道家兼洋画家が集めた中国の書跡が主な展示物だ。明治時代に絵画の勉強をして新聞社のイラストレーターになったが1895年4月に日清戦争取材に行ったところ停戦した後だったので中国朝鮮と取材し歩いて漢字の書跡に惹かれたとのことだ。
博物館内は全て撮影禁止だがその注意文が筆文字で一つ一つ文面が異なっているのが楽しくてついつい読んでしまう。「控えめに言いませんが写真撮影禁止」「インスタ映えしないので写真撮影禁止」「当たり前なので言いませんが動画撮影も禁止」等ユーモアがある。
仏像には「お手を触れてもご利益はありません」と注意書きあり作品の解説文にも「ありのまま今見たことを話すぜ」といったジョジョファンみたいなタイトルがあって受けを狙ってくる。中村氏もこの様なユーモアのあった人物だったのだろうか?
まず「中村不折記念館」の1F「第一展示フロアー」を見学すると洋画等が展示されており、ここで最初に自分の展示品内容の勘違いに気付かされた。
2F「第二展示フロアー」は新聞社入社と正岡子規との出会い、従軍記者、結婚、自宅建築、装幀に関する資料と作品が、「中村不折記念室」にはデッサン画、油彩画等が展示されている。
中村氏の画や文字が「ほととぎす」の表紙や『吾輩は猫である』『若菜集』『野菊の墓』の装幀・挿絵を手掛けたと言うのも知らなかった。こうした画家としての美的感覚が"不折流"フォントを生んだと分かる展示内容だ。
記念館から本館へは小さな庭園を通る。ここには中村氏の建てた土蔵が復元されている。
本館1F「第一展示室」は手動開き戸では仏像や石碑等が展示されている。解説文が分かり易く漢字資料に興味がわいてきてフォントの移り変わりや文字の美しさを楽しめるようになる。
本館1F「第三展示室」は手動引き戸で「猫が入るのでしっかり閉めて」との注意書きがあるのが下町らしい。ここには古代中国の遺跡から出た陶文や墓誌等が展示されている。トーハクでも見たような展示物だが制作された歴史より、そこに刻まれている漢字フォントに注目する視点はなかったので新たな楽しみ方が味わえる。
本館2F「第四展示室」は甲骨文、青銅器といった現在最古の漢字資料が見られる。解説文に「これで君もにわか漢字博士だ」と書いてあるのはなかなか皮肉っぽい。「第五展示室」は文具、募券の他日本の板碑、経筒等が展示されている。
トーハクでも見掛ける歴史的な遺物だが「手触れ禁止」とあるものの大きく重いものは現物が裸で展示されているのはちょっとした驚きだ。本館の造りは博物館らしくなく民家の納屋や倉庫っぽいと思ったら昭和11年11月開館から平成7年11月まで中村家の子孫達が民間運営していたとのことで納得だ。
以前放送大学を見ていてイスラム美術においてアラベスクやカリグラフィーといった文字美術が重要と知った。あの幾何学的な文様が文字だったとは知らず、その美的なセンスに感心したが漢字もなかなか負けていないと思える展示内容だ。
1500年以上経てば墓の埋葬品や墓石を展示されても故人は成仏し遺族の想いも時効なのだろうかと考えさせられる展示物の多さだ。
16:30閉館ということで急いで全部を見て間に合わせた。こちらも予想以上に見どころが多く2時間近く楽しめる博物館だった。なお向かい側には正岡『子規庵』があり5月の週末から観覧再開するそうだ。