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2022年11月02日

【短編小説】『シアワセの薄い板』前編

目覚めると、僕は草原に寝転んでいた。

昨夜は自室でスマホゲームをしながら夜更かし。
いつの間にか寝落ちしたはず。

あぁ…目がかすむ。まぶたが重い…。
気分が変に高揚し、寝た気がしない…。

今日も憂鬱な身体を引きずって出社。
つまらない日常が始まると思っていた。

なのに、草のにおい?そよ風の感触?
僕はまだ夢の中にいるんだろうか。



--



「おいお前!そこで何やってんだ!」
「こっちだ、急げ!オオカミに見つかるぞ!」


突然の、僕を急かす声。

振り向くと、毛皮のような衣服をまとい、
石ヤリを持った男たちが叫んでいた。

急げ?オオカミ?
あの格好、まるで石器時代だ。

ここは動物園か?
まちがえて映画の撮影現場に迷い込んだのか?
なぜ言葉が通じるのか?

わかった、ベタな夢オチだな。
騙されないぞ。



ひるがえった僕の視界のすみに、
こちらをにらむオオカミの姿が映った。


一気に血の気が引いた。
僕は必死で男たちのもとへ走り、事なきをえた。

さすがは野生のハンターだ。
オオカミは瞬時に”分が悪い”と判断し、去っていった。

何なんだ?
夢にしてはリアルすぎやしないか?



僕は見知らぬ男たちに迎えられた。
「よく助かったな!」と言われた。

彼らの祝福が落ち着いたころ、
僕はポケットに入れていたスマホを見た。

カレンダーには
なぜか正確な暦(こよみ)が表示されていた。

『紀元前8000年 午前8時』
『日本:●●市 跡地』




ここはまちがいなく、
1万年後に僕の寝室があるはずの場所だった。

夢でもドッキリでも、
映画の撮影現場でもなかった。

僕は1万年前にタイムスリップしたまま、
帰れなくなったのだ。


『跡地』?

一瞬、気になったが、
僕は現実を受け入れることで精一杯だった。



-----



「これ、スマホっていうんだ。」

僕はポケットからスマホを取り出し、
集落の人々へ見せた。

自分のスマホではなく、新しいスマホを。

なぜかわからないが、
僕のポケットからはいくらでもスマホが取り出せた。


まるで、未来のネコ型ロボットになった気分だった。

これは、最新作のiPhoneではないか!
いったいどこから…?機種代金は…?

何もかもわからないが、
取り出したスマホはなぜか最初から使えた。

バッテリーも無限。
なんて都合の良い展開だろう。

僕は最新のスマホを次々に取り出し、
集落のみんなに配った。



-----



「こいつは便利だな!」

屈強な男たちは驚いた。

狩りへ行く。
今日はどの方面へ行くか。

全員が集まる必要はない。zoomを開くだけ。
オンライン会議だ。



「よし、今日はこの小川の方面でシカを狩ろう。」

地図アプリを開く。
混雑状況ならぬ、獲物の分布状況が表示される。

シカの群れも、猛獣の位置情報も、
手に取るようにわかる。

かつて、これほど順調で安全な狩りがあっただろうか。
今日は臨時の謝肉祭だ。







「さぁ、木の実を採りに行きましょう。」

あの森にはおいしい木の実がたくさん実っている。
できれば毎日、採集に行きたい。

だが”迷いの森”と恐れられるほど、危険な森だ。



「目的地までのナビゲーションを開始します。」
「次の切り株を左方向です。」

ナビゲーションアプリがある。
もう、迷いの森で迷うことはない。

男たちは狩りに大成功したらしい。
今日は臨時の収穫祭だ。

国家も、法律も、車もない。
農業すら始まっているかもわからない時代。

だがスマホの便利さと、普及の速さには、
そんな時代背景など関係なかった。




後編へ続く

2022年10月31日

劣等感とは、誰と比べて”劣っている”のか。

ー目次ー
  1. 超・情報化時代は”劣等感の時代”
  2. ”こんなはずじゃない”とは”どんなはず”なのか
  3. ”シアワセのレール”を名乗るビジネス
  4. たどり着くことのない”親の理想の自分”
  5. 勝ち目のない”理想追い求めレース”から降りる

1.超・情報化時代は”劣等感の時代”

「比較は喜びを奪う」

セオドア・ルーズベルト

「他人と比べないで、自分らしく生きましょう」

これは現代の”超・情報化時代”が発する、
表向きのメッセージ。

一方、TVやSNSを開けば、
優れた人や恵まれた人の輝きを見せつけられる。

「他人と比べるな」「他人と比べろ」
矛盾したメッセージが交錯する、まるで劣等感の時代



日常に溶けこみすぎた劣等感だが、

本当に”自分と他人と比べている”のだろうか?
本当は誰に対して”自分は劣っている”と感じているのか?


 自分より能力のある他人
 自分が思い描く理想の自分

と比べて”自分は劣っている”
と思う回路を作り出したのは誰なのか?



そこにいるのは、
生まれてから人間関係の根本を作った親。

劣等感の根源には、
『親が押しつける”理想のあなた”』にたどり着けない
という苦しみがあるのではないか。


2.”こんなはずじゃない”とは”どんなはず”なのか

自分の劣等感が変換された言葉は、主に

「こんなはずじゃない」
「自分はもっとできるはずだ」
「自分はこんなところでくすぶっている人間じゃない」


だろう。



では、「こんなはず」とは「どんなはず」なのか?
たとえば、

 異性にモテている自分
 仕事で出世している自分
 お金持ちになっている自分
 希望の学歴を手にしている自分

そのはずが、現実の自分は、

 異性にモテず
 出世もできず
 生活に余裕がなく
 学歴にもコンプレックスがある…



これは一見、「理想の自分」と比べている。

その苦しみを、
自分が昇る力にできるうちはプラスに働く。

だがそれが叶わず、苦しみのはけ口が
「理想の自分」を手にしている他人に向かうと、


 嫉妬
 誹謗中傷
 負け惜しみ


になる。

3.”シアワセのレール”を名乗るビジネス

では、「理想の自分」は、
本当に自分が作ったものなのか?

人生が進む中で、自分で見つけたのか。
それとも社会的な”ジョウシキ”≒自分の理想になったのか。



 結婚すればシアワセです
 夢のマイホームを持てばシアワセです
 子どもを育ててようやく一人前です

など、”シアワセのレール”を名乗るビジネスがあふれている。

「これがシアワセだ、そこから外れたら不幸だ」
ささやきかけてくる。

無人島で1人でもない限り、
何の影響も受けずに生きることは難しい。

良くも悪くも、
自分の意志のようで、誘導されている。

自分で選んでいるようで、選ばされている。

4.たどり着くことのない”親の理想の自分”

多くの場合、僕らが生まれたとき、最初にそばにいるのは親。

多かれ少なかれ、
他人や理想の自分と比べて、劣等感に苦しんできた親。

そして親の強い劣等感は、
子ども無言のメッセージを伝える。

「親の理想に100%沿いなさい。」
「なぜって?”私の”劣等感を解消するため。」




親からの保護や愛情をもらう方法は、
親の理想を叶えること。

だから子どもは逆らえない。
親が求める理想の自分を目指す。



だが、親の理想を1つ叶えても、

 まだまだ
 クラスの●ちゃんの方が
 あぁ…そう…

否定される、褒められない、反応がない…。

子どもはどれだけ親の理想に近づいても、
ゴールにたどり着けない。

なぜなら、親自身が理想の自分にたどり着けていないから。


<現実否認する親と子>

恐ろしいほどの劣等感は、
父親に認めてもらえるような男になりたいという願望と、
現実の自分に対してのもの凄いギャップから生じる。


子供に対して常に非現実的なほど高い要求をしていたのは、
子供への要求であると同時に、自分の父親に対して
「僕はこんなにレベルが高いんだ」と叫んでいるのである。

『子供にしがみつく心理 大人になれない親たち』 より


劣等感とは誰と比べて”劣っている”のか?
他人?ジョウシキが作り出した理想の自分?

その相手は、元をたどれば、
存在するはずのない『親の理想の自分』だ。

5.勝ち目のない”理想追い求めレース”から降りる

劣等感は、成長するための力。
劣等感を自分に向ければ昇っていける。

そうではなく、
劣等感を他人との比較で解消しようとするのは、
ゴールのないマラソンを走り続けるようなもの。

たとえ勝ち続けていようとも、
競争のなかに身を置いている人は心の休まる暇がない。

敗者になりたくない。
そして敗者にならないためには、
つねに勝ち続けなければならない。
他者を信じることができない。

社会的な成功をおさめながら
幸せを実感できない人が多いのは、
彼らが競争に生きているからです。


『嫌われる勇気』 より

 嫉妬
 誹謗中傷
 負け惜しみ

などから、何かを言いたくなったら、
自分へ問いかけみてはどうだろう。

「本当は誰と比べているの?」
「その理想は誰に刷り込まれたもの?」




そして、無意識に
”親の理想”に近づこうとしていると気づいたら、
自分へ問いかけみてはどうだろう。

「親からの要求には終わりがないのでは?」
「勝ち目のない”理想追い求めレース”に引き込まれていないか?」




それが、矛盾が交錯する
”劣等感の時代”の処世術ではないだろうか。


子どもの人生は、親の人生の敗者復活戦のためにあるんじゃない。

親は変わらない、最大の復讐は自分が幸せになること。










posted by 理琉(ワタル) at 19:06 | TrackBack(0) | 生き方

2022年10月29日

【短編小説】『いま、人格代わるね。』3 -最終話-

【MMD】Novel Jinkaku SamuneSmall1.png

【第2話:救済願望の沼】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<登場人物>
空木 零依(うつき れい)
 ♂主人公、29歳の会社員
 目標も趣味もなく孤独に生きていたが、
 光空(るあ)との出逢いから壮絶な運命に巻き込まれる

無垢品 光空(むくしな るあ)
 ♀22歳、主人公に好意を抱き近づくが、
 実は彼女の中に複数の”別人”がいて…?

 ※光空(るあ)のメイン人格※
 1.レオ ⇒関西弁の明るい青年、もっとも出番が多い
 2.セイヤ⇒好戦的で暴力的
 3.サキ ⇒非常に色欲の強い、派手好きなお姉さん
 4.クレハ⇒もの静かで優しい淑女
 5.  ⇒本人曰く「もう1人メインがいる」らしいが…?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第3話:実体のない”カノジョ”】



光空の人格交代の真実を知ってから、
1年が過ぎた。

少し落ち着いてきたようで、
光空が倒れる頻度が減ってきた。

僕が消耗した後は、
レオやクレハが心のケアをしてくれた。

小さなケンカは何度もあったが、
そのたびに僕の心はこう語りかけてきた。

「彼女の苦しみに比べたら…。」

それは呪いの言葉。

自分にウソをつき、
恋人のすれ違いから目をそらすための。


ーー


そんなある日、
些細なことで光空と意見が食い違った。

僕は今回も穏便に済ませたかったが、
タイミングを逸してしまった。

彼女はいつもの”人格交代の交渉”を始めた。
怒りに任せたときは、交渉がとてもスピーディーだ。

零依
「やってしまった…。」
「凶暴なセイヤが出てくる…!」




だが、光空は冷静だった。
押し黙ったかと思うと、キッチンへ向かった。

そして、
引き出しからおもむろに包丁を取り出し、
自分の首筋に当てた。


零依
「やめなさい!!」


僕は彼女から包丁を取り上げた。
刹那、あの感覚が僕の背筋を通り抜けた。

なぜか、わかるんだ。
”彼女の人格が交代した感覚”だけは。



(?)
『返してよ!私はもう死ぬの!』


零依
「返さない!命を粗末にするな!」


セイヤかと思ったが、
僕が会ったことのない人格だった。

5人目のメイン人格・エレナだ。

光空の両腕の傷跡は、
ほとんどがエレナが刻んだもの。

エレナは、
光空の自己否定と自傷行為を
一手に引き受けてきたのだ。




エレナは包丁を取り返そうと、
僕へ飛びかかってきた。

僕はとっさに包丁を後方へ投げ、
エレナを受け止めた。

(エレナ)
『切るの!切らせてよ!もう死にたい!』


零依
「そんなことはさせないよ!」


(エレナ)
『どうしてよ!』
『私を愛していないんでしょ?!』
『だからあんなことが言えるんでしょ?!』


エレナは再び、
キッチンの引き出しに手を伸ばした。

刃物に近づけたら、
もう本当にやってしまいそうだった。

(エレナ)
『私を見捨てるなら…!』
『あなたを殺して私も死んでやる!』


零依
「命を人質にして脅すのは止めろ!!!」


…そう叫んだ瞬間、僕は我に返った。
そして全身から血の気が引いていった。

この言葉はかつて、
僕自身がもっとも傷ついた言葉。
もう絶縁した両親から投げつけられた言葉。



エレナは、その場にうずくまって泣き始めた。
凍りついた僕の背中に、罪悪感がほとばしった。

僕はエレナをなだめるより先に、
家中の刃物という刃物を処分した。


次の日から、
まな板は”キッチンのオブジェ”になった。



ーーーーー



産業医
『ドクターストップです。』
『もう出社してはいけません。』


エレナと出会ってから1年後。
僕は勤務先の産業医からこう言われた。

僕は心身の限界を超え、会社を退職した。
産業医の診断書には”うつ病”と書かれていた。

僕は療養のため、自宅にいる時間が増えた。

光空はたまにアルバイトをしていたが、
精神の不安定さから長続きしなかった。

だから、
僕が回復するまで蓄えと失業保険でしのぐ。
光空もそれで納得した。

はずだったが……。



(光空)
『もう別れましょう…。』


ある日、
光空は目に涙をためながら言った。

零依
「…え…?」


(光空)
『私たち、一緒に居てもお互いのためにならないと思う。』
『零依は収入がないし、私もバイト辞めて生活が不安なの。』


零依
(ちょっと待ってくれ、それはあまりにも…。)


などと抗議する気力は、もう残っていなかった。

零依
「せめて話をさせてほしい。」
「レオかクレハに代わってもらえないかな…?」


(光空)
『あの2人?もう居ないよ。』


零依
「もう居ない…?」


(光空)
『ええ。小言がうるさかったから…。』



『黙 っ て も ら っ た の』




…包丁についた血痕を舐めるようなしぐさ。
…冷たく鋭い眼光。

光空はついに誰かを手にかけてしまった。
彼女の中にいた2人の人格を。


今の光空は本体なのか?
それともエレナに交代していたのか?

もはや僕には、それすらわからなかった。


ーー


(光空)
『明日、パパとママが来るの。』
『私の分の家具と日用品を取りにくるから。』


翌日、光空の両親を名乗る夫婦が訪ねてきた。

長身で若々しい美男美女。
シンプルなブランド品に身を包み、
一見”裕福そう”だった。

2人は慣れた引っ越し業者のように、
娘の私物を車へ積み込んでいった。

モノがなくなった部屋で、
光空の父親は笑顔で僕にこう言った。

光空の父親
『じゃ、元気でな!兄ちゃん!』


遠ざかる車の窓から、光空が手を振っていた。
僕はただ、呆然と立ち尽くした。

9月の青空が、少しだけ目に沁みた。



ーーーーー



僕は空っぽの部屋の真ん中に寝転がった。

どうして、こんなになるまで…。

いや、どうして僕は光空と別れなかったのか。
身を削って光空に”しがみついた”のか。

その答えはすぐに見つかった。
僕は”帰る場所”を求めて彷徨っていたからだ。



「命を人質にして脅すのはやめろ!」

僕の両親にとって、僕はエレナだった。

親からの愛情がほしい、関心を向けてほしい。
寂しい、寂しい、寂しい。孤独。

そんなものが絡まり合った末に、
僕は自分の腕を傷つけてきた。

そして、両親に同じセリフを言わせた。

あたたかい家族を夢見た僕は、
正反対の”絶縁”という結末を迎えた。




僕にとって光空との交際は、
親からもらえなかった愛情をもらう”再挑戦”だった。

そして光空もまた、
”親の操り人形”から逃れたかった。

そこにあったのは、恋愛感情ではなかった。

”親代わりがほしい”という無意識の願いが、
イビツに惹かれ合っただけ。



ーーーーー



人間は多くの仮面
「≒ペルソナ」をつけて生きている。


 家族思いの私
 明るく楽しい友人の私
 仕事ができる社員の私

誰もが多かれ少なかれ多重人格だ。

僕は、光空のいくつものペルソナに出会ったが、
「本当のルア」に出会ったことがあったのか?

レオ、セイヤ、サキ、クレハ、エレナ…。

そして本体すら、
彼氏用に作られたペルソナの1つだったのか?

カノジョの実体は、
いったいどこにあったんだろうか?



これは全くの偶然だが、

Rua(ルア)とは、とある国の言葉で「虚無」




ーーーーーENDーーーーー



⇒他作品
【短編小説】『タイムシーフ・タイムバンク』全6話

【短編小説】『黒い羊と無菌狂』全2話


⇒この小説のPV



⇒参考書籍








2022年10月28日

【短編小説】『いま、人格代わるね。』2

【MMD】Novel Jinkaku SamuneSmall1.png

【第1話:切り離された4人】からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<登場人物>
空木 零依(うつき れい)
 ♂主人公、29歳の会社員
 目標も趣味もなく孤独に生きていたが、
 光空(るあ)との出逢いから壮絶な運命に巻き込まれる

無垢品 光空(むくしな るあ)
 ♀22歳、主人公に好意を抱き近づくが、
 実は彼女の中に複数の”別人”がいて…?

 ※光空(るあ)のメイン人格※
 1.レオ ⇒関西弁の明るい青年、もっとも出番が多い
 2.セイヤ⇒好戦的で暴力的
 3.サキ ⇒非常に色欲の強い、派手好きなお姉さん
 4.クレハ⇒もの静かで優しい淑女
 5.  ⇒本人曰く「もう1人メインがいる」らしいが…?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第2話:救済願望の沼】



深夜2時。

光空
『う……うぅ……うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!』


夢の中にいた僕は、
光空の狂ったような叫び声に叩き起こされた。

零依
「どうしたの?!」


光空
『う…ぐッ!……わぁぁぁぁぁん!!』


それは子どもの夜泣きではなく断末魔。
絞られる雑巾のように、四肢をねじ切られる苦痛。



光空はベッドで激しく転げまわった。
頭を抱え、壁や布団を殴り、自らの首を絞めた。

僕は、必死で暴れる彼女を取り押さえようとした。
放っておくと、自分を引きちぎってしまいそうだった。

光空の人格交代は8割方、彼女の意志でできる。
残り2割はコントロールできない。
例えば本体の意識がないとき。

…今回の暴れ方…出てきたのは凶暴なセイヤ?

いや、サブメンバーにも”やんちゃ”なヤツがいた。
その中の誰か?それとも新しく生まれた人格?



光空
『お願い!もうやめてーーー!!』
『痛い、痛い!!』


意外なことに、
『やめて』『痛い』と叫ぶのは好色家のサキだ。

僕はこのように、
誰が出てきたのかを考えながら、
暴れる彼女を落ち着かせた。

最初は驚いたが、
週2回ペースの鎮圧戦にも”慣れて”きた。
大変なのはこの後だ。


ーー


深夜3時。

零依
「1・1・9」


消防署
『救急隊です。』


零依
「住所は●市●区、女性です。」


消防署
『どうされました?』


零依
「突然暴れ出した後、意識をなくしました。」
「呼吸は不規則で、耳が聞こえていないようです。」


消防署
『わかりました。』


光空を鎮めると、意識を失って倒れた。
その後は呼吸が不規則になったり、
耳が聞こえなくなったりした。

医療従事者でない僕が、
救急車を呼ぶことや乗ることに
慣れるのはどうなんだろう?

自問しながら、
僕は救急病棟の待合室で夜明けを迎えるのが
日課になってしまった。




それは2人で街を歩いていても襲ってきた。

兆候は、光空の口数が不自然に減ること。
その後は頭を抱え、突然倒れることもあった。

通りすがりの人が介抱してくれたり、
救急車を呼んでくれたりしたこともあった。

意識を残した場合でも、
光空はしばらくの間、耳が聞こえなくなった。

そのときは光空の聴力が回復するまで、
メッセージでやり取りした。
覚えたての手話を使うこともあった。



ーーーーー



(クレハ)
『今回も助けていただき、ありがとうございます。』


そろそろ始発電車が動き出す時間だ。

治療室のドアが開き、光空が駆けてきた。
いや、光空ではない、クレハだ。

零依
「光空は大丈夫?」


(クレハ)
『はい、まだ眠っています。』
『私が代わりにお礼を伝えにきました。』
『いつも本当にありがとうございます。』


零依
「そんな、いいよ…。」


(クレハ)
『お疲れでしょう?』
『あまり眠れておりませんもの…。』


零依
「大丈…夫。待合室で寝たから。」


(クレハ)
『そうですか…今日もお仕事ですか?』


零依
「うん。」


(クレハ)
『ご無理なさらないでくださいね。』
『おつらかったら早退してください。』


救急車にお世話になった日は、
待合室でクレハと過ごすひとときが、
寝不足の身体を癒してくれた。



ーーーーー



友人
『零依、ずいぶん瘦せたな!』
『ご飯ちゃんと食べているか?!』


零依
「え?…瘦せた?」


友人
『最初、誰だかわからなかったよ…。』
『ダイエット中?』


零依
「ダイエットはしていないよ。」
「大丈夫、ご飯は食べているから。」


友人
『ならいいけどさ…。』
『彼女とはうまくいっているの?』


零依
「それなりに。」


友人
(零依のやつ…覇気がなくなったよなぁ…。)
(本当に大丈夫なのか…?)




1年ぶりに会った友人は、僕を見て驚愕した。

確かに体重は落ちたが、
見た目も激変していることに
自分では気づかなかった。

何もせず、短期間でそんなに瘦せられる?
僕には心当たりがなかった。

だが、

・深夜の鎮圧戦から、寝不足を抱えて出勤
・1人で十数人の人格と接する心労
・突然の、別人格からの本音

…僕は激痩せして当然の生活をしていた。

にもかかわらず、
僕はそれをストレスだと
気づくことすらできなくなっていた。


救急医療費もそれなりにかかっていた。
安月給を切り詰めて捻出していたが、
じわじわと生活費が圧迫されていた。



ーーーーー



「光空はどうして多重人格になったのか?」

僕は勇気を出して、
光空に詳しく聞いてみることにした。

もちろん彼女の身を案じてのことだが、
”刺激したくない”という自己保身もあった。

何より、
友人に”瘦せたな”と言われたことで、
僕は自分が「つらい」ことに気づいてしまった。

光空
『…わかった。』
『けど私から話せる自信がないから、レオに代わるね。』


零依
「ありがとう。つらかったら話さなくていいよ?」


光空
『いいえ、あなたにはすべて知ってほしい。』
『もし私がどうにかなったら、止めてくれる?』


零依
「…もちろん。」


光空は僕の返事を見届けてから、
ゆっくりと目を閉じた。

…………。



(レオ)
『…話は本体から聞いたで。』
『ワイらが生まれた理由を知りたいんやな?』


零依
「…うん。」


(レオ)
『いい覚悟や。ほんなら話すけど、その前に…。』
『多重人格はどうやって発症するか知っとるか?』


零依
「うん。トラウマやストレスから心を守るため。」
「あまりに強いショックの場合は人格を切り離す、でしょ?」


(レオ)
『そうや。よう勉強しとるな。』


零依
「人格を分離するほどのショックって何…?」


(レオ)
『それが本題や。』
『…アイツは高校んときに、学校でな…。』


零依
「学校で?」


(レオ)
『…突然やが、”男は狼”やろ?隠さなんでええで。』


零依
「うん。」


(レオ)
『”狼の群れに囲まれた女1人”って言えば、わかるか?』


零依
「まさか…校内で男子生徒たちに……?!」


(レオ)
『そんなことあるわけない、と思うやろ?』
『それはアンタが善人に囲まれて生きてこれた証や。』
『残念ながら人間には一定数、道を外れるヤツがおる。』


零依
「…………。」




(レオ)
『そんときのショックで最初に生まれた人格がサキや。』


零依
「サキが最初に…?どうして?!」


(レオ)
『”毒をもって毒を制す”やな。』
『逆にその行為を好きになって上書きするためや。』
『殴られて育ったヤツが親になって、子どもを殴るのと同じやな…。』


零依
「…だからサキが『痛い』『やめて』と…?」


(レオ)
『…やっぱり『痛い』言うとったか…。』
『本体、たまに耳が聞こえなくなるやろ?』


零依
「うん。」


(レオ)
『それは何も聞きたくないからや。』
『襲いかかる野獣の声も、自分の悲鳴も、何もかもな…。』


零依
「耳を閉ざすほどの恐怖…。」
「その後はどうなったの…?」


(レオ)
『相手は性欲がピークのケダモノや。』
『しばらく続いたで。』


零依
「そんな…。」


(レオ)
『ただ、その最中にサキが出てくるようになって…。』
『傍から見れば喜んでやっているような誤解が生まれた。』
『学校では”色狂い”だの、変な噂が立ってもうた…。』


零依
「それじゃあ…居場所もなくなるんじゃ…?」


(レオ)
『その通りや。』
『だがアイツは”家にも居たくない”ゆうてな。』


零依
「家に…居場所がなかったの…?」
「そんな学校の方がまだマシってこと…?」


(レオ)
『そうや、居場所なんてあらへん。』
『親は”子どもは自分の操り人形”っちゅう奴らや。』
『そんで休んだり登校したりを繰り返しとった。』


零依
「それでも登校を…。」
「じゃあ、またそいつらの標的に?」


(レオ)
『それが皮肉なもんでな。』
『サキの噂が広まってから奴らは手を出さなくなったんや。』
『バレたくなかったんやろな。ほんま身勝手なやっちゃで…。』


零依
「…信じられない…!」
「そんな最低な人間がいるなんて…。」


(レオ)
『やろうな。その頃に生まれたんがワイとクレハや。』
『諦めの境地に至ったんやろな。』


零依
「諦めの境地…。」
「そりゃあ、そうなるよね…。」


(レオ)
『ああ…。』
『当時のアイツには明るく振舞える人格が必要やった。』
『親にも隠して、楽しくやっとるフリするために、な…。』


零依
「………。」




これはR指定の妄想世界ではない。
僕が生きてきた世界は、あまりに狭かった。

人の苦しみの大きさは比較できない。

それをわかっていても、
僕の救済願望は膨らみ続けた。


「こんな思いをしてまで、なぜ光空と一緒にいるの?」

浮かび上がる本音は、
すべてこの言葉でかき消された。

「彼女の苦しみに比べたら、自分のつらさなんて…。」

この思い込みが”泥沼への招待状”だったことを、
僕は知るよしもなかった。



【第3話:実体のない”カノジョ”】へ続く

⇒この小説のPV

2022年10月27日

【短編小説】『いま、人格代わるね。』1

【MMD】Novel Jinkaku SamuneSmall1.png

<登場人物>
空木 零依(うつき れい)
 ♂主人公、29歳の会社員
 目標も趣味もなく孤独に生きていたが、
 光空(るあ)との出逢いから壮絶な運命に巻き込まれる

無垢品 光空(むくしな るあ)
 ♀22歳、主人公に好意を抱き近づくが、
 実は彼女の中に複数の”別人”がいて…?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第1話:切り離された4人】



『いま、交代するね。』

光空はそう言って、静かに目を閉じた。

わずかに口が動いているが、
何を言っているのかは聞き取れなかった。

ガクンッ

彼女が眠りに落ちたかに見えた、次の瞬間、

(?)
『よう、久しぶりやな。生きとったか?』


突然、光空は陽気な関西人へ変貌した。

(?)
『なんや本体が「話したいことがある」ゆうてな。』
『どないしたんや?お兄さんに話してみぃ。』


零依
「やあレオ。わざわざありがとう。実は…。」


僕もすっかり慣れたものだ。

本体?レオとは誰?
傍から見れば”わけがわからない”だろう。

目の前にいるのは光空だけ。
なのに僕は、まるで別人のように接していた。

交代?そう交代だ、人格の。
光空は多重人格者なのだ。



ーー



光空
『何だよあの店員…!態度悪いな…!』


零依
「ねぇ光空、ちょっと言葉遣いが乱暴じゃない?」


光空
『何ですって?!これくらい別にいいでしょ?!』
『セイヤ!出て来て!』


…まずい、セイヤが出てくる…。
非常に”ケンカっ早い”人格だ。


(セイヤ)
『おいおい、本体が言ってたぜ。』
『「彼氏のモラハラがひどい」ってよ!』


零依
「少し注意しただけだよ…。」


(セイヤ)
『うるせぇ!俺は寝起きで機嫌ワリィんだ!』
『オイタが過ぎるんじゃねぇか?』
『モラハラ彼氏さんよォ?!』


……この日は食器3つと、頬へ2発で済んだ。


ーー


零依
「ごめん!言い過ぎた!」
「謝るからクレハに代わって?」


(セイヤ)
『ちッ…!まぁいい、気は済んだ。』
『呼んでくるから待ってろ。』


零依
「………。」


(クレハ)
『お待たせしました。』
『ど、どうなさったんですか?!』
『そのケガに…割れたお皿…?!』


零依
「光空とケンカしちゃって…。」


(クレハ)
『大変!すぐに手当てします!』
『またセイヤさんですね…?』


零依
「まぁね…。」


(クレハ)
『…そうですか…些細なことで…。』
『いつもごめんなさいね…。』


零依
「クレハが謝ることじゃないよ…。」


クレハは優しい女性の人格だ。
だから大抵、セイヤが暴れた後に登場した。



ーー


零依
「お皿の片付けも終わったし、今日はもう寝よう…。」
「どうしたの?そんなところにうずくまって。」


光空
『…………。』


まさか…。
この時間に交代すると、出てくるのは…。

(サキ)
『うふふ。本体には先に眠ってもらったわ。』
『今夜も…楽しみましょ?』


彼女はサキ。とても…色欲の強い人格だ…。

(サキ)
『あら、そのケガどうしたの?』


零依
「セイヤが暴れてさ…。だから今日はもう眠くて。」


(サキ)
『そう、それならお姉さんが癒してアゲル。』


零依
「えっと、今日はちょっと…。」


3ヶ月後、僕の体重は心労から10キロ落ちていた。



ーーーーー



光空の中には4〜5人のメイン人格と、
十数人のサブ人格がいるらしい。


そして8割方、彼女の任意で交代できる。

交代するときは、
彼女の中にある複数の「部屋」を訪れ、
それぞれの人格と話す。

目を閉じ、口をわずかに動かすしぐさは、
”交代の交渉をしている”そうだ。

光空との交際が始まってから、
僕が今までに把握しているメイン人格は、

 1.レオ
  ⇒関西弁の明るい青年、もっとも出番が多い
   言いたいことは隠さず言うが、頼れるお兄さん

 2.セイヤ
  ⇒好戦的で暴力的
   口ゲンカが発展した際に切り札として登場

 3.サキ
  ⇒非常に色欲の強い、派手好きなお姉さん

 4.クレハ
  ⇒もの静かで優しい淑女


この他、10人ほどのサブメンバーと会った。
名乗ることもあるが、正直よく覚えていない。

わかるのは、
「あ、いま人格交代したな。」という感覚くらいだ。



ーーーーー



「今どきナンパなんて死後に近いんじゃないか?」
「あったとしても”ただしイケメンに限る”」

それがステレオタイプの1つだろう。

まして逆ナン?肉食系女子?
そんなものはおとぎ話だと思っていたが、



光空
『ねぇあなた、ちょっとかっこいいじゃない』
『この後、時間ある?お茶しましょ?』




とあるイベント会場で、
僕は唐突に光空に話しかけられた。

僕は驚いたが、
自分に言われたと勘違いしたら恥ずかしいと思い、
無反応に徹した。

「積極的な彼女から声をかけられる」
「順調に関係を深め、交際、そして同棲へ…。」

それは非モテをこじらせた男子にとって、
あまりに”ご都合主義的”だ。


だが数ヶ月後、
僕は光空のアプローチに押され、
”ご都合主義”の当事者になっていた。

このときの彼女は。
いや、このときの人格は光空”本体”だったのか?

それともサキ?
僕が会ったことのないサブメンバー?

わからない。ともかく僕らは、

「運命の出会い」「この人しかいない」
という、熱い錯覚の期間を過ごした。



ーーーーー



恋愛の熱が冷めるのは、
だいたい3ヶ月から半年後だ。

互いの長所だけが見えていた期間が終わり、
欠点が必要以上に大きく見えてくる。

その時期に、
いかに相手を傷つけずに本音を伝えるか。
それが恋人と長続きする秘訣なんだろう。

ただ、僕の”熱の冷め方”は心臓に悪かった。



ある日の仕事の休み時間。

ふと携帯を見ると、
彼女から1通のメッセージが届いていた。

そこには僕への辛辣な本音が、
関西弁で書かれていた。


零依
「……誰……?!」


光空が関西弁を話すところは、
今まで見たことがなかった。

迷惑メール?なりすまし?
まさか危険な目に遭い、携帯を奪われて…?

僕の頭の中に陰謀論が駆け巡った。

午後の仕事など手につかず、
不安に取り憑かれたまま急いで帰宅した。


ーー


光空
『そのメッセージ?私だよ。』
『レオに交代して送ってもらったの。』


彼女はあっけらかんと言った。

零依
「交代…?」


光空
『そう交代。私、多重人格なの。』


零依
「……?!」


恋の熱に浮かされる時期は終わった。
これからは勇気を出して本音を伝えよう。

僕はそう覚悟していた。

その夜に知ったことは、
予想通り彼女の僕への好意と不満。

予想通りでなかったのは、
その後に開演した、彼女の人格交代劇。


(レオ)
『初めましてやな。ワイはレオや、よろしゅうな』


(クレハ)
『クレハです。』
『困りごとがあったらおっしゃってくださいね?』


(セイヤ)
『セイヤだ。』
『コイツを泣かせたら、わかってるな?!』


光空
『サキは…今は呼ばないでおくね。』


あ、今のは本体か。



多重人格は、
難しい言葉で「解離性同一性障害」という。

トラウマや不安定な精神状態から心を守るため、
人格が分かれることがあるそうだ。

恋の熱が冷めた後、僕の仕事が2つ決まった。

1つ目は、恋人との良い関係の維持。
2つ目は、多重人格の勉強に躍起になることだ。



【第2話:救済願望の沼】へ続く

⇒この小説のPV

2022年10月22日

【短編小説】『転入届は二度出される』後編。

【短編小説】『転入届は二度出される』前編。の続き



某市N区、とある家。

『ねぇ、あたしが作った料理、残したでしょ?!』

「あ、あぁ。なんかいつもと味付けが違ってさ。」
「あと今日はそんなにお腹すいてなくて…」

『どういうこと?!』
『恋人が愛情込めて作った料理を残すなんてサイテー!』

「ちょっと待ってくれよ…」

『私のこと愛してるんでしょ?!』
『だったらぜんぶ食べて当然じゃない!』

「そうだけどさ、今日は…」

『お腹すいてない?!どうしてよ!』
『さては他の女と食事してきたんじゃないでしょうね?!』

「してないよ、頼む、少し落ち着いて…」

『もういや!あなたとは価値観が違いすぎるわ!』
『別れる!!』

ガチャ!バタン!



 同棲するカップルのケンカ。
 当事者にとっては一大事だが、
 頭が冷えれば、話し合いがあるだろう。

--

数時間後、某市S区、とある家。

「あぁ?もう別れた?!」

『ええ。あんなサイテー男だと思わなかったわ。』
『やっぱり私にはあなただけよ。』

「だろ。俺ん家こいよ。」

『ええ。』

「引っ越しの手続きはどうすんだ?」

『明日、転入届を出しに行くわ。S区役所へ。』



 別れた矢先。
 これもまぁ、なくはない話だ。
 よく言えば”切り替えが早い”だろうか…。

--

1週間後、某市S区。

『ねぇ、今夜も…いいでしょ…?』

「悪いが、今日は仕事で疲れててさ。」
「明日にしてくれないか?」

『どうしてよ?!』
『愛する人を抱きたくないっていうの?!』

「そうじゃなくてさ。」
「今日、取引先とトラブルがあって…」

『私からの誘いを断るなんてサイテー!』
『私のこと愛してないんでしょ!』

「落ち着けって…」

『運命の人だと思ったのに!』
『そんな男だとは思わなかったわ!もう別れる!』

ガチャ!バタン!



『やっぱり運命の人はあなただけよ。』

「だろ?戻ってこいよ。」

『1週間でまた引っ越しなんてね。』

「心配すんな。もう引っ越しなんてさせないから。」

『ええ。明日、N区役所へ行ってくるわ。』

--

3日後。某市N区。

『ねぇ、この連絡先って女の子?』

「そうだけど、職場の連絡用だよ。」

『私以外の女に連絡するってどういうこと?!浮気?!』

「違うって…」

『今すぐ消して!』

「仕事で使うから無理だよ、というか人のスマホ勝手に見るなよ…」

『そんな浮気性だったなんて信じられない!』
『もう別れる!』



某市S区。

『今、他の女のこと見たでしょ?!』

「べ、別にいいだろそれくらい…」

『私がいるのにどうしてよ!』

某市N区。

『どうして返信に5分もかかるの?!』
『他に女がいるんでしょ?!』
『もういや!別れる』


………………。

--

これらは決して、
「カップルのよくある痴話げんか集」ではない。

すべて1人の女性の話。
それも、来庁しただけでその場の空気を清める美女の。

そう。たびたび転入届を出しに来た、彼女だ。



極端な二面性がある性格のことを、
『ジキルとハイド』と呼んだりする。

それに、人間は矛盾した生き物だ。
誰もが少なからず『ジキルとハイド』な一面を持っている。

だとしても、
区役所に勤める兄弟は信じられるだろうか。

 ・些細なことで「別れる」と啖呵を切る
 ・数日〜1日での引っ越しもためらわず、別の同棲相手の家へ移る


それが彼女の、もう1つの顔だということを。



彼女が全身にまとう、やわらかさと気品。
すべてを清めるような存在感と、優しい声。


それを生み出しているのは、
彼女の異常なまでの嫉妬深さ。

そして、
”完璧な彼氏”以外は”サイテー男”という思い込み。


頭で理解しても、果たして受け入れられるだろうか…。

--

その後もN区役所、S区役所では、
数日から数週間おきに訪れる美女の話題で盛り上がった。

彼女が来なくなる1年の間、
事情を知らない来庁者たちは、
誰もがその後ろ姿に魅了された。

彼女は戸籍住民課の”常連”、
それも、異常な頻度で転入する”ワケアリ”。

職員たちはいつしか、
彼女の変わらぬ清涼感に戦慄を覚えるようになった。



N区から”華”が消えて、1年が過ぎた。
弟は偶然、遠い友人づてに彼女の噂を聞いた。

「1日2回転入」の裏事情、
尋常でない嫉妬深さと、彼氏への依存。

どちらの同棲相手ともうまくいかず破局。
今は生死すら不明…。

「あんな絶世の美女が、なぜ…?」


弟は、彼女が辿った末路に
思いを巡らせながらつぶやいた。



 ときとして人間の心は、
 もっとも醜い感情から、
 もっとも美しい奇跡を生む。


1日に2度出された転入届は、
彼らにそう伝えていたのかもしれない。



--END--



過去作品
【単発小説】『ゆりかごは、この手でゆらしましょう』。

【ファンタジー小説】『魔王の娘は解放された』1

2022年10月21日

【短編小説】『転入届は二度出される』前編。

「転入の手続きをお願いします。」



ここは某市N区・区役所。
戸籍住民課では、とある美人の話題で盛り上がっていた。

「見たかよ…芸能人が来たのかと思ったぜ…。」
「あぁ。あんなきれいな人、本当にいるんだな。」

男性職員は口々に、称賛を語った。

「同性でも見とれてしまうわ…。」

女性職員は口々に、憧憬を語った。



おそらく身長は170センチを超える。
誰もが振り返る、美しいスタイル。

それでいて気取った素振りは一切なく、
穏やかな笑顔は謙虚さであふれていた。

全身にまとう清涼感と気品。
そして、あの優しい声。

彼女はまるで、絵画の世界から飛び出してきたようだ。



彼女はその後も手続きのため、
たびたびN区役所を訪れた。

彼女が来庁すると、
姿が見える前から、その場の空気が澄んでいった。

職員がどれだけ事務手続きに忙殺されていようと、
彼女がまとう清涼感は一瞬でわかるほどだ。



「彼女は何者なんだろう?」
「どんな仕事をしてるんだろう?」
「モデル?アイドル?それとも、高貴な家のご令嬢…?」

区役所の職員でなくとも、
想像を巡らせてしまう、圧倒的な存在感。

彼女は、彼女のあずかり知らぬところで
N区の”華”になっていた。



−−ところが−−



「転入の手続きをお願いします。」



数ヶ月後、
同市”S”区・区役所、戸籍住民課。

「見たかよ…芸能人が来たのかと思ったぜ…。」
「あぁ。あんなきれいな人、本当にいるんだな。」



N区役所に勤める弟には、
S区役所に勤める兄がいた。

その兄が最近、興奮しながらこんなことを言っていた。

「この前、戸籍住民課にすごい美人が来たんだよ!」

聞けば、その女性は長身で、謙虚な立ち振る舞い。
一瞬でその場を清める空気をまとっていたという。

まちがいなく、彼女だ。
数ヶ月前、同市”N”区へ転入してきたはずの。




市内の他の区へ引っ越す場合は、
引っ越し先へ転入届を出すだけでいい。

だからN区役所の職員たちは表面上、
彼女が引っ越しても気づかない。

 たった数ヶ月後で引っ越し?
 まぁ、そういう仕事なんだろう。

このとき、弟は気にも留めなかった。

--

兄の話を聞いてから1週間後。

「転入の手続きをお願いします。」

今度は同市”N”区役所に彼女がやってきた。

 1週間でまた引っ越し?

弟は疑問に思ったが、
彼の役目は依頼された事務手続きの遂行だ。



3日後、兄がまた興奮しながら言ってきた。

「今日、すごい美人が転入届を…」

?!…何だ?このループは……?
弟は何度も、自分の頬をつねった。

鏡の向こうにいたのは、
赤らんだ頬の痛みで顔をしかめる自分だった。

--

次の日の朝、
弟はまた、彼女の転入手続きをしていた。


あれ?ついこの間、手続きしたはずでは…?

自分は幻術か何かにかかっているのか?
目の前にいる美人はまやかしか?

あぁ、僕は相当、疲れてるな…。
こんな幻覚を見てしまうなんて。



閉庁が近づいた夕方、
弟はこの日2度目の清涼感に包まれた。

「転入の手続きをお願いします。」

彼女の変わらぬ美しさは、
疲労した弟の顔から、血の気を奪った。

はじめは数ヶ月での引っ越し。
それが1週間、3日となり、ついに1日2回。


彼女の優しい声が、弟の耳には不気味に響いた。
そして、思わず口をついて出た。

「あなたはいったい、どんな仕事をしてるんですか…?!」



『転入届は二度出される』後編へ続く

2022年10月17日

【YouTube:自作MV18作目】魔王魂『where you are』Short。

僕は2020年12月から動画制作を始め、
YouTubeへの投稿をスタートしました。

本記事では、
英訳つき自作ミュージックビデオ18作目:

魔王魂『where you are』Short Ver.

の制作背景を紹介します。


ー目次ー
  1. 制作した動画
  2. 作品の概要
  3. 制作の所感

1.制作した動画




2.作品の概要


3.制作の所感

独自解釈テーマは
「天国から、見守っています」


===<ストーリー>===


 ー これは、亡き母が娘に注ぐ、無償の愛の物語 ー

   

ここは、人里から遥か山奥。
エルフが棲むといわれる神秘の森。

伝承にのみ存在するはずの世界。
そこには、幸せに暮らすエルフの母娘がいた。



だが、エルフの母は不幸にも、
若くして亡くなってしまった。

残された幼い少女は、
母の墓前で泣くことしかできなかった。

エルフは人間よりも遥かに長寿である。

母を失った少女にとって、
その長い寿命は悠久の孤独に等しかった。




それでもエルフの少女は、
決して生きることを諦めなかった。

それは、
母が生前に与えてくれた愛情が、
どこまでも深く、揺るぎないと信じていられたからだった。


少女は、亡き母からの無償の愛を心の支えに、
たくましく生きていった。



そうして成長した少女に、最高の日がやってきた。
1日だけ、母が天国から会いに来てくれる日だ。

「いってらっしゃい。たくさん抱っこしてあげてね。」
母が天国から発つとき、天使が声をかけた。

「ええ…あげたいものがたくさんあるの。」
エルフの母は静かに答えた。

天使の輪を冠した母が、神秘の森へ降り立った。

エルフの母は、
娘に十分に与えられなかった抱擁を、一身に与えた。

少女は、すべてを包み込んでくれる母の腕の中で眠った。



「もう、行かなくちゃ…。」

エルフの母は涙を浮かべ、そう呟いた。
お別れのときが来た。

わかっていた。
会えるのは1日だけ。
そして母はもう、天に召されている。

…はずなのに…。

割り切れない思いを抑えられず、
少女は涙ながらに懇願した。

「お母さん、行かないで…!」

…つないでいた手が離れ、
母はゆっくりと天に昇っていった。

少女の手に残るぬくもりは、
まるで儚い夢にそっと、溶けてゆくようだった。



「あなたに、この思いが届きますように」

旅立つ者と、残される者。

今生ではもう、互いが交わることはないだろう。
それでも、心はつながっていた。

エルフの少女は、
あふれる涙を拭いながら誓った。

「私は強く生きるよ。幸せになるよ。だから見守っていてね。」

エルフの母は、
精一杯の笑顔を作りながら言った。

「私はいつでも、あなたを見守っているからね。」

星空はただ、優しい光をたたえていた。



「おかえりなさい。娘さん、元気だった?」

天国へ戻ったエルフの母へ、
天使が声をかけた。

「ええ…とても…。」

エルフの母は
少し寂しそうな笑みを浮かべ、そう答えた。



死別すらも乗り越えた2人。
互いの無償の愛が紡ぐ願い、それは、

 ー 「どうか、幸せに。」 ー
 ー 「どうか、安らかに。」 ー



===============



この曲を聴いたとき、
僕は「亡き想い人への言葉」と解釈しました。

そこで、
悲しみを越えて、あたたかい気持ちになるような
ストーリーを着想しました。



同時に、
「こんな親子関係がほしかった」という
僕の理想も込めたいと思いました。

 『あたたかい家庭環境がほしかった』
 『子どもの内面に興味のある親がほしかった』

それは、僕がずっと空想してきた「理想」。

 同じように空想の存在であるエルフなら、
 きっと死別さえ乗り越え、実現してくれる。

独自解釈ですが、それが少しでも表現できていれば幸いです。



⇒MMD過去作品
【YouTube:自作MV17作目】魔王魂『Burning Heart』Short。

【YouTube:自作MV16作目】魔王魂『Feels happiness』Short。



2022年10月14日

負け惜しみを言う人ではなく、言われる人になる。

「今日は本調子じゃなかったから」
「本気を出していたら勝てた」


多くの負けを経験するほど、
1勝をつかみ取ったときの喜びは大きい。

そんなとき、相手から負け惜しみを言われたら、
水を差されたような気持ちになる。

反対に自分が負けたとき、
つい負け惜しみを言ってしまうと、
なぜか自分のモヤモヤが増してしまう。



すっきりしない勝利や、悔しさを突きつけられる敗戦。
そういう場面に出会うたびに、心がけたいことは、

負け惜しみを言う側ではなく、言われる側になる。
負け惜しみを言いたくなったら、相手を讃える言葉に変える。
そこで飲み込んだ悔しさは、自分を磨くための力に変える。



ー目次ー
  1. 負け惜しみは心の崩壊を守る
  2. 負け惜しみは”私は小物です”宣言
  3. 負け惜しみは”自分への不信感”を募らせる
  4. 負け惜しみは”相手を讃える言葉”に変える
  5. 負け惜しみを言われる側になろう

1.負け惜しみは心の崩壊を守る

負け惜しみを言うことには、
自分の心を守れるというメリットがある。


たとえば勝負に負けたときや、
目指す何かに届かなかったとき。

本気であればあるほど、
胸の奥から激しい悔しさが湧き上がってくる。

それは正面から受け止めるにはあまりにも痛い、
無力感、劣等感、後悔。


そこで負け惜しみを言うと、
負けた原因を自分以外にすり替えられる。

そうすれば、
湧き上がる負の感情が心を直撃することを防げる。

たとえそれが
「他責」「自分に都合のよい言い訳」と呼ばれても、
負け惜しみが心の崩壊を防いでくれることは事実。

負け惜しみは「合理化」という、心の防波堤の1つ。

2.負け惜しみは”私は小物です”宣言

ただし、負け惜しみを言うことには
大きなデメリットがある。

それは、負け惜しみを聞かせた人に対して、

『私は小物です』

と宣言してしまうこと。



「この人は負けを受け入れられない人だ」
「言い訳がましい、他責思考な人だ」

と思われる恐れがある。

負け惜しみを聞いたすべての人が、
「悔しさから心を守ろうとしてるのかな…?」
などと、背景に思いを巡らせるとは限らない。

弱ェと言われて取り乱す奴ァ
自分で弱ェと認めてる証拠だ。

弱ェ強ェは結果が決めるのさ


『ONE PIECE 7』60話 首領・クリークのセリフ より

もちろん、プロセスは大切。
そして勝敗は時の運。

だが、ひとたび決着がついたら
「説得力を持つのは口ではなく結果」

悔しいが、そういうことなんだろう。

3.負け惜しみは”自分への不信感”を募らせる

負け惜しみのデメリットは、
まわりからの自分の評価を下げる恐れ。

それだけでなく、
負け惜しみが癖になると、
自分の内面にも大きなダメージを与える。


それは、
「自分への不信感がどんどん募っていく」こと。



本当は自分の失敗や、負けた理由を、自分が1番よく知っている。
なのに、負け惜しみで目をそらし過ぎると、

 『本当の自分は悔しいと思ってるの?
  負けたのは自分のせいじゃないと思ってるの?
  どっちなの?自分の本音にさえウソをつく自分なんて信じられない!』


こうして、心の奥底で自分への不信感が募る。



自分への不信感が募ると、失敗が怖くなる。
そして鍛錬や挑戦を避ける。

「どうせ自分は勝てない」
「努力しても上達しない」

すると成長しないので、

 ⇒また負ける
 ⇒負け惜しみを言う
 ⇒自分への不信感が増す


という負のスパイラルに陥る。

4.負け惜しみは”相手を讃える言葉”に変える

負け惜しみを言いたくなったら、
それを「相手を讃える言葉」に変換する。

そうすることで、
負けた自分をそのまま受け入れられるようになる。




負けた自分を受け入れるのは、とてもつらい。

胸の奥から湧き上がる悔しさ、無力感。
正面から受け止めると、息苦しくなって逃げ出したくなる。


負け惜しみのセリフはもう、喉元まで来ている。
そこをぐっとこらえて、相手を讃えよう。

そうすれば
「自分の負の感情を乗り越えた」という自信を得られる。



自信がつけば、自分への不信感を少しずつ和げていける。

「自分は素直に悔しいと思っていいんだ」
「本音にフタをしたり、何かのせいにしなくていいんだ」
と思えるようになる。

失敗しても、負けても、
「またあの感情が襲ってきても大丈夫。自分なら乗り越えられる」
から、鍛錬や挑戦ができる。


すると実力がつくので、

⇒勝てる
⇒負けても受け入れられる
⇒また挑戦できる
⇒また実力がついて勝率が上がる

という、良いスパイラルに乗れる。

5.負け惜しみを言われる側になろう

負け惜しみは自分への不信感を代償に、
自分の心を守ってくれる。

ただ、
心は守れても実力を上げなければ、
負け惜しみを言いたくなる場面は減らせない。


だから目指す場所は、
負け惜しみを言う側ではなく、言われる側。



負け惜しみを言われたら、その瞬間は心がゆらぐ。
言い返してやりたい衝動に駆られる。

そんなときは、
負け惜しみを言われるのは喜ばしいことと考えよう。

負け惜しみは、負けたと思っている者だけが言える。

だから負け惜しみを言われたら、
「あなたの勝ちです」と認められた証拠。




負け惜しみを言わない力と
負け惜しみを喜ぶ力をつけよう。

負け惜しみを飲み込んだ悔しさを、
自己研鑽の力に変えよう。


実力をつけて、
自分にとっての壁を見返してやろうじゃないか。



劣等感を刺激されたら、次の日から感謝する。










posted by 理琉(ワタル) at 19:42 | TrackBack(0) | 生き方

2022年10月12日

自分の話ばかりすると、話を聞いてくれる人が去っていく。

「話を聞いてもらいたいから、ひたすら話す」
「もうとにかく肯定して、共感してほしい」

そんな思いから、自分の話ばかりすると、
目先の自己顕示欲は満たされる。

しかし長期的には、
話を聞いてくれる人が去っていく。




聞き手に回ると、
目先の自己顕示欲は満たされない。

代わりに、人に安心感を与えられる。
長期的には、良い人間関係に恵まれる。

「話を聞いてほしいから話す」のは逆効果だと実感する。


ー目次ー
  1. 話し手は”聞き手不足のデフレ”に苦しむ
  2. 会話泥棒は”聞き手を失う行為”
  3. 聞き手にだって自己顕示欲はある
  4. 聞き手は”長期的な良い人間関係”を得られる

1.話し手は”聞き手不足のデフレ”に苦しむ

人間が「話したい生き物」である限り、
話したい人は”デフレ”に苦しむことになる。

 <需要>
 話し手1:9聞き手

 <供給>
 話し手9:1聞き手

この”話し手の供給過多”は、
人間が「話を聞きたい生き物」に突然変異するまで続くだろう。

 話したい
 話したい…
 聞いてほしい
 聞いてほしい…

供給過多の話し手たちは、
少ない聞き手の獲得をめぐって争う運命にある。


2.会話泥棒は”聞き手を失う行為”

数少ない聞き手を獲得し、自分の話ばかりすると、

 満たされる自己顕示欲
 人に受け入れられる安心感
 脳からあふれ出るドーパミン

などに浸れる。
そんなとき、話したい人は気づいているだろうか。



『聞き手だって話したい』
ということに。

人に嫌われたり、陰で笑われたり、軽蔑されたりしたかったら、
次の条項を守るにかぎる。

1.相手の話を、決して長くは聞かない。
1.終始自分のことだけをしゃべる。

1.相手が話している間に、何か意見があれば、
  すぐに相手の話をさえぎる。
1.相手はこちらよりも頭の回転が遅い。
  そんな人間のくだらんおしゃべりをいつまでも聞いている必要はない。
  話の途中で遠慮なく口をはさむ。


『人を動かす』”人に好かれる六原則” より

想像してみてほしい。

「私の場合はこうで…」
「僕はこんな成功をして、こんなに苦労して…」

そうやって、
何度も会話泥棒されたら。
自分の話にすり替えられたら。
話し手は嬉しいだろうか?




 「会話とは主導権の奪い合い」
 「自分が話題の中心になるために必死」

そういう信念があるにしても、
話してばかりいると自覚していないにしても。

それは
目先の自己顕示欲の代わりに”聞き手を失う”行為。



遠まわしな頼みごとを察するのに疲れたら、気が利く人は冷たくなる。

3.聞き手にだって自己顕示欲はある

話したい人にとって、
聞き手を「捕まえた」という意識はないかもしれない。

何でも話せる人、気兼ねなく話せる友人と
思っているかもしれない。



が、聞き手は見抜いている。

『あなたの話に興味はない、とにかく私の話を聞きなさい』
という、話し手の無意識の欲求を。




聞き手に回る人は、
何でも話しやすい雰囲気を持っているんだろう。

自己主張が少なく、気弱で、控えめな性格なんだろう。

そんな聞き手にだって自己顕示欲はある。
親しい人に受け入れてもらいたい欲求を持っている。




「この人は私に自分をぶつけるばかりで、受け入れるつもりがない」

聞き手が去っていくのは、それを確信したとき。
去らないまでも、

会話が減ったり、距離ができたりするのは、
会話泥棒を静かに見限り始めたとき。




優しい人が突然いなくなるのは、我慢の限界を超えた時。

4.聞き手は”長期的な良い人間関係”を得られる

聞き手に回ると、
その場では”話したい欲求”を満たせない。

代わりに、

「次もこの人に会いたい」

と思われやすくなる。

自分の話を聞いてもらえたから。
自分を受け入れてもらえた安心感が生まれるから。


<聞き手にまわる>

話し上手になりたければ、聞き上手になることだ。
興味を持たせるためには、まず、こちらが興味を持たねばならない。

あなたの話し相手は、
あなたのことに対して持つ興味の百倍もの興味を、
自分自身のことに対して持っているのである。



『人を動かす』”人に好かれる六原則” より

・相手の話をぶつけてくるばかりの人
・自分の話に興味を持って聞いてくれる人

一緒にいたいと思えるのは、どちらの人だろうか。



たとえ無意識にでも、
自分の話ばかりする、会話泥棒をする。

それは果たして、

目先の自己顕示欲と、
長期的に良好な人間関係のどちらを選ぶ行為だろうか?




【会話泥棒】何でも自分の話にすり替える人は、認めてほしくて、自信がなくて、怯えている。










posted by 理琉(ワタル) at 19:23 | TrackBack(0) | 生き方
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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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