アフィリエイト広告を利用しています

広告

posted by fanblog

2022年10月07日

【短編小説】『ゆりかごは、この手でゆらしましょう』

【MMD】Novel Yurikago SamuneSmall1.2.png

「サヨナラ」

あなたにそう伝えるときの私は、
もっと泣きじゃくると思っていた。

ドラマで見る別れのシーンのように、
劇的なんだと思っていた。

けど、現実は驚くほど淡泊なんだ。

「ーーSayonara.ーー」

私は機械のように、その言葉を口にした。
私の心には、感情の嵐など訪れなかった。



「あなたにとっての1番でなくてもいい」

私がそう望むなど、あり得ないと思っていた。

ー私は”純愛”を貫くんだー
根拠もなく、そう信じていた。


愛人も、都合のいい関係も、
私にとっては現実離れしたアイドルでしかなかった。

…あなたに出逢うまでは。



あのときの私は、
寂しかったわけでも、
何かにすがりたいわけでもなかった。

そして、あなたが
私だけを見ているわけじゃないことも知っていた。

なのに…どうして私は…。

あなたの
上っ面の愛情表現に、
薄っぺらい愛の言葉に、

あんなにも”満たされた”と錯覚したんだろう…?



私は、私の心に
穴が空いていることにさえ気づけなかった。

他人の気持ちを優先してばかりで、
私の気持ちを押し殺してきたことにさえ
気づけなくなっていた。

 「甘えたい、抱きしめてほしい」
 「ゆりかごをゆらしながら、優しくなでてもらいたい」

あなたは、
私のそんな隠された願いを叶えるフリが巧かった。




あなたにとって、私は1番じゃなかった。

私はそれに気づいていながら
”偽りの恋人”を演じていた。

私、きっと怖かったんだ。
私をあやしてくれる存在を失うことが。




恋人との関係が終わったら、
甘ずっぱい思い出は色あせてしまうの?

それとも、
記憶の片隅でいっそう鮮やかに彩られるの?

あなたと過ごした”偽りの時間”さえも?

いいえ、どちらでもない。

すべてが終わった今、
あなたと過ごした時間は、
彩りを失くすことも、彩られることもない。

始めから、彩なんて付いてなかったんだ。



私、やっと気づいたの。

私も、あなたも、
失った過去を取り戻そうとしていただけだって。

あなたも、私も、
互いに「お母さんの代わり」を求めていたんでしょう?
互いの愛情飢餓感を埋めようと、もがいていたんでしょう?

それがわかった今だから、こう言えるの。

「私、先に行くね」



これからは、未来を彩るために歩いていくの。

”純愛を夢見る少女”を捨てるわけじゃない。
けど、白馬の王子様に焦がれるだけは、もうやめるの。

だから、
あなたに依存しちゃった私が、
こんなことを言うのもなんだけど…。

せめて、私からピリオドを打たせてね。



互いに”都合のいい関係”は、ここで幕引きにしましょう。

「ーーSayonara.ーー」



⇒他作品
【短編小説】『また逢いましょう、ホタル舞い降りる川で』全7話

【短編小説】『心だに 君の際なられば 果報』全1話

⇒この小説のPV


⇒参考書籍






この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/11623294

※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
検索
プロフィール
理琉(ワタル)さんの画像
理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
プロフィール
最新記事
カテゴリーアーカイブ
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。