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2023年12月21日

【短編小説】『タイムシーフ・タイムバンク』1

【MMD】Novel Time Bank SamuneSmall2.png
【MMD】Novel Time Bank CharacterAMSmall1.png

<登場人物>
アネーシャ・クロニス
 主人公、23歳
 お人好しで頼みごとを断るのが苦手
 人に安心感を与える”不思議な瞳”を持ち、
 聞き上手として周囲から頼られている
 反面、都合よい”愚痴のゴミ箱”にされることも多い

マイア・シリル
 アネーシャの幼馴染で親友、23歳
 おしゃべり好きで社交的
 気弱なアネーシャを支える姉の一面もあるが、
 アネーシャを愚痴の聞き役にしている節もある
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第1話:聞き上手と時間泥棒】



アネーシャ
「今日も断れなかった…。」
「それと、やっぱりずっと聞いちゃった…。」


ある夜、
幼馴染のマイア・シリルと遊びに行った帰り道。

私、アネーシャ・クロニスは、
疲れた身体を引きずって自宅を目指していた。

マイア
『ねぇアネーシャ!ちょっと悩みがあって…。』
『あなたの意見を聞かせてくれない?』


マイアはそう言って、
私に「悩み相談」をお願いしてきた。

その日は特に予定がなかったけど、
疲れ気味だったし、本当は断りたかった。

ほぼ毎回、
マイアの聞き役に徹して終わるのが既定路線だから。



私は”頼みごとを断れない自分”を変えたくて、
自己啓発本を読み漁った。

「自分の本音に素直になりましょう」
「断って嫌われるならその程度」
「3回に2回は断りましょう」

たいていの本にそう書いてあるけど、
今のところ実践できていない。

マイア
『アネーシャ、最近どう?彼氏できた?』


アネーシャ
「か、彼氏?!///(照)まだできてな…。」


マイア
『そうそう、聞いてよ!私なんてこの前さぁ…。』


マイアも他の友人も、
私のことを聞いてくるフリで、
実は自分が話したいだけだとわかっている。

私の悪い癖は、
そこでつい”聞き役”に徹してしまうところ。


マイア
『アネーシャの目を見ると安心しちゃって。』
『つい何でも打ち明けたくなるんだ。』


どうやら、私の目にそんな雰囲気があるらしい。

私を信頼してくれるのは嬉しいけど、
心を開き過ぎて愚痴ばかりになっていくのがしんどい。

アネーシャ
「いい加減、断れるようにならなきゃ…。」


毎回そう決意するけど、
嫌われるのが怖くて「いいよ」と言ってしまう。


ーー


別の日も、私はテーブル越しに
マイアの話を受け止めていた。

アネーシャ
(今日もマイアの愚痴を聞いて終わるのかな…。)


そんな自分に嫌気が差し始めた頃、

マイア
『ところで、アネーシャは知ってる?』
『”タイムバンク”の噂。』


アネーシャ
「タイムバンク?」


マイア
『なんかねー、あまりにも時間に追われるようになると…。』
『自分の時間が数字として見えるようになるんだって!』


アネーシャ
「時間が数字として見える?」


マイア
『うん、そしたらタイムバンクの人が来て…。』



『あなたの時間を貯蓄しませんか?』
『後日、利子付きでお返しします。』
『時間に追われる毎日を変えましょう。』




『みたいな勧誘をされるんだって!』


アネーシャ
「不思議ね…。そんなことが本当にできたら…。」


マイア
『ね!すぐやりたいよね!』
『けど時間の貯蓄なんてできるわけないよね…。』
『そんなことができたら、私なら仕事辞めるわ(苦笑)』


アネーシャ
「あはは(苦笑)そうだよね…。」
「もしできるなら、いつの時間を預かるんだろう?」
「過去?未来?今?」


マイア
『どうだろ?タイムバンクなんて噂だから。』
『おもしろいけど、まぁファンタジーだよね。』


珍しいな。マイアが私に話を振って…。
じゃなくて!ファンタジーの話をするなんて。

タイムバンク…時間の貯蓄…か。

思えば私、
本当は断りたい付き合いに
だいぶ時間を取られているなぁ。
自業自得だけどさ。


もし私の残り時間が見えたら…なんてね。
あり得ないか。ファンタジーだよね。



ーーーーー



ところが、ある金曜日の朝。

アネーシャ
「ふあ……もう朝…?」


半分寝ながら目覚まし時計を探していると、

アネーシャ
「何…?!この数字…?!」


私の身体の前に、黒い数字が浮かんでいた。

真ん中に横線が走り、
下の数字は「24」、上の数字は「4」?

確かに昨夜まではなかった。
取れるのかな?手を伸ばしてみても触れない。

そういえば、この前のマイアの話…。

(マイア)
『時間に追われ過ぎるとタイムバンクの人が来て…。』


…まさか…いいえ、寝ぼけているだけ。

アネーシャ
「いけない…もうこんな時間…。」
「会社に遅刻しちゃう!」


私は慌てて身支度を始めた。



出社しても私の数字は消えなかった。

周りの人にも数字は出ていて、
お互いに見えているみたい。

やっぱり昨日までは出なかったようで、
周囲は謎の数字にざわざわしていた。

私の数字は、
下は「24」のままで、上は「3」に減っていた。

どうやら分数を表しているようだ。
24分の…何だろう?



モヤモヤしたまま仕事に追われ、夕方。
定時退社が現実味を帯びてきた頃、

マイア
『アネーシャ、この後空いてる?飲みに行こうよ。』
『明日はお休みでしょ?思い切り飲んでも大丈夫だよ。』


うーん…今日は正直ちょっと…。
この変な数字のことも気になるし。

なのに、私の返信内容は、

アネーシャ
「いいよ。」


違ーう!!!私のバカバカ!ヘタレ!
どうして断れないの?!


いつも通り”愚痴の聞き役”になるって
わかっているのに…。

私は自己嫌悪が止まらないまま定時退社し、
マイアとの待ち合わせ場所へ向かった。


ーー


マイア
『おつかれ!急に声かけて悪いね。』
『今日はおごるから許して?』


てへッ☆

というテロップが出てきそうな
マイアの数字は「24分の4」だった。

朝の私と同じだ。
やっぱりみんなに共通の何か?
同じように減っていくのかな?

思いつつも、
流されるままサシ飲みが始まって2時間。
私はやっぱりマイアの愚痴を聞いていた…。

せっかくマイアのおごりだったのに、
お酒の味はほとんど覚えていない。



マイア
『今日はありがとね!それじゃ!』


解散する頃には、
スッキリした顔のマイアと、ぐったりを隠す私がいた。

つ、疲れた…。
私の数字を見ると「24分の1」。
対して、後ろ姿のマイアの数字は「24分の5」。

あれ?「4」から「5」に増えている?
これって減るだけじゃないんだ。


もしかして体力?精神力?HPやMP?

だとしたら、
愚痴ってスッキリしたマイアの数字が増えて、
聞き役に疲れた私の数字が減ったのもわかる。

マイアは数字を気にしない様子で、
軽やかに帰宅していった。

私は今日も疲れた身体を引きずって帰宅。

アネーシャ
「すぐ寝たい…けど。」
「シャワーだけは浴びて…か…ら……。」


その後、私はベッドへ倒れるように眠りに落ちた。
私の数字が「24分の0」になっていたことに、
ちっとも気づかなかった。




【第2話:あなたの時間をお預かりします】へ続く

⇒この小説のPV

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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