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2023年12月22日

【短編小説】『タイムシーフ・タイムバンク』2

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【第1話:聞き上手と時間泥棒】からの続き


<登場人物>
アネーシャ・クロニス
 主人公、23歳
 お人好しで頼みごとを断るのが苦手
 人に安心感を与える”不思議な瞳”を持ち、
 聞き上手として周囲から頼られている
 反面、都合よい”愚痴のゴミ箱”にされることも多い

マイア・シリル
 アネーシャの幼馴染で親友、23歳
 おしゃべり好きで社交的
 気弱なアネーシャを支える姉の一面もあるが、
 アネーシャを愚痴の聞き役にしている節もある

トーラ・アルギロス
 実在が噂される「タイムバンク」の社員を名乗る
 人々から余分な時間を預り、”時間利子”を付けて返すというが…?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【第2話:あなたの時間をお預かりします】



翌朝、土曜日。
仕事はお休みだけど、

アネーシャ
「うぅ……まだ昨日の疲れが…。」


私がベッドでぐだぐだしていると、
ふいに音声通話の着信音が鳴った。

アネーシャ
「(もう…朝から誰?)…はい。」



『突然のご連絡で失礼します。』
『私は”タイムバンク”の者です。』


アネーシャ
「え?!」


昨夜、マイアが言っていた”ファンタジーの人”だ。
私、まだ夢の中?


『先日、あなた方へ数字をお出ししたのは私どもです。』


アネーシャ
「そ、そうなんですか…。」



『それについて、アネーシャさんへお話があります。』
『あまりにもタイムシーフ(時間泥棒)に時間を奪われているあなたへ。』


こんな突拍子もない話を、誰が信じるだろう。
知らない人に着いて行っちゃダメよ?
変な詐欺か、高額なツボの販売だから。

私の危機感メーターがそう告げる一方、
私の心に「タイムシーフ」という言葉が突き刺さった。

時間泥棒…か…。

私、頼みごとを断れないばかりに、
私に依存する人に時間を奪われる≒時間泥棒されている。
怪しいけど、少しでも自分を変えるきっかけになるなら…。

アネーシャ
「わかりました。待ち合わせ場所は…。」


当たって砕けよう。
販売だったらさすがの私でも断る。
数字のことも気になるし。


ーー


待ち合わせ場所のカフェに着くと、
銀髪で長身の青年が私を迎えた。


『アネーシャさん、ご足労ありがとうございます。』
『私はタイムバンク社員のトーラ・アルギロスと申します。』


アネーシャ
「こ、こちらこそ…ご丁寧に…(汗)」


うぅ…圧倒的なイケメンを前に、私の心がぐらついた。

ダメよアネーシャ!気をしっかり持って!
いくらイケメン相手でも何も買わないし、
どこにも入信しないんだからね!
名刺だって本物とは限らないし!

1人であたふたする私をよそに、
トーラはいきなり核心を話し始めた。

トーラ
『お気づきかもしれませんが、この数字は時間です。』
『分母は1日24時間、分子はその日に使える自由時間です。』


アネーシャ
「時間…?そういえば24時間…。」
「これって体力や精神力じゃないんですね。」


トーラ
『ははは、RPGゲームならおもしろいしょうね。』
『そこはご期待に添えませんで。』


柔和な笑顔を見せるトーラ。
油断しちゃダメよ?商談の雰囲気作りかも…。

アネーシャ
「昨日、私の数字が”4”からどんどん減っていったんです。」
「あれは私の自由時間が削られたってことですか?」


トーラ
『その通りです。』
『昨日、アネーシャさんの自由時間は4時間ありました。』
『ですがマイアさんのお話に付き合って目減りしてしまった。』


アネーシャ
「そういえば、マイアの数字は”4”から”5”へ…。」


トーラ
『あれはアネーシャさんの自由時間を奪ったからです。』
『本来、”ご自身で解決すべき葛藤”の時間をね。』


アネーシャ
「それが”タイムシーフ=時間泥棒”?」


トーラ
『そうです。確かに友達付き合いは大切ですが…。』
『自分の課題を他人に投げつけるのは時間泥棒になります。』


あぁ…心当たりがありすぎる…。
占いで自分のすべてを当てられたようで、
思わず何か買ってしまいそう…。

ストップストップ!
聞きたいことがあるんでしょ?!目的よ目的!



アネーシャ
「タ、タイムバンクは時間の貯蓄を勧めに来るんですよね?」
「だったら時間泥棒されている私より、マイアのところへ行った方が…。」
「わ、私の少ない時間を切り取っても足しになりませんよ…?」


トーラ
『確かに、商売としては訪問の順番が違いますね。』
『ですが私たちは、時間を奪われがちな方からお会いしています。』
『”大丈夫ですか?あなたの時間を奪われていますよ?”と伝えるために。』


アネーシャ
「わざわざ残り時間が少ない人から?」


トーラ
『ええ、そういう方は時間の大切さに敏感です。』
『他人から時間を奪っている人は時間に鈍感です。』
『そういう人に時間の大切さを説いても実感しにくいんです。』


アネーシャ
「時間の意識と、成約率の問題?」


トーラ
『その通りです。』
『だからアネーシャさんにはぜひ当行をご利用いただきたい。』
『あなたの時間をお守りします。』


人に時間を奪われ、疲弊しがちな私にとっては渡りに船。
それが好転するなら、少しくらい預けてもいいかな…?

けど、この状況は
子どもの頃に読んだ児童文学作品に似ている。

”時間貯蓄銀行”のスタッフが同じこと言ってきて、
人間から時間を奪って自分たちのものにする話。


トーラにそんな悪意は感じないけど、もう少し聞いてみたい。

アネーシャ
「よければ詳しく聞かせてくれませんか?」
「いつの時間を預って、どうやって時間利子を付けるのかを。」


私は目を見開き、トーラへ純粋な疑問をぶつけた。
相手に心を開かせるらしい、不思議な目を。

………。

…。




トーラ
『……そ、それは…。』


アネーシャ
「…?」


トーラ
(ッ!!危ない…真の目的を話すところだった…。)

(やはり彼女の目は”特別”だ。)
(包み込むような優しさに溢れている。)
(単なる聞き上手を超えて、心をすべて開いてしまいそうだ。)


(彼女になら頼めるかもしれない。が…。)
(出逢ったばかりであんな”重責”を背負わせるのは早計か…?)


トーラが言葉を詰まらせる間に、
私はこれまで友人に言えなかった返事を口にした。

アネーシャ
「…せっかくですが、お返事は保留させてください。」
「もう少し自分で何とかしてみたいんです。」


トーラ
『か、かしこまりました。』
『後日、改めてお伺いします。』


いつも断り切れない私が、
どうしてすんなり保留できたんだろう?

直感だけど、
この人は私を愚痴の聞き役にしたり、
悪意で近づいたんじゃないってわかったから。


タイムバンクなんて怪しさ満点。
断ったら何が起きるかわからない。

なのに、トーラにはなぜか
「断っても嫌われない」という妙な安心感があった。



ーーーーー



トーラとの不思議な出逢いがあってから数日後。
私の知らないところで、マイアが荒れていた。

マイア
『あーもう!あの鬼上司!』
『あんな仕事量、定時までに終わるわけないでしょ!』
『モヤモヤするなぁ…またアネーシャと飲むか…。』


マイアが私へのメッセージを打ち込んでいると、

マイア
『…音声通話?』



『突然のご連絡で失礼します。』
『私はタイムバンクの者です。』


マイアにも、
タイムバンクの別のスタッフが接触してきた。

マイア
『タイムバンクって…噂は本当だったの?』


マイアはすぐにスタッフとの待ち合わせに応じた。
「おもしろそうだから」って。




『マイアさんの時間を稼ぐ能力はすばらしい。』
『毎日4〜5時間は自由時間がありますよね?』


マイア
『何?この数字って時間だったの?』
『確かに”24”はずっと変わっていないもんね。』



『その通り、時間です。』
『そして、あなたは自由時間を稼ぐのが上手い。』


マイア
『時間を稼ぐ?どういうこと?』



『たとえば誰かに悩みを相談したり…。』
『”人を上手く頼る”ことでご自身の時間を節約しています。』


マイア
『あー、そう言われたら私、割と自由時間あるわ。』
『最近アネーシャに頼りきりだったかも。』
(悪いことしちゃったなぁ…。)



『そこですよ。』
『あなたは自由時間があるのに、仕事に追われています。』
『今日も上司と色々あったのでしょう?』


マイア
『見ていたの?』
『まぁいいや、タイムバンクなら何でもありか。』
『そう、時間はあるはずなのに最近気分が晴れないの。』



『でしたら、上司と揉める時間を当行へ預けませんか?』
『あなたが今まで稼いだ自由時間と一緒に。』


マイア
『時間を預ける?後で返してくれるんですよね?』



『もちろん、高い時間利子を付けてお返しします。』
『今よりもっと時間に余裕ができます。』
『そうすればイライラすることも減るでしょう。』


マイア
『費用は?』



『お金なんて要りませんよ。』
『我々のビジネスはあくまで時間の貸し借りですから。』


マイア
(ふーん…何だかウソっぽいけど…。)
(本当に自由時間が増えるならいいか。)
『わかりました。私の時間を預けます。』



『ご利用ありがとうございます。』



ーー


数日後。

マイア
『何だか身体が軽くなったみたい。』
『上司とぶつかることもなくなったし。』


マイアはタイムバンクへ時間を預けてから、
心の余裕が出てきたみたい。

マイア
『こんなに良いなら、アネーシャにも勧めようかな?』
(あの子への罪滅ぼしも兼ねて…。)


マイアなりに、
私を愚痴のゴミ箱にしている自覚はあったようだ。

これ以上はさすがに悪いと思ったのか、
私にタイムバンクを紹介しようと思ってくれた。

マイア
『待って。せっかくだから…。』
『もう少し時間を増やしてから紹介してもいいか。』
『あの子、時間なさそうだし。』


結局、マイアは
先にもっと時間を稼いでタイムバンクへ預けることを選んだ。




マイア
『もっと時間を稼ぐにはどうしたらいいの?』


考えた末に、マイアは、

アネーシャ
「まったくもう…今日のお題は何?」


マイア
『今日はねー…上司が…。』


アネーシャ
「それ、この前も聞いたよ?」


マイア
『そうだっけ?ごめん、じゃあね…。』


やっぱり、お酒を飲みながら私へ管を巻くことだった…。

私は「この前も聞いた」と言えるだけ成長したと思う。
それでも、ノコノコと出向いているあたりは進歩していない。

タイムバンクからの申し出を保留した私と、
時間を預けたマイア。

やっていることは今までと同じ。
私は疲れるけど、これだけなら”平和な日常”で済んだ。

その”平和な日常”は、
タイムバンクへ時間を預ける人が増えるにつれて、
徐々に崩れていくなど、想像できなかった。




【第3話:他人の時間の争奪戦社会】へ続く

⇒この小説のPV

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自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
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